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中津浦優斗から見た輝奈子12

「あぁ、さッブ」


なんて、綺麗な顔からは想像できない声が出るくらい寒い朝。ホテルを出て、俺と一緒にホールに向かう輝奈子さん。何で隣を歩けているのか今になると不思議である。才能に溢れた美少女と取り柄のわからない俺。それでも隣を歩けているのだから、この瞬間に感謝しよう。


今回のライブは結構な規模のライブだけどそこまで大きいライブでもない。演出も費用控えめにしてると聞いた。にしても、こんなデカい街のホールでライブできるのだからすごいと思う。


「おはようございます。strengthです。本日はよろしくお願いいたします。こちらは彼氏の中津浦優斗君です。マネージャーには報告済みですが、今後ともに出歩く事も増えるため、スキャンダルにならないようよろしくお願いいたします」

と早口にならないように挨拶する輝奈子さんを見ていた。少し緊張して見えた。俺なら立つことさえできないかもしれない。


「あ、えと、strengthさんとお付き合いさせていただいてる中津浦優斗です。よろしくお願いします」と俺も挨拶をする。マネージャーの桶場アースデイさんが、「そんなに硬くならなくていいよ。strengthさんみたいな人は結構いるからね」と言っていた。


輝奈子は「それはどういう意味でしょうか?」と抗議するけど、マネージャーは「あぁ、いい人だとわかってるから心配すんなって話だ。そんなに怒るなよ」と鷹揚に手を振っていた。


「おう、魔沙斗久しぶり。今は輝奈子だっけ?相変わらずネーミングセンス独特だね」

幼馴染の奏上直正が声をかけてきた。輝奈子は「おう。久しぶり。元気?就職は?」と返す。NAOこと直正さんは「今の稼ぎでも十分な気もするけどなぁ」とこぼす。


「私は働くから、ライブの頻度下がりそうだね。とりま1回休止しとく?」


「まあ、後で考えよう」

「それな」

相変わらず適当な2人である。そんな様子を見ていた俺は不安だった。昔のことを知っているのは直正のほうだろう。でも、輝奈子を愛する気持ちは負けていないと思う。


「ごめんね。優斗。不安にさせたよね。大丈夫。直正とは何もないから」

「えっ?確かに前聞いた気がするけど、さっき聞こえた彼氏ってマジ?」

「うん。先月?付き合い始めた」

直正は「凄いな」と言葉短く驚いていた。


それでも直正さんもすぐ切り替えて、基本的なリハをして、流れを再確認する。相変わらず安定感のあるキーボードだ。バンドするならギターも欲しいけど、知らない人は怖いからなぁ。あ、俺の家にギターあったなぁ。入れないかな。ギターの練習しておこう。いつかチャンスが来た時のために。


さぁ、いよいよライブだ。いざ、行こう。我が人生の新章の始まりだと決意を新たにしてるみたいだけど、ちょっと不安なのか俺に「手握ってくれない?ちょっと緊張してきた」と手を差し出す。俺は「おう。頑張れ」と握り返した。これで緊張がほぐれたならとても嬉しい。


夜桜輝奈子として初めてのライブ。すぐそばで彼女のライブを見る機会なんてなかなかないだろう。


カメラが寄って来て、輝奈子の顔も映る。大きなモニターに映る輝奈子は小さく見えた。緊張で足が震えているようにも見える。今回のタイトルはこれだ。静寂を振り払うような大音声でタイトルコールをする。


「Sing in the Quiet Snow。間もなく開演です」

2019年の『stand up on the cloud』、2021年の『Burn in the darkness』に続く三部作の1つとして位置付けたライブのタイトルだ。毎回タイトルコールは自分でしているらしい。自分の発音が一番かっこいいからと後で聞いた。


『タイトルめっちゃかっこよくて草』

『さすがのstrengthクオリティ』

『英語の発音めっちゃ良くて草』

『この声誰?』

『2021と声違くね?』

『それな』


「Ladies and gentleman. Thank you for coming to our concert. Enjoy our concert.」いつも恒例の英語挨拶と後で聞いたけど、かっこよすぎないか?ウチの彼女。


高まる緊張感の中、輝奈子は全力で叫ぶ。まだ足は震えてるけど寒さのせいだろう。


「イェーイ。みんなー。久しぶりー!!今日寒いよねー!!!」

後で聞くと思いついたのがこれしか無かったらしい。らしくていいよね。何で寒いよねにしたんだろう。昨日盛り上がらないとか話した気がするのにそれでいくのかよ。


「「「イェーイ」」」

あのMCで盛り上がれるのかよ。どんだけだよ。モニターに映る彼女の衣装を見て思った。寒そうと。全体的に薄目だし。スパンコールみたいなキラキラのついたピンクの長袖一枚に雪を思い起こさせる白い長袖、白いタイツにピンクのスカート。いや、可愛いかよ。


「みんなー。今日はライブ来てくれてありがとーーーー」

「「「イェーイ」」」」

寒そうな衣装を着ているがライブの熱気ですぐにあったまっていたらいいな。輝奈子はカラオケでも数曲歌うと「熱い」と言って冬でもエアコンを最低温度まで下げている。


『へんな盛り上がり方で草』

『寒いよねー!!!は草なんよ』

『てか、めっちゃ可愛くね?』

『それな』

『声違くね?』

『配信見てないのか』

『見てない。何があった?』

『女になった、彼氏できた、豚骨ラーメン』

『OKわからん』

『あの顔で豚骨ラーメンキスかぁ』

『そらそうなるわなぁ』


「今日は輝奈子のライブ来てくれてありがとうーーー!!!みんなに報告があります。女の子になって彼氏ができました」


観客席に動揺が走る。もともと喉を開くために童謡を歌うつもりだったらしいので「みんなに動揺が走ったところで童謡のクリスマスソング。お急ぎのサンタクロース」とMCする。元はオク下で歌ってたと聞いたけど、リハの時原曲キーで歌えることを確認して、原キーで歌うことにしたらしい。なんで童謡歌うのだろう。


『初手童謡は草』

『クリスマス終わっとるんよ』

『お正月過ぎにクリスマスソングは草』

聞き入ってくれてるのかコメントが途絶えた。曲が終わるとまた、コメントが見えた。

『あれ?俺らが聞いた曲ってなんだっけ』

『お急ぎのサンタクロースじゃなかった?』

お急ぎのサンタクロースは巷で流行っているクリスマスソングで特に若年層で知らない者はいない子供でも歌いやすい童謡である。


『あれは俺らの知ってる曲だったか?』

『同じ曲のはず』

『アレンジやばすぎで草』

『リンリンリンって言ってた?ウリンリンリンみたいな巻き舌やばかった』

『巻き舌やば杉で草』

『↑花粉飛びそう。やば杉』

『この人がボイトレ動画出したら、俺は歌手止めるかもしれん』

『なんでだよ』

『シャラランランもめっちゃ短くなかった?』

『と言うより強かった』


「てことで、お急ぎのサンタクロースでした。いやー。この時期にサンタさん来たらあわてんぼうなのか遅刻癖があるのかわからなくなるよね」


「そもそも、セトリおかしいから。初手童謡に俺、動揺」とキーボードのNAOがツッコミを入れてきた。「いやー。もともとの俺こんな感じじゃなかった?」と返すと「そうだね。相変わらずのシュラララ発音」と茶化されていた。


「昔の『魚』思い出すわ」

「後ほど披露します」


「そうだったわ。お次は新曲らしいです」


『魚楽しみ』

『名物きちゃー』

『新曲とな?』

『何が来るんや?』


「みんなーー。ハッピーハロウィーン。盛り上がっていこうぜ。ハッピーニュー」


「「「イェーーー」」」


『ハッピーハロウィン別にいらんくね?』

『それな』


そして輝奈子は曲をコールする。「『ハッピーニューイヤー』」と。


「年を越して 腰を痛め 今日も私は生きている~ いまも痛みと喜びを胸に抱いて~いいぇぇ

日々のすばらしさ―ささやかな喜びを噛み締めてゆこう そう、Burning bright


中略


いつもみんなありがとう 今こうして生きてるのも ファンのおかげだから~ いつまでも~あいしてほしい~ ありーがとー」

いや、高ぇよ。どんだけ出るんだよ。のどやるぞ。

『ファンに媚びてて草』

『のっけから歌詞おかしくない?年越して、腰痛めって』


ちなみにファンも盛り上がっている。ちなみにこの曲は小説を考えていたときに3秒で浮かんだものを録音してミックスしたものであり、ベースラインとかキーボードパートは基本的に丸投げしたらしいりちなみにこの曲は意外と難しく、HiFが乱発されてしかも低いところはmid1Eという割と音域の広い曲であるとか聞いた。よくわからないけど、凄かった。やっていることがあほすぎる。


「「「イェーーイ」」」

会場があったまってきた。


「いやー、みんな久しぶりだね。2年分老けた?輝奈子は全く老けてません。性別が変わりました。えー。不名誉なバズり方をした2023年でしたね。豚骨ラーメンとか、親父ギャグとか。もっと衝撃のはずの性別が変わった事より、ラーメンがバズっていたのはわけわからなくて好き」


『豚骨ラーメン、今年残り2か月もなかったのに流行語大賞取ってたもんな』

『トレンドのラーメンとかな』

『わけわからないけど、これがstrengthなんだよな』

『界隈では当たり前』


輝奈子はここでいい感じなのか身バレ覚悟でコールをする。

「豚骨らーーめん」


「「「キス」」」」


いや、会場頭おかしいな。我が彼女だけど。何でこのコールでレスポンスできるんだよ。どんな界隈だよ。


「では、次の曲。スダチ」

『すだち?』

『ガチ徳島で草』


「泡沫の夢幻のような人の世界で 癒す緑の果実 さわやかな風と共に 夢の先へ 儚さって人の夢 寿命は幸せな運命 本当にそうなのかな 今ささやかに生きている この時が かけがえないものになる」


いよいよサビが来る。激しく盛り上がる曲と共に高い場所が来る。HiDを連発する昔は声がかすれたこのサビ。「目に染みる~ まばゆい光 今君の元へ とどけて行くよ 離れてても きっと届く だから諦めないで~いつまでも I'll be by your side」


『この曲知ってる』

『知る人ぞ知る名曲よな』

『strength特集組まれた時に1回だけ流れて、ライブでも2021で披露されただけの幻の歌』

『激熱』


昔に比べてオリジナルソングが増えた。プレミアはあるかわからないけど。


「前半最後の曲行きまーす。『魚』」

この『魚』という歌は魚の名前が歌の中で使われており、リズムがいいことも知られている。お酒替え歌もあるらしい。


『めちゃくちゃ綺麗な声で童謡歌ってるの草なんよ』

『それな。子供喜ぶから、いいんよな』

『第1部を見る人がファミリー多そうだからってことで童謡多めらしい』

『あれ?ラジオで聴いたのと違うな。本音は童謡しかレパートリーがないから童謡を歌ってるって聞いた。2021strengthのストラテジーより』


『それでも、第1部の無料同時配信とアーカイブ残しは嬉しい。子供寝かせるのに使えるから』


『癖強いけど、いいのかなぁ』

『本家のよさと別のよさあるから』

『なんだかなぁ』


アッと言う間に第一部が終わった。5曲しか歌ってないように見えるけど、実際は15曲ぐらい歌っている。のちに再編集されて、CDになるらしい。カバーした歌、童謡多いけどそれでいいのだろうか。


昼ご飯は所謂普通のお弁当だった。俺の分もあった。


「前半お疲れさまでした。後半もお願いします」とスタッフに挨拶する。さて、緊張もほぐれたところでまたもう一度やるか。前半カバーソングにしようとか思ったのに、そこまでカバーソング歌わなかったな。ちなみにラストは往年の名曲『caught in a shower』である。アレンジはそこまで加えないつもりだけど、加わったら知らんらしい。


後半は同時配信はなく、完全にライブ限定になる。後半の1曲目はウルトラ揚げ物のカバーソング『野生の花』を歌う。きっと叩かれるけど。まぁいいやだと。いや「いつもアンタが歌ってるやつじゃねぇか」というツッコミはおいておく。


「久しぶりに歌ってみたよ。どうかな。うまいと言って欲しいけど、リアルも欲しい。悩むけど次行くか」


そうして、次々に演奏していく。ちなみに第2部限定即興ソングの枠もあった。レコード会社にはあらかじめ説明はしてあるらしい。というより、レコード会社から「やれるもんならやってみろや」と挑戦状叩き付けられたからやったと聞いた。これもCDになるらしい。


考えながら適当に歌うやつを?という疑問もあったけど。


あっという間に最終曲の「caught in a shower」を流す時が来た。だから、輝奈子はMCを工夫する。


「Everyone, thank you all for coming to our concert. The next one is the last. みんな盛り上がってくれたよねー」


「「「イェーーーイ」」」


「では、みんな最後の曲盛り上がっていこうぜ―――、『caught in a shower』」


「tonight, I was caught in a shower It's like taking shower It gets stronger yeah」

しっとりとしたAメロから最初のサビが来る。


「I wanna be strong there's no wrong way to live People have various color people use average to limit deference but you're the only one so, don't be afraid oh」

昔歌っていた時と声が違うことに気付いた。昨日聞いたあれよりもかっこよくて惚れた。いつも惚れてるけどな。


楽しかったライブもいよいよラスサビが来る。サビを繰り返しながら最後のOhのところで「oh yeah」の音を階段のように上げる。yeahだけで3段階レソレだけど全部上げている。HiD、HiG、HiHiDという音だと思うと聞いた。このバージョンCDにしてカラオケに入るとしたら男性はキーをどのくらい下げるのだろう。俺には歌える気がしない。


男性の時の感覚なのか、輝奈子が気持ちよく声を出したらとんでもない音域の化け物ができてしまった。あっという間に閉演だ。そして、グッズ販売なんだけど。基本的にキーボードのNAOのグッズばかりだ。2ヶ月ではグッズ間に合わなかったし、忙しくて東京に来れなかったから。


で、グッズが無い悲しいボーカルは物販スタッフとして、紛れることにしたらしい。おい、輝奈子それやっていいかスタッフに聞いたのか?と言いたくなったけど、おいておく。


こっそりついていくと皆口々に「NAOさんのキーボードいいよね」とか「今日の女性可愛かったよね」とか呟いてる。


流石にバレんよな。今、来てるのスタッフTシャツだし。と俺も思ったけど、女の子が駆け寄ってきて、「えっと、strengthさんですよね?写真お願いします」と言われ、撮っていた。ついでに、サインもしていた。


このあと、SNSを見た時に使ってる香水のサイトが止まったとか見て、「嘘だろ?」と俺も驚いた。まさか、匂い嗅がれたなんて。ちなみに、原因は写真撮影した女の子だったらしい。確かに、その子以外気づいてなかったから。


申し訳ないことに彼氏がいるためと説明し、男性ファンとの接触をサイン限定にさせてもらったけど、グッズ販売はするし、握手会もいつかしようと思っていると聞いた俺は少しだけ安心した。


で、片付けをして機材をもとの場所に戻す。腰痛持ちの輝奈子には結構きつい作業だった。特にアンプとかあのへんとかその辺とかが重かったと聞いた。


だから、終わった後の反省会で輝奈子は「えー、本日はお疲れ様でした。皆さんのおかげで無事ライブが行えました。ありがとうございます。で、反省としましてはライブ大成功、腰痛いです。ライブは大盛況のまま終わりました。片付けは大変ですね。準備していただいた方には感謝してもしきれません。ありがとうございました。また、お願いします」と話した。


皆もそれぞれ反省会を述べていた。そこに俺も立ち会っていた。


輝奈子は私服に着替えてから帰ってきた。で、布団で寝転がる。どんだけ疲れてるんだよ。


輝奈子は腰に急激に痛みを感じたのから、「ザッ」と声を出した。俺は「どうした?」と心配した。


「いったい。腰ァアー」

おばあさんだろうか。もともとの腰痛持ちからするとおばあさんでなくとも、腰が痛い日があるらしい。

俺は「お疲れ。休む?風呂は?」と聞いた。

「入る。先入ろうかな。汗流す」

「はいよ。オレも行く」

「うん。一緒に行こ」

手をつないで歩く輝奈子と俺。浴衣も持ってきた。なんか、言葉にすると薄っぺらくなるけど、幸せだなと感じる。


「また、あとでね。出たらロビーにいてくれる?」

「おう。ゆっくり入るだろ?」

「うん。そうだね。ゆっくり入ってくる」


そう言って輝奈子は女湯に向かう。今日も色々あったなぁ。リハして9時から18時までライブして20時まで物販して、ドタバタだった。てか、9時から18時のライブって長いな。今度する時は時間考えろとアドバイスしよう。


彼女はゆっくり入れただろうか。輝奈子が出てきたときに時計をみると21時半だった。いい湯だったなぁと浸りながら輝奈子はロビーに戻り、「お待たせ」と俺に声を掛ける。


俺は「おう」と相変わらず短い返事だ。部屋に戻り、今日の話をする。


「ねぇ、優斗。今日のライブどうだった?傍から観てるだけになったと思うけど、暇じゃなかった?」


「お、おう。暇だったけど、アニキの声いいし、面白かった。知ってる人のライブに行く機会なんてそうそう得られるものでもないしな」


「暇だったのかよ。でも、良かった。最初童謡で始めた時なんか思った?」


「動揺したって言わせたいんだろうけど、アニキ結構童謡歌ってたから違和感ねぇよ。ライブでまでするのかよとは思ったけど」


「それな。いやー。caught in a showerもいい感じに声出たし、気持ち良かったなぁ」


「そうか。暇な時にコメント見てたけど、聞きたい?」


「どんなのがあったの?」

「ライブ最高だったとか上手いかは知らんけどいいよなとか、ライブで映った輝奈子の2次創作とか」

「そ、そうなんだ。照れるなぁ」と本当は照れて熱いだけだけど、ライブの話で、その熱気を思い出して、ちょっと熱くなってきたのか浴衣を外す。

俺が「なんで脱いだ?暑い?」と聞いたら「どちらかというとムラムラ」と下着のままで輝奈子が言う。俺は「マジかよ。体質わかってるだろ?この面積引けるほどタオル持ってないんだけど」と文句を垂れる。


それを聞いて、輝奈子は「ど、どうしようかな。お股の上にタオルひく?」と提案する。俺が「すぐ落ちるだろうよ。あと、腰痛大丈夫なのか?多分エクスカリバーを秘密の花園に入れるなら痛くなりそうだけど」と聞くと輝奈子は「あー。考えてなかった。どうしようかな」と本当に考えていなかったような顔をする。


予想をしていた俺は「ほらな。で、とりあえず寝転がる体勢が楽だと思う。で、うつ伏せで下にタオルがいいと思うけど、どう?」と提案した。輝奈子は「試しみる?多分それがいいよね」と納得している。


「ねぇ、キスしたい。どの体勢でも、結局痛いから」

痛いのかよ。なら無理すんなよと言いたくなったけど口から出たのは「了解。てか、その前に準備体操とかしなくていいの?」という男の欲に負けた言葉だった。


その言葉に「確かに、ムード欲しいよね。で、何からする?」という輝奈子はムードと言うものを知らないのかもしれない。そんなこと思っていると口から「それを聞くことがもう、ムードないよな」と出ていた。


輝奈子は「らしいでしょ。あ、エアコン付いてるね。脱ぐからあったかいほうがいい」とムードのかけらもないことを言っていた。でもそれが輝奈子らしいようにも思えるから「それはそう。温度上げとくか」とムードとは別で実務的に提案する。輝奈子も「うん。お願い」と乗ってきているし、何なのだろう。


俺がエアコンの温度を上げ、輝奈子は毛布に包まりながら俺の唇を奪う。ちなみにベットに2層になるようにタオルを敷いた。なんだこれ。で、輝奈子は今仰向けに寝てるけど、重くないだろうか。男の体重って思ったよりあるから。と言うより俺が多少太っているのもある。


「えっ、早」と俺は戸惑ったが、そんな俺の反応をよそに輝奈子はそのまま舌をいれる。互いの体温が溶け込んでいくように混ざり合う。痛くないだろうか。ライブで物凄く動いた後なのに。俺はただ見ていただけだからそこまで疲れてはいない。


唇を離し、「ぉもい」と声にならない声で俺に訴えかける輝奈子の声を聴いて俺は「どうした?」と怪訝な顔をした。何かあっただろうか。


「重い」

俺の顔から「さー」と血の気が引いた。「ごめんよ」としか言えなかった。かなりショックだった。頑張って痩せよう。声が可愛いから重いと言われたい心もある。どうしよう。 


「体勢変えるか?」と俺が提案すると、輝奈子は「うん。ありがとう」と微笑んで、うつぶせに変わる。タオルは敷いたまま。タオルを敷いておかないとベッドがびしょびしょになるから。彼女の体質は男的には嬉しいが、そのために取る手間を考えるとどうだろう。面倒だが、エロくてかわいいし、ありがたいから、何とも言えない。


俺のエクスカリバーが輝奈子の秘密の花園を貫く。彼女の表情が苦しそうに見えた。輝奈子から全然可愛くない「いっズぅー」とか言うくぐもった声が出たのを聞いて俺は「いける?痛かった?」と腰を止める。輝奈子は苦しそうに「結構痛い。舐めてた」と言っていた。俺は「腰か?」と腰痛を心配するが、輝奈子は「腰もだけど、体を貫かれた感じ」と言っていた。


「あー。和らぐかわからんけど、試していい?」と俺は聞いた。想像がついたのか、「うん」と輝奈子が頷く。俺は輝奈子の秘密の花園に舌を入れる。別に美味しくないと思う。味だけなら酎ハイとかサワーとかの方が美味しいと思う。でも、彼女とソウイウことをしているという満足感が最大のスパイスになった。


輝奈子が「ちょっと和らいだかも」と言ってくれたことが嬉しかった。俺は「そうか。無理しなくていいからな」と彼女を気遣う。だって離れたくないから。「うん。ありがとう」という輝奈子の言葉で俺は、ゆっくりと腰を動かし始める。まだ、ちょっと痛そうだけど、少しだけ痛みとは違いそうな表情も見えた。


別にそんなに大きいわけでもない俺のエクスカリバーだけど、輝奈子にとっては痛い事がわかった。俺のエクスカリバーも多分平均的な範囲だと思う。しっかりゴムはつけているけど、妊娠問題よりも痛そうな彼女を見ることに耐えられなくなりそうだった。


輝奈子の性感は高まって来てると思うけど、輝奈子は俺に「そういえば、童謡ばかり歌ってた気がするけど、反応どうだったのかな?」とライブの話の続きを促す。だから俺は「子供がいる人にはウケてたな。後は一般層も結構喜んでそうだった」と彼女が喜びそうなことを言う。もちろん事実として受けていた。


「そっか。よかった」とホッとしたような表情を浮かべて俺に「きもちいいの?」と聞く。俺は「おう。それなりにな」と言った。本当はそこまでである。だけど彼女が喜んでくれることが物凄くうれしかった。


輝奈子は申し訳なさそうに「ごめんね。動けなくて」と言うけど俺は「ライブで疲れた上に腰痛持ちだろ。お疲れ様」と彼女をねぎらった。本当は動いて欲しい気持ちもあったけど、ライブで疲れた彼女にそこまでは要求できない。


輝奈子は「ありがとう」と嬉しそうだ。彼女の語尾がふわふわしてきた。時計を見てみると23時くらいだった。


お互い初めてでわからない事ばかりだったから物凄く時間がかかった。彼女の中はだいぶ暖かくて包み込まれている気持ちになった。で、動くたびに彼女としたことを思い出し、性感が高まってイッた。彼女も「っくーーー」と高い声を上げて反り返り、ベッドを水で染める。俺のはゴムの中に入ったけど、それでもこれベッドでするもんじゃないわ。今度はやっぱり風呂場でさせよう。


輝奈子はなんとか服を着て、「おやすみ」と呟き、落ちた。結局1回しかしないままに、輝奈子が寝落ちした。盛り上がったこの気持ちどうしろと言うんだよ。なんて思いながら、後片付けをする。まず、輝奈子を別のベッドに移し、タオルをビニール袋に入れる。重たくなったタオルに「輝奈子、お前なぁ」と言いたくなる気持ちを抑えながら。


さて、これ輝奈子の寝相だと絶対浴衣がはだけて寒いだろうから、エアコンの温度を上げておこう。で、輝奈子には暖かい別の方で寝てもらって、俺がこっちで寝るか。これは仕返ししないとなぁ。絶対輝奈子より先に起きて、寝起き配信してやろう。


ちなみにベッドは結構濡れてる感覚があった。眠ってる輝奈子に「お前なぁ、もうちょっと抑えれなかった?」と呟くが、返事はない。それでも、大好きな輝奈子に包まれてる気持ちになって眠りやすくなった気がする。


あ、そういえば、輝奈子って下着つけてなくない?気付いたけど、やめよう。今、あの肌に触れると暴発しそうだから。アイツはホントに天使だけど、物凄く悪魔だ。


一線を越えた男より先に眠ってしまってるから。俺が鬼だったらいくらでもできてしまう。安らかな顔の輝奈子に「もっと警戒してくれよ。俺じゃなきゃ危ないぞ」と呟く。少しだけ輝奈子が動いた。


あぁ、疲れた。輝奈子め、明日覚えてろよ。アニキのかわいいとこ晒してやると心に決めた。俺は安らかな顔の輝奈子を見て「おやすみ」と声をかけ眠る。


おやすみ、今日の俺。

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