悩みとキス
もう、12月に入った。まだ、2週間程度だ。このたった2週間の間に手続きをして、内定先に連絡して、きっと今日にはサターンに内定辞退を申し出なければならない。ああ、忙しい。本当にしたいことはサターンなんだけど、それでは食べていけない。
今日は月曜日だから2限を受けに行く。いつも通り早起きして今日は三つ編みのツインテールにしている。髪の長さは肩にかかるくらい。今日もおしゃれして白いシャツに紺の七分袖、白いカーディガンを着て、紺色のスカートを履いている。久しぶりに伊達政宗モデルのスニーカーを履いている。
母親に「今日も中津浦君の家に泊まるかも」と言っておいた。母は「彼氏じゃないならやめときなさい」と言ってきた。私は「彼は大丈夫」と言っておいた。彼氏になったと言いたかったけど勇気が出なかった。
今日は優斗も来ている。ツインテールの私を見た啓一郎は「かわいいな。今日は別で来たんだね」と言ってきた。確かに、一緒に来たかったなぁ。でも、準備大変だからなぁ。
私は、弾んだ気持ちで「おはよう」と声を掛ける。優斗はいつもの少し暗いトーンで「おはよう。体調大丈夫か?」と聞いてきた。確かに最後にあったのは先週の水曜日だった。確かにTXTで話していたけど体調の話はしていなかった。
私は「大丈夫」と返すが、先週の木曜日バイト中に鼻血が出たことを思い出した。優斗は「そうか」と返してきた。私は優斗に悩みを打ち明けることにした。
「ねぇ、優斗。どうしたらいいのかな?」我ながら「何が?」である。優斗は私の予想通り「何が?」と返してきた。私は「就職先どうしようかなって思って。今のところ介護の方に行こうかなって思ってるんだけど」と打ち明ける。優斗は「それの何が悩みなの?将来性とやりたいことがずれているとか?」と聞いてきた。私は「そう」と返す。
本当はただ話したいだけという心もあるけれど、なんか悩みたいという心もある。ウチの親の説得どうしよう。サターンの方もエージェントさんに悪い気持ちもしながら、将来性を考えると介護の方が生きる気はしている。私の悩みの本質は「親子関係におけるパワーバランスの歪さが子の人生に及ぼす影響」である。そんな論文がありそうだ。あるとするならボウルビーとかメアリー=エインズワースとかの愛着における研究をベースにしているだろう。今の私の親子関係がStrange Situation(奇妙な状況)な気がする。知らない人がいるのも奇妙な状況だが、親子関係で親の権力が強すぎるのも奇妙と感じられる。確かに育てて貰っているので、ある程度はわかるが自分の希望通りに操ろうとするのはどうなのだろうか?
優斗は「それはつらいだろうね。今日も家来る?」と聞いてくれた。私はガッツポーズをしたくなるのを抑えながら「うん。行く」と答えた。私は彼に意識してもらえるように手を繋いだ。優斗は戸惑った様子で「いいのか?」と聞いてきた。先週告白したのに忘れているのかしら。
私はにっこり微笑んで「良いに決まってるでしょ。優斗は私の彼氏なんだから」と返す。優斗は少し恥ずかしそうな顔をしているけど嬉しそうで私まで嬉しくなった。彼が自信を持つきっかけになれていたらいいなと心から思う。今日は昼ご飯どうするのだろう?
私は期待した様子で「昼ご飯どうしようか?」と聞いた。優斗はいつもの低めのトーンで「うちで食べるつもり」と言ってきた。私は、明るめのトーンで「そっか」と返す。私昼ご飯どうしよう。何か話したいなと思うのに何も言葉が出てこない。何分経っただろう。
私は沈黙に耐えかねて「カラオケ行こう」と言った。優斗は「いいよ」と返してくる。私は「初めてのカップルとしてのカラオケだなぁ」と感動していた。
「初めてのカップルとしてのカラオケだね」と私が弾んだ調子で言うと、優斗は照れたように「そうだな」と言ってきた。その様子があまりにも可愛らしくて私は思わず抱き着いてしまった。抱き着いた時の優斗の反応は恥ずかしそうだったが嬉しそうに見えた。まぁ、私、美少女だもんね。あっという間に授業が始まって、頭に残らないまま終わった。私、遊んでばかりだけどするべきことはしている。親への報告以外。
実は博文と勝手に結婚させられる可能性がある。毎週水曜日に遊びに行っていたし、小学生の頃からの友人だからという理由で、今週の水曜日に挨拶に連れていかれることになっている。私が女の子に変わったことと博文の結婚相手を探している螺鈿山家の利害の一致みたいな話らしい。本当は断りたいが、断ると角が立ってしまうかもしれない。ああどうしようか。この悩みも優斗に話しておきたい。でも、優斗は明後日バイトがあるらしいし、どうしようか?悩む。まあ、何とかなるか。私には彼氏がいるのだから。行ってから説明しよう。
さて、授業も終わったのでイチャイチャと手を繋いで帰る。恋人繋ぎって距離が近くていいけど、不器用なもの同士だと歩きにくい。その事実に気付いたのか優斗も「これ、歩きづらくない?」と聞いてきた。私は悪戯っぽい笑顔で「そうだね。でも、それがいいの。距離が近くて、あなたの存在を感じられるから」と答えておいた。
だいぶ恥ずかしいこと言ったかもしれない。そう思ったのは私だけではなかったようだ。優斗も「だいぶ恥ずかしいこと言ってない?」と言ってきた。私も自覚しているだけに「そうかなぁ」ととぼけることしかできなかった。
啓一郎が「お二人さんお熱いね」と声を掛けてきた。優斗は「冷やかされるの苦手だな」と言っていた。私は幸せなので「私、今、最高に幸せ。優斗のおかげだよ」と言った。すると、優斗は照れた様子で「やめろよ。俺も幸せではある」と言った。よかった。この様子を見ていた啓一郎は「バカップルかもな」と言ってきた。
私は嬉しかったのでにっこり笑って「そうかもね。私、幸せ」と返しておいた。2人で手を繋いで帰るといつもよりも短く感じる。私は優斗に微笑みながら「幸せだね」と話しかける。優斗は照れた様子で「そうだな」と言ってきた。言葉が少ないのはいつも通りである。
帰りなれた道も関係性で少し違って見えるんだなぁ。ああ、やっぱり優斗がいい。博文の方ができることも私のポンへの理解もあるかもしれないけど、優斗のツッコミは居心地がいい。私が有利になっているからかもしれないけど、優斗の方がいい。ノリが合うのかもしれない。
もっと話したいけど好きすぎて何を話せばいいかわからない。そうだ。私の家事出来るアピールしておこう。いつも通りイヤフォンで音楽を聴きながら歩いている優斗に「前、言ったっけ。私、麻婆豆腐作るの得意なんだ」と自慢げに言った。優斗は「俺も麻婆豆腐得意だよ。麻婆豆腐にナス入れるのもいいよね」と言ってきた。どうしよう。私、ナス苦手なんだよね。頑張って食べれるようになってやるんだから。私は「そうなんだ。美味しそう」と返しておいた。本当はナス苦手なんだけど言えるはずないよね。途中にスーパーがあるのでそこに寄ろうかな。優斗は家で食べるらしいし。私が「スーパーでご飯買ってくるね」というと優斗は「先帰ってていい?終わったらTXTして」と言ってきた。相変わらず優斗は先に家に帰ってしまっていたので、ジャスミン茶とカツオのたたきを買って優斗の家に向かう。
優斗の家に着いたので、「着いたよ」とTXTする。すぐに優斗が来てくれた。優斗の家に入り、手を洗う。優斗は「これで手を拭けよ」と言ってタオルを手渡してきた。このタオルは私の手を拭くまで何を拭いてきたのだろう。あらぬ方向への妄想が止まらない。
そんなことを思いながら、ごはんを準備する。いつも通り、カツオのたたきを食べる。私はオニオンスライスが何気に一番好きかもしれない。もちろん生魚も好きである。優斗は目玉焼きを作っていた。お料理できる彼氏って最高。
食事時って何話すのがいいんだろう?昔なら何も気にせず話せたのに、今は好きすぎて何も話せない。でも、この沈黙が心地よくも思える。何を話そうか。
料理が美味しそうだから「美味しそうだね」と優斗に微笑みかける。優斗は照れたように「そうか。ありがとう」と言ってきた。どうしよう。ナス苦手な話にどう繋げようか。あ、そうだ。私は「優斗って苦手な食べものあるの?」と思いついたことを口走る。
優斗は「しいて言うなら生魚」と言った。微妙に食の好みがずれている。でもいいもん。私頑張るもん。私は優斗の言葉に「そっか。私、ナス苦手なんだ」と返す。優斗は「俺、ナス好きだよ」と言ってきた。私はガッツポーズをしながら「食べれるように頑張るね」と言った。その様子を見た優斗はあきれたように「アニメの世界に生きてるの?」と言ってきた。私は「これがアニメならそれでもいいよ。だって幸せだもの」と返す。
そんなやり取りをして片付けをしてカラオケに向かう。優斗は親と就職のことで揉めたりしなかったのかなぁ。私はいまだに悩んでいる。優斗に聞いて見ようかな。私はイヤフォンをしている優斗に話しかける。「優斗は親と就職のことで揉めなかったの?」と。
優斗は「それほどかな」と返してきた。私は「そっか。私、今、小学生の頃からの友人と結婚させられそうになってるの」と言った。優斗からすると私が別の人と結婚するなんて嫌に決まっているのはわかる。私も優斗と一緒にいたい。私の言葉に優斗は見たこともない目で「輝奈子はどっちがいいの?俺でいいのか?」と聞いてきた。私は「優斗じゃなきゃヤダ」と悲痛な表情で言った。
優斗は「なら、頑張って断れる?」と聞いてきた。私は1つ深呼吸をして「頑張る」とガッツポーズをしながら決意をあらわにする。
私は優斗にもう一つの悩みも打ち明ける事にした。私は「今介護の仕事と接客で迷っているの。どうしたらいい?」と不安そうな表情で優斗に聞く。優斗は「自分で決めることやけど、アニキは接客が向いとると思う」と言ってきた。
私は「そうよなぁ。でも結婚した後を考えるなら、再就職しやすいし介護に行っとくのもありかなぁって」と返す。優斗は「それもいいけど、したい仕事した方がいいよ」と言ってきた。本格的に悩む。資格補助はでかいけど、したいのは接客で、親は介護推しで、親の介護考えるなら、介護だなぁ。介護して事務に転職が無難だね。そうしよう。
考え込んでいると優斗が「どうした?悩みか?」と聞いてきた。私は、「違うよ。私決めた。介護する。優斗の役に立ちたいし、親の介護もあるからね」とほほ笑む。
そんなこんなでカラオケに着いた。いつも通りパウダースノーを歌う。やっぱり下の音が出なかった。まぁ、mid1F~hihiDが私の音域だと思うのでそりゃ出ないよね。その代わり私の十八番は余裕で歌えるので、まぁ許せるラインではある。
そしてやっぱり優斗の歌声はかっこいい。イケボとは違う気がするがハンサムな声をしている。渋いイケボみたいな感じかな。かすれた低音と高音の密度がかっこいい。また、いつも通りHachimitsuSakuhinのかわいらしい歌をデュエットする。
気付くと7時になっていた。いつも同じスニーカーばかり履いているからたまには違う靴も履いてみたい。いつも通り歩いて帰る。多くの場合だとヒールで歩いてきて足痛いから歩けないっていうお話があるけど、私はそうならない。
ただ、お腹すいているし、少しばかり眠たい気がする。楽しく踊りすぎた。カラオケがダンスホールしてた。優斗がいるから愛を知ることができたのかもしれない。
帰りながらHachimitsuSakuhinのスノーワルツを歌っている優斗にハモらせるように私も口ずさむ。冬の寒さが吹き付ける。私は、「寒いね」と言いながら右手を差し出す。「できれば車道側を歩いてほしいな」と思いながら。優斗は、やっと気づいたのか「そうだな」といって、私の右手を握る。やっぱり歩きにくい。でも、優斗の骨ばった手の感触や優斗の手の温度が感じられて安心した。私は、この瞬間を噛み締めて密かな幸せを感じていた。
「ああ、幸せ」私の口から洩れていた。優斗は「どうした?」と言ってきた。私は「幸せだなぁ」と感じていたので、味わうように「いやぁ。幸せだなぁって」と言った。
優斗は残念な人を見るかのように「そうか」と投げやりな感じで言ってきた。私は優斗が本当に幸せだと思ってくれているか不安になって「優斗はどうなの?」と聞いてみた。優斗は「言わなきゃダメ?」と聞いてきた。私は優斗をよく知っているのできっと幸せに思ってくれていることはわかる。でも言葉で伝えてほしいというのは私の我が儘だろうか?
私は聞きたかったから「どう思っているのか聞きたいな。優斗のことはよく知っているからどう思っているか予想はできるけど、お互いに言葉で伝えあっていきたいなって思ってるの」
と言った。優斗は照れたように「こんなきれいな人と歩きながら、幸せじゃないなんて言えるわけないだろ。いまでも夢なんじゃないかって不安になるくらいだよ。ふらっといなくなるなよ」と言ってきた。どうしよう。こっちが照れてきた。耳まで真っ赤に染まってる気がする。
その様子を見た優斗が「かわいいな。アニキの恋愛に慣れてそうで、実は凄くピュアな反応をするところ好きだぞ」と言ってきた。私は「優斗ばっかりずるい」と思ったので、「優斗の恋愛に慣れてないふりして、たまに見せてくるギャップの方がずるいもん。反則だよ」と言い返しながら、頬を膨らます。
優斗は私の膨らんだ頬を見て「ぷにぷにでかわいい」と言ってきた。私は「そういうとこがずるいんだよ」と言った。だって、私が「かっこいい」って言っている数よりも「かわいい」と言ってもらってる数の方が多くてずるいんだもん。
「飯どうする?」
優斗が言ってきた。急に話切り替えるのもずるいんだよね。私は「ラーメンでも食べる?」と聞いた。優斗は「いいね」と言った。こうして私たちはラーメン屋に向かうことにした。
最近は太らないためにラーメンとかカレーとかカロリーの高そうなものは抑えているつもりだったけど、優斗と一緒に行くなら大丈夫だろう。なぜなら、めっちゃ歩くから。私は今日何歩歩いたのか気になったので、スマホを開き、見てみると1万5000歩歩いていた。私の歩幅が小さいのかもしれないが、かなり歩いている。大昔に新宿と新宿三丁目の間を迷って2時間半ウロチョロしたときと同じくらいの歩数だ。あの頃は男だったけど。
ラーメン屋に着いたけど、私はこのお店に来たことがないので、メニューを見ながらどれにしようかと悩んでいた。優斗は、ささっと食券を買っている。私は「優斗は何にしたの?」と聞く。優斗は投げやりに「豚骨ラーメン」と答えてきた。私は「じゃあ、私も同じのにする」とほほ笑んで返す。
優斗は「そうか」といつもの無気力な返しをしてきた。なんか、イチャイチャが足りない。もっとイチャイチャしたい。でも、自分のお金で食券を買う。優斗と同じ豚骨ラーメンを。私は元から自分で決めることにかなりの抵抗を感じてしまうところがある。だから、優斗みたいにリードしてくれる人がいいのだ。
博文もリードしてくれるけど、あの人は保護者であって恋人にはなり得ない。友達に対してひどいが、やはり保護者感が強く異性として意識できない。それを言うとおそらく、「お前男だったじゃないか」というマジレスが帰ってくると思うがそんなことはレリゴー。忘れてしまうのさ。
お腹が空いたので、辛もやしを取ってこようとすると優斗が「俺の分も取ってきて」というので仕方なく持っていく。もう、結婚したら絶対家事してもらうんだから。私の方が何倍も慣れていて作業が速いのだろうが。なんて妄想して天にも昇るような気分の中、ラーメンが来た。
私はラーメンをすすって食べると「美味しいね」と優斗に微笑みかける。優斗はぎこちない笑顔で「そうだな」という。いつも通り言葉が少ない。もっとこうあるじゃん。ないか。内科。続いて辛もやしを食べる。おそらくラー油だと思うがピリッとして美味しい。今度お家で作ってみよう。
暗くなった細い道を2人で帰る。古びた公園。汚いトイレ。冬の寒気が私たちを凍えさせる。私は優斗に「飲み物なくなったから買いに行きたい」と言った。いつもなら、きっと「先帰るね」と言ってくるのだろう。でも私女の子になっているしどうなるかな。なんて考えながら歩いている。
優斗は「一緒に買いに行くか?」と聞いてきた。初めてだ。優斗から一緒に行こうって言ってくれたのは。大体誘うのは私だったから。決定権は優斗だったけどね。私は興奮して「うん。もちろん。ありがとう」と言って優斗に微笑む。
寒い。でも、優斗と一緒に歩けるこの時間がかけがえのないものに思えて、離れたくなかった。私は、いつも通りジャスミン茶を買う。買い物が終わったので、優斗の家に向かう。買ってからホットココアでも良かったなぁと思った。私は優斗に「寒いね」と話しかける。優斗は投げやりに「そうだな」と返してきた。
暗くなった夜道を歩きながら優斗の家に向かう途中、私は「ねぇ。優斗の家の近くの公園でしたいことあるから、寄ろうよ」と言った。照れて声が震えたかもしれない。優斗は「何がしたいかわからないけど、いいよ」と言ってくれた。
公園にある公衆便所の明かりだけが私たちを照らす。私は立ち止まると、ベンチに座り、「座って」と優斗に促す。優斗は怪訝な顔をしながら座る。私は不意打ちのように優斗のおでこにキスをして、「大好きだよ」と伝える。優斗も私のおでこにキスをしてきた。かわいい。
私は止まれなくなってディープキスをしようとする。優斗は「何をする。こいつ」みたいな顔をしてたけど、無理あり唇を重ねる。優斗は目で「幸せだけど急だぞ」みたいに訴えかけてきた。でも私は止まれない。私は優斗の唇の間に舌も入れてみる。
多くのラブストーリーではキスは甘酸っぱいとかサクランボみたいな味だとか言われているけど、私たちのキスの味は紅ショウガと豚骨ラーメンの味だった。そういえば晩御飯豚骨ラーメンだった。
何秒キスをしていたのだろう?わからないけど、誰にも見られてはいないはずだし、いいよね。口を離したのは私からだった。口を離した瞬間、優斗は「うまかったけど、くっさ」と言った。私も「そうだね。プリンでも食べてすればよかったかも」と返す。でも、好きだから仕方ない。
優斗は「なぜニンニクあんなにドバドバ入れてたのにキスするんだよ。しかもディープな方」とツッコミを入れてくる。私は「それを言うなら優斗もめっちゃ入れてたよね?」と返す。優斗は「いや、キスするとは思ってなかったし、なんで今日にしたの?」と聞いて来る。仕方ないじゃん。大好きが止まらなくなってしまったんだもの。
私は「豚骨ラーメン味のキスって面白いよね?と思ったから」と返す。我ながら変な人だわ。優斗は「萌えるシーンが独特」と返してきた。わかる。それな。でも、私自身も小説書いているから、面白い体験したいんだもの。だってこれはノンフィクションだもの。
私は「そうだよね。でも、小説のネタにもしたいから」と返す。豚骨ラーメンは美味しかった。でも、キスの前に食べる必要はないかもしれない。今度はパフェにしようかな。でも、私フルーツ結構苦手なんだよね。大丈夫かな。
そんなこと考えていると、優斗は「ネタにするのかよ」とツッコミを入れてきた。そうだろうね。私も知っている。
私は「寒いね。帰ろっか」と優斗に言う。優斗は「ずっと寒かったよ」と抗議してきた。私は「キスしたときは暖かかったでしょ?」といたずらっぽく返す。優斗は「そうだな」と返してくる。こんな日々がいつまでも続きますように。なんて思いながら優斗の家に帰る。
家に着いた。ムラムラしてしまう。そこで、私は優斗に「寒いね。お風呂貯めようよ」と提案する。優斗は「そうしようか。先入る?」と聞いて来る。私は嬉しくなって「今日は優斗が先でいいよ。洗ってあげようか?」と茶化してみる。
優斗は「何考えてんだよ」と言ってくる。それはそうだなぁ。でも優斗は私の裸見ているのにずるいと思ってしまうのだ。私は優斗の言葉に「優斗は私の裸見ているでしょ?」と返す。
そんなやり取りをしながら優斗は風呂を貯め始めた。優斗は「俺そんなに自分の体に自信ないんだけど。何で見たいの?」と怪訝な表情で聞いてきた。私は「だって彼氏の身体だよ。世界で一番かっこいいに決まってるじゃん」と力強くこぶしを握って返す。優斗は「しょうがねぇな。ちょっとだけだぞ」と妥協感満載だ。
私は彼の金的と竿を見ることにした。彼の竿は目測9cm、剥けきってはいない、まだ本気を出してない状態だった。金的は私の手のひらに乗るか乗らないかぐらいの大きさだった。少しでも勃ってしまうと片手では隠せないだろう。
「いつまで見てるんだよ。もういいだろ?」
そう言って彼がズボンを上げようとする。私は名残惜しそうに「わかった。私も脱ぐから。もっと見せて」という。優斗は「そんなに見たいの?」という目をしている。私はひらめいたように「わかった。一緒にお風呂入ろ」と言った。
優斗は「なんで?」と返してきた。その様子は心底不思議そうだった。私は「男だった頃よく銭湯行ったでしょ?今は一緒に入れないから」と言った。優斗は「確かにそうなんだけど。輝奈子さんの体見てしまったら我慢できないかも」と言ってきた。なぜいきなり輝奈子さん呼びになったのだろうか?私は不思議に思って「なんで輝奈子って呼ぶの?いつもアニキって呼んでるのに」と聞いた。
優斗は「女の子になった事、改めて認識した上で一緒に入るのはやばい」と言ってきた。確かにあの時とは肉体が違う。それでも、優斗はかっこいいし、同じ時を味わっていたいという気持ちもある。
私は「でも中身は同じだよ。少し大胆になってしまうかもしれないけど」と言った。優斗は呆れた様子で「だからだよ」と言ってきた。なんでバレているんだろう。
私は「だって優斗かっこいいんだもん。あと、お風呂そろそろ湧くでしょ?」と言った。優斗は「もうそんなに経つのかよ」と言ってきた。私は悪戯っぽく微笑みながら「決断の時が来たんだよ」と言った。
優斗は「何言ってんだよ」とツッコミを入れてくる。私は決め顔で「さあ。いまこそ」と言った。優斗は呆れたように「まあ、でもアニキには色々見られているしな。でもいいのか?」と聞いてきた。
私は「もちろん」と返す。優斗は覚悟を決めたように「俺はいいけど、止まれなくなっても知らないからな」と言ってきた。私は「何かあっても2人で乗り越えよう」と格好をつけて返す。力こぶを作りながら。ふにゃふにゃな腕だけど。
こうして、2人で風呂に入る。まだ2週間ぐらいなのに距離が縮まりすぎている気もするけどそれはそれでいい。と言うよりも優斗にふさわしい人になりたくて頑張って今がある気もしている。
優斗の体はいつも通り見慣れたものだったけど、かっこよかった。別にマッチョで腹筋が割れているわけでも、細いわけでもない。中肉中背だけど毛深さが男性らしくてかっこいい。自分には不要だったけど、優斗には似合っている。
優斗は先に髪を洗っている。私は先に自分の体を洗いながら、2人で入ると狭いんだなぁと感じていた、私は「意外と狭いね」とほほ笑んで言った。
優斗は「そんなことわかっていただろ?」とツッコミを入れてくる。少し動くだけで体が触れ合ってしまう。濡れて撫でつけられた毛の感触が優斗と触れ合っている実感を高めていく。私は悪戯っぽい顔で「なんか、体同士が当たって照れくさいね」と微笑みかける。優斗は「やめろよ。意識しちゃうだろ?」と言ってきた。言葉は不本意そうなのに言い方はそこまで不本意と言うわけでもないようだ。優斗のこういうツッコミが大好きだ。
私は「今日はとことん大胆になってやるんだから」とほほ笑む。優斗は「そうか。無茶はするなよ」と言ってきた。やっぱり優しい。人に対して思慮深くありすぎるから悩むのかもしれない。そんな優斗だからこそ私は恋した。
優斗は「先シャワー使う?」と聞いてきた。私は「先に使っていいよ。シャンプー流さないと見えないでしょ?」と返す。優斗は「そうか。ありがとう」とシンプルに言って髪を流し始める。私は特にできることがないので、その様子を眺める。していることが変態かもしれない。でも、一緒の時間を過ごしたいし、同じ体験を共有したいという行動理念に基づいた行動である点は了承してほしい。
髪を流し終わった優斗は「シャワー」と言った。おそらく「シャワー使っていいよ」という意味だろう。私も「ありがとう」と返して、体を流す。シャワーが暖かくて気持ちよかった。そのまま髪を濡らしていく。三つ編みツインテールができるくらいなので濡らすのに結構時間がかかる。その様子を見た優斗は「女子の風呂が長いのってそういうことだったのか」と言った。私は「そうよ。大変なんだから」と返す。実際は男だった時と大して時間は変わっていない。元から長風呂傾向だから。
私はシャンプーを髪に馴染ませながら頭皮を洗う。水を吸った髪の毛は普段の髪の毛よりも重たい。まぁ、2週間も髪の毛を洗っていると慣れるけど。優斗は体を洗っているのだろうか、たまに擦れる腕が優斗の存在を感じさせる。まるでお化けみたいな言い方になったけど、目をつむって人と触れ合うとそんな感じになるであろう。
だいぶ髪も洗えたと思う。何分洗ってたんだろう。私は優斗に「ごめん。髪流してもらえる?見えないし、シャワーどこかわからないから」と言った。嘘じゃない。本当に見えないから。優斗は呆れたような声で「まじで?」と返してくる。私は「マジで」と返す。
そしてまた優斗は呆れたような冷めた声で「しょうがねぇ、アニキだ」と言って、髪を流してくれた。私は「優斗のそういうところ大好き」と抱き着く。優斗は戸惑ったように「おい、急に抱き着くなよ」と言いながら私を受け止めてくれた。私は「だって好きなんだから仕方ないでしょ」と言い返す。下腹部に何か硬いものが当たっている気がする。
私は悪戯っぽい声で「私のお腹に当たっているのは何?」と聞く。優斗は「わかっているでしょ?」と笑いながら返してくる。私は「もちろん。優斗の胸に当たっているのも何かわかってる?」と返す。優斗は「おっぱいだな。そっちだけ言わないのはずるいからな」と言ってきた。
私は「わかった。聖剣エクスカリヴァー」とめっちゃかっこいい英語発音でエクスカリヴァーと言った。優斗は「めっちゃかっこいい発音で言っているけど、アレだからな」と言ってきた。こういうノリが好きかもしれない。
私は「湯船浸かろっか。寒いよね?」と言った。優斗は「今更気付いたの?お嬢さん。湯冷めするよ」と今更感満載で言ってきた。別に能とかはしていない。ノー、イッツノット能。そんなことはエビバディノウ。親父ギャグがすぐに出てしまう。
私は頭に浮かんだ親父ギャグで「でゅふ」みたいな笑い方になった。優斗は「どうした?親父ギャグでも浮かんだ?」と聞いてきた。私は「うん。すぐ出てきちゃうの。あ、湯船浸かろうか」と言った。今更気付いたように言ったのがポイントだった。
優斗は「早く浸かろうぜ」と言ってきた。私は微笑んで「そうだね。入るよ」と言って湯船に浸かる。そして、「ああ、しあわせー」という感傷に浸る。相変わらず狭いので、入りそうになってしまったり、ぬくもりを直接感じたりしてしまう。
私は悪戯っぽく微笑んで「入りそうになっちゃうね」と言う。そんな私に優斗が「まあ、入ってはいるな」と一度意味ありげに言葉を止めたので、私は「せーの。湯船に」と言う。たまたま優斗と声が重なった。私は「いやいや、聖剣エクスカリヴァーが入りそうになってない?」と言う。
優斗は「いや、ごめんよ。そんなつもりは」と独特なアクセントで言う。「ごめん」の「め」が強くなるのが独特な気がする。私は「いいよ。優斗は私の彼氏でしょ?」とほほ笑む。優斗は「そういうとこアニキだなぁ」と言ってきた。
私は「どういうとこ?」とほほ笑む。優斗は「自分自身は何も言わないのに、人には言わせようとしてくるズルいところ」と答えてきた。これは思い知らせなければならない。私をなめると痛い目を見るんだから。いや、イタイ目かもしれない。
私は「確かにそうかも。でも、優斗だって言葉にしてくれない事あるでしょ?聖剣エクスカリヴァーが私の神秘の園へと冒険を進めようとしたときも」と優斗に返す。優斗はニヤリと微笑んで「狭き門を開きて、今、新境地へと。いざ行かん」と言ってきた。優斗はたまにこういう悪ノリをしてくれる。私もこの悪ノリが大好きだ。
狭い湯船の中で膨張した優斗の聖剣は今、私の神秘の入口へと歩みを進めていた。松明のない未知なる冒険である。でも、中には入れ切らない。時が来たら、この神秘の扉が開かれるのであろう。なんて心の中でナレーションを入れてみる。私は「我が神秘の扉は然るべき時が来るまで開かれることはない。開けてみたければ、合言葉を言うがよい」と魔王っぽい声で言った。
そんな中二病なノリをしていたら、優斗が「のぼせない?」と聞いてきた。私は「そうだね」と返す。言ってから感じたが、確かに熱い気がする。中二病みたいなノリをしたからかな?恥ずかしいからか顔から火が出せそうだ。今出たら2人とも大やけどだろう。
私は「拭いてあげるよ」と弾んだ感じで言った。優斗は呆れたように「なんでだよ」とツッコミを入れてくる。私は「だって女の子の髪は拭くのに時間かかるけど、男の子はそうじゃないでしょ?」と言った。優斗は「理由になってなくない?」と言ってきた。私は「なら、私が拭きたいから、じゃダメ?」と上目遣いで聞き返す。優斗は諦めたように「俺だけ拭いてもらうのはどうなのかな?」と言ってきた。
私は「なら、拭きあいっこしよ?お姉さんが拭いてあ・げ・る」と小悪魔口調で言った。優斗は「そういうことじゃないんだよなぁ」とぼやくように言った。私は「そうかなぁ。でも悪くないんじゃない?」と小悪魔みたいな微笑みで言った。
そうして、お互いに拭き合う。私の手はタオルを持って優斗の髪を拭き、段々と下へ下へと拭いていく。私の手が懐かしい重量に触れる。すると、優斗は「お、おう」と反応をする。私は自分自身が女の子に変わってしまったことを再認識する。
私が「懐かしいな、この重量」と優斗のエクスカリヴァーにタオルを添えていると、優斗は感動したように「おっぱいってこんな感じなんだな」と言ってきた。なんかよくないことをしているみたいでわくわくしてしまっている。この高揚感は許されないものなのだろう。
優斗の手が私の神秘の入口に触れる。私は突然の刺激に驚いて「きゃっ」と反応する。その反応に焦ったのか優斗は「大丈夫か?」と声を掛けてくる。私の王子さまは不器用で初心なかわいらしい王子様だ。私は「大丈夫だよ。私の王子様」と返す。優斗は「その発言恥ずかしくないか?」と冷静に返してくる。絶妙に恥ずかしくなってきた。
裸を見られているということよりも、自分の言っていることがだいぶ恥ずかしい気がする。どうしよう。隠れたい。でも隠れる穴はない。とっさにタオルで顔を覆う私。その反応を見て、優斗は「かわいい反応、できるんだな」と茶化してきた。
私は「そんなこと言うなんて、もう知らないもん」とほっぺを膨らませて拗ねる。優斗は「ごめんよ。可愛すぎてつい」と言いながら、私の膨らんだほっぺをプニっと押す。かわいい女の子でありたかったのに可愛くない音がしてしまった。前もこんなことがあった気がする。いつまで体を拭き合っているのだろう。早く服着ないと風邪引いちゃうかも。
私は「早く服着ないと風邪ひくかも」と言った。優斗は「どっちが言ってんだよ。早く着ろよ」と言ってきた。私は「確かに」と言って服を着る。どうしよう。大好きが止まらない。私は下着を着ただけの状態で抱き着いてしまった。だって可愛いんだもの。
優斗は「だから服着ないと風邪ひくって」と言ってきたが、私は「大丈夫。風邪だってこの愛の力には勝てないから」と言い返す。完全に夫婦漫才だ。優斗は「はいはい。服着ましょうね」と子供をあやすように言いながら、私を引きはがす。
私も服を着た。優斗は「なんか見る?髪乾かさなきゃでしょ?」と話しかけてきた。私は「そうだね。ドライヤー借りるね。何見ようか?」と返して、ドライヤーを借りる。ただ、英語的にはドライアーな気がする。なんてことを思ってしまう。
優斗は「ならこれ見る?僧侶無双」と言ってきた。このアニメは去年ゲームも出た大人気アニメだ。原作は所謂「なろう系」と言われるものだ。むしろゲームが出てからその評判で知った人も多かった。
オープニングテーマの「六尺メイスのスミレちゃん」は元の小説の作者strengthが歌を歌って、それを絶対音感を持っている作者の友達が楽譜に起こしてできたものらしい。オープニング映像も小説の作者がオフィスソフトを使って作ったものを合成したらしい。
オープニングの「六尺メイスのスミレちゃん」もなかなかいいリズムなのだ。「六尺メイスを振り乱し、駆け巡る」のところで映像の切り替わりが加速し、敵を物理的にぶん殴るシーンが繰り返される。
このアニメを見始めた時に優斗が「そういえばアニキ同じタイトルの作品書いてなかった?」と聞いてきた。私は「そうだね。多分このアニメ見た後、読んだらわかるんじゃないかな」とごまかす。そして続けて「イエロートパーズ王国とかレッドローズとか出てきたらうちのかも」とヒントだけ出しておく。優斗は不思議そうな顔をしていた。
そう。これ私の作品のアニメ化した奴。でも言えないじゃん。性別変わったのに、前の性別の時に書いた奴がアニメ化したなんて。しかも5年前だよ。
アニメ化を打診された時、「いいですけど、どうしてこれを?」と言ってしまったことを覚えている。書籍化をすっ飛ばしてのアニメ化だったもの。ちなみになぜか先に「ゲームにしていいか?」と打診が来たのも意味が分からない。
確かに冒頭はゲームの始まりのナレーションっぽいと思う。500年前の魔王のイエロートパーズへの侵攻から勇者の誕生、紫色の髪への偏見、差別など設定はしっかりしているかもしれない。だけれども、あの短い小説をどうしてアニメ化しようと思ったのだろう。
確かに番外編のアイデアはたくさん出したけど。あれ、処女作よ。私の熱狂的ファンがいたのかもしれない。そんなわけなくない?昔そんなに読まれてなかったよ。
ちなみにゲーム版はMMORPGと呼ばれるもので、主人公スミレで好きなスキルを取って冒険するものになっている。装備にはモンスターを倒して、素材から作る装備とガチャで手に入れる課金装備がある。課金装備は見た目に影響するだけでなく限定ボイスが聞けるという特典がついている。ただし、課金装備には能力はついていない。つまり、見た目用の装備と能力用の装備を両方装備することも可能である。見た目の良いモンスター装備もあったり、装備の合成もあったりする。なかなかに良ゲーと評判である。
なんてぼんやりと画面を見ながら考えていた。ふと優斗が「このスミレってアニキが出してたやつじゃない?」と話しかけてきた。私は諦めて白状する。
「そう。これうちのやつ。ちなみにゲームも出てる。曲は私が作ったし、オープニング映像も私だし、ピアノしてくれたのは東京の友達」
優斗は「どんだけだよ。一人と知り合いで作るアニメ化作品唯一だろ」とツッコミを入れてくる。私は「だって、天才だから」と返しておく。もちろん冗談である。優斗もそんなこと知っているので「収益くれてもいいのよ」と冗談を言ってくる。
今見ているのは1話だが、前僧侶無双のところからしてくれている。転生勇者サンシャインの願いとサンシャインの妹である魔王、陽子=ヴァイオレットとの間の約束。四賢候の秘密、その五百年後にスミレが生まれ、ブラウン家に勇者がその2年前に生まれるというストーリーだ。最後はスミレがなくなるまでストーリーは続く。
優斗は「アニキって昔は名前のセンス普通だったんだね。技名ひどいけど」と言ってきた。私は「今は同じ名前の人がいじめられないように独特なセンスでつけているだけだから。技名はかっこいいでしょ?」と言い返す。優斗は「煌めけ、キラキラ☆サンシャインキラ☆リンチョ」と決め顔で言ってくる。私は頭を抱えながらイルカみたいな超音波笑いをする。頭が痛くなりそうだ。技としては強い。過去の私のセンスどうなっているんだろう。久しぶりに原作を読むとひどい。ダークネスブレイズとヘルブレイズの設定ガバガバな上に、ベンジャミンの扱いがひどすぎる。最後の方のスミレとハイビスカスのシーンは可愛いけど。
ぼんやりとずっとドライヤーを当て続けていた。髪を触ると焼け焦げるかと思うほど熱かった。髪が長いと言ってもさすがに1時間も当てなくてよかった。4話までぶっ続けで見ていたのだ。私は羞恥で眠れなくなりそうだったので、優斗に「恥ずかしくて寝れなくなりそうだから手、繋いで寝よ」と言った。
優斗は「なんでだよ」とツッコミを入れてきた。私は「だって恥ずかしくて寝れないんだもん。紅ショウガキスでもしておく?」と冗談を言う。優斗は「紅ショウガキスってなんだよ。豚骨ラーメンキスの親戚か?」と聞いてきた。私は「豚骨ラーメン食べた後キスしたし、恥ずかしくて顔が紅ショウガみたいに赤いから」と返す。優斗は「しょうがないな。まあ、さっきもキスしたし、家でなら」と唇を重ねてくる。けど、思いっきりむせた。
紅ショウガキスというワードの後で「ショウガない」なんて言われたら、親父ギャグ浮かんじゃうじゃん。優斗は「どうした?」と笑い転げている私を見て、不思議そうにしている。私は「紅ショウガキス、しょうがない」と言って笑い転げている。23時の家の中。
優斗も気づいたのか「なるほどな。アニキらしいな」と精一杯のフォローをしてくる。いたたまれなくなって、私から優斗の唇を奪った。キスは、ほんのり、塩味だった。ポップコーンを食べたからだろう。
でも、豚骨ラーメンキスも紅ショウガキスもどちらも一般的とは思えない。バレンタインに煮干しを渡すくらいありえない。いや、バレンタインに煮干しを越中ふんどしに包んで渡すくらいありえない。strengthさんの作品には煮干し告白をバレンタインにするキャラは登場するけども。書いた本人だから知っている。
優斗は思い出したように「歯磨かなくていいのか?」と聞いてきた。私は「そうだね」と言って歯を磨き、寝ようとする。ほんのり塩味だったキスと「紅ショウガキス、しょうがない」を思い出してフフッと噴き出して寝る。
優斗は私の笑みを何と思っただろう。明日も楽しみだ




