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中津浦優斗から見た輝奈子4

もう、12月に入った。まだ、輝奈子さんと出会ってから2週間程度だ。このたった2週間の間に手続きをして、色々頑張っているのを俺は知っている。輝奈子さんの彼氏として役割を果たせているだろうか?そんなことが頭に浮かんでくる。


今日は月曜日だから2限を受けに行く。輝奈子さんの今日のファッションは三つ編みのツインテールにしている。髪の長さは肩にかかるくらい。今日もおしゃれして白いシャツに紺の七分袖、白いカーディガンを着て、紺色のスカートを履いている。靴はブームに乗っているのか伊達政宗モデルのスニーカーを履いている。


ツインテールの輝奈子さんを見た啓一郎は「かわいいな。今日は別で来たんだね」と言ってきた。なんか冷やかされているようで気分が少し暗くなる。恋をすると独占したくなるというが本当のことみたいだ。


輝奈子さんは、弾んだ調子で「おはよう」と声を掛ける。俺はいつもの少し暗いトーンで「おはよう。体調大丈夫か?」と聞いた。確か、最後にあったのは先週の水曜日だった。確かにTXTで話していたけど体調の話はしていなかった。


輝奈子さんは「大丈夫」と言っていた。「本当に?」と思いながら俺は「そうか」と返す。そんなやりとりをしながら、思いついたように輝奈子さんは俺に悩みを打ち明けてきた。


「ねぇ、優斗。どうしたらいいのかな?」


俺は完全に「何が?」である。思った言葉が口に出ていたようだ。輝奈子さんは「就職先どうしようかなって思って。今のところ介護の方に行こうかなって思ってるんだけど」と打ち明けてきた。


俺は「それの何が悩みなの?将来性とやりたいことがずれているとか?」と聞いた。輝奈子さんは「そう」と返してくる。


俺は「それはつらいだろうね。今日も家来る?」と聞いた。輝奈子さんは小さくガッツポーズをしながら「うん。行く」と答えてきた。その様子にもドギマギしてしまう俺だ。


そんな時に輝奈子さんが急に手を繋いできた。俺は戸惑った様子で「いいのか?」と聞いた。確かに先週告白受けたけど、縮まる距離が速すぎてなかなかついていけない。


輝奈子さんはにっこり微笑んで「良いに決まってるでしょ。優斗は私の彼氏なんだから」と悪戯っぽく返してくる。俺は少し恥ずかしいけど嬉しかった。その様子を見た輝奈子さんも嬉しそうだ。


輝奈子さんは期待した様子で「昼ご飯どうしようか?」と聞いてきた。俺はいつもの低めのトーンで「うちで食べるつもり」と言った。輝奈子さんは明るめのトーンで「そっか」と返してくる。


好きすぎて何か話したいなと思うのに何も言葉が出てこない。何分経っただろう。


輝奈子さんは沈黙に耐えかねたのか「カラオケ行こう」と言った。俺は「いいよ」と返す。断る理由なんてないから。俺は「初めてのカップルとしてのカラオケだなぁ」と感動していた。


「初めてのカップルとしてのカラオケだね」と輝奈子さんが弾んだ調子で言うと、俺は照れて「そうだな」と言った。急に抱き着いてきた輝奈子さんが可愛かった。俺は恥ずかったが嬉しかった。輝奈子さんは自分が美少女であることを分かっているのだろうか。あっという間に授業が始まって、頭に残らないまま終わった。


授業も終わってイチャイチャと手を繋いで帰る。恋人繋ぎって距離が近くていいけど、不器用なもの同士だと歩きにくい。その事実に気付いて俺は「これ、歩きづらくない?」と聞いた。輝奈子さんは悪戯っぽい笑顔で「そうだね。でも、それがいいの。距離が近くて、あなたの存在を感じられるから」と答えてきた。


だいぶ恥ずかしいこと言っている自覚はあるのだろうか。俺は「だいぶ恥ずかしいこと言ってない?」と言った。輝奈子さんも自覚しているのか「そうかなぁ」ととぼけてきた。


啓一郎が「お二人さんお熱いね」と輝奈子さんに声を掛けている。俺は「冷やかされるの苦手だな」と頭を掻く。輝奈子さんは幸せそうに「私、今、最高に幸せ。優斗のおかげだよ」と言ってきた。


俺は照れて「やめろよ。俺も幸せではある」と頬を染める。この様子を見ていた啓一郎は「バカップルかもな」と言ってきた。確かにそうだなぁと感じる今日この頃である。


輝奈子さんは、にっこり笑って「そうかもね。私、幸せ」と返していた。2人で手を繋いで帰るといつもよりも短く感じる。輝奈子さんは俺に微笑みながら「幸せだね」と話しかけてくる。俺は照れた様子で「そうだな」と言った。言葉が少ないのはいつも通りである。


帰りなれた道も関係性で少し違って見えるんだなぁ。なんて感動をしていた。


もっと話したいけど好きすぎて何を話せばいいかわからない。いつも通りイヤフォンで音楽を聴きながら歩いている俺に輝奈子さんは「前、言ったっけ。私、麻婆豆腐作るの得意なんだ」と自慢げに言った。俺は「俺も麻婆豆腐得意だよ。麻婆豆腐にナス入れるのもいいよね」と言った。輝奈子さんはナスが苦手なのろうか。複雑な表情に一瞬なった後、「そうなんだ。美味しそう」と返してきた。


輝奈子さんは「スーパーでご飯買ってくるね」というと俺は「先帰ってていい?終わったらTXTして」と言った。相変わらず俺は先に家に帰って、それはもう全力で片付けをした。ど真昼間だから彼女は大丈夫だと思うし、来てくれるのがうれしいから頑張る。


輝奈子さんはジャスミン茶とカツオのたたきを買っていた。


輝奈子さんから「着いたよ」とTXTが来た。俺は飛び出すように出た。俺の家に入り、輝奈子さんは手を洗う。俺は「これで手を拭けよ」と言ってタオルを手渡してきた。このタオルは輝奈子さんの手を拭くまでも俺の手を拭いてきたやつだし何度も洗濯をしてある。輝奈子さんは何を想像しているのだろう。なんか普段の彼女にはなさそうな表情をしている。


そんなことを思いながら、俺はごはんを準備する。輝奈子さんは、いつも通りカツオのたたきを食べている。輝奈子さんはオニオンスライスが好きなのかな。俺は生魚が苦手である。俺は輝奈子さんの様子も見つつ、目玉焼きを作っていた。彼女のために料理できるって最高。


食事時って何話すのがいいんだろう?昔なら何も気にせず話せたのに、今は好きすぎて何も話せない。でも、この沈黙が心地よくも思える。何を話そうか。


料理が美味しそうだから「美味しそうだね」と俺に微笑みかける輝奈子さん。俺は照れたように「そうか。ありがとう」と言う。沈黙が流れる。ひらめいたように輝奈子さんは「優斗って苦手な食べものあるの?」と口走る。


俺は「しいて言うなら生魚」と答える。微妙に食の好みがずれているなと感じる。でもそれでいい。俺も頑張ろう。輝奈子さんは俺の言葉に「そっか。私、ナス苦手なんだ」と返す。


俺は「俺、ナス好きだよ」と言う。輝奈子さんはガッツポーズをしながら「食べれるように頑張るね」と言った。その様子を見て、俺は「アニメの世界に生きてるの?」と思ったことが口に出てしまった。輝奈子さんは「これがアニメならそれでもいいよ。だって幸せだもの」と言ってくる。恥ずかしいこと言ってない?大丈夫だろうか。


そんなやり取りをして片付けをしてカラオケに向かう。輝奈子さんは、イヤフォンをしている俺に話しかける。「優斗は親と就職のことで揉めなかったの?」と。


俺は「それほどかな」と返した。そんな時、輝奈子さんは爆弾を投下してきた。「そっか。私、今、小学生の頃からの友人と結婚させられそうになってるの」と。俺からすると嫌に決まっている。だって俺は輝奈子さんと一緒にいたい。輝奈子さんの言葉に俺はしたこともない表情で「輝奈子はどっちがいいの?俺でいいのか?」と聞く。彼女が幸せなら許せそう。それでもやっぱり嫌だけど、許せるかもしれない。輝奈子さんは「優斗じゃなきゃヤダ」と悲痛な表情で言った。


俺は「なら、頑張って断れる?」と聞いた。輝奈子さんは1つ深呼吸をして「頑張る」とガッツポーズをしながら決意をあらわにする。


輝奈子さんは俺にもう一つの悩みも打ち明けてきた。輝奈子さんは「今介護の仕事と接客で迷っているの。どうしたらいい?」と不安そうな表情で俺に聞く。俺は「自分で決めることやけど、アニキは接客が向いとると思う」と言った。


輝奈子さんは「そうよなぁ。でも結婚した後を考えるなら、再就職しやすいし介護に行っとくのもありかなぁって」と言ってきた。俺は「それもいいけど、したい仕事した方がいいよ」と言った。彼女の幸せが第一である。輝奈子さんは考え込んだように黙っている。


暫く考えていただろうか。心配になって俺は「どうした?悩みか?」と聞いた。輝奈子さんは、「違うよ。私決めた。介護する。優斗の役に立ちたいし、親の介護もあるからね」とほほ笑む。そんなこと輝奈子さんが考えなくてもいいのではないだろうか。やらなきゃいけないなら俺がするし、彼女には幸せでいてほしい。どれほどのことを一人で背負おうといているのだろう。


そんなこんなでカラオケに着いた。いつも通り輝奈子さんはパウダースノーを歌う。昔より声が高くてこんなかわいい声の人が彼女になってくれたのかと実感する。


そしてやっぱり輝奈子さんの声はかわいい。跳ねるような声質なのに太くも細くも声を出せるみたいだ。相変わらず変幻自在な声をしていて、そういえばアニキだったと思い出す。まぁ可愛いからいいやなんて考えながら、いつも通りHachimitsuSakuhinのかわいらしい歌をデュエットする。


気付くと7時になっていた。いつも通り歩いて帰る。多くの場合だと彼女がヒールで歩いてきて足痛いから歩けないっていうお話があるけど、輝奈子さんはそうならない。だってスニーカーだし、アニキだから。


ただ、少しばかり眠たそうな気がする。楽しそうに踊りすぎたのだろう。カラオケがダンスホールしてた。彼女がカラオケに行くといつだってダンスホールだし、彼女がいれば何だって大丈夫だし、彼女のおかげで愛を知れた。


帰りながらHachimitsuSakuhinハッサクのスノーワルツを歌っている俺にハモらせるように輝奈子さんも口ずさむ。冬の寒さが吹き付ける。輝奈子さんは、「寒いね」と言いながら右手を差し出す。俺は、しばらくしてから気づいて「そうだな」といって、輝奈子さんの右手を握る。やっぱり歩きにくい。でも、輝奈子さんのかわいらしい握力や細くて柔らかい手の感触、ほのかなぬくもりが感じられて安心した。俺は、この瞬間を噛み締めて密かな幸せを感じていた。


「ああ、幸せ」と輝奈子さんの口から漏れていた。俺は「どうした?」と言った。だって、いきなり「幸せ」だとかいうのだもの。輝奈子さんは「幸せだなぁ」と感じていたのだろうか、味わうように「いやぁ。幸せだなぁって」と言った。


俺は残念な人を見るかのように「そうか」と投げやりな感じで言った。輝奈子さんは「優斗はどうなの?」と聞いてきた。俺は「言わなきゃダメ?」と聞いた。輝奈子さんは俺をよく知っているのできっと幸せに思っていることはわかっているだろうに。


輝奈子さんは小悪魔な笑みで「どう思っているのか聞きたいな。優斗のことはよく知っているからどう思っているか予想はできるけど、お互いに言葉で伝えあっていきたいなって思ってるの」と言った。


俺は照れたように、でも本音から「こんなきれいな人と歩きながら、幸せじゃないなんて言えるわけないだろ。いまでも夢なんじゃないかって不安になるくらいだよ。ふらっといなくなるなよ」と言った。輝奈子さんの顔が耳まで真っ赤に染まってる気がする。こんなかわいい反応をほかの人が見るのを許せそうにないのはそれほど惚れているということなのだろう。


その様子を見て俺は「かわいいな。アニキの恋愛に慣れてそうで、実は凄くピュアな反応をするところ好きだぞ」と言う。輝奈子さんは「優斗ばっかりずるい」と思ったのだろうか、「優斗の恋愛に慣れてないふりして、たまに見せてくるギャップの方がずるいもん。反則だよ」と言い返してきながら、頬を膨らます。


俺は輝奈子さんの膨らんだ頬を見て「ぷにぷにでかわいい」と言った。輝奈子さんは「そういうとこがずるいんだよ」と言った。やっぱりかわいい。どの反応も俺のものだと宣言したくなる。


「飯どうする?」と俺が聞くと輝奈子さんは「ラーメンでも食べる?」と聞いてきた。俺は「いいね」と提案にのった。で、俺たちはラーメン屋に向かうことにした。ラーメン屋への道中も他愛もない話をしながら歩く。いつか離れてしまう日が来るのだろうか?それでもやはり一生一緒にいられることを願ってしまう。


そんなことを考えながら歩いているとあっという間にラーメン屋に着いた。輝奈子さんはこのお店に来たことがないのか、メニューを見ながらどれにしようかと悩んでいた。俺は、よく来ているので、ささっと食券を買った。輝奈子さんは「優斗は何にしたの?」と聞く。俺は投げやりに「豚骨ラーメン」と答えた。私は「じゃあ、私も同じのにする」とほほ笑んで返してくる。


俺は「そうか」といつもの無気力な返しをした。輝奈子さんも自分のお金で食券を買う。俺と同じ豚骨ラーメンを。アニキは元から自分で決めることにかなりの抵抗を感じてしまうところがある。


お腹が空いた。輝奈子さんが辛もやしを取ってこようとする。俺は「俺の分も取ってきて」といった。輝奈子さんは「しょうがないなぁ」といった様子で持ってくる。彼女が作った料理を「食べて」と持ってくる姿を妄想して天にも昇るような気分の中、ラーメンが来た。


輝奈子さんはラーメンをすすって食べると「美味しいね」と俺に微笑みかける。俺はぎこちない笑顔で「そうだな」という。いつも通り言葉が少ない。本当は伝えたいことがたくさんある。でも伝えきれる自信がなくて言葉が少なくなってしまう。続いて辛もやしを食べる輝奈子さん。いつもならもっと食べられる気がするが、胸が満たされて満腹になる。


暗くなった細い道を2人で帰る。古びた公園。汚いトイレ。冬の寒気が俺たちを凍えさせる。輝奈子さんは俺に「飲み物なくなったから買いに行きたい」と言った。いつもなら「先帰るね」と言っている。でもアニキは女の子になっているし危なそうだから付いていこう。なんて考えながら歩いている。


俺は「一緒に買いに行くか?」と聞く。初めてかもしれない。俺から一緒に行こうって言ったのは。大体誘うのはアニキだったから。決定権は俺だったけど。輝奈子さんは興奮してとびっきりの笑顔で「うん。もちろん。ありがとう」と言って俺に微笑む。女神が降臨したかと思った。いや、いつも女神が横にいる。この世に存在する何よりも美しく感じられる。


寒い。でも、輝奈子さんと一緒に歩けるこの時間がかけがえのないものに思えて、離れたくなかった。輝奈子さんは、いつも通りジャスミン茶を買う。買い物が終わったので、俺の家に向かう。輝奈子さんは俺に「寒いね」と話しかける。俺はなんて返すか考えつかずに「そうだな」と返した。


暗くなった夜道を歩きながら俺の家に向かう途中、輝奈子さんは「ねぇ。優斗の家の近くの公園でしたいことあるから、寄ろうよ」と言った。照れているのか声が震えていた。俺は「何がしたいかわからないけど、いいよ」と言った。アニキは何をしようとしているのだろう。


公園にある公衆便所の明かりだけが俺たちを照らす。輝奈子さんは立ち止まると、ベンチに座り、「座って」と俺に促す。俺は怪訝な顔をしながら座る。輝奈子さんは不意打ちのように俺のおでこにキスをして、「大好きだよ」と伝えてくる。俺も輝奈子さんのおでこにキスをし返す。かわいい。


輝奈子さんは急にディープキスをしようとしている。俺は「何をする。こいつ」みたいな顔をしたけど、無理あり唇を重ねてくる。急すぎるだろう。俺は目で「幸せだけど急だぞ」みたいに訴えかけた。輝奈子さんは俺の唇の間に舌も入れてくる。


多くのラブストーリーではキスは甘酸っぱいとかサクランボみたいな味だとか言われているけど、俺たちのキスの味は紅ショウガと豚骨ラーメンの味だった。そういえば晩御飯豚骨ラーメンだった。何でいまするんだよ。もっといい味の時あるだろう。


何秒キスをしていたのだろう?わからないけど、誰にも見られてはいないはずだよな。少し不安だ。冷やかされませんように。口を離したのは輝奈子さんからだった。口を離した瞬間、俺は「うまかったけど、くっさ」と言った。輝奈子さんも「そうだね。プリンでも食べてすればよかったかも」と返してくる。でも、好きだから仕方ない。それでも、にんにく食べた後にキスするのはなかなかにクレイジーだと思う。


俺は「なぜニンニクあんなにドバドバ入れてたのにキスするんだよ。しかもディープな方」とツッコミを入れる。輝奈子さんは「それを言うなら優斗もめっちゃ入れてたよね?」と返してくる。俺は「いや、キスするとは思ってなかったし、なんで今日にしたの?」と聞く。


輝奈子さんは「豚骨ラーメン味のキスって面白いよね?と思ったから」と微笑んでいる。俺は「萌えるシーンが独特」と返した。


輝奈子さんは「そうだよね。でも、小説のネタにもしたいから」と返してきた。豚骨ラーメンは美味しかった。でも、キスの前に食べる必要はないかもしれない。今度はスイーツだったらいいな。アニキはフルーツ結構苦手と言っていた気がする。大丈夫だろうか。


そんなこと考えながら、俺は「ネタにするのかよ」とツッコミを入れた。寒い。輝奈子さんは「寒いね。帰ろっか」と俺に言う。俺は「ずっと寒かったよ」と抗議した。輝奈子さんは「キスしたときは暖かかったでしょ?」といたずらっぽく返す。俺は「そうだな」と返した。こんな日々がいつまでも続きますように。なんて思いながら俺の家に帰る。


家に着いた。輝奈子さんは俺に「寒いね。お風呂貯めようよ」と提案してきた。俺は「そうしようか。先入る?」と聞いた。輝奈子さんは嬉しそうに「今日は優斗が先でいいよ。洗ってあげようか?」と茶化してくる。


俺は「何考えてんだよ」と言う。輝奈子さんは俺の言葉に「優斗は私の裸見ているでしょ?」と返してきた。そんなやり取りをしながら俺は風呂を貯め始めた。俺は「俺そんなに自分の体に自信ないんだけど。何で見たいの?」と怪訝な表情で聞いた。本当にわからない。


輝奈子さんは「だって彼氏の身体だよ。世界で一番かっこいいに決まってるじゃん」と力強くこぶしを握って返してくる。俺は根負けして「しょうがねぇな。ちょっとだけだぞ」と妥協感満載で答える。


輝奈子さんは俺の金的と竿を見ている。俺の竿はそこまで大きくもないし、剥けきってはいない、まだ本気を出してない状態だった。金的は輝奈子さんの手のひらに乗るか乗らないかぐらいの大きさだった。輝奈子さんの手小さくてかわいいな。なんかムラムラしてしまいそうで「いつまで見てるんだよ。もういいだろ?」と言って俺がズボンを上げようとする。


輝奈子さんは名残惜しそうに「わかった。私も脱ぐから。もっと見せて」という。俺は「そんなに見たいの?」という目をした。だって、今やばいし、ドキドキするからやめてほしい。輝奈子さんはひらめいたように「わかった。一緒にお風呂入ろ」と言った。


俺は心底不思議で「なんで?」と返す。輝奈子さんは「男だった頃よく銭湯行ったでしょ?今は一緒に入れないから」と言ってきた。確かにそれはそうだけれども。


俺は「確かにそうなんだけど。輝奈子さんの体見てしまったら我慢できないかも」と言った。輝奈子さんは不思議そうに「なんで輝奈子って呼ぶの?いつもアニキって呼んでるのに」と聞いてきた。


俺は本心から「女の子になった事、改めて認識した上で一緒に入るのはやばい」と言った。あの時とは肉体が違う。異性と風呂入るシチュエーションなんてないじゃないか。不安だよ。「危ないからやめろ」と言いたくなってしまう。それでも、輝奈子さんはかわいいし、同じ時を味わっていたいという気持ちもある。もちろん、男子の本音としては、彼女の裸をみたい気持ちもある。でも、こんなに積極的にこられると不安になる。


輝奈子さんは「でも中身は同じだよ。少し大胆になってしまうかもしれないけど」と言ってきた。俺は呆れた様子で「だからだよ」と言った。輝奈子さんになってからだいぶ大胆になった気がする。


輝奈子さんは「だって優斗かっこいいんだもん。あと、お風呂そろそろ湧くでしょ?」と言った。俺は「もうそんなに経つのかよ」と言った。輝奈子さんは悪戯っぽく微笑みながら「決断の時が来たんだよ」と言ってくる。ずるいよ。俺は「絶対他の人の前でするなよ」と目で訴えながら、「何言ってんだよ」とツッコミを入れる。


輝奈子さんは決め顔で「さあ。いまこそ」と言ってきた。俺は呆れたように「まあ、でもアニキには色々見られているしな。でもいいのか?」と聞いた。普通に銭湯には行っていたのでいいんだけど。輝奈子さんはいいのだろうか。


輝奈子さんは「もちろん」と返してきた。俺は覚悟を決めて「俺はいいけど、止まれなくなっても知らないからな」と言った。輝奈子さんは「何かあっても2人で乗り越えよう」と格好をつけて返してくる。力こぶを作りながら。ふにゃふにゃな腕だけど。柔らかそう。


こうして、2人で風呂に入る。まだ2週間ぐらいなのに距離が縮まりすぎている気もするけどそれはそれでいい。本当にこれでいいのだろうか。


俺の体を輝奈子さんは見慣れているかもしれないが、別にマッチョで腹筋が割れているわけでも、細いわけでもない。中肉中背で毛深い。自分には不要だと思っている。


輝奈子さんの体を見るのはあの事故の時含めて2回目だが、やはり見事なものだ。どこにも毛が生えていないし、真っ白ですべすべな肌。胸も大きいし、華奢で守りたくなる感じだ。


俺は先に髪を洗っている。輝奈子さんは先に自分の体を洗いながら、俺は髪を洗いながら、2人で入ると狭いんだなぁと感じていた。輝奈子さんは「意外と狭いね」とほほ笑んでいるような声色で言った。


俺は「そんなことわかっていただろ?」とツッコミを入れる。少し動くだけで体が触れ合ってしまう。輝奈子さんのすべすべな肌の感触が触れ合っている実感を高めていく。輝奈子さんは悪戯っぽい声で「なんか、体同士が当たって照れくさいね」と話しかけてくる。俺は「やめろよ。意識しちゃうだろ?」と言った。言葉は不本意そうなのに言い方はそこまで不本意と言うわけでもない。ただエクスカリバーが隆起しそうになってしまう。


輝奈子さんは「今日はとことん大胆になってやるんだから」といたずらっぽく言う。俺は「そうか。無茶はするなよ」と言った。俺は小心者だ。人に対して思慮深くありすぎるから悩む。輝奈子さんは無茶しがちだ。俺が手綱を握っておく必要もあるのかな。


俺は「先シャワー使う?」と聞いた。輝奈子さんは「先に使っていいよ。シャンプー流さないと見えないでしょ?」と返してくる。俺は「そうか。ありがとう」とシンプルに言って髪を流し始める。輝奈子さんは何をしているのだろう。


髪を流し終わった俺は言葉少なに「シャワー」と言った。輝奈子さんも「ありがとう」と返して、体を流す。そのまま髪を濡らしていく。三つ編みツインテールができるくらいなので濡らすのに結構時間がかかる。その様子を見て俺は「女子の風呂が長いのってそういうことだったのか」と言った。輝奈子さんは「そうよ。大変なんだから」と返してくる。でも、アニキ昔から風呂長くなかった?女子特有なんて言っているけど絶対嘘だろ。


輝奈子さんはシャンプーを髪に馴染ませながら頭皮を洗う。俺は体を洗っている。たまに擦れる腕が輝奈子の存在を感じさせる。


だいぶ髪も洗えているはずだ。何分洗っていたかなんてわからないけど、輝奈子さんは結構長い間髪を洗っていた。輝奈子さんは俺に「ごめん。髪流してもらえる?見えないし、シャワーどこかわからないから」と言ってきた。なんて罠だろう。俺は呆れたような声で「まじで?」と返す。輝奈子さんは「マジで」と返してきた。見えてないからある程度何してもバレないはずなのに、ヘタレた心が、失いたくない気持ちが行動を自制させる。


そしてまた俺は呆れたような冷めた声で「しょうがねぇ、アニキだ」と言って、輝奈子さんの髪を流す。輝奈子さんは「優斗のそういうところ大好き」と抱き着いて来る。俺は戸惑ってように「おい、急に抱き着くなよ」と言いながら輝奈子さんを受け止めた。輝奈子さんは「だって好きなんだから仕方ないでしょ」と言い返してくる。下腹部に何か柔らかい、ぷにぷにのものが当たっている気がする。


輝奈子さんは悪戯っぽい声で「私のお腹に当たっているのは何?」と聞いてくる。俺は「わかっているでしょ?」と笑いながら返した。輝奈子さんは「もちろん。優斗の胸に当たっているのも何かわかってる?」と返す。俺は「おっぱいだな。そっちだけ言わないのはずるいからな」と言った。


輝奈子さんは「わかった。聖剣エクスカリヴァー」とめっちゃかっこいい英語発音でエクスカリヴァーと言った。やはりアニキだな。発音がめちゃくちゃかっこいい。俺は「めっちゃかっこいい発音で言っているけど、アレだからな」と言った。こういうノリが嫌いではないかもしれない。昔から下ネタは苦手だったけど。


輝奈子さんは「湯船浸かろっか。寒いよね?」と言ってきた。俺は「今更気付いたの?お嬢さん。湯冷めするよ」と今更感満載で言った。


輝奈子さんは親父ギャグが浮かんだのか「でゅふ」みたいな笑い方になった。そんな声でさえ可愛いのはずるいなと感じる。俺は「どうした?親父ギャグでも浮かんだ?」と聞いた。輝奈子さんは「うん。すぐ出てきちゃうの。あ、湯船浸かろうか」と言った。今更気付いたように言ったのはなぜだろう。さっきも入ろうって言っていたよね。


俺は「早く浸かろうぜ」と言った。輝奈子さんは微笑んで「そうだね。入るよ」と言って湯船に浸かる。そして、「ああ、しあわせー」という感傷に浸る。ウチの風呂はいつも通り狭いので、入りそうになってしまったり、ぬくもりを直接感じたりしてしまう。なんでこうなったんだろう。まあ、いいや。


輝奈子さんは悪戯っぽく微笑んで「入りそうになっちゃうね」と言う。そんなアニキに俺は「まあ、入ってはいるな」と一度意味ありげに言葉を止める。輝奈子さんはひらめいたように「せーの。湯船に」と言う。たまたま輝奈子さんと声が重なった。輝奈子さんは「いやいや、聖剣エクスカリヴァーが入りそうになってない?」と言ってくる。


俺は「いや、ごめんよ。そんなつもりは」と言う。アニキに言わせるとアクセントが面白いらしい。輝奈子さんは「いいよ。優斗は私の彼氏でしょ?」とほほ笑む。俺は「そういうとこアニキだなぁ」と言った。


輝奈子さんは「どういうとこ?」とほほ笑んで聞いて来る。俺は「自分自身は何も言わないのに、人には下ネタを言わせようとしてくるズルいところ」と答えた。輝奈子さんには思い知らせなければならない。俺だって男である。


輝奈子さんは余裕の笑みで「確かにそうかも。でも、優斗だって言葉にしてくれない事あるでしょ?聖剣エクスカリヴァーが私の神秘の園へと冒険を進めようとしたときも」と言ってくる。俺はニヤリと微笑んで「狭き門を開きて、今、新境地へと。いざ行かん」と悪ノリした。アニキはたまにこういう悪ノリをしてくれる。俺もこの悪ノリが大好きだ。


狭い湯船の中で膨張した俺の聖剣は今、輝奈子さんの神秘の入口へと歩みを進めていた。松明のない未知なる冒険である。でも、中には入れ切らない。時が来たら、この神秘の扉が開かれるのであろう。なんて心の中でナレーションを入れてみる。輝奈子さんは「我が神秘の扉は然るべき時が来るまで開かれることはない。開けてみたければ、合言葉を言うがよい」と魔王っぽい声で言った。そのノリ痛くないのだろうか?


そんな中二病なノリをして、俺は「のぼせない?」と聞いた。輝奈子さんは「そうだね」と返してくる。輝奈子さんは「拭いてあげるよ」と弾んだ感じで言ってきた。俺は呆れたように「なんでだよ」とツッコミを入れる。輝奈子さんは「だって女の子の髪は拭くのに時間かかるけど、男の子はそうじゃないでしょ?」と言ってきた。俺は「理由になってなくない?」と言った。輝奈子さんは「なら、私が拭きたいから、じゃダメ?」と上目遣いで聞き返す。俺は諦めたように「俺だけ拭いてもらうのはどうなのかな?」と言った。


輝奈子さんは「なら、拭きあいっこしよ?お姉さんが拭いてあ・げ・る」と小悪魔口調で言ってきた。俺は「そういうことじゃないんだよなぁ」とぼやくように言った。輝奈子さんは「そうかなぁ。でも悪くないんじゃない?」と小悪魔みたいな微笑みで言ってきた。


そうして、お互いに拭き合う。輝奈子さんの手はタオルを持って俺の髪を拭き、段々と下へ下へと拭いていく。輝奈子さんの手が俺の聖剣エクスカリバーに触れる。俺は「お、おう」と反応をする。輝奈子さんの手が「懐かしいな、この重量」と俺のエクスカリヴァーにタオルを添えている。


俺は感動して「おっぱいってこんな感じなんだな」と口に出てしまった。なんかよくないことをしているみたいでわくわくしてしまっている。この高揚感は許されないものなのだろう。


俺の手が輝奈子さんの神秘の入口に触れる。輝奈子さんは突然の刺激に驚いて「きゃっ」と反応する。その反応に焦って俺は、「大丈夫か?」と声を掛けた。輝奈子さんは「大丈夫だよ。私の王子様」と返してくる。俺は「その発言恥ずかしくないか?」と冷静に返した。こっちもなんか恥ずかしくなってきた。


輝奈子さんは彼女自身の発言に恥ずかしがっている。どうしよう。かわいい。隠れる穴を探している彼女が。見つからなかったからだろう、とっさにタオルで顔を覆う輝奈子さん。俺は、その反応を見て、「かわいい反応、できるんだな」と茶化す。可愛すぎて茶化すことしかできなかった。


輝奈子さんは「そんなこと言うなんて、もう知らないもん」とほっぺを膨らませて拗ねる。俺は「ごめんよ。可愛すぎてつい」と言いながら、輝奈子さんの膨らんだほっぺをプニっと押す。かわいい女の子から可愛くない音がした。やっぱりかわいい。前もこんなことがあった気がする。いつまで体を拭き合っているのだろう。早く服着ないと風邪引いちゃうよな。そんなことを考えながら、俺はパジャマに着替える。


輝奈子さんは「早く服着ないと風邪ひくかも」と言った。俺は「どっちが言ってんだよ。早く着ろよ」と言った。輝奈子さんは下着を着ただけの状態で抱き着いてきた。俺は「だから服着ないと風邪ひくって」と言ったが、輝奈子さんは「大丈夫。風邪だってこの愛の力には勝てないから」と言い返す。完全に夫婦漫才だ。俺は「はいはい。服着ましょうね」と子供をあやすように言いながら、輝奈子さんを引きはがす。この子本当に生きていけるのだろうか。なんか、俺になつきすぎている気がする。なんて、年上の彼女に思うことが不思議だった。これから離れるかもしれないのに、彼女はみじんもそんなことを考えていないような素振りをしている。


輝奈子さんも着替え終えた。俺は「なんか見る?髪乾かさなきゃでしょ?」と話しかける。輝奈子さんは「そうだね。ドライヤー借りるね。何見ようか?」と返して、ドライヤーを手に取る。俺は「ならこれ見る?僧侶無双」と言った。このアニメは去年ゲームも出た大人気アニメだ。原作は所謂「なろう系」と言われるものだ。むしろゲームが出てからその評判で知った人も多かった。


オープニングテーマの「六尺メイスのスミレちゃん」は元の小説の作者strength(ストレングス)が歌を歌って、それを絶対音感を持っている作者の友達が楽譜に起こしてできたものらしい。オープニング映像も小説の作者がオフィスソフトを使って作ったものを合成したらしい。


オープニングの「六尺メイスのスミレちゃん」もなかなかいいリズムなのだ。「六尺メイスを振り乱し、駆け巡る」のところで映像の切り替わりが加速し、敵を物理的にぶん殴るシーンが繰り返される。


このアニメを見始めて俺はアニキが同じ題名の小説を書いていたことを思い出して、「そういえばアニキ同じタイトルの作品書いてなかった?」と聞いた。輝奈子さんは「そうだね。多分このアニメ見た後、読んだらわかるんじゃないかな」とごまかす。そして続けて「イエロートパーズ王国とかレッドローズとか出てきたらうちのかも」とヒントだけ出してくる。俺は「なぜごまかすのだろう」と不思議そうな顔をした。


冒頭はゲームの始まりのナレーションっぽいと思う。500年前の魔王のイエロートパーズへの侵攻から勇者の誕生、紫色の髪への偏見、差別など設定はしっかりしているかもしれない。


俺はゲーム版を知らないが、原作は少しだけ読んだ。ゲーム版はMMORPGと呼ばれるもので、主人公スミレで好きなスキルを取って冒険するものになっている。装備にはモンスターを倒して、素材から作る装備とガチャで手に入れる課金装備がある。課金装備は見た目に影響するだけでなく限定ボイスが聞けるという特典がついている。ただし、課金装備には能力はついていない。つまり、見た目用の装備と能力用の装備を両方装備することも可能である。見た目の良いモンスター装備もあったり、装備の合成もあったりする。なかなかに良ゲーと評判である。


なんてぼんやりと画面を見ながら考えていた。俺が「このスミレってアニキが出してたやつじゃない?」と話しかけると、輝奈子さんは諦めて白状する。


「そう。これうちのやつ。ちなみにゲームも出てる。曲は私が作ったし、オープニング映像も私だし、ピアノしてくれたのは東京の友達」


俺は「どんだけだよ。一人と知り合いで作るアニメ化作品唯一だろ」とツッコミを入れる。輝奈子さんは「だって、天才だから」と返してくる。きっと冗談だろう。俺もそんなこと知っているので「収益くれてもいいのよ」と冗談を言う。


今見ているのは1話だが、読んでないところだろう。転生勇者サンシャインの願いとサンシャインの妹である魔王、陽子=ヴァイオレットとの間の約束。四賢候の秘密、その五百年後にスミレが生まれ、ブラウン家に勇者がその2年前に生まれるというストーリーだ。最後はどうなるのだろう。


俺は「アニキって昔は名前のセンス普通だったんだね。技名ひどいけど」と言ってきた。輝奈子さんは「今は同じ名前の人がいじめられないように独特なセンスでつけているだけだから。技名はかっこいいでしょ?」と言い返す。俺は茶化すように「煌めけ、キラキラ☆サンシャインキラ☆リンチョ」と決め顔で言う。輝奈子さんは頭を抱えながらイルカみたいな超音波笑いをする。


輝奈子さんはぼんやりとずっとドライヤーを当て続けていた。4話までぶっ続けで見ていたのだ。輝奈子さんは俺に「恥ずかしくて寝れなくなりそうだから手、繋いで寝よ」と言った。


俺は「なんでだよ」とツッコミを入れた。だって恥ずかしいじゃないか。輝奈子さんは「だって恥ずかしくて寝れないんだもん。紅ショウガキスでもしておく?」と冗談を言う。俺は「紅ショウガキスってなんだよ。豚骨ラーメンキスの親戚か?」と聞いた。私は「豚骨ラーメン食べた後キスしたし、恥ずかしくて顔が紅ショウガみたいに赤いから」と返してくる。俺は特に考えずに妥協感満載で「しょうがないな。まあ、さっきもキスしたし、家でなら」と唇を重ねる。突然輝奈子さんが思いっきりむせた。何があったのだろう。俺は「どうした?」と笑い転げている輝奈子さんを見て、不思議そうにしている。輝奈子さんは「紅ショウガキス、しょうがない」と言って笑い転げている。23時の家の中。


俺も気づいて「なるほどな。アニキらしいな」と精一杯のフォローをした。いたたまれなくなって、輝奈子さんがキスをしてくる。キスは、ほんのり、塩味だった。ポップコーンを食べたからだろう。2回目のキスもしょっぱい味だった。


でも、豚骨ラーメンキスも紅ショウガキスもどちらも一般的とは思えない。バレンタインに煮干しを渡すくらいありえない。いや、バレンタインに煮干しを越中ふんどしに包んで渡すくらいありえない。strength(ストレングス)さんの作品には煮干し告白をバレンタインにするキャラは登場するけども。書いた本人の友人だから知っている。


俺は思い出したように「歯磨かなくていいのか?」と輝奈子さんに聞いた。輝奈子さんは「そうだね」と言って歯を磨き、寝ようとする。何があったのか知らないけど輝奈子さんはフフッと噴き出して寝る。


俺は輝奈子の笑みを幸せに満たされたのだろうと思った。幸せそうに眠る輝奈子さんが可愛くて彼女の頬をぷにぷにと触る。やっぱりかわいい。今日は何したんだっけ?いつか離れる時が来るかもしれないから、一緒にいられる時間を大事にして、ひと時も漏らさないように記憶したいと思った。


俺は今日あったことを思い出しみる。今日はカラオケに行って、彼女のかわいらしい声を聴いて、ラーメンを食べてキスをして、一緒にお風呂に入って、アニメを見て。今彼女の寝顔を眺めている。ラーメンの後のキスの味や、彼女の手がタオル越しに触れた俺の聖剣、神様がくれた彼女の見事な裸体、彼女の肌が触れる感覚を思い出して少しムラムラしてトイレに向かう。


そして、男のルーティーンをして、寝る。少し罪悪感に苛まれながらも、彼女といられる日常にある少しの特別を噛み締める。いや、そんなものじゃない。彼女といられること自体が昔はなかった特別である。そう考えると、この2週間があっという間だし、密度が濃すぎる。


彼女は言葉にしてくれるけど、照れくさいから言えないということも知っているのだろうか。俺は、絶対口にしないと思うけど彼女に「世界で一番幸せにしてもらったのは俺」と言える自信がある。こちらから幸せにできる気はしないけど、それでも絶対幸せにしたい。だって彼女が大好きだから。


俺は小声で「ありがとう」とつぶやいて寝る。



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