第4話 契約の儀
鳥の囀る声に目を覚まし、隣で眠っていた二匹は湖をジッと見ていた。
「おはよう。どうしたんだ?」
「ん~。この湖って魚いるかな?」
「魚?」
「はい。いると思うのですが私たちには魚を獲ることは出来ないでしょう……」
「それだったら少し待っていてくれないか?」
「「ん?」」
二匹は首を傾げ、俺はゆっくり湖の中に入り始めると水面を撫でるように触れる。水の感触が伝わって水の中に潜り始める。昨日はいることに気づかなかったが水に触れていると魚がたくさん生息していることを感じられる。水中を漂うように泳いでいると魚が近づいてくる。俺は魚を驚かせないように手を近づけると魚を鷲掴みにし、水面へ上がっていくと二匹に見えるように掲げた。
「獲れたぞ~!!」
「!!」
「ご主人!! すご~い!!」
俺は二匹に魚を渡して水の中に潜り、魚を捕まえていくとみんなが満腹になる位は捕まえることが出来た。
そして、陸に上がると昨日使っていたタオルをワンが咥えて持ってきてくれた。
「ありがとう」
「あの……」
「?」
「いえ、何でもありません」
少し様子のおかしいワンを横にコンがお腹が空いているようで置かれている魚をジッと見ていた。
「それじゃあ、食べようか?」
「うん!」
「はい!」
俺はワンからタオルを受け取り、髪の毛を拭きながら捕まえた魚の前に座る。その様子を見た二匹は俺の隣に座り、置かれた魚を一口食べると二匹は美味しいのか勢いよく食べ始める。見ていた俺も魚を掴んで木の枝で鱗を取って水で洗うとかぶりついた。かぶりついた瞬間、タンパクな味が口に広がって骨を噛むとまるでポテトチップスを食べているかのようにパリパリと音が鳴り塩気を感じる。
(火があれば焼いて食べたいところだがそれは後々の課題だな)
そう思いながら二匹と一緒に食べ続けているとあっという間に魚が無くなり、コンとワンも満足そうに前足を舐め始める。異世界に来てからしっかりとご飯を食べることが出来たことに満足しているとワンが真剣な表情を向ける。
「ご主人様……」
「ワン、どうしたんだ?」
「あの……ご主人様は私たちの命を助けてくれました」
「命を助けたって大げさだよ」
「いいえ。私たちはあのままでしたら行き倒れておりました。そんなご主人様に私たちは隠していることがあるのです……」
「隠していること?」
「コン……」
「うん!」
ワンの隣にコンが移動すると二匹の様子が少しおかしく感じる。コンとワンを見ていると少しずつ身体を覆っていた毛がなくなっていき、前足が地面から離れると人間のように立ち上がる。少しずつ人間の姿に変わっていき、俺は驚きのあまり呆然と二匹、いや……二人を見ているとコンとワンが子供の姿に変わった。
コンはくせっ毛の長い金髪が腰辺りまで伸びており、真っ白とした肌に頭からは耳、背中から見える綺麗な尻尾が生えている。ワンは灰色の真っ直ぐに伸びた髪がコンと同じように背中まで伸びており、コンよりも少し膨らんだ胸にコンと同じように耳と尻尾が生えて少し恥ずかしそうに手を前で組んでいる。
「……」
「私たちはジュウジン族なのです……」
「ジュ……ジュウジン族?」
「はい。ジュウジン族は動物の姿で狩りをし、人の姿で人間と同じように生活しております」
「そ、そうなのか……それよりも……」
人間の姿に変わったことで驚きのあまりにガン見していたが俺は目を逸らす。その時、コンが俺の膝の上に乗ると笑いながら顔を覗き込む。
「どう? 人の姿の僕たちは可愛い?」
「可愛いけど……裸は恥ずかしくないのか?」
「なんで? 動物の姿になっている時は裸だよ?」
「それはそうかもしれないけど……」
俺はワンの方を見るとワンは少し恥ずかしそうにしており、コンとワンの考え方は違うようだ。コンの柔らかい肌に触れると膝の上から降ろし、立ち上がった俺はリュックの中から着替えに持っていたTシャツを取り出すと二人の前に差し出す。
「これを着てくれ……目のやり場に困る」
「あの……その前にご主人様に聞きたいことがあるのです」
「なんだ?」
「ご主人様は魔力を知っておりますか?」
「魔力ってなんて言うか……魔法を使う為の力の源みたいな物だよな……?」
「そうです。ご主人様が湖で魚を獲っている時に魔力を感じたのです」
「俺に魔力があるのか?」
「その様子だと魔力を知らないようですね。もしも、魔力を持っているのであれば私たちと契約の儀をしていただけないでしょうか?」
「契約の儀って?」
ワンは落ちている石で地面に絵を描くとアニメに出てくるような丸い円の中に六芒星が描かれ、その周りには謎の文字が書かれている。
「この契約の陣を私たちの身体に血で描き、契約の陣の中心に口づけをすることで私たちはご主人様との深い繋がりを得るのです」
「このままでもいいんじゃないのか? これからも一緒にいるのは間違いないんだから」
「契約の儀をすることで私たちの種族は隠された力を引き出すことが出来ると言われています。少しでもご主人様の役に立ちたいのです」
「コンはそれでいいのか?」
「うん! ご主人が起きる前にワンと話をしてたから。それにご主人は優しい匂いがするから、僕はご主人と深い繋がりがほしいな……」
俺は少しだけ考えるとこれから何が起こるかわからない。その際に契約していることで二人が自分の身を守れればと思うと頷いた。
「わかったよ」
二人に自分の意思を伝えると二人は俺の前に座る。俺はワンに細かく契約の儀のやり方を聞くと自分の親指を噛む。親指から血が流れ、二人の胸に地面に描かれた契約の陣を見ながら描き始める。コンはくすぐったいのか笑いながら我慢をし、ワンは声を漏らしながら絶えていた。
二人の胸に契約の陣を描くと二人と目を合わせる。
「これで魔力があれば、この契約の陣が反応して私たちの身体に刻まれるはずです」
「わかったけど……俺には魔力なんてないと思うけどな」
二人は口づけをしやすいように近づくと立ち膝で待つ。俺は二人の魔法の陣に口づけをするが特に何も起きないと二人の顔を見る。
「何も起きないな……」
「そ、そうですね……」
「うん……」
落ち込んだ二人の表情を見た俺は肩に触れようと手を伸ばす。その時、二人の胸に描かれた契約の陣が赤く光出すと二人は苦しみ始める。
「あ、熱い!!」
「く、苦しいよぅ!!」
倒れるそうになる二人の身体を受け止めるが俺はどうしていいかわからず、暴れる二人を強く抱きしめる。
「ご主人!!」
「ご主人様!!」
「コン!! ワン!!」
暴れている二人の身体から力が抜けていくと赤く光っていた契約の陣は黒く二人の身体に刻まれる。
「ご主人様、もう大丈夫です……」
「大丈夫なのか!?」
「うん……。熱くて、苦しかったけど……もう大丈夫だよ」
「良かった……」
強く抱きしめていた力を弱めると二人を膝の上に座らせる。これでワンの言っていた契約の儀は終わったのだろう。俺は安心して手を下げると二人の柔らかい尻尾に触れる。
「きゃん!!」
「ん!!」
「ごめん!!」
「いいえ、私たちは尻尾が苦手なのですがご主人様ならいくらでも触っても構いませんよ」
「ご主人だったらいいよ」
俺の顔を覗き込むと二人の可愛い声のせいで心臓の鼓動が早くなっていた。俺は咄嗟に置いてあるTシャツを手に取ると二人に差し出した。
「そんなことよりも服を着てくれ!」
二人は少し残念そうな顔をすると俺からTシャツを受け取り、着方を教えて二人は俺の前に立つ。
「ご主人、これからよろしくね!」
「ご主人様、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくな!」
三人で言葉を交わし、二人は嬉しそうにTシャツを捲ると嬉しそうに契約の陣を指でなぞり始める。その様子を見た俺は目を逸らし、湖に目を向けて二人が落ち着くまで待つのであった。
三回目の投稿する作品ですが誤字、脱字などあるかもしれませんが、楽しく読んでいただけると嬉しいです。今回、大幅に編集している為、最初からの投稿を再開しようと思いますのでよろしくお願いします。
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少しでも面白くなるように頑張ります!!
もしよろしければ『異世界樹海生活記』も読んでいただけると嬉しいです。