することなくなったし過去編でも書こう
私は昨日まで俺だった。昨日変わったので一昨日かもしれない。そんなことは些事である。要するに直近まで男だった。それが知らぬ間に変わっていたのだ。驚くに決まっている。昨日の私反応薄かったけど。ラグだよ、ラグ。タイムラグが発生しただけだから。10bpsのWi-Fi並みに遅いけど。
昨日書いた通り、男だった。女になった事より親の適当さにびっくりしたけど。ここでキーマンとなる友達を紹介しよう。そいつは、俺の四つ下?だったはず、知らんけど。年なんてどうでもいい。そいつの名前は中津浦優斗。俺のことをアニキと慕う友人である。舎弟を持ったつもりはない。
出会ったのは、大学一年の時。つまり俺が21歳の時である。おい、ちょっと待て。誰だ?年増ババアとかいったやつ。悪かったよ、俺二回目の大学なんだわ。エリート大学に通っていたが、上手くなじめずに中退した。名付けに関しては感謝しないけど、大学に2回目も通わせてくれたことはかなり感謝している。かなりなんて言葉で終わらせていいことじゃないが。
すぐ脱線するのも俺らしい。昨日から私になったけど。あった場所は男子トイレ。彼がひとりでいるのを見つけて俺から「一人で寂しくないの?」ときいたことがきっかけだった。そのころアイツは素っ気ない態度だった。
同時期、俺は彼女を作ろうと奔走していた。年増ババアと言ってくる奴らと似ているかもしれないが、結婚を焦っていた。アラサー魔法使いになるからである。それを回避するために彼女を作ろうとしていた。
運命とは兎角わからないものでかわいい子が沢山いた。とにかく話かけまくった。一心不乱、猪突猛進、私邁進、用心すべき慢心告白撃沈、満身創痍、創意工夫なんてね。こういう韻を踏んで遊ぶのも好きである。
その中でもよく話していたのが鷹川深月、平松咲、藤山佳奈の三人である。この三人とはご飯を食べに行ったこともある。彼女らは、心理サークルのメンバーで同学年である。
2年になった頃から、少しずつ距離を離しながら、それでもサークルではよく話していた。そのころ、アイツは俺と同じ子を好きになっていた。のちに、その子も俺のことが好きだったと知った。好きだったということが大事である。その子は彼女にならなかった。
中津浦君の彼女にもならなかった。その時中津浦君は病んでいた。いや、病んでなかった時を知らない。俺も病んでいたのだろう。
2年になった最初の授業でいきなり中津浦君が謝ってきた。
「あの時はごめん。余裕なかった」
「その時は自分もわかってなかったし」
俺も悪かったと思ったので謝った。最初何のこと言っているかわからなかった。
「アニキって呼んでいい?」
「なんで?」
中津浦君の言っていることがわからなかった。面白い。せっかくなので無料通話文章ツールのTXTを交換した。
その日、彼から来たTXTは「これからもよろしく」だった。俺も「おう」とだけ送った。それからしばらく空いてテスト週間の時に1回TXTを送っていた。その時、彼はバイトしていた。俺も週5日バイトしていたらしい。嘘だろ?テスト週間ぐらい休めよ、2人とも。
それから、資料を見せてあげたり、相談に乗ってもらったりした。夏休みに入って通話したり、相談したりした。
その内容は、私って何なのだろう?だった。俺、実は悩みやすい性格をしている。そしてすべての真ん中にいる感じがしていた。性別、発達障害などのだ。
彼によると、親しみやすそうで自信に満ちた発言が多かったらしい。今の私から見ると「何それ?」である。その時自己認識が死んだらしい。わからない。自分の核となるものを探していたのだろう。その時彼から言われたのは相手にどうなってほしいかを言わないというところだった。
初めて彼とカラオケ行ったのは二年前の11月。彼の歌は点数には反映されていない気もするが、感情が乗っていて心をギュっとされるような声だった。クリスマスに、船が沈没する映画のテーマ曲が流れてリア充へのヘイトみたいだと彼に送っている。
この時の私大丈夫?きっとこの時、いやもっと前彼とカラオケ行った頃から彼の前でも裏声で話すことも増えた気がする。このころから更に心の女化が進んだ気がする。クリスマスソングの歌詞が心に刺さった。彼を好きになるなんて思っていなかった。
考えてみると男らしい男の友達は初めてだった。小学生の時の友達も中学も高校も性別を意識したことはなかった。アイツを主人公にすればよかったかもしれない。下ネタ特に聖剣エクスカリバーの話をしたくなることが多くあったと振り返れば思う。
おそらく、中学の時カイボウいじめにあい、俺の聖剣エクスカリバーの大きさがデカかったことぐらいから人の聖剣エクスカリバーの大きさが気になるようになったのだろう。
自分の生き方の核を探していくと、私は死んでいないのであって生きてはいないというのが核だと思っている。俺は自分が死んだ後のことばかり考えていた気がしている。私の性格とはめんどくさいものである。
そのあと彼と1回温泉に行ったこともあった。彼のエクスカリバーは剥けていなかった。俺のも剥けてはいないが剥ける状態ではある。今はそもそもなくなっているけど。だって、昨日女になったんだもの。
3年になってから彼と温泉に行った気がする。それはよくて、就活とアルバイトとサークルに悩殺され、おかしくなっていった。5月6日に彼女ができた。3日後彼女の浮気を疑い、中津浦にTXTを送った。よく考えたら酷なことをしてしまっている。彼女いない人になんで彼女の浮気の話したのだろう、ばか。最初は輝いていた。彼女と徳島駅前を話しながら3周したときは面白かった。彼女が駐輪場の駐車券をなくしたのもあったが話しているだけで楽しかった。就活しながら彼女を作っていたらしい。
凄すぎる。アルバイトしながら就活をして、サークルにも顔出しながら彼女と出かけていたようだ。体力化け物?どんだけ―。
彼女との距離ができていくごとに中津浦に対する気持ちが強くなっていた。彼女と別れたのは去年の9月。今年は就活が忙しかった。やっと終わったのが、ついこの前だった。
終わりました。女になりました。どうしよう。学生結婚もありだけど、きついだろうな。なんて悩みながらいる、今日。What am I doing?
何やってんねん私。
今日の私ずっと小説書いている。それでいいのだろうか。いいね。いいよね。知っている。
あ、そうだ。彼にTXT送ろう。「元気?私は元気だよ。色々変わったけど」
この色々に性別も含まれている。明日か明後日には書類ができていればいいな。1週間ぐらいかかるかな。免許の更新もいるよね?いきなり性別変わった事より、その手続きが面倒である。あ、2限。出席だけ押しておく。
テンプレ展開なら「どうにかなりました」で終わるが手続きが終わらない。内定先から入力しなければならないものも届いているからそれも届け出なければならない。時期以外は最高なのだが、内定出たので書類上どうすべきか悩まなければならない。
笑うしかない。なんやこれ?教えておじいさん。どこかサムシング森の木よ。彼からTXTが帰ってきた。曰く(いわく)「まあまあ」らしい。
「どないやねん」私もTXTを返す。連続して「もし俺の性別変わったって言ったら信じる?」と送ろうとする。
指が震える。でも彼には知っていてほしい。でも私自身を好きになってほしいから、夜桜輝奈子として生きるか、魂の連続としては夜桜魔沙斗なのでそのまま彼の友達としてふるまうかとても悩む。よし、先に深月に連絡しよう。いや、元カノにしよう。あの人既読早いし、私の気持ちも知っているし、関係も悪くないしね。
「好きな人できて、性別が知らない間に変わったけどどうしよう。内定出ているし、手続きはいいんだけど、恋的にどうしよう。いうべき?」
彼女の既読は早い。考えてくれているみたいだ。以下その時のTXTだ。
「中津浦さんの話ですよね?」
「そう」
「名前も変わるんだ。輝奈子になるの。ちなみに手術とかじゃなくてふいに変わったファンタジー」
「まったく新しい人として生きてもいいと思いますが、元の関係値使える方がいいとは思います」
「信じてもらえないと思いながらも彼に送ってみようか?そうしよう。そうしてくるわ」
「行ってらっしゃい」
先に言っておいてよかった。よし、アイツに送りますか。
「えっと。性別と名前が変わりました。夜桜輝奈子に変わります」
彼から反応がとても楽しみだ。スーパーサウルスとかブロントサウルスみたいに首が長くなりそうだ。今の子はブロントサウルスのことをアパトサウルスというのかな?体長21メートルの竜脚類。彼からは一言だけ「えっ?」が送られてきた。
どうしよう。なんかこう、ねえ。これ以上言いようがないし、言っても信じられないだろうし。取り敢えず続けてTXTを送る。
「とりあえずの手続きは終わったんだ。戸籍は、ね。手術とかじゃなくファンタジー」
そしてまた返事を待つ。
彼から来たのは一言「何それ?怖い」。私から言えるのは「それな」だけである。
仕方がないので「明日学校で」と言っておく。明日はおしゃれしていこう。水曜日2,3限だけ授業がある。両方遠隔で受けれるけど「学校、来てよ。証明するから」とTXTで中津浦君に送る。
「奏音、明日服貸して」
「お兄ちゃん、どうして?」
困惑するよね?わかる。兄貴が姉貴に変わってまだ2日目。なれるわけがない。でも、この気持ちは嘘じゃない。だからおしゃれする。今何時?まだ晩飯前だわ。よし、明日は自分のお弁当作ろう。野菜炒めかな。やっぱり食べに行くか。チャンスをものにするんだから。
「好きな人ができたから。とびっきりおしゃれして行くの」
「そっそう。いいよ。がんばれ」
「ありがとう、我が妹よ」
「その痛い言動はやめた方がいいと思う」
なんかダメージ受けた。毒菱みたいに。大きなダメージではないが刺さった。
心がうさぎみたいに跳ねている。どうしよう。これは恋だな。広島の球団じゃないけど。いや鯉やないか、いうて。
頭痛くなりそう。このおじさん系やめないとモテないよね、知ってる。明日は風強いらしい。布団干そうと思ったのに。吹っ飛ぶやないか。布団が吹っ飛んだ、がはは。なんてね。どうしよう。出るよ。やめられないって。親父ギャグとギャグマンガが私の人生占めているもの。
さて、飯食って寝よう。普段はお肉多めに食べていたけど、血圧気になるし、太りたくないしお野菜多めに食べよう。健康意識しないと。パパ上、高血圧だもの。私も前の体は高血圧だった。上が139とかだった。下は71とかだけど。
あ、ウエスト大丈夫かな。調べておこう。私は巻き尺に手を伸ばす。へその上から回す1周分の数値は68を示していた。痩せている時で72とかだったので4センチも縮んでいる。この前太っていたので76とかだったから8センチかな。スタイル維持頑張るぞい。
「兄ちゃん何ガッツポーズしているの?」
「決意のガッツポーズだよ」
なんか残念な人を見る目をされた。残念美人とか言わせないから。
「風呂か?」
「そう」
今日は念入りに洗おう。いつもはリンスしないけどしておこう。なんだっけ、リンスじゃない呼び方あったよね?なんかお菓子をねだりそうなやつ。たしか、治療を意味するやつ。トリートメントだ。
ボディーソープは変えられないので明日ハンドクリーム塗ろう。シャボンの香りがするやつ。前の体ではハンドクリーム塗って水にあたると溶けだしてきたけど大丈夫かしら。
そして、歯磨きして寝た。ネタはしていない。今日の変換、おじさんかもしれない。おじさん変換を返還いたし候。