表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/69

今日は授業に出ないといけない。でも体調が悪い。

いつの間に寝ていたのだろう。昨日お風呂に入って、クレンジングして、シャンプーを流して、リンスを流した後から記憶がない。不安になった私は布団の中から「おはよう。あれ?私昨日の記憶ないんだけど」と優斗に声を掛ける。


「おう。起きたか。安心しきった顔で寝てたよ」と答える彼の顔が赤いのはなぜだろう?よく考えると服の感覚がいつものパジャマじゃない。なんか袖が長いし、足も長い。彼がそんなことをするはずないし、優しいから昨日私の身に何かあったのだろう。


「もしかして、私、昨日風呂場で倒れたりした?」なんとなく冴えた頭で考えると倒れていたとしか思えない。彼に裸を見られたかもしれない。自慢したいぐらいいい体だけど、倒れたことが恥ずかしい。裸見られるのも恥ずかしいけど、迷惑をかけてしまったことがさらに恥ずかしい。


「なんでそう思ったんだ?」と優斗が聞いてきた。彼は気付かないと思っていたのだろうか?頭にのせてくれていた濡れタオル。着替えさせてくれたパジャマ。抜け落ちた昨日の記憶。倒れたか、熱が出て頭を冷やしていたかの2択だろう。そして、常識的に考えれば倒れたとしか考えられない。


睡眠薬を飲ませて強制的に眠らせて襲うことも多くの男性なら考えるかもしれないが、何かを飲まされた記憶もないし、リスクを考えれば昨日襲うメリットは少ない。しかも優斗は優しいのでそんなことしない。しかも、襲う場合、濡れタオルをのせるメリットもない。隠すために濡れタオル置くのだとしても目覚めるリスクを考えるならありえない。


「濡れタオルを頭にのせてくれてたし、着替えもさせてくれたんでしょ?恥ずかしいけど優斗ならいいよ」

なんかちょろい女みたいなこと言っちゃったかもしれない。でも、本心だ。彼はそんな無謀なことはしない。だって、小心者だから。いい言い方をするなら優しいから。


優斗の顔が赤く染まる。トマトみたい。そんなことを考えていたら、優斗は「その、きれいだった。神の奇跡を感じた」と言ってきた。やっぱり倒れてたんだ。


「ごめんね。昨日は心配かけて」本心から優斗には申し訳ないことをしたと思い謝罪する。優斗は「いや、大丈夫。今日の体調どう?」と聞いてきた。色々あっただろうに配慮してくれたんだね。私は「ありがとう。血が足りない感じかな?」と答えておいた。言ってからヴァンパイアみたいだと思った。その思いを察したのか直感で言ったのかはわからないが、優斗は笑顔で腕を差し出して「血、飲む?かわいいヴァンパイアさん」と言ってきた。ヴァンパイアじゃないし、ヴァンパイアだとしても筋肉で腕太くて噛めないよ。


私は頬を膨らませて「ヴァンパイアじゃないもん」と答える。確かに、朝に弱いし、数百年の眠りかというほど眠るし、血を求めているというところではヴァンパイアかもしれない。肌も透き通るほど白いし。考えれば考えるほど私自身がヴァンパイアに思えてきた。違うけど。


膨らんだ私の頬を優斗は、ぷにっと触る。膨れた頬が一気に縮んで空気の漏れ出す音が出る。こんなにかわいい女の子なのに可愛くない音が出てしまった。その様子を見た彼はやっぱりうれしそうなのだ。


「動けそう?」

優斗って優しいな。やっぱり彼が大好きだと思ってしまう。その言葉を聞いて私は、「動ける、と、思ってる」と答えた。


「無理しなくていいぞ。俺は今日バイトあるからどうしようか。何かいる?」優斗って優しいな。本当に心配してくれているのだろう。今日、それ用のものつけてないから、後でつけておこう。彼の迷惑になりたくないから頑張って立とうと思った。


その様子を見た彼は「無理しなくていいからな」と言ってくれた。優斗とだったら老後も安心かもしれない。私は頑張って立ち上がって歩こうとしたが、少しふらついてしゃがみこんでしまった。


「大丈夫?」優斗が腕を出して立てるか聞いてくれた。私は「貧血かもしれない。どうしよう?バイトあるだろうし、迷惑かけたくないよ」と言った。本心から迷惑を掛けたくない。何か私にできることはあるだろうか?立つことさえきつく感じるような症状なのに。


「アニキの危機は俺の危機だし、出来ることはする。何が今欲しい?」優斗が聞いてくれた。私は、「鉄分のウエハース。鉄分が足りてないと思う」と答えた。体が重い。自転車で帰ろうにもふらふらしているのに運転するのは危ない。親に迎えに来てもらうのもいいけど、近くのスーパーまで歩かなきゃいけない。明日はバイトだから、この症状も直さなければ。私は、朝ごはんをどうしようか悩んだ。さすがに作ってなんて頼めない。朝ごはんさえ食べれば薬を飲んで緩和できるかもしれない。昨日は食べに行ったけど今日は本当に血が足りない。昔は血液の濃度が濃かったはずなのにやっぱり血が出ると濃度が減るのかもしれない。


優斗は「買ってくるから待ってて。他に食べたいものある?」と聞いて来た。私は、布団の中から「ジャスミン茶飲みたい。ありがとう」と答える。本当にごめんね。私の体調を心配してなのか優斗は「鍵は持っていかないといけないから、持っていく。出たい時はTXTして」と言って部屋を出ていった。私は「ありがとう。気をつけてね」と返す。


明日はバイトだ。とりあえず鉄分のウエハース食べて、薬飲んで寝よう。今こんなに頭痛いのは血が足りないからだと思っている。過労もあるのかな。昨日告白が成功して、昨日の今日でこんなに弱っているのは本当に何なのだろう?8日間最速お試しコースだったのかな。でも、この前の夢で、永続らしいと知ってるので、キャンセルも考慮に入れられていたのだろうか?


まぁ、これが毎月来るとしてもやっぱりこの性別でいたい。頭は痛い。鯛を食べたい。なんてギャグが浮かぶなんて私は天才。この痛みは天災。でも、何だかこの展開は最高。だって優斗といられるから。


優斗が部屋を出てからどれぐらい経っただろう?寂しい。これからしばらくまた会えないのに会いたくて会いたくて仕方なくなるかもしれない。今までは1人でも大丈夫だったのに。これほどまでに優斗のことを好きになるなんて思いもしなかった。まだ帰ってこないのかな。心配だよ。


大丈夫。彼は帰ってくるから。一昨日見たホラー映画が脳内にフラッシュバックする。それでも、優斗は戻ってくると信じることにした。たまに誰も信じられなくなることもあった。それでも、彼だけは信じられた。


待ちくたびれた頃、優斗が帰って来た。「ただいま。遅くなった」優斗の言葉に涙があふれて映画並みに号泣して「よかった。もう会えないかと思った」と言って抱きついてしまった。


「心配しすぎだよ」優斗は簡単に言うけど、1人残された私の気持ちもわかって欲しい。私出かけられないほど頭痛かったけど。やっと会えた事の喜びで忘れていたけど、時計を見てみると15分しか経っていなかった。ゲームをしていれば一瞬だったはずなのに何もせず寝転がって待つとこんなに長いことがわかった。


ふらつきながら椅子に座り、ポリポリと鉄分のウエハースを食べ、薬を飲むと頭の痛みも減って動けるようになった。私は優斗に「心配かけてごめんね」と謝った。すると優斗は「大丈夫。体調悪い日もあるよね」と言ってくれた。万年心の体調が悪い人は言うことが違うな。なんて私も万年調子が微妙だったから言えない。


優斗っていいなと思った。動けるようになったので荷物を準備する。持って来たものをカバンに詰めて帰ろうとする。一切れのパン、ナイフ、ランプは入っていない。優斗は「帰ろうとしてるけど大丈夫?」と心配してきた。私は「大丈夫。帰れるよ」と返す。優斗は冗談めかした声で「そのかばん、何が入っているの?」と聞いてきた。私は冗談めかせて「一切れのパン、ナイフ、ランプ。なんちゃって」と返す。優斗は「いや、確かに地球は俺らをのせているけども。今はいらんだろ」とツッコミを入れてくれた。私はこういった冗談が大好きである。


荷物も詰め終わったので、「2日間ありがとう。心配させてごめんね」と言って家を出ようとする。時間は9時半を指している。優斗は「また、遊びに来いよ。無理すんな、とか言っても聞かない気がするから、体に気を付けろ」と言ってきた。私は笑顔で「優斗もだよ。無理して倒れたら、私が心配するんだから気を付けてよね。バイト頑張ってね」と言って優斗を抱きしめる。優斗も「ありがとう」と言って抱きしめ返してきた。なんか、遠くに行ってしまう人みたいだなぁと思って、笑いがこみあげてきて「ふふふ」と笑ってしまった。


そんな私の様子を見て優斗が「どうした?」と言ってきた。私は「なんか、遠くに行ってしまう人みたいだなぁと思って」と返す。優斗は「それな」と笑っている。さぁ、帰ろうか。


自転車で帰りなれた道を帰ろうとする。てか、2限と3限あるじゃん。なら、2限一緒に行こうかな。なんとなく、アピールしたくて仕方がない。だってこんなにうれしんだもん。


私は、優斗の腕を引っ張りながら「一緒に2限対面で受けようよ」と言った。優斗は困ったような顔をして「遠隔で受けたい。人苦手だから」といって遠隔で受けようとする。私は諦めずにもう一度「一緒に行こう」と誘う。


それでも、困った表情をして優斗は「遠隔で受ける」という。外に出さなくても幸せであるのは間違いじゃない。でも、東畑に成功したことを伝えるのは義務だと思う。東畑を先攻略するか。そう思いつくと私は東畑の彼女である(さき)に「今日2限対面で受けるよね?」とTXTを送る。


もともとそこまで咲の既読は早いわけではない。だから、話しながらになる。私は優斗に「ねぇ、私、(さき)にお礼を言わなきゃいけないの。一人じゃ伝えきれないから、一緒に来て」と伝える。優斗はしぶしぶといった様子で「しょうがないなぁ。俺も東畑に感謝しなきゃだからなぁ」と言って来てくれた。


大学に着くと、啓一郎が優斗に話しかけてきた。


「中津浦、そっちは彼女さん?」

優斗は戸惑った様子で「そう」と答える。私は、「夜桜輝奈子です」とニコニコした様子で自己紹介をする。啓一郎は「夜桜って夜桜魔沙斗の妹さん?」と聞いて来る。私は「夜桜魔沙斗本人だよ。性別急に変わって名前も変えたの」と答える。


啓一郎は「そんなことあるのか?」といった目をしている。私は「そうだよね。急に言われても処理できないよね?ごめんね」と笑顔で言った。実際私も他人にそんなこと起きると「は?」しか言えない。


「確かに想像しにくいけど、幸せならいいよ」と啓一郎は言う。昔はよく話していたが、優斗に心配かけたくないから一線は引いておこう。優斗は黙って私たちを見ていた。優斗は自分自身に自信が持てていないから嫉妬してしまうかもしれない。例え私が「私を1番幸せにしてくれてるのは優斗だよ」と言ったとしても、他の誰かの方が幸せにできたのでは?っと考えてしまうところがある。


「そろそろ行くね。咲と話すことあるから」と啓一郎に言って咲のほうに向かう。もうすぐ授業開始だけど、一言だけ伝えよう。咲は相変わらず小さくて可愛いサイズの子だった。私は「この前相談乗ってくれてありがとう。私、優斗に告白して成功したよ」と話しかけた。


咲は「よかった。その後どう?」と聞いて来た。私は「昨日、体調崩したけど、彼がめっちゃ優しかった」と答えておいた。私が倒れた時の彼の対応を思い出して、またわくわくしてしまった。今日お友達に誘われたらどうしよう。暇だから遊びに行きたい。でも、優斗に心配かけたくない。


授業が始まるので、当然のように優斗の隣に陣取る。今回は優斗も対面で受けているため、少しだけ新鮮だ。いつもなら友達から連絡が来るはずだから念のため優斗にノートの切れ端に「今日男友達と遊びたいけど、だめ?」と書いて渡す。


優斗は回ってきた紙に驚いたのもあるだろうが、渋い顔をした。だって、彼女が男友達と遊ぼうとしているのだから。私だって優斗が女の人と会うと思うと心配になる。彼は紙に「どんな人?」と書いてきた。私は「小学校からの友人」と書いて渡す。


彼は渋い顔をしている。そこで、優斗から紙を取り戻し、私は「わかってる。不安だよね?でも、彼には説明しないと親からいろいろ言われそうだから」と書いて渡す。彼は相変わらず不安そうな顔をしている。私も理解できるからこそ何かお互いが妥協できるラインを探したい。


授業が終わった瞬間、優斗は「どうしても行かなくちゃいけないのか?」と不安そうに聞いて来る。私は「わからない。でも、バイトを紹介してくれたのは彼だし。今まで助けてくれたのは彼だから」と答える。この答えじゃ彼の不安を煽るだけだ。


だから、私は「私には彼氏がいるからね、と説明するから」と条件を提示する。優斗は「まぁ、それなら」と答えるが、不安そうなので「わかった。一緒に行けそうなときに説明することにするよ」と提案する。優斗は一安心したようだ。


ただ、問題を先送りにしただけに過ぎないことは私が一番知っている。親にもまだ告白が成功したことは言っていない。私の性格は恐ろしくひん曲がっている。「これがいいよ」と言われると絶対それをしないし、「こうしなさい」というのは確実に守るべきだから身の破滅を招くとしてもそうしなければならないと考えてしまう。


私は元から白黒で考えてしまうところがあるため、とても苦労した。さて、どうやって親を説得しようか。いや、言わなくていいかもしれない。どうしよう。


自転車に乗りながら考える。どうせわかってくれないだろうと。だから、思っていることの反対を言うことにした。家に着くと「お帰り」と母親の声が聞こえる。私は「ただいま。中津浦と遊ぶの楽しかった」と返す。これ以上は会話しない。


自分の部屋に戻り小説を書く。気付くと父上も帰ってきた。私は「博文(ひろふみ)君っていいよね。生活力もあるし、もう就職してるから経済力もあるから。結婚するなら博文君がいいよね?」と心底そう思っているかのように話しかける。本当は、中津浦君とがいいし、そうじゃなきゃ嫌だが。父は「そうだな。一緒に焼肉行った時も積極的に肉焼いてくれたし、中津浦君とは味の好み会わなかったからなぁ」と言ってきた。母も「そうね。経済力もあるし、ご両親も知っているからねぇ」と言っている。


私は「このわからずや」と思っていた。普段から私を見ていれば、中津浦君の方が好きであることはわかるはずなのに、なんでわかってくれないのだろう。冷静に考えれば声のトーンだろうが。普段の私の様子を見ていればわかるはずなのに。なんでわからないんだよ。そう思いながら、「そうだよね。結婚の運びもスムーズにいきそうだからいいよね。明日変わった事報告して、結婚の申し込みできないか聞いてみないといけないね。卒業に合わせて結婚式するんでしょ」とわくわくした様子で言った。


さぁ、私の嘘のメッセージに騙されるかどうか見ものですねぇ。母は「結婚までそんなに急がなくてもいいのよ」と言ってきた。どういうことだろう。結構騙されていそうだ。父は「でも、子供欲しいなら早く結婚せんとなぁ」と言った。騙されていやがる。私のことを本当にわかっていない。冷静に考えて理解できる人いるのだろうか。


でも、私は腹が立っている。未だに女子特有のものは終わっていないのだ。父の言葉にかなり苛立(いらだ)ちを覚えたが、終始笑顔で「そうだね」と返す。(はた)から見れば楽しそうな会話に見えることだろう。私のこの面倒くさい性格を考慮しなければ。


本当は「中津浦君に告白して成功した」と普通に伝えたい。ただ、それをすると親は言ってくれて当然と考えて興味を持ってくれないと思っているので、思っていることの真逆を、心底そう思っているように装って伝える。普段から私を見ているから知っているだろうと思っているからだ。


そんな話をしていると8時ぐらいになったので「風呂貯めるの?」と聞いた。母は「寒いから貯めようか」と言った。私は入れないのに。これに関しては言ってないからわかるわけないと理解はできる。納得はしていない。


私は「じゃあ洗い物してから風呂洗っとくね」と言って先に洗い物を終わらせておく。洗い物が終わってから、風呂を風呂用洗剤で洗い、貯める。風呂自動を押すだけだからかなり楽である。私は浴槽に浸かれないのに。


ああ、母上動いてくれない。私が今洗い物してるから、洗濯物畳めばいいのに、食器を拭いている。邪魔で仕方がない。私が台所で作業しているのに台所に2人もさかなくていい。私が食器しているから、例えば机をふくとかできるはずなのに。


これって私の性格が悪いのかしら。洗い物が終わって風呂を洗う。風呂の窓を閉め、浴槽を洗う。これが絶妙に重労働。精神的に面倒だから。


私の性格が悪いのかしら。母が「エアコン付けてるからドア閉めて」と言ってきた。ストレスが最高潮に達していた私は「死ねばいいのね?」と返す。母親は戸惑っている。母は「そんなこと言ってないでしょ?何で機嫌悪いの?」と言ってきた。わかっていないと思った。でも言わないように我慢した。私は「自分の胸にでも聞けばいいんじゃないの?」と返す。単純に、私の隠されたメッセージを理解していないからキレているだけである。


このままだと勝手に博文と結婚させられそうだ。確かに幸せになれる確率は上がるが、私は優斗と結婚したいし、私は優斗と人生を過ごしたい。波長は両方会うけど、優斗の方がかっこいい。


そんなことを言いながらまだ、自分の進路も決まっていない。それをついてきたのか「あなた就職はどうするの」と母が聞いてきた。私は心底望んでいるかのような口ぶりで「介護がいい。腰痛くないし」と返す。大嘘である。本当は接客がしたい。


母は私の本当の気も知らず満足そうに「資格も取れるし、介護もやり方がわかって楽でしょうし、あなたの性格にぴったりだよ」と言ってくる。また、勝手に決めてきている。ますます本音が言えなくなった。当たり前だけどね。続けて母はさも決まったかのように「博文君と結婚して介護の仕事するなら県内で居れるから楽でいいよね。会社も大きいし」と言ってきた。私はとてもうれしそうな口ぶりで「そうだね」と返す。傍から見れば円満だが、私は全く満足していない。私は忘れていない。母が「介護の仕事なんて高卒でもできるのに」と言っていたことを。


そもそも私は介護をしたいわけではないし、博文と結婚する気もないし、そもそも優斗という彼氏がいる。にもかかわらずそんなことを言ってきているので腹が立って仕方がない。なんでわかってくれないの?


当たり前である。わかるわけがないのである。心底望んでいるかのように望んでいないことを言われてもわかるわけがないのである。声のトーンも発言も身振り手振りも真逆の事を肯定するかのように使うから。しかも普段は感情がわかりやすいような表情をしているからなおさらわかるわけがない。


ちなみに、人に対してキレる時、私は表情も声のトーンも逆方向に統一して言葉だけが本当みたいな表現をすることがある。私の言葉には裏があることも多い。


「おやすみ」そう言って私は部屋に戻って寝る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ