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東京行きの準備

「ねぇ、東京来ない?」


そう送ったのはいつの頃だっただろうか。確か、ライブが決まった11月の終わり頃だったと記憶している。その時の優斗の返事は「おう、いいな。行くわ。いつ?」だった。で、「1月の4日」と送ると、「そうか。前泊する?」と来た。その時「ホテル取れそう?ウチはマネージャーが手配してるから何とかなりそうだけど。同じ部屋でよかったらマネージャーに話しとく」と送り、「かまんかろ。一緒の部屋で取ってくれるなら、それは便利」と返って来てマネージャーに話は通しておいた。よく、2か月足らずでライブを決められたものだ。予定自体は10月に入れていたが、変更が沢山あったはずなので、ほんとに決まったのは、つい先日と言えるほどだった。ウチのマネージャー優秀。


で、話は優斗の家で配信をして、寝落ちしたところに戻る。


「起きたか」

優斗の声で目が覚める。「うん。起きたぁ。今日何日?」全部の声に濁点が付いたような寝起き声で言った。腰イッタイ。目覚めた私は腰痛、皆楽しむWETUBE、明後日は楽しみライブとかいうラップを思いついた。


「明後日前ノリで東京のサンクロスワイルドホテルに彼氏さんとの相部屋で2泊3日分取ってます。彼氏さんの分も活動費として入れております。今後カップリング販売も可能かと考えております」とマネージャーから段取りの確認が来た。私は「ありがとうございます。NAOにも見た目の変更伝わってますか?伝わってなければこちらからお伝えするつもりですが」とマネージャーに送る。


マネージャーは「では、幼馴染でもあるstrengthさんから伝えていただけますか?」と来たので、着の身着のままサンタっぽい格好で写真を撮り、幼馴染のNAOこと奏上直正に写真を送る。携帯に夢中になっていた私に優斗は「仕事か?」と聞いてきた。


「そう。明後日東京来るんだよね。ホテル抑えてるって話だいぶ前にしたけど覚えてる?」

「すまん。バタバタしてて忘れかけてた」

「そっか、予定あいてる?」

「なんかあったなぁと思って謎に3日間開けてた」

「よかった」

本当に優斗と同じホテルに泊まるのが楽しみで仕方ない。きっと小説のファンの方からは「あんた、そんなに彼氏の家に泊まっているのに何を楽しみにしてるの?」なんて言われてしまいそうだ。


優斗が「行きたいとことか決まってるのか?」と聞いてくれた。デートコースとか考えてくれるのかなと期待はしているが、そこまでは求めない。気は利くけど、どことなく足りてないのが優斗だ。その足りてないところが可愛いのだ。


だから私は「うーん。昔いたところあたりを回ろうかと思ってた。おいしいラーメン屋とそば屋と大学に行ってた寮かな。私をもっと知ってほしくて」とアピールする。幸いホテルからも割と近い。


「そうか。楽しみにしてる」

「私も。あ、そうだ。きっとそういう展開になるからその時用のゴム、サイズ調べといてね。見栄張らなくていいから。だいたい分かるし」

なんて言ったけど、女性側から言うのってどうなんだろう。なんて思ったけど、今身籠ると結構大変な時期なので、避妊は大事である。男性の方って、たまにそうしてくれて当たり前とか思ってしまうよね。洗濯とか食事とか。もともとは男だったから分かる。


「お、おう」

優斗が戸惑うのはなぜだろう。男ってもっと性欲モンスター的ものではないのだろうか。私の性欲が強かっただけなのかな。


私は「あ、多めによろしくね。あと、いらないタオル数枚持っておいて。私も持っておくけど大変なことになりそうだから」と言って微笑む。また、たくさん出てしまうのだろうか。


優斗は「おい。抑えろよ。って言いたいけど、無理なのわかってるから。タオル持っていくわ」と苦笑いしている。


「ありがとう。観光旅行に近いはずなのにタオルって不思議だよね?」とふと思ったことを口にする。


「そうかもな。でも、ソウイウ事するならアニキの場合必須だろうな。ホテル側に迷惑かけるわけにもいかんかろ」


「そうだね。このエピソード話す?ライブとか生放送的なやつで。最高に私が私してるけど」と悪戯っぽく笑う。


「やめときな。ただ、タオル持ってきた準備のいい女の子的売り方のほうがいいと思う」


「そうだね。万が一が頻繁に起こっているもんね。ソウイウ事する時に」


「分かってるなら抑えろよ」

「無理なのわかってるでしょ?あと、単純に私の性欲が強いからかな。もう少し欲を抑えれたらなぁ。優斗が可愛いから無理なんだよなぁ。枯らしたらごめんね」


「どんだけする気だよ。ライブに影響出ないようにしろよ」


「わかってる」

「絶対腰痛めるからほどほどにしような」

「わかってる。止まれたらね」

「アーティストが腰痛で動けませんはダメだろ」

「わかってる。楽しみだね、東京」

「おう。そうだな」


起きてそんな話をしていたらお腹が空いて来た。私が「お腹空いたね。何食べに行く?」と聞くと優斗は「近くにあるラーメン屋でかまんかろ?」と返してきた。私は「そうだね。博多豚骨美味しいもんね」と返す。


相変わらず豚骨ラーメンを選んだ。全く同じメニューを。2人ともが。


「うまいな」

「そうだね」

こんな些細な会話で笑い合って。


昔東京にいたこともある私は、「昔、博多豚骨より太麺の方が好きだったけど、博多豚骨もいいね。紅生姜も。個人的に好きなのは辛もやし」と優斗に話しかける。ラーメン屋で別のラーメンの話をするのは悪いことだろうか。


「わかる。うまいよな。東京行ったらラーメン食べるのか?」

「もちろん。あそこの煮干し豚骨ラーメンおいしいんだよね。特に黒こってり。太麺としっかり絡むスープ。あと、黒のマー油だっけ?なんかそんな名前のやつもうまかったなぁ」

「がっつり食レポするのかよ」なんて優斗が呆れたような掠れた声でツッコミを入れてくるけど「美味しかったし、他にあんなラーメン知らないもん」と懐かしい気持ちに浸る。


「そうか。東京楽しみだな」

優斗のかすれた声だとそこまで楽しさが伝わってこないけど、私は知っている。彼が本当に楽しみにしてくれていることを。だから「うん。おそばも行くつもりだけど、いいよね?」と聞く。だって私の事をもっと知って欲しいから。


優斗は「おう。まぁ、腹の容量考えろよ」と心配してくれた。私、無理しがちだもんね。だから私は「わかってる。昔と違うもんね。肉体が」と微笑む。幸せだなぁ。

「そうそう」と優斗が返してくる。


で、食べ終わり店を出て公園を歩く。相変わらず同じ光景だが、ライブを控えてると思うと特別に感じる。我ながら、ハチャメチャをしたなぁ。バイトの翌日に前ノリして次の日ライブだもんなぁ。


いや、いつも通りだわ。小説2作をお手玉制作しながら、バイトして、暇な時に曲作って、カラオケ行って、学校行って、彼女作ってサークル掛け持ちしていた、あの時と比べると屁でもない。


詰め込みすぎなんだよなぁ。サークル3つ掛け持ちしてそのうち2つで幹部して、SNSでアピールするために動画作って、資料も作って、プレゼンして、結局実らなかったかったけど、その上でバイト週4日入れていたんだもんなぁ。今もバイトはあるけど。その上彼女と遊んでたもんなぁ。今は彼女じゃないけど。


ハチャメチャすぎる。あぁ、忙しい。ゆっくり休んでいる日はあるのだろうか。相変わらず予定を詰め込みすぎなんだよなぁ。


「どうした?」

「最近忙しかったなぁって、昨日までバイトして1日休んで、明日12時からバイトで明後日東京行って、明明後日ライブ。明明後日のリハが8時始まりのはず。だから7時には起きてないといけない。メイクも向こうでし直すから、しあさっては5時半起きかな。6時半には家出るかも」


「鬼のように忙しいな」という優斗の言葉に「それな」とだけ返す。母上には、ちゃんと彼氏の家に泊まると言ってある。


「ねぇ、1カ月前温泉誘ってくれたじゃん?行く?」と優斗を温泉に誘う。優斗は「おう。寒くないか?」と聞いてくれた。

 

「大丈夫。いこ?」と手をつなぐ。「おう」と繋ぎ返すその手がやっぱり男らしくてかっこいい手だなぁっと思った。個人的には自分の手も大好きだけど。


何キロあるのだろうか。結構な距離を歩いたはずなのに全然距離を感じない。なぜだろう。その答えは簡単なことで「ただ、大好きな人がそばにいて、話しながら歩いてるから」である。


更衣室は別になる。当たり前だ。初めて女湯に入る事に緊張したけど、普通にシャンプーをして、リンスをして、体を洗った。


その後は炭酸泉に入ったり、露天風呂に凍えながら入ったり、サウナも流行ってるから5分ぐらい入って水風呂に入って凍えて、あったかいお湯で温まって体を拭いてドライヤーをして、出る。ここまで何分だろう。待たせちゃったかな。でも、優斗もサウナ入ってるはずだし、いいよね。


物凄く見られてる気がしたけど、気のせいでしょう。女湯を出て、ロビーに行くと優斗がいた。


「おう。輝奈子、温泉良かったな」

「そうだね。気持ちよかった」と何気ない会話をするが、周りから「きなこ?もしかして夢幻桜?」とか「えっ?strength来てるの?」とか聞こえて集中できないし、羞恥心を刺激される。


ちょっと待って。なんで?確かにバズった気もするし、夢幻桜輝奈子として活動してるけど、本名じゃない可能性だってあるじゃん?なんで?おびただしい数のクエスチョンマークが脳内に花畑を形成する。


「あの、夢幻桜輝奈子さんですか?」と勢い込んで聞いてくる女の子にたいして「ええ、まぁ、はい」と返事をした。


「ファンです。サインください」と言って色紙とサインペンを渡された。よく見たら従業員かもしれない。誰かのお祝いしようとして、たまたま持っていたのだろうか。


サインなんて考えてなかったけど、とりあえず何か書かないとと思い、「夢幻桜輝奈子」と漢字で書いて、ニコニコマークを描く。strength用ならちゃんとサインがある。もちろん、英語を筆記体風にするだけだけど。


よく考えたら、なんで夢幻桜読めたんだろう。配信見てるんだなぁ。1週間空いたし、まだ、2回しかしてないはずなのにどうしてバレた?


なんて考えてると、「ありがとうございます」とそれはもう嬉しそうな顔で喜ばれた。だから、私はその子に聞いた、「何きっかけで知ったの?」と。そんなに憧れる部分あるだろうか。


「もちろん。豚骨ラーメンキスですよ。バズってるの見て配信リンクから飛んだら、それはもう面白い人だったから」


なんだろう。これ以上聞きたくない。だから、「そうなんだ。ありがとう」と言って、逃げるように優斗に隠れる。優斗、普通に座ってスマホ見てるし。


「お友達だろ?」と茶化してくる優斗に「違うよ」とツッコミを入れる。


「彼氏さんですか?ファンです。サインください」と優斗にまで迫ってきた。優斗は「お、おう」と言いながら「優斗」とだけ漢字で書いてサインペンを返していた。


「浮気したらダメだからね」と優斗に釘を刺すと、「しないし、できないの知ってるだろ」と返された。そういう人がコロッといってしまうこともあるんだよ。


で、ファンの子は「大丈夫です。これからもお幸せに。私は傍から眺めてるだけで幸せなので、また、ライブの配信楽しみにしてます」とガッツポーズしながら去っていった。


それを見て「嵐のような子だったな」と優斗が呟いた。私も「そうだね」と微笑む。なんだ、この日。


わけがわからないなぁと思いながら、歩いて帰る。手を繋いでいると、こんなに寒い冬でも少し温もりを感じる。その心の底から湧いてくる多幸感に満たされていく。


「優斗は結婚とかどう思ってる?」寒い冬の大きな星空に溶かすように聞いてみた。

「そうだな。実感はわかないけど、一緒にいたい事だけは確かだろうな」と返してきた。だいぶ不器用な答えだなぁ。


「でも、就職県外でしょ?どうするの?うちはしばらくの間は地元で働くつもりだけど」


「俺も地元で就職したかったけど、お金を取って大きい会社にした。配属はまだ分からんからな」


「私も。配属決まるの2月らしいよ。この前会社から連絡来た時に聞いた。うちは徳島県内で仕事するつもりだけど。ライブもするだろうしなぁ。3年ぐらい働いたら社会福祉士取れるの。だからそれ取ろうかなって」


「そうか。ライブあるなら働かなくてもよくない?貯金もあるだろ?」


「それはそうだけど。人間でありたいから。働くつもり。多分離れるね。だから1週間に1回くらいは連絡取ろうよ」


「予定はわからんけど。それもいいな。たまには声聞きたいからな」

「私も」


なんて優斗と色々話しながら帰ってきた。着いてコーヒーを飲みながら、映画を見る。明日バイトだから、早めに帰らないとなぁ。


ちょうど、キスしてるシーンの時に眠たくなってきた。今日もいろいろあったなぁ。おやすみ。




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