クリスマス会
静寂に満たされた、純白のファンタジア。白く染まるのは雪だけではなかった。私の息吹さえも真っ白に染めてゆく。地球温暖化なんて言っているが、今日の地球は温暖か?否、寒冷である。細川でも斯波でもないけど。いや、それ室町幕府の管領や、なんてね。ちなみに斯波・細川・畠山で三管領と呼ばれている。
寒くなるのを見越してマフラーを買っておいてよかった。別にエキゾーストが何とかとは言わないけど。そっちじゃないし。防寒具だ。実は、私は今日、マフラーを2つ持ってきている。1つは赤色のリボンが付いたグレーのマフラー、もう1つは青のリボンが付いたグレーのマフラー。そう、ペアルックなの。
で、本日のコーデのポイントは、なんといっても、いつもと違うリップの色だ。いつもはノーメイクだけど、今日はピンク色の光沢のあるリップを塗っている。男性諸君からするとリップクリームの方がなじみがありそうだ。ちなみに、新発売のジャスミン茶の香りのハンドクリームをつけて、もちろん、この前買ったジャスミン茶の香りの香水も付けている。さらに、土曜日に買ったライトブラウンのブーツと、膝から下には茶系のファー、ダークブラウンのアウターと鮮やかな緑色のタートルネック、そして、クリスマスらしい赤色のスカートに黒いタイツ。いわゆる、『クリスマスデートの勝負服』の定番を私なりにアレンジして使っている。
昨日は「明日、大学で集まって優斗の家行こうよ。せっかくクリスマスシーズンだし」と優斗にTXTをして、優斗から「おう」と返ってきた。今日、優斗にこの姿を見せられると思うと、体が夏になりそうで過激で最高の冬になりそうな予感がしてる。
大学に入ると、反対側から9号館に向けて歩く、優斗を見つけて「優斗、おはよう。今日も寒いね」と声を掛ける。「おう。そうだな」と単純に返してくる優斗に対して、「気付きなさいよ、バカ」と言いたくなる気持ちもある。だから私は「なんか気付くことない?」と詰め寄る。
「普段と違う服着てるとか?」その回答に我が意を得たりとばかりに「そう。気付いてるなら言ってよね。ばか」と呟く。
「きれいだったから。なんか、こう。神様を見た気分になって言葉が出んかった。ごめん」
「そっか。ありがとう。がんばってよかった。ちなみに、普段ノーメイクなんだけど、今日は化粧下地から頑張って化粧に2時間ぐらいかかった。久しぶりで、やり方に戸惑ったし、非力すぎて口紅空けれるまでも10分ぐらいかかった」
「口紅もなんか違うとは思ってたけど自信なくて言えんかった」
「言い訳かな?」
「そうかも」
そんなやり取りをしながら手を繋いで講義に向かう。教室について早々私は今日思いついた親父ギャグの話を優斗に振る。
「今日思いついたんだけどさ、地球温暖化なんて言っているが、今日の地球は温暖か?否、寒冷である。細川でも斯波でもないけど。いや、それ室町幕府の管領や、なんてね」
「口が回るし、絶好調かよ」
「そうだね」
なんて話していたら、講義室中に聞こえてたみたいで、「親父ギャグ美少女」という渾名が出来上がってしまった。
「ちょっと離れるね。咲と話そうかなって。優斗も話して来たら?私とだけいるのも疲れるでしょ?」
「そんなことはないけど。いってらっしゃい」
「言ってくるね。講義までには戻るから」
「おう」
優斗と離れ、私は「おはよう」と咲に声を掛ける。
「おはよう。ジャスミンの香水使いゆうが?」
「使いようよ。あと、最近出たハンドクリームも使ってる」
「ええ、最新の流行把握ちゅうが!?彼氏さんとなんかするが?」
「今日お泊りしてクリスマスパーティーするんよ。実は今日つけてるマフラーもペアルックになるようにしてる」
「いいね。めっちゃにおうちゅう」
「まじで?さっき彼氏に見せたけど似合ってるなんて言われんかった。神様を見た気分になったとか言われた」
「褒め言葉じゃない?似合ってると直接は言ってないけど」
「確かに最上級の褒めでは?」
「やと思うで。におうてなかったら、そんな事言わんき」
「じゃあ、優斗のところ戻るね。また、なんかあったら報告するね」
「お幸せに」
優斗はちょうど東畑と話していた。私は話に耳を傾けながら、優斗の後ろに隠れる。ちょうど優斗が「本当にうちの彼女可愛い」というところに出くわしてしまった。照れくさい。
「そうか。幸せそうでよかった。うちはけんかもするからなぁ。この前も少しズレてたのかもしれん」
「それは大変やな。でも、東畑も悪くないと思うよ。なんとも言い難いけど」
「そっちはいいよな。めちゃくちゃ可愛い彼女おるやろ?」
「可愛いのは否定しないけど、恐ろしい悪女だよ」
「どういうこと?」
「うちの彼女、1回ウチで倒れて、寝顔を何時間も晒して来るし、無防備な姿晒して来るし、風呂も一緒に入ったことがある。何の生殺しだよ」
「ノロケかよ。そんなに甘えてくれる彼女いねぇだろうよ。空想かな?」
出る幕がなくなってどうしようと悩んでたときに来たこの質問に私は「空想じゃないよ。めっちゃ優しかった。額にあったかいもの乗せてくれたこともあったし、白いものも食べたしね」と返す。
「うわ。いたのかよ」
「いたよ」
なんて会話をしてると東畑が「額に乗せたあったかいものと食べた白いものって何?」と言ってきたので、「想像に任せるわ。白いものはめっちゃ自然な味だった」と返す。この私の発言に東畑は「中津浦ってとんでもないド変態だな。うわ」と反応し、優斗は「誤解を招く言い方やめろよ」と返してくる。
「ほんとは倒れた時に優斗が額にあったかいタオルを乗せてくれて、自家製のマヨネーズ食べただけだよ。泡立ってたし、色が怪しかったけど、健全な奴だよ」
「ぅおい。また誤解招く言い方。ソレじゃないからな。勘違いすんなよ。ソレじゃないからな」
この会話を聞いていた東畑は「夫婦漫才お疲れ様。お似合いだわ。最初は高嶺の花かと思ったけど地平線の薔薇みたいだわ」と返してくる。
「どういうこと?」と私が聞くと東畑は「高さは低いけど、めちゃくちゃレアな花ってこと」と答えた。
そんな話をしているとアッと言う間に授業が始まって終わった。やっとお泊りできる時間が来た。バーティの始まりだ。
「ね、帰ろ?」
そう言って上目遣いで優斗を眺めながら手を繋ぐ。やっぱり優斗の手はあったかい。どうしよう。3週間以上我慢してきた物があふれ出してしまいそうだ。毎日していたものを約1か月も我慢しているんだもん。
優斗は「な。魔性の女だろ?」と東畑に話を振る。東畑は「確かに。これは魔性の女かもな。振り回されて大変だろ?」と返していた。優斗は「確かに大変だけど、めちゃくちゃいい景色が見えた」と返す。私は気になってしまったので「そのめちゃくちゃいい景色について詳しく」と想像がつくのに聞いてしまった。優斗は暫く黙った後、「アニキには想像つくだろ?それ今説明させるつもりか?」と膨れている。東畑は「何それ?詳しく」と興味津々と言った様子で優斗に詰め寄る。
2人の圧に押された優斗は「それは輝奈子さんの寝顔とか、風呂の時のきれいな肌とか、色々」と照れ臭かったのか、語尾がだんだんと弱くなりながら、頬を赤く染めている。私も見られたことを思い出して、頬を紅潮させる。「校長先生、頬を紅潮させ、絶好調」なんて親父ギャグを思いついてしまった。
どうしよう。ウチの彼氏が可愛すぎる。めちゃくちゃかわいいので、ご褒美として優斗の頬にキスをする。少しだけ背伸びをしながら。
「ちょっ、アニキ。いきなりキスすんなよ。びっくりするだろ」
「だってメチャクチャ可愛かったんだもん。優斗が悪いんだからね」
この様子を見た東畑は「相変わらずのバカップルだな」と冷やかしてくる。優斗は心外だとでもいうように「どちらかと言うとアニキがべたべたしているだけのはず」と東畑に返す。東畑は「どっちも変わらないと思うよ」と優斗に返している。私は横で眺めながら優斗の手から伝わる体温や握力を噛み締めていた。
私、まだ輝奈子って呼ばれていない気がする。呼び捨てでもいいのにな。まだ、家内と呼ばれるほどにはなっていないけど。優斗はどう思っているのだろう。1回告白してくれたけど、あの時のまま同じ気持ちでいてくれているのだろうか。どうしよう。不安になってきた。
長い間、私が黙っていたからか、優斗は「顔暗いけど、どうした?」と聞いて来た。「どうした?」って聞かれても、「不安だから抱きしめて」とか「あなたの嫁になりたい」なんて言えやしない。今日も女の子の日なのだろうか。念のため持っているけど、頭痛もないし、兆候は見られない。睡眠不足だろうか。
寒い。なんか話しにくい。結婚問題は片付いたけど、いまだに私のプライベートにズケズケと入り込んでくる両親に辟易している。優斗はかなり心配そうな面持ちで「大丈夫か?」と聞いて来る。「大丈夫」と何とか答えたけど、上手く力が入らない。視界が揺らぐ。眼精疲労かな。もし、この美少女になった3週間が夢だったらどうしよう。
優斗の家の布団で寝かされていた。何があったのだろう。睡眠過多なのか重い体で「私、どうなったの?」と聞く。優斗は「体見たら、わかるだろ?男に戻ってるんだよ」という。私は「いやーーー」と絶叫する。気付くと本当に優斗の家だった。どういうことだろう。夢かな。そう思って股を触る。最近と同じように何もなかったし、上も重かった。
「物凄くうなされてたぞ。大丈夫か?」
心配してくれるなんてやっぱり優斗は優しい人だな。ちょっと声が暗くなっちゃったけど、「うん。大丈夫。あ、そうだ。プレゼントがあるの。これ」と言って、私は土曜日に買ったマフラーが入った箱を手渡す。
「開けていいか?」
「うん。開けてみて」
どんな反応をしてくれるのだろう。めちゃくちゃ胸が高鳴ってしまう。
「お、マフラーか。あったかそうでいいな」
凄くシンプルな反応だったけど、きっと喜んでくれているのだろう。その反応に嬉しくなって、「ありがとう。喜んでくれてうれしいよ。私にもプレゼントお願いしていいかな」と、世界の頂点みたいな気分になりながら言う。別に世界を見下ろしたりはしないけど。でもこの感情を説明できるのは最近見つけた優斗がそばにいることだろう。
そんな事を考えてると優斗が「おう。どうした?」と聞いてくる。
「私、この体になってから、男の子もよくする、夜のルーティーンしてなくて物凄くムラムラするの。でも、家だと、いつ親が入ってくるかわからなくてできないし、大人のビデオ、検索したこともあったけど、あのレベルで出てしまったらどうしようとか怖くて。本当にっ!申し訳ないし、頼みにくいんだけど。風呂場借りていい?」
「それはつらいよな。なんかできることあるか?」
少しでも力になってくれようとしている優斗に物凄く申し訳なくなってしまう。それでも、「下手したら意識飛ぶかもしれないから、そばに待機してて欲しい。なんか、見ててって頼むの本当は恥ずかしいんだけど、どれぐらい飛ぶか、とか一瞬だけど意識が残るかどうかとかわからないから。優斗にしか頼めないの。本当にっ!ごめん」と頼むことにする。辛いから。
「お、おう。そんなに悩むなら、やってみたらいいと思う。けど服濡れないようにした方がいいかも」
「そうだね。優斗なら見られても、そこまで恥ずかしくないし」
そう言って私は服を脱ぐ。やってみた結果めっちゃ飛んだらしい。ペットボトルロケットみたいな動きしてたとか聞いた。とりあえず、全力で謝った。私は自分を見誤ったのかもしれない。
「ごめん。本当にっ‼ごめん。申し訳ありませんでした。服濡れないようにアドバイスありがとうございました」
「俺が「たまやーー」って言ったの知ってるか?」
「知らん。ほんなこといよったん?」
「見事だった。あれは見たことないレベル」
「めっちゃ気持ちよかった」
私はスッキリとした顔で言い切った。優斗は戸惑いながらも「お、おう。それはよかった。まぁ、そのおかげと言うか、せいと言うか、なんというかで、タオルとか風呂場が大変なことになってるんだけど」とクレームを入れてくる。英語の主張って方で。
「そうだよね。ごめん。ごめんでは足りんけどごめん」
「まぁ、良いもん見れたしな。良いんだけど。確かにコレは家でやったらヤバいね。あの水圧と声量と声質とな」
「私だけ見せるのも不公平だから、あなたもスッキリしておいたら?」
「鬼、悪魔。悪女め。人前でさせるという鬼畜の所業。しかも、アニキとするわけではなく、1人でしてるのを見せるだけなんでしょ?」
「そうだね。まだ、ダメ。万が一があった時に影響出ちゃうから」
「そうか。俺も覚悟を決めなきゃいけないんだな。輝奈子さんの期待に応えられるように頑張るよ」
「初めて名前で呼んでくれたね」
「かもな」
性欲がスッキリしたけど、優斗も一緒にお風呂入って見せてくれないかな。見たい。元は同じ男の子だったけど、それぞれ違ったやり方があるから。
「せっかくだし、一緒にお風呂入ろうよ。あ、でも、お風呂溜まってないね。どうしよう。抱き合いたい」
「なら、一度着替えて、風呂ためる間に飯食べに行こうぜ。近くのラーメン屋でいいか?」
「うん。そうしよう」
私はそう返事してただアニメを見たりゲームをしながら待っている。できることがあれば良いな。やっぱり優斗の全てを見てみたい。風呂を洗っている優斗もかっこよかった。
寒くなった外を歩き、ラーメン屋で温かいラーメンを食べながら、「そういえば、私どうやって優斗の家に来たの?」と聞く。
「急に倒れたのは覚えてるか?」
「うん。なんか力抜けて倒れた気はする。そっからどうなったの?」
「俺が運んだ。東畑も一緒に来ていた。家ついたらすぐに用事で帰ったけど。お礼言っとけよ。アイツも心配してた」
「ごめんね。重かったでしょ?」
「輝奈子さんより重たいものは世界に何万個もあると思うぞ。俺が持った中でも軽い部類」
「えっ?色んな人を持ったことがあるの?」
「バーベルと妹と、薪だな」
「なんか複雑。妹さんをなんで持ったか気になるし、私、そんなに軽いの?」
「軽いぞ。何食ったらそんなに軽くなるんだ?」
「最近食べる量減ったの。あと、運動」
「なるほどな。確かにいつもはラーメン、大にしてたもんな」
「ホワイトニアクリスマスに豚骨ラーメン食べてるの面白いよね。クリスマスも近くて、雪も積もっているのに。ロマンチックとは違う気がする」
「豚骨ラーメン食った後にディープキスしたやつがロマンチックを語るのか?」
私は「ぇあー」みたいな声を出しながら頭を抱える。ラブストーリーとして面白くなりそうと思ってしたけど、若干黒歴史だ。後悔はしていない。公開はしてるのかな。
「出たな。イルカ」と優斗が茶化してくる。
「あれ、私も顔真っ赤になる黒歴史、いや、でもうれしかったから白歴史な気もするし、光の三原色歴史みたいなところある。一歩間違えば黒くなる白みたいな」
受け止め方次第で、どのようにも考えられるから、黒でありつつ白である可能性も起こり得るのである。
「出た。アニキ特有の表現」
「え?通じない?」
「通じるとは思うけど、あんまりその表現聞いたことがない」
「マジで?」
「マジで」
「そっか。そろそろお風呂たまるかな?」
「そうだな。そろそろ帰るか」
「うん」
こう言って店を出る。外は漆黒と純白のコントラストに満たされている。私が右手を出すと優斗が自然と左手を繋いでくる。今まではそんなに自然ではなかったけど、最近はこうしてくれることもある。でも、やっぱり少しだけ痛い(物理)。それでも、愛の強さが握りしめる手の強さになっているのなら、私はとても愛されているのだろう。
「ねぇ、チューしよ」
私から投げかける。優斗は「熱中症?」と返してくる。絶対わかってて言ってるよね。コレはやり返さなきゃ。
「まぁ、優斗との恋愛は熱中症になりそうなほどアツアツとか言われたことあるけど。豚骨ラーメンキスリターンズしようよ」
「ネーミングださ。しかも、またラーメン食った後にキスするのかよ。選べよ。また、ラーメンだよ。今までのキス覚えてるか?」
「覚えてるよ。豚骨ラーメン、うどん、アイス、で、今回の豚骨ラーメン」
「もし今豚骨ラーメンの後のキスをした場合75%のキスがしょっぱい事になるんだが、いいのか?」
「いいよ。そういえば、ポップコーン食べた後にもキスしたから80%だね」
「しょっぱいキスがしたいのか?」
「そういうわけではない。でも、なんかキスしたくなるのは濃い味のしょっぱいもの食べたときが多い」
「なるほどな。よくわからんけど、わかった」
そんな夫婦漫才をして、この前と同じ場所で同じようにキスをした。
優斗は「相変わらず急にディープをするし、あれほどニンニク入れてたのにディープキスするし、でも、それも悪くないと思わせて来るし。よくわからん。まぁ、幸せだしいいだろう」と文句ともなんとも言えないクレームを入れてくる。英語で主張を意味するクレームであって、不平とか不満とかではない。
私は「それも悪くないと思ってくれてるんだ。ありがとう」と微笑んで返す。
「その笑顔ズルいんだよなぁ」
そう言って優斗も笑っている。長いようで短いようでやっぱり長いようで短いような道を通り過ぎて、家に着いた。
「渡しそびれてたけど、コレ」
そう言って、優斗はプレゼント用に包装された箱を手渡してきた。
「開けて良い?」
「おう」
箱を開けるとライトブラウンの合皮質なショルダーバッグが入っていた。
「えっ?コレって最新の流行カバンじゃん!!確か5万ぐらいするはずだよ。ありがとう。こんな高いもの買ってくれたの?」
「ああ、確かに高かった。今値段聞いてヤバいと思ったし、アニキの頃から使ってるカバンもいいけど、らしくありたいと思うアニキならカバンが一番欲しいだろうと思って」
「そうなんだ。ありがとう。お金では返せる気はしないけど、その分良い経験をお返しできたら良いな」
そう言って私は風呂の準備をする。
優斗は「そうか。喜んでくれてよかったよ」と喜んでいる。私は「じゃ、一緒に入ろ?お風呂貯まってるでしょ?」と誘う。
優斗は「えっ?また?てか、なんでそんなに一緒に入りたがるの?」と戸惑っている。
「だって、優斗と同じ体験を分かち合いたいんだもん」
「それにしたってわざわざ一緒に入らなくてもいいんじゃない?」
「だって男だった時は一緒に入ってたのに今更それは寂しいよ」
「温泉での話だろ?」
「だって、入れる日と入れない日あるんだよ。今日は一緒に湯船に浸かれる日だし、なかなか無いんだからね」
と、私が主張すると、優斗は「しょうがないなぁ」と折れてくれた。これ、私が初彼女だと別れたとしたら大変だろうね。
だって全部わかってくれた上で物凄く甘えてくれる彼女なんてきっといないから。きっとカップルあるあるの話が合わなくて困るのだろうなぁ。なんて考えながら、服を脱ぐ。
「アニキは恥ずかしくないのか?」
「全然。だってよく知ってる優斗だもん」と私は微笑む。
「そうか。俺もアニキの前なら大丈夫だと思う」
「なんで、今この会話してるんだろうね」
「えっ?」
「だってこれで2,3回は一緒に入ってるでしょ?前も含めるなら5回以上ぐらい」
「まぁ、それはそれだ」
そんな事言ってる間に脱ぎ終えて、風呂に入る。優斗は先にシャンプーをしている。私は体にボディソープをつけながら体を洗う。いつもと同じ流れだ。どうしよう。今なら触っても見えないよね。あ、でも、感覚はあるしなぁ。どうしよう。触りたい。
「はい。シャワー」と抜群のタイミングで、優斗にシャワーを渡す。その時に優斗のエクスカリバーにシャワーを当てながら、皮をむこうとする。
「あっ。いっ」優斗が悶えている。まぁ、なんとなく予想はできていた。なので、いつかその時が来るまでに慣れてもらおう。
優斗が「ちょっ。何すんだよ。痛い」と言ってきた。私は少しだけ深刻そうに「ごめん。痛いのはわかる。でも、数ヶ月以内に、きっと、その時が来るから刺激に慣れてもらわないといけないから」と謝る。優斗の目が少しだけ喜びに満ちたのを私は知っている。
優斗は「そうか」とだけ言ってシャワーを受け取る。髪を流し終わった優斗は「ほい。シャワー」とだけ言って私に手渡してきた。
「ありがとう」と私が微笑むと、優斗は「おう」とだけ言って微笑む。泡を流し終わった私の体を見て、優斗は「何度見ても綺麗だな。女神だわ」と言ってきた。
「ありがとう。そんなこともない。と、謙遜すると神に申し訳ないので、ありがとう。優斗もかっこいいよ」と返す。早めに体を洗い始めていた優斗の体には泡が付いていて、濡れた毛に付いている泡が色っぽく思えてしまった。
受け取ったシャワーをそのままに体を流し、髪を濡らす。
「洗い終わったから、シャワー」
「ほれよ。ここにあるぞ」
なんて、やり取りをしてるけど、全く見えない。なので、手の感覚で探そうとする。なんかシャワーじゃないもの掴んでしまった気がする。
「ちょっ、どこ掴んで。それはシャワーじゃないからな」
「えっ?どれ?」
「わかった。流してやる」
そう言って優斗は私の髪を流してくれる。私何握ってるの?とりあえず感触を確かめようと、色々握ってみる。
「ちょっ、おい。回すな。振るな」
なんか少し硬くなった気がする。変なのー。
「もう目を開けていけると思うぞ」と言う優斗の声を聞いて、目を開けると、優斗のエクスカリバーを掴んでいた。
「えっ?もしかして、ずっと握ってた?」
私は驚いて、握ったまま聞いた。
「おう。おかげで、流しにくかったぞ。正面に立った状態で握られたからな。後ろ流れてないと思うぞ」
優斗の言葉を聞いて後ろ髪を触ると確かに流れてなかった。髪を流した後、私は洗面器にお湯を入れる。
「ここにエクスカリバーを入れて」と優斗のエクスカリバーの峰を持ちながら、言う。優斗は「おい、ちょっと待て。何をする」と言いながら、あまり抵抗はできていない。
私は鞘に入ったままのエクスカリバーをお湯の中で少しずつ鞘を剥がそうとしていく。剥がすために鞘を上下に動かすのだが、優斗が「いっ、あっ、ちょっ、やめ」と反応するのが面白くて、早くしたり、遅くしたりしている。ついでに璧の感触も楽しんでおく。
鞘から少しずつ桃色の先端が見えてきた。今日中に剣を鞘から解き放たなくてもいいので、お湯の中で、鞘ごと愛撫する。
「ちょっ。いいのか。出そうなんだが」
「いいよ。でも、よく洗ってから湯船浸かってよ。まだ、その万が一は怖いから」
なんか白いビームが出て、その波動なのか剣自体が濡れ始める。ニオイまで放つ魔法らしい。凄いなぁ。我ながら白々しい。
「おう。相変わらず大胆!!」
「そう?好きだから当たり前だと思ってた」
「そ、そうか」
なんかタジタジになっている優斗もカワイイ。あ、そういえばこの前2本買ってた、お酒が残っているかも。
「そういえば、この前の酒どうしたっけ?」と私が聞くと、優斗は「この前って3週間前ぐらいのか?」と返してきた。
「そう。1缶は飲んでもらったじゃん。確かあのとき2本買ってた気がするの。あれどうなった?」
「すまん。俺が飲んだ」
「飲んだのかよ。別に酒好きじゃなかったじゃん」
「なんかこう。間接キスしてるような気持ちになりたくなって飲んだ。その日の夢にもアニキが出てきて、今までにないくらいムラムラしてた」
「なら、今もキスしとく?」
「その前にお湯に浸かろう。寒かろう」
「確かに。夢中になって忘れてた」
「変な物に夢中になるな」
キレイに洗わせた後、一緒に湯船に入る。
「あったかいね」と私が言うと、優斗は「そうだな」と返してくる。何気ないこんなやりとりが幸せだ。
優斗は「来週実家に帰るから会えんな」と口を開く。
「私もバイトあるからね。今月まだ来てないの。だから、来週きつく当たるかもしれない。なんでこんな時に帰るのよとか言ったらごめんね。忘れないでほしいんだけど、絶対優斗のことは大好きだから信じてね」
「わかった」
そう言って唇を重ねる。ついでに優斗の肩に腕を回す。
「そろそろ出るか?」
「そうだね」
私と優斗はそう言って出る。風呂の後めちゃくちゃキスをした。