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第3話 狐のコンと狼のワン

 瞼を開けると辺りはオレンジ色に染まっており、両手に柔らかな何かを感じると目線を横に向ける。そこにはさっき菓子パンを与えた狐と狼が身体を丸めて眠っていた。俺は寝ぼけた頭で狐の頭を撫でる。狐の瞼がゆっくり開き、身体を起こし、俺と目が合った。


「ふあ~。あれ……? 起きたの?」


「なんで君たちがここにいるんだ?」


「それは……」


 背後で音が鳴って振り返ると狼も話し声で目を覚まし、目が合うと少し困惑した表情をして目を泳がした。


「あのね……」


「ん?」


 狐が話し始め、俺は振り返って狐に目を向ける。


「ご飯を貰った後に僕たちは気になって後をついてきたの……。それで湖で遊んでいた貴方を見ていたら、ここで眠っちゃったから……」


「近づいてみると少し寒そうにしていたので……私たちがそばにいれば温かいと思いまして……」


「温めてくれていたんだな。ありがとう」


 狐と狼は俺の前に移動して二匹が顔を見合わせると俺を真っ直ぐに見る。


「あのね! もし良かったら、一緒にいてもいい……?」


「どうしてだ?」


「私たちは住んでいた場所を他の種族に追いやられて逃げてきました……。お母さんもお父さんも私たちと一緒に逃げていたのですが、襲ってきた種族が私たちを追いかけてきてお母さんとお父さんは私たちに逃げるように言って走っている間に逸れてしまいました。それから私たちは襲ってきた種族に見つからないように歩き続けたのです」


「でも……狩りをしたことがない僕たちは木の実を食べてたけど、お腹が空いて死んじゃうかもしれないと思ってた時に貴方に出会ったの……」


「私たちは貴方に命を救われました。少しでも貴方の役に立ちたいのです……」


「貴方と一緒にいるとなんだか安心するの……だから一緒にいさせてください!」


 狐の安心という言葉に俺は湖で感じたことを思い出した。俺は笑いながら二匹の頭に手を伸ばすと優しく撫でる。


「わかったよ。でも、俺はこの世界のことは何もわからない。こんな俺と一緒にいても大変な思いをするかもしれないけどいいのか?」


「うん!」


「貴方と一緒にいさせてください……」


 狐と狼は俺の手に顔を擦りつける。そんな二匹を見て可愛いと感じていると俺の腹が大きく鳴る。二匹は音の鳴る俺の腹をジッと見て申し訳なさそうな表情をする。


「私たちにご飯を与えたせいで貴方がお腹を空かせてしまいました。もしよろしければ……」


 狼は俺の背後に移動して大きな葉に真っ白な林檎のような果物と青いサクランボのような小さな木の実が置かれていた。


「貴方が寝ている時に集めたの! もし良かったら全部食べて!」


「ありがとう。でも、君たちもパンだけだとお腹が空いただろう? 君たちも一緒に食べよう!」


「いいんですか?」


「君たちが集めてくれたんだろ? それにご飯はみんなで食べた方が美味しいだろ?」


「うん!」


「はい!」


 俺たちは葉に置かれた果物に手を伸ばし食べ始める。真っ白な林檎は俺の知っている林檎とは違い、どちらかというとマンゴーのような味が口いっぱいに広がり、二匹も美味しそうに食べる姿に俺の心が満たされていくような気がした。


「そういえば、君はコンと呼ばれていたのは知っているが君の名前はなんていうんだ?」


「申し遅れてすみません。私の名前はワンと言います」


「コンとワンだね。俺の名前は秋山あきやま 椿つばきって言うんだ。これからよろしくね」


「うん! これからよろしくね! ご主人!」


「よろしくお願いします! ご主人様!」


「やめてくれよ。ご主人とかご主人様っていうのは……。それだったら椿でもいいだろ?」


「でも、僕たちのご主人になるんだから!」


「そうですよ!」


 俺は二匹の呼び方を変えるように言い続けるが俺の言うことに耳を傾けてくれず、俺は呼び方を変えるのを諦める。その様子を見た二匹は満足そうな表情に変わると俺は横になる。

 二匹は食べ終わると俺の身体に自分の身体を摺り寄せて丸まくなる。そっと二匹に手を伸ばし、撫で始めると二匹は瞼をゆっくり閉じ、いつの間にか辺りが暗くなって眠りに就いてしまった。


(二匹とも怖くてしっかり眠れていなかったんだな……)


 空を見上げると星が輝き、真ん丸の月が辺りを照らし始める。しかし、俺の知っている黄色の月ではなく、薄く輝く青い月に頭の中でここが俺のいた世界ではなく、異世界だと実感する。


(あぁ……。なんでアニメや漫画のような異世界に来ちゃったんだろう……。アニメは好きだし、いつかこんな世界に行きたいと思っていたけど、それは子供の時の夢みたいな物だ……)


 三十歳になる俺にとってこんな刺激的な現実に不安を感じるが湖のことを思い出し、隣で寝ている二匹の姿を見てなんとかなるような気がした。俺は瞼を閉じると肌に柔らかな風が当たり、身体が水の中にいる感覚が伝わる。


(あぁ……。この感覚……不思議だけどなんでこんなに安心するんだろう……)


 俺は水の感覚と触れる二匹の毛を感じながら眠りに就いてしまうのであった。

 三回目の投稿する作品ですが誤字、脱字などあるかもしれませんが、楽しく読んでいただけると嬉しいです。今回、大幅に編集している為、最初からの投稿を再開しようと思いますのでよろしくお願いします。

面白いと思っていただけたならコメントや評価、ブックマーク登録よろしくお願いします。評価などしてもらえると自分の励みになります。

少しでも面白くなるように頑張ります!!


 もしよろしければ『異世界樹海生活記』も読んでいただけると嬉しいです。

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