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中津浦優斗から見た輝奈子5


「おはよう」今日も俺の声で目覚めてくれる輝奈子さん。彼女は寝ぼけてフワフワな声で「おはよう」と返す。洗顔をして、白いシャツに紺の七分袖、白いカーディガンを着て、紺色のスカートを履いている。今日もノーメイクだ。伊達政宗モチーフと聞いた靴を履いて髪を三つ編みツインテールにしている。出かける気まんまんかよ。


輝奈子さんは「今日は服屋さんに行きたいんだけど付き合ってくれる?」と俺に言ってきた。俺は「いいけど俺センスには自信ないぞ」と言う。いつもの口調で。嘘じゃない。オレンジのTシャツにカーキのチノパン合わせてる。輝奈子さんは自信満々なお姉さんボイスで「お姉ちゃんにまっかせなさーい」と言った。フラグだろうか。


どうやら俺の考えは口に出ていたらしい。輝奈子さんが「フラグじゃないよ」と笑いかけてくる。俺は言葉少なく「そうか。で、どこ行くの?」と聞いた。輝奈子さんは「TEONだよ」と返す。TEONは大型ショッピングモールで末広にある。


輝奈子さんは「寒いね」と俺に声を掛け、手を繋ぐ。俺は「そうだな」と言いながら、握り返す。寒い中でも2人で歩くと、手の中に輝奈子さんのぬくもりを感じられるから照れくさい。でも、そんな幸せに満たされながら、輝奈子さんの「幸せだね。いつまでもこうやって二人で居られたらいいのにね」との発言に俺は「そうだな」と返す。


寒くなってきた川のほとりを抜けて、TEONに着いた。さっそくお買い物開始だ。まず、輝奈子さんは、近くにあるTHで服を見る。ここは基本的に幅広い層の服を扱っているので色んな服を見ることができる。と聞いた。


輝奈子さんが手に取ったのは、ピンクのT-シャツ。体に合わせて「どうかな?」と俺に聞いてきた。俺は「いいんじゃない」と言った。我ながら適当すぎるだろとも思ってしまうけど、「俺に聞かれても、センスないから何とも言えない。でも可愛いと思う」という意味であることが伝わっているのだろうと思う。言葉が絶望的に足りていないけど。でも、アニキだし、わかるはずだ。だってわかってなかったらこんなに素敵な笑顔を見せてもらえる発言ではないから。


輝奈子さんはピンクの服を保留して、緑と水色の中間みたいな色をした七分袖を手に取る。色の名前わからないが可愛い、のだろう。また、「どうかな?」と俺に声を掛けてくる。俺は「いいと思う」と言った。悩むところだ。どちらもすごく似合っていた。


輝奈子さんはどっちが好きなのだろう。今日は白いシャツと紺色のスカートに紺色の靴だけど。どっちも似合ってて悩むところだ。そんなことを考えていると輝奈子さんが「ピンクとこの色どっちがいいと思う?」とワクワクした様子で聞いてきた。


俺は「ピンクの方がかわいんじゃない?」と言った。輝奈子さんは少しだけ意地悪そうな顔で「どうして?」と聞いてくる。我が彼女ながらめんどくさい人かもしれない。でも、可愛い。俺は「わからんけど、アニキなら『らしく』なろうとするだろうから、ピンク」と答えた。アニキはいつも「らしさ」に悩んでいたから。それにピンクの服を着ている輝奈子さんを見てみたいから。


そんな考えの俺とは違って、輝奈子さんは「なんでわかったの?」って顔をしている。ただの偶然だ。


輝奈子さんは「ありがとう」と微笑む。そして値札を見て「3980円か。高いな」と言った。3980円って高いのか?もしかして彼女は、いわゆるドケチだろうか。


俺は輝奈子さんの発言に「そうか?」と疑問を口にする。輝奈子さんは「ちょっと決心できない値段だから、もうちょっと見てから、最後にまたここに来ようか」と言った。俺は「そうか。次どこ行く?」と聞いた。輝奈子さんは「適当に歩こうよ。手、繋ごうか。はぐれたくないし」といたずらっぽく言う。


俺は「ここでか?人多いから恥ずかしいんだけど」と言ってきた。輝奈子さんは「だからこそだよ。はぐれたら合流するの大変だよ」と言い返す。本音はただただカップルであることを楽しみたいだけだろう。ずるいわ。


俺は「そういうことなら、仕方ないな」と納得した。が、これでよかったのだろうか?なんか違う気がする。で、相変わらず恋人繋ぎをしているわけだが、歩きにくい。でもいい。こうして、お互いのぬくもりを感じながらゆっくり歩くのも悪くない。と思っている俺がいることに驚く。俺の握力痛くないだろうか。彼女の握力が可愛いし、細い指の感触がとても可愛い。可愛いの具現が彼女だと心からそう思える。


輝奈子さんは「次あそこの店行こうよ」と雑貨屋を指さす。いつかアニキの家に行く日が来るのだろうか。きっときれいな部屋なのだろう。いや、待てよ。アニキだぞ。部屋がきれいなはずないじゃないか。親御さんいなかったら。


アニキは観葉植物とか推しのグッズとかおきたいとか言いながら基本的に何も買わない人なのできっと見るだけで何も買わないことは承知の上で見に来ている。我が彼女ながら「買おうよ、ケチ」と思う。


「この花瓶いいな。買わないけど」という輝奈子さんの言葉に俺は爆速で「買わないのかよ」とツッコミをいれてしまった。やっぱり買わんのかい。


さて、切り替えてスマホケースを探しに行く。さっきまでいた1階から3階に上がり、やってきたのはイレヴァンというごちゃごちゃした感じの店だ。ここはスマホケースだけでなく沢山のものを扱っている。


有名なブロックで色々作るゲームやモンスターを捕まえて個体値厳選や種族値暗記、努力値や技構成を考えるアニメのグッズもある。遊び方がガチすぎるかもしれない。彼女が好きだったのは対戦だとドラゴン飛行の600族。素早さ下げる岩技が好きでめちゃくちゃ使っていたとか燃え尽きるという技でタイプを消すのも好きだとか聞いた。何してんだよ。


輝奈子さんはテンションが上がってきたのか俺に「これ、かわいい」と大きな熊のぬいぐるみを手に話しかける。俺は「これ買いに来たわけじゃないだろ?」とあきれている。まぁ、でも、跳ねている輝奈子さん見るのは楽しい。

輝奈子さんは「買いたいとは言ってないじゃん。目的はわかって来てるんだから」と頬を膨らませる。俺は「そうか。それはごめん」と少し落ち込む。だって、うまく言えないから。無駄が楽しいのもわかるけどこっちの身にもなって欲しい。


輝奈子さんも「ごめん」と謝る。その熊のぬいぐるみは輝奈子さんが持つとめちゃくちゃ大きく見えた。


輝奈子さんは「優斗も持ってみてよ」と声を掛ける。俺は照れくさくて「なんでだよ」とツッコミを入れる。


「だって、気になるんだもん。優斗の背丈私より高いじゃん」


「高いといったって10センチぐらいしか変わらないだろ?」という俺の言葉に、輝奈子さんは「10センチって大きいんだからね。160越えているかどうかって結構大きいから」と膨れる。そんな事言われても男子の平均より低いし。


「ヒール履いたら2センチくらいすぐ盛れるだろ?」

と俺は言ったけど、輝奈子さんによるとそういうことじゃないらしい。


「でも、165越えようと思ったら、7センチもヒールがいるんだよ?こけそうで怖いよ」

可愛い。履いたことのないヒールに怯えているのである。

「バランス悪そうだし、こけそうじゃん。踏ん張りが利けば相手の腹に一発当てた後の鼻の穴への一撃で沈めるのに使えそうだけど」

と輝奈子さんの呟きがきこえる。

俺は「なんで相手を鎮めようとしてんの?にげろよ」とツッコミを入れた。


輝奈子さんは驚いて「えっ。考え、漏れてた?」と返してくる。俺は悪戯っぽく笑って「思いっきり口に出てたぞ」と返した。どうして戦おうとするのだろう。逃げてくれよ。戦うのは俺だけで十分だ。


輝奈子さんは「かわいらしい女の子でありたかったのに」と頭を抱える。なんかその仕草も可愛い。この子はアニメから出てきたのだろうか。それでも俺は「残念ながら無理だと思うぞ」

と、残酷なツッコミを入れる。


輝奈子さんは、残酷なツッコミに抗議するように頬を膨らませて「何で」と言った。

俺は呟くように「豚骨ラーメンキス」と言った。


不意打ちの「豚骨ラーメンキス」と言う言葉にまた輝奈子さんは「えぁー」と言うようなイルカみたいな声が出ている。


急に周りを見て変な人だと思われていないだろうかと不安になったっぽい輝奈子さんの様子も面白くて可愛かった。可愛いって言っておけばなんとかなる説あると思う。


「それよりも持ってみてよ」

輝奈子さんは俺に、もう一度お願いしてきた。今度は上目遣いで。ずるいぞ、それ。

「しょうがねえなぁ」

この姿を可愛いと思ってしまったから、俺は折れて熊のぬいぐるみを持った。克服してやる。このずるい笑顔。


輝奈子さんは「やっぱり優斗が持つと私より小さく見えるね」と言った。俺は「そりゃそうだろうよ。何がしたかったの?」とツッコミを入れる。輝奈子「これで正解。背が高いのっていいよね?って話」と微笑むが、俺は「俺より背が高いやつはいくらでもいるだろ?」と拗ねたような声で言った。私は「でも、優斗って男らしいし、持ってほしいと思ったのも優斗だからだよ」と微笑む。一体俺の何がそんなに良かったのだろう。今まで彼女できなかったのに。


そんな時に輝奈子さんは可愛いスカイブルーで手帳タイプのスマホケースを見つけた。カードを入れられそうなポケットもある。花の刺繍も入っていてとても可愛らしい。このスマホケース似合いそう。そう思った。


輝奈子さんは「これかわいくない?」とスカイブルーのレザー素材に花柄の刺繍が入ったスマホケースを見せてくる。俺は「かわいいと思う」と言葉少なく答える。可愛すぎて語彙力が消えた。

  

輝奈子さんは「これ候補の一つにするね。他のお店も見に行っていい?」と提案する。俺は「良いよ。楽しそうだね」と言った。輝奈子さんは「もちろん楽しいに決まってるよ。優斗と買い物ができるんだから」と返してくる。


俺は照れて「そうか」と言った。その表情が何度見ても愛おしい。また、手を繋いで別の店に向かう。今彼女が探しているのはMYPHONE SEのスマホケースだ。輝奈子さんが持つとMYPHONEシリーズでは小さいほうのSEでもかなりの大きさに見えてしまう。


「見て、お茶シリーズ売ってる!」

輝奈子さんは跳ねるように高い声を出す。そんな彼女とは対照的に俺は「お茶シリーズって何?」としっくり来ていない。輝奈子さんはめちゃくちゃ高いテンションで説明する。


「この香水って自然な香りでフォーマルなビジネスシーンからカジュアルな場面でも使える万能香水として今一番話題になっている香水なの」


輝奈子さんのテンションにいまいちついていけていない俺は「へぇ。凄そう」と単純な感想しか出せない。これでも俺の方が香水には詳しいと思っている。結構調べたから。名前がパッと出てこないけど。


「この香水、お茶で有名な会社が作ってるんだよ」と輝奈子さんが言うと、俺は「マジで?」といきなりめちゃくちゃ驚いた。驚くのも当たり前だよな。この香りを販売しているメーカー知らないし。


「マジだよ。お茶メーカーが作るとは思えないよね。ちなみに第一作が麦茶の香り。落ち着いた懐かしい香りがするから有名な実況者は注目していたんだけど、販売当初は「わざわざお茶を身に付けるというのはいかがなものか」という意見もあったみたい」と輝奈子さんが言ってきた。


「そりゃそうだろうよ」

言われてみると確かにその通りだ。心の底からそう思った。輝奈子さんは「だよね」と返してくる。


そんな会話をしていると、ジャスミン茶の香りの香水が置いてあった。しかも、ジャスミン茶の香りのフレイバースティックまであった。なにこれ?


「私、これずっと探してたの。やっと、見つけた。ジャスミン茶の香りの香水」


「そんなにレアなの?」

俺は半信半疑で尋ねた。


「うん。それはもうめっちゃレア。各店に一本あればいいぐらいのレベル」

「それはすごいな」

「でしょ?」

そういって輝奈子さんは買おうと思って値段を見る。

「2980円か……」

買えない値段ではない。悩むだけだ。他の香水よりも少し高い。めちゃくちゃ悩んでるみたいだ。俺は「どうした?」と聞く。


「いや、凄くレアでものすごくほしいけどお値段が結構するから、悩むんだよね」

「いつもアニキには世話になっていたし、おごろうか?」

輝奈子さんは、俺の提案を魅力的に感じてるような申し訳無さを含んだような表情で「やっぱり自分で買うよ。かわいらしい女の子でありたいからその時のための自己投資として買おうかな」と微笑んで答えた。


そんな輝奈子さんの様子を見て俺は「そんなに悩むなら買わなきゃいいじゃん」と言った。輝奈子さんは「そうだよね。でも、欲しいし、可愛い女の子でありたいし、理想の彼女を演出したいし、あったほうがいいとは思うのよ。でも、効果があるだけに高価で、財布の紐も硬化してしまうわけでして、こう、かーっとなる値段なんですわぁ」と返す。言ってすぐに「デュフ」というあまり可愛らしくない笑い声が出てるんだけどこれでいいのだろうか?これまでにこんなに親父ギャグの出るラブストーリーを見たことがあるだろうか。我が彼女だが親父ギャグ言いすぎだろ。美少女親父ギャグってどうなのだろう。


なんて考えながら、だいぶ引きつった笑顔で俺は「そうか」と言った。「早く買えばいいだろ?」とも思うけど、頑張って彼女のギャグで笑ってあげたいという意味の笑顔だった。


結局香水だけ買って、フレイバースティックはやめた。

輝奈子さんは「ごめん。お花摘みに行きたいんだけど」と言ってトイレに向かう。彼女が出てくるとジャスミン茶の香りがする。


マジモンのジャスミン茶だった。流行りものを買えて喜んでいた彼女だが、俺も冷静に醒めた頭で考えると「これ、なんで流行っているのだろう」と思ってしまった。確かに自然な香りではあるだろうが、全身からお茶の香りがするのである。喉渇きそうな香りだと思った。


彼女が「おまたせ。遅くなってごめんね」と言った。「どんな反応が返ってくるのだろう」とわくわくしているように見えたから、俺は「そんなに待ってないぞ。てか、思ったよりガチでお茶だな」とめちゃくちゃいい反応をした。


「でしょ?私もつけてはじめて思った。これ、ガチのお茶だわって」

テンションが上って身振り手振りがうるさくなる輝奈子さん。流行ってるけど全身ジャスミン茶の香りの女の子ってどうなんだろう。美少女なら許されるかも?


流行り物つけているってステータスぐらいで冷静に考えてしまうと「いい香りだけど。多分これじゃない」ってなる気がする。


輝奈子さんも結構歩いたし、昼過ぎでお腹すいたのか、俺に「お腹空かない?フードコート行こうよ」と同じ階にあるフードコートに行くことを提案する。俺は「おう」とだけ言ってついていく。返答が短いよとか言われそうだけどそれしか言えなかった。


輝奈子さんは弾んだ調子で「何食べる?」と聞いた。俺は「うどんとか?」と返した。輝奈子さんは「いいね。そうしよう」と提案を受ける。


「優斗は何うどんにするの?」

「俺は肉うどんかな。アニキは?」

「私、ゆずとろろかな」

そう言いながら、輝奈子さんは、いも天とイカ天を取る。俺はナス天を取っていた。注文を終えて、食べる。輝奈子さんは俺に「美味しいね」と微笑みかけできたので、俺は「そうだな」と言葉少なく返す。そんな時間がとても愛しく感じる。いつか終わる日が来たとしても。きっとこの「好き」は終わらない気がする。あー。あの問題どうしよう。頭痛くなりそう。なるようにしかならない事はわかっているけど、胸が痛い。


輝奈子さんが幸せならそれでいいと思う心もあるけど、この数日、数週間で輝奈子さんを好きになり過ぎた。離れると胸が痛いだろうな。ものすごく太い針みたいだ。


輝奈子さんは悪戯っぽい笑顔で「キスしとく?」と聞いてきた。俺は照れて「ここじゃなくていいんじゃない?」と言った。


「まだ、心満たされてないからキスで満たして欲しいんだけどなぁ」

そう俺に微笑みかけてくる。俺は照れて「なんでだよ」とツッコミを入れる。人が多いから。「してくれるよね?」と笑顔でゴリ押しする輝奈子さんの強引さにも惹かれている俺がいる。


「アニキは魔性の女かよ」と俺はツッコミを入れる。でも、「しょうがないな」と言って唇を重ねる。きっと彼女は「生姜はあったよ、私のうどんには」とでも思っているのだろう。


2回目のキスは出汁の味がした。少しだけ肉うどんの甘めの出汁とゆずの酸っぱさと後味の程よい苦みが大人になった気がしてラブストーリーっぽいと思った。出汁の奥深さもすごく良かった。出汁ラブストーリーってどうだろう。きっと彼女はこんなことを考えているのだろう。


「出汁だね」

「そうだな」

「ラブストーリーなんだろ?俺等のロマンスは出汁の味だったり豚骨だったり、時間をかけて煮込むものばかりかよ。しかも塩気多いな」

「そうだね。麺類ラブストーリー」

「そうだな。麺類」

なんかこんなやり取りもいいなと思ってしまう。さて、スマホケース探しと服屋さん巡りを再開する。


「この服、優斗に似合うと思うけどどうかな?」

そう言って輝奈子さんが紺色のTシャツを勧めて来る。俺は「俺にはわからん。似合ってるか?」と聞いた。本当にわからない。


「似合ってるよ。最高にかっこいい。ペアルックしよ」

と微笑む、輝奈子さん。俺にはペアにする意味がわからない。確かに可愛いとか良い感じとかあるのだろうが、お互い似合うもの着たほうがいいんじゃないだろうか。


「別にペアにしなくてもいいんじゃないかな?似合うものも違うだろ?」

俺がそう言うと、輝奈子さんは「そういうことじゃないの。一緒の物持ってるってだけで離れていても共通の話題ができるし、一緒にいる気持ちになれるでしょ」と言ってきた。自分でもわかるほど俺の顔が赤く熱くなった。輝奈子さんの顔も真っ赤っ赤だ。赤鼻のトナカイもびっくりだ。黄昏時の夕焼の色とも言えそうだ。


「確かにその意味なら一緒のにするのいいな」

「でしょ?」

輝奈子さんは「フフン」と誇らしげに胸を張る。それなりに張る胸があり、サマになる。


結局二人共自分でそれぞれにペアルックを買った。なんで買ったんだろ、俺。


そんなことを考えていると輝奈子さんも「あ、スマホケース買いに来たのに余計な物結構買ってしまった。あれ?服屋さんに来たんだっけ?目的忘れたけどいいや」みたいな忙しい表情をしていた。


輝奈子さんの「下に降りてアイス食べない?」との提案に俺は「こんな寒いのにアイス?正気か?」と聞いた。


「確かに寒いけど、結構歩いたから甘いのが食べたい。だめ?」

輝奈子さんに「だめ?」のところを上目遣いで言われると俺は「しょうがないなぁ」と言ってついてきてしまった。ずるいなぁ。


アイスを食べるため俺たちはまたフードコートに戻り、ブロントアパトというアイスクリーム屋に行く。


「優斗は何味にするの?私はラズベリーアンドチョコレートかなぁ」


「俺はチョコレートにするわ」

なんて会話をしてるこのシチュエーションに萌えてしまったり、青春を感じたりしてしまう。なんかいいよな。寒い季節にアイス食べるの。多少おでんでもいいのにとか思ってしまったけど。


「ニマニマしてどうした?」

「幸せだなぁって」

「そうか」

そう言葉少なく返す俺の唇に輝奈子さんが唇を重ねて、舌を入れてくる。ラブストーリーの味がした。彼女のぷにぷにの唇と彼女の体から匂うジャスミン茶の匂いが照れくささを加速する。


気付くと空が紅く染まっていた。




「そろそろ帰ろっか。付き合ってくれてありがとう」


「大丈夫。飯どうする?」


「スザクいく?私チリドッグとジンジャーエールにしようかな」


「そうするか。寒いのにドリンク冷たくて体冷えないのか?」


「たしかにそうかも。クラムチャウダーにしようかな」 


そんな話をしながら、黄昏時の紅い空の中を手を繋いで歩く。まだ、うまく恋人繋ぎで歩けていないけど、やっぱりこれがいい。

スザクから俺の家に向かう頃には空には星が輝いていた。


「そういえば、私の名字覚えてる?」


なんとなく輝く夜空に重ねてきたのか、輝奈子が聞いてきた。俺は、もちろんとばかりに「夜桜と書いて、やおうだろ?どうした?」と聞いた。そんなことも覚えてないように思われたのかな?


「ふと、覚えてるのかなって思って」


「そうか。アニキの今の名前、きなこだもんな」


「そう。輝く古風な子で輝奈子」


「『な』は奈良の奈だろ?」


「そう。だけど、奈良って歴史が深いじゃん。後は名前の響きかな」


「そうか。アニキは凄いよな。急に女の子になって、手続きをして、自分で名前を考えて、就職もして、アルバイトをこなして、今は俺の横で笑ってくれてる」


「そんなことないよ。やるしかなかったからできただけだよ。優斗の前で笑えるのは貴方が私を幸せにしてくれたからだから」 


「そうか」


「うん」


そんな話をしているとあっという間に俺の家に着いた。さて、ご飯を食べよう。輝奈子さんがクラムチャウダーを開ける時に「アツ!」って可愛くない言い方になっていたけど、それはそれでありだった。昔は、『あ』に濁点が付くような言い方してたからそれよりはマシだけど。いや、「ぇアッツ」みたいな発音だった気がする。


「開ける?」 


「お願い。私貧弱だね。可愛いとも言えるけど」


「自分で可愛いというところが台無し」


「そうかな。可愛いものを可愛いといって何が悪いの?嫉妬でしょうか」 


「痛いだとか変わってるとか届かなそうだな、アニキって」


「変わってるって褒め言葉でしょ?俗人凡人には理解できない天才だねっていう」


「今までアニキは変な人かもしれないとは思っていたが、奇人かもしれない」


「鬼の神で貴い人でしょ?」


「それもしてそう。でも奇想天外の奇だな」


「奇想天外、前代未聞のお話を書くのが好きだからね」

うちの彼女の冗談って面白いな。可愛い。

こうして、2人で風呂に入る。まだそんなに日は経っていないのに距離が縮まりすぎている気もするけど、それはそれで幸せだ。本当にこれでいいのだろうか。


俺の体を輝奈子さんは見慣れているかもしれないが、別にマッチョで腹筋が割れているわけでも、細いわけでもない。中肉中背で毛深い。自分には不要だと思っている。


輝奈子さんの体を見るのはあの事故の時含めて2回目だが、やはり見事なものだ。どこにも毛が生えていないし、真っ白ですべすべな肌。胸も大きいし、華奢で守りたくなる感じだ。


俺は先に髪を洗っている。輝奈子さんは先に自分の体を洗いながら、俺は髪を洗いながら、2人で入ると狭いんだなぁと感じていた。輝奈子さんは「意外と狭いね」とほほ笑んでいるような声色で言った。


俺は「そんなことわかっていただろ?」とツッコミを入れる。少し動くだけで体が触れ合ってしまう。輝奈子さんのすべすべな肌の感触が触れ合っている実感を高めていく。輝奈子さんは悪戯っぽい声で「なんか、体同士が当たって照れくさいね」と話しかけてくる。俺は「やめろよ。意識しちゃうだろ?」と言った。言葉は不本意そうなのに言い方はそこまで不本意と言うわけでもない。ただエクスカリバーが隆起しそうになってしまう。


輝奈子さんは「今日はとことん大胆になってやるんだから」といたずらっぽく言う。俺は「そうか。無茶はするなよ」と言った。俺は小心者だ。人に対して思慮深くありすぎるから悩む。輝奈子さんは無茶しがちだ。俺が手綱を握っておく必要もあるのかな。


俺は「先シャワー使う?」と聞いた。輝奈子さんは「先に使っていいよ。シャンプー流さないと見えないでしょ?」と返してくる。俺は「そうか。ありがとう」とシンプルに言って髪を流し始める。輝奈子さんは何をしているのだろう。


髪を流し終わった俺は言葉少なに「シャワー」と言った。輝奈子さんも「ありがとう」と返して、体を流す。そのまま髪を濡らしていく。三つ編みツインテールができるくらいなので濡らすのに結構時間がかかる。その様子を見て俺は「女子の風呂が長いのってそういうことだったのか」と言った。輝奈子さんは「そうよ。大変なんだから」と返してくる。でも、アニキ昔から風呂長くなかった?女子特有なんて言っているけど絶対嘘だろ。


輝奈子さんはシャンプーを髪に馴染ませながら頭皮を洗う。俺は体を洗っている。たまに擦れる腕が輝奈子の存在を感じさせる。


だいぶ髪も洗えているはずだ。何分洗っていたかなんてわからないけど、輝奈子さんは結構長い間髪を洗っていた。輝奈子さんは俺に「ごめん。髪流してもらえる?見えないし、シャワーどこかわからないから」と言ってきた。なんて罠だろう。俺は呆れたような声で「まじで?」と返す。輝奈子さんは「マジで」と返してきた。見えてないからある程度何してもバレないはずなのに、ヘタレた心が、失いたくない気持ちが行動を自制させる。


そしてまた俺は呆れたような冷めた声で「しょうがねぇ、アニキだ」と言って、輝奈子さんの髪を流す。輝奈子さんは「優斗のそういうところ大好き」と抱き着いて来る。俺は戸惑ってように「おい、急に抱き着くなよ」と言いながら輝奈子さんを受け止めた。輝奈子さんは「だって好きなんだから仕方ないでしょ」と言い返してくる。下腹部に何か柔らかい、ぷにぷにのものが当たっている気がする。


輝奈子さんは悪戯っぽい声で「私のお腹に当たっているのは何?」と聞いてくる。俺は「わかっているでしょ?」と笑いながら返した。輝奈子さんは「もちろん。優斗の胸に当たっているのも何かわかってる?」と返す。俺は「おっぱいだな。そっちだけ言わないのはずるいからな」と言った。


輝奈子さんは「わかった。聖剣エクスカリヴァー」とめっちゃかっこいい英語発音でエクスカリヴァーと言った。やはりアニキだな。発音がめちゃくちゃかっこいい。俺は「めっちゃかっこいい発音で言っているけど、アレだからな」と言った。こういうノリが嫌いではないかもしれない。昔から下ネタは苦手だったけど。


輝奈子さんは「湯船浸かろっか。寒いよね?」と言ってきた。俺は「今更気付いたの?お嬢さん。湯冷めするよ」と今更感満載で言った。


輝奈子さんは親父ギャグが浮かんだのか「でゅふ」みたいな笑い方になった。そんな声でさえ可愛いのはずるいなと感じる。俺は「どうした?親父ギャグでも浮かんだ?」と聞いた。輝奈子さんは「うん。すぐ出てきちゃうの。あ、湯船浸かろうか」と言った。今更気付いたように言ったのはなぜだろう。さっきも入ろうって言っていたよね。


俺は「早く浸かろうぜ」と言った。輝奈子さんは微笑んで「そうだね。入るよ」と言って湯船に浸かる。そして、「ああ、しあわせー」という感傷に浸る。ウチの風呂はいつも通り狭いので、入りそうになってしまったり、ぬくもりを直接感じたりしてしまう。なんでこうなったんだろう。まあ、いいや。


輝奈子さんは悪戯っぽく微笑んで「入りそうになっちゃうね」と言う。そんなアニキに俺は「まあ、入ってはいるな」と一度意味ありげに言葉を止める。輝奈子さんはひらめいたように「せーの。湯船に」と言う。たまたま輝奈子さんと声が重なった。輝奈子さんは「いやいや、聖剣エクスカリヴァーが入りそうになってない?」と言ってくる。


俺は「いや、ごめんよ。そんなつもりは」と言う。アニキに言わせるとアクセントが面白いらしい。輝奈子さんは「いいよ。優斗は私の彼氏でしょ?」とほほ笑む。俺は「そういうとこアニキだなぁ」と言った。


輝奈子さんは「どういうとこ?」とほほ笑んで聞いて来る。俺は「自分自身は何も言わないのに、人には下ネタを言わせようとしてくるズルいところ」と答えた。輝奈子さんには思い知らせなければならない。俺だって男である。


輝奈子さんは余裕の笑みで「確かにそうかも。でも、優斗だって言葉にしてくれない事あるでしょ?聖剣エクスカリヴァーが私の神秘の園へと冒険を進めようとしたときも」と言ってくる。俺はニヤリと微笑んで「狭き門を開きて、今、新境地へと。いざ行かん」と悪ノリした。アニキはたまにこういう悪ノリをしてくれる。俺もこの悪ノリが大好きだ。


狭い湯船の中で膨張した俺の聖剣は今、輝奈子さんの神秘の入口へと歩みを進めていた。松明のない未知なる冒険である。でも、中には入れ切らない。時が来たら、この神秘の扉が開かれるのであろう。なんて心の中でナレーションを入れてみる。輝奈子さんは「我が神秘の扉は然るべき時が来るまで開かれることはない。開けてみたければ、合言葉を言うがよい」と魔王っぽい声で言った。そのノリ痛くないのだろうか?


そんな中二病なノリをして、俺は「のぼせない?」と聞いた。輝奈子さんは「そうだね」と返してくる。輝奈子さんは「拭いてあげるよ」と弾んだ感じで言ってきた。俺は呆れたように「なんでだよ」とツッコミを入れる。輝奈子さんは「だって女の子の髪は拭くのに時間かかるけど、男の子はそうじゃないでしょ?」と言ってきた。俺は「理由になってなくない?」と言った。輝奈子さんは「なら、私が拭きたいから、じゃダメ?」と上目遣いで聞き返す。俺は諦めたように「俺だけ拭いてもらうのはどうなのかな?」と言った。


輝奈子さんは「なら、拭きあいっこしよ?お姉さんが拭いてあ・げ・る」と小悪魔口調で言ってきた。俺は「そういうことじゃないんだよなぁ」とぼやくように言った。輝奈子さんは「そうかなぁ。でも悪くないんじゃない?」と小悪魔みたいな微笑みで言ってきた。


そうして、お互いに拭き合う。輝奈子さんの手はタオルを持って俺の髪を拭き、段々と下へ下へと拭いていく。輝奈子さんの手が俺の聖剣エクスカリバーに触れる。俺は「お、おう」と反応をする。


前にもこんな事があった気がする。ただ違ったのはまた、輝奈子さんが裸で俺に抱きついて来たことだ。俺も裸だけど。拭き終わった瞬間に抱きついてきたのだ。

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