腰痛いし、肩痛い
ポキポキ コキ ゴリゴリ バリ
「ぃえアッヅ」
爆速腰痛お嬢様。プラス肩。肩が硬いわけではないが肩が固まっている。睡眠過多のせいかしら。肩が、かったい気がする。かといって、硬い肩を買ったわけではないが。
男だった時に肩が重いことがデフォルトになると、肩が軽いときにねじが緩んだ感覚になることを知った。あれ?肩重いの何で?神様裏切った?違うのかな?昨日の夢は間違ってなかった。昨日神様が出てきて、「あなたらしさを神業界で協議した結果、腰痛と肩の痛み、首のコリは置いておくことになった」と言っていたのだ。もしかして血圧も元に戻っていたりするのかしら。最近体に悪いもの食べている気もするし、今日は作ろうかな。
「どうした」
「急速に肩が痛いし腰も痛い。重量は変わっていないはず。もしかして、昨日寝た時、体を上から見たら小文字のDに見えるような寝方をしてた?」
「知らん。でも、してたとしたら、痛いはずだわ。てか、起きて横見たら毛布にくるまってはいたけど、枕が変なとこにあったわ」
「え?ほうなん?」
「いや、今も変なとこにあるし。てか、もともとは上向きで寝てなかった?」
「私もそのつもり」
「じゃあ何で足が俺の腹の上にあるのだろうか」
「にゃーーーーーー!!」
私は叫んだ。知らぬ間に90度回転してたらしい。なんで?
優斗は「急にでかい声出すなよ。声の高さと大きさを忘れるな」とくぎを刺してくる。そんなにうるさくないはず。私は気になったので「でも、せいぜいマイク持った時に救急車を超えるぐらいじゃない?120デシベルぐらい」と聞いて見た。優斗は「救急車が120デシベルだというのはいいとして、普段のアニキの声が3分の2救急車ぐらいでマイク持つと1.5救急車」と言ってきた。出過ぎでは?
ちなみに、まだ2人とも布団の中だった。女に染まった私の感性が「メイクもしてない顔を見せてしまってよかったのか」と問いかけてくるが、そんなもん知らん。
昨日したことを思い出して、今布団の中で虫のように蠢いている私。この感情の名前を私は知らない。人呼んで黒歴史と呼ばれるものではあろうが、したかったことではあるので後悔はしていない。船には乗っていないけど、飛行船に乗ったような感じかもしれない。いや、それ航海や、言うて。あかん、今日のテンション、バグり散らかしてる。
そんな私を見て優斗は「何か、あった?」と問いかけてくる。私は「いや、なんもないけど。昨日の事思い出しただけ。でも、マジで昨日のは光の三原色と色の三原色みたいな受け止め方によって白歴史にも黒歴史にもなるなぁ。みたいな」と答える。
風呂の後のことは思い出したくない。ずっとペタッとくっついて「大好き」を連呼しながらキスをねだり、半線を越えた。一線は超えてない。某芸人がオフホワイトという言い訳をしていたように思うが、私の場合、オフホワイトパールメタリックオリジナルインパーフェクトみたいな感じだろうか。限りなく白に近いパール系の色でメタリックに輝いてる原初の不完全な感じの白。
楽しくて心躍り、肉体も楽しんでいた気はするけれども、「昨夜はお楽しみでしたね」みたいな感じのことはしていないと思いたい。
「のか?」
さっき考えていたことに悶えていたら優斗の声を聞き逃してしまった。
「ごめん。聞こえてなかった。なんて?」と聞き返すと「昨日のことは楽しくなかったのか?」なんて心配そうな顔で言ってくる。ずるいよ。だからお返しにとびっきり深刻な面持ちで「そんなわけないじゃない。楽しかったよ。でも優斗を傷つけてないか心配で」と言い返す。
「そんな心配はいらん。俺も楽しかった。これからも、どうぞよろしく」
「こちらこそ。楽しい夜をありがとう。不束者ですが、これからも末永くよろしくお願いします」
そのあと私の発言が面白かったのか優斗と2人で大笑いした。
さて、朝ごはんを食べようと起き上がる。
「にゃーーーー」と朝叫んだおかげで、目が覚めている。きっと横の部屋まで貫通してしまっただろう。後で、優斗に謝っておこう。なぜ、「きゃー」じゃなくて「にゃー」だったのだろう。
で、起き上がったけど何しよう。少しだけ昨日の話を優斗に振ろう。
「昨日風呂の後、どうなったっけ?」
「お、おう。起きたか。大好きと言いながらキスしまくったのは覚えてるんだろ?」
「うん。でも、その後記憶がない」
「そうか。キスの後、抱きついてきて服の上から俺の股間をいじってた。で、……」
優斗の言葉を聞いてまた、「にゃーーーー」と叫ぶ。記憶を飛ばしたい。あ、でも、あの感触は覚えておきたい。「サーー」とでも叫べば記憶をちょうどよく飛ばせるだろうか。
「声でけぇよ。どうした?」優斗がきいてきた。私は「いい感じに記憶を飛ばしたい。夜のルーティン朝にしてやろうかしら」と返す。
「するなら、風呂場だろうな」
「やっていいの?」
「疲れないなら」
で、優斗の許諾を得てやってみた。相変わらず、すごい量と勢いだった。服脱いでおいてよかった。
ゴーーン ガタ
「いっツ、うー」
勢いが付きすぎて、後ろにあるタオルかけで頭を打った。声で誤解されそうだが、快感の後である。快感のときは無音だったはずだが、頭を打って、「いっツ、うー」と言う声が出てしまった。
その場面を見てたわけではないだろうが、優斗は「すごい音したけど、大丈夫か?」と聞いてきた。私は「大丈夫。ちょっと後頭部強打しただけ」と返す。
これ、いつか本番するとしたら何をしておけばいいのだろう。というより、どこでするのだろう。
多くの場合ベッドだけど、こんな量出るのにベッドでするとベッドがベッドベドになる。出る理由はなんとなくわかる。物凄く水分を取るからだ。だって喉渇くんだもん。風呂場に毎回来てやるのってどうなのだろう。
「でぃアっ、ツー」
昨日より腰の角度間違えたかもしれない。結構痛い。
「どうした?」と優斗が問いかけてくる。
「肩と腰痛いから揉んで。今日やり方間違ったかも知れない。結構痛いから揉んで」
「いいのか?痛かったら言えよ」
そう言って肩と腰を揉んでくれる。結構気持ちいい。ちょっと痛いけど。
「にゃん、ふにゅん」
気持ち良すぎて変な声が出てしまう。優斗は「痛いのか?」と聞いてきたけど、「痛くないよ。気持ち良すぎて、へんな声出てるだけ」と答える。
優斗は握力が50㎏あるらしい。ちょうど私の握力の2倍だし、私の体重より重い。私、貧弱かもしれない。胸は貧弱じゃないけど。ちなみに、地声を少しいじると自動音声みたいな音声になる。もっと、有名なキャラクターのものまねをしたいと何度優斗に愚痴った事か。
にしても、この大きさでも肩って凝るんだねぇ。どうやら思っていたことが口に出ていたようで優斗に「アニキ昔から肩痛いって言ってなかった?」と言われた。私は心の中、最大音量で「それな!!」と言いながらその心の声を漏らしていた。
ああ、気持ちいい。ゆっくりお風呂に浸かりたい気もするけど、まだ10時だ。朝から盛ってる変態だと思われたかもしれない。どうしよう。なんて思うけど、たぶん大丈夫。だって優斗だし。
そんなこと言ったら優斗は怒るだろうか。優斗がキレるのをみたことがない。昨日のツッコミはすごかったけど。昨日何があったかって?
風呂入ったあとにイルミネーション見に行こうと提案したら、「風呂また入るのか?しかも寒かろ」とツッコミを入れられた。
ボケーっとしてるように見えたのか優斗が「どうした?」と声をかけてくる。私は「昨日の記憶ふわふわ」と返す。
優斗は「風呂の後キスしたのは覚えてるんだろうけど。その後イルミネーション見に行こうとか言い出して、俺がツッコミ入れたのまでは覚えてる?」と聞いてきた。
「うん。覚えてる。で、なんか見たよね?」
「そう。洋画の色っぽいシーンがあったのは覚えてない?」
「あー、あった気がする。まさか、なんかした?」
「えーっと、まぁ、ソレだ。服脱いで抱きついてきた」
「えっ?その後なんかあったの?」
微妙な表情をしながら優斗が「あー。洋画のマネしたいとか言い出して、色々した」と語った。
なんとなく思い出して来て頭を抱える。
「ぐはっ。ヴァーーーー」
私はダメージを受けた。確か、洋画を見てムラムラしたのは覚えてる。で、その後「飴みたいだよね」とか言う意味不明な事を言って璧付きの聖剣を舐めた気がする。
コレは確かに言えん。こんなこと考えてる時に横で優斗は「俺の聖剣舐めてた」とか言ってたし。どうしよう。思い出したらムラムラ止まらないし、スッキリしたいけど、量が量でなぁ。
「ねぇ、スッキリしたいんだけど。それしていいと思う?まだ、昼前だけど」なんて私が言うと優斗は「朝やってまだ足りてないの?」と聞いてくる。
「昨日したこと思いだして、ムラムラしてきた」
「アニキって男のとき、どんだけしてたの?」
「朝晩毎日、たまに晩2回」
「やりすぎじゃない?よく1ヶ月も我慢できたね」
「病気怖かったし、どんだけ出るかわからないから怖くてやめてた」
「で、あんだけ出るわけだけど、ノドは渇かないの?」
「のども渇くよ。でも、今日めっちゃムラムラする。抱き締めて」
「おう」
そう言って優斗は私を強く抱き締める。コレ中身だけならセリヌンティウスとメロスだな。激怒しなかったし、身代わりにもしてないけど。
あの時代だったらさすがにないと思うけど、現代だとセリ×メロかメロ×セリの二次創作がありそうだよね。そんなこと妄想してたら、妄想が口に出てしまっていたらしい。優斗から「あるかもしれんけど、ほかのやつに言わんほうがいいと思うぞ」と言われてしまった。
私は「そうだね。でも優斗だから出せるんだよ」と言って微笑み返す。まだ、「ずるいなぁ、その笑顔」と思ってくれているのだろうか。ちなみに、個人的な推しは持明院蔵の浅井長政像と長興寺蔵の織田信長像のカップリングだ。もちろん長政とお市のカップリングも好きである。
男だった時に戦国時代のカップリングについて語り合おうとしたことがあるほど、歴史オタクだ。今だと歴腐女子だね。弁慶と義経のカップリングもいいと思う。歴史を冒涜したいわけではないが、不確実なことがあるからこその妄想も歴史のロマンの1つだと思うのだ。
血圧高くなってたら嫌だなぁ。でも、合法的に優斗の好きなナスを頑張って食べる理由にもなるからいいなと考えよう。ということで私は「お昼、一緒に作らない?マーボー豆腐&ナスとか」と優斗に提案する。優斗は「お、おう。一緒に作ってくれるのか?」と言った。それは驚きと得意料理を覚えていてくれたんだという喜びを含んだものにも見えた。
私は「うん。もちろん」と答える。優斗は「輝奈子ってナス苦手じゃなかったか?」と聞いて来る。苦手な食べ物知ってくれているのはとてもありがたい。でも、私は決めたのだ。頑張ってナスを食べれるようになって、優斗と同じ感想を抱けるようになろうと。
だから、私は答える。「苦手だけど。頑張ろうかなって。個人的に麻婆豆腐は豆板醤多めが好き。大匙3ぐらい入れてみない?」と。
優斗は「良いな。俺、デカめのナスが好きなんだけど頑張れそうか?無理しなくてもいいが」と言ってくれた。
私は「少しなら食べれる。頑張る」と答える。我ながら健気な女の子だなぁ。そういった直後にはナスが投入され、あっという間に麻婆豆腐と麻婆ナスの合せ技みたいなものができた。
お料理できる男の子ってなんでこんなにかっこいいのだろう。いや、私もできたけどね。煮立てるがわからなくて水を入れたりとかめんどくなって豆腐を握りつぶしたりしてた時期はたしかにあったけど。
カレーに玉ねぎしか入れない暴挙とかキャベツだけしか具材のないお好み焼きとか作ったけど。今なら豆腐の水抜きもできるし、麻婆豆腐なら最初から作れる。便利な素なんて使わなくても。チューブの調味料さえあれば。
今日も味付けはほぼ私だ。でも、ナスの挙動というか味付けが足りてるかはわからない。優斗はやはりイケメンだと思う。だって、力あるし、料理できるし、浮気もしない。こんないい人他にいないと思う。昔の俺以外。
でも、今の私はかなり良いおなごだと思う。今日もキッチンペーパーに豆腐を包んでレンジで3分してる間に洗い物したり、ひき肉を炒めたり、生姜とニンニクをチューブで入れて混ぜたりしていた。ちなみに、豆腐を水抜きすると、木綿は絹っぽく、絹は木綿ぽくなる。
で、作り終わったので、麻婆豆腐を食べてみる。
「美味しいね」と私が微笑むと、優斗は「そうだな。でも、それ、豆腐だからな。ナス食べないの?」と聞いてくる。
私は「食べるよ。でも、まだ、決心つかないから、あーんでお願い」と無茶振りする。優斗は「ほれ、口開けろ。あーん」とナスを押し込んでくる。
結論食べれたけど、美味かったかというと微妙である。もとが嫌いなものの味だから。でも、優斗に、あーんしてもらったら食べれる感じだった。
私は「うん。まだ、なれないけど、あと何個か頑張ってみようかな」と言って口を開く。
優斗は「えっ?これ、まだやるの?」と聞いてきた。私は「もちろん」と言いながら口を開けている。優斗は「ほれよ」と言いながらナスを入れてくる。
さっきより美味しいかも。私は「うん。さっきより美味しい。優斗が、あーんしてくれたら頑張れる感じだった」と言って微笑む。ナスって後味がイガイガしてちょっと苦手なんだけど、麻婆ソースで押し込んだ。
「毎回これやるの?」と呆れてる優斗がいた。私は「だって一人では食べれる気がしないもん。優斗がいるから頑張れるんだもん」と言っておく。優斗は少しだけ、ため息を吐きながら、やれやれといった様子で「そうか」とだけ発し、ご飯を食べる。ちなみにコメも私が頑張って炊いた。
水が冷たくて冷凍されてる気持ちになった。「冷凍令嬢だわ」なんて、思ってると口に出てたようで「めっちゃ冷たそう。絶対属性氷か水だな」と言われた。
「それな」と声に出したら思ったより声が出た。優斗が耳を塞ぎながら「うるせぇよ」と言ってくる。やっぱり私は救急車かもしれない。
お昼を食べると急速に眠たくなってきた。今日ヒドイな。何もしてない。いや、ナニはしたし、料理もしたし何もしてないわけではないか。これからお昼寝するしな。
私が自分の分の食器を片付けようとすると「俺がするぞ。疲れてるなら、昼寝したら?」と悪魔の囁きをくれる。
私も眠たくなったので、言葉に甘えて寝る。すぐに全身の力が抜けた。起きると6時ぐらいだった。私は4時間も寝ていたことになる。
「やっと起きたか、眠り姫」と茶化された。チャカを持って脅されたわけではない。
「おはよう。麻婆豆腐残ってたよね?なんか持ち帰りで中華買って帰らない?」と提案する私の声はふわふわだった。
「おう。いいな。飯も残ってるぞ」
「そっか、なら餃子とか良いかもね」
「そうだな」
そう言って、外に出ようとする優斗。私は「待って」と言いながら、急いで靴を履く。財布と携帯持ったし良いよね。
「ねぇ、帰りか行きでイルミネーション見ない?」と提案する私。優斗は「男二人で見て何が楽しいんだ?」と意味ありげに言葉を止めたあと「って去年言ったの覚えてるか?」と聞いてきた。
私は「もちろんだよ。私は楽しかったんだけどね」と意味ありげに止めて、「あの頃から、私は優斗が好きだった。気持ち悪いのかな?」と聞く。
優斗は「俺は男を好きになる気持ちはわからん。恋愛対象女子だったしな。けど、輝奈子さんはずっと好きだぞ。アニキも友達って意味では好きだっただろうな」と言いながら、自然に手を繋いで歩いてくれる。私はその半歩後ろを追いかける。私のほうが年上なのに。
イルミネーションの中で、私は優斗にキスをした。こんなシチュエーション良いよねと昔語ったことを思い出した。まさか、自分が主人公になるなんて思っていなかった。
「夜桜輝奈子さん。これからもよろしくな」
優斗ズルいよ。なら、私はこう返そう。
「よろしくね。照り輝く星の王子様」と。
優斗は「おう。闇夜に輝く桜さん」と言い、唇を重ねる。照り輝くイルミネーションに、2つの影が重なる。
その後、餃子を買って帰ったが、お互いに小っ恥ずかしくて、しばらく目が合わなかった。お風呂もいつも通り一緒に入ったし、ベタあましすぎた。
闇夜に輝く桜のように、白い雪が舞い落ちた。