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第二話

午後1時


通報のあった地点付近に到着し、車を降りるが周囲には何も見当たらない。


「イタズラだってことにして、帰りたくなってきた。」


とは言うものの、何の確認もせずに帰庁するのは心苦しい。


せめて何か周辺住民の言質でもとらねばと歩き出したその時、木々の間に何かを引きずったような跡があることに気がついた。


嫌な感覚が背筋を撫でる。

好奇心と不安を抱きつつ跡を辿ることにした。


鬱蒼と繁る木々の間をしばらく歩くと、開けた場所に出た。


「これは………!!。おい、アンタ何してんだ?」


陽の光に輝く白い髪。

肩を少し越えるくらいの長さのその髪を持つ少女が立っていた。

こちらから顔は見えないが、まるで天使のようだった。

足元に転がる明らかに息がないとわかる人間の残骸がなければ。


「両手を上げてゆっくりこっちを向け。変な動きはするなよ。」


「あなたも私を捕まえに来たの?」

少女は透き通るような声で呟く。どこか呆れのようなものを感じる物言いだった。


「悪いけど、私はもう誰にも利用される気はないから。」


瞬間、背筋に寒気が走り飛び退いた。

十歩は先にいたはずの少女が目の前にいた。

ゴォ。と空気を切る音が遅れて聞こえてきた。

見ることも叶わなかったが、飛び退いていなければきっと死んでいた。

初手を外したことに少女は少し驚いたようだが、続けざまに近距離から腕を振るう。

後退り、身をよじりながら少女の攻撃をかわす。


「ちょっと待て!いきなり何を………。」


「この速度で動けるなんて、ひょっとしてあなたも同類?いずれにしてもほうっておけない。」


「何の話だ!?俺はただここで何があったのかを」


突然背後に気配を感じた。

「しまっ………」

目線をそらしてしまった俺は死を覚悟した。


が、意外にも少女も手を止めていた。

そして少女は俺の背後の何者かを睨み、木々の奥へと去っていった。


ようやく俺も背後を振り返ると、厳重な武装に包まれた兵士が6名ほど近づいてきていた。


「くそっ。また逃げられたか。」

先頭の男が言う。

「隊長、追いますか?」

後ろについていた男が言う。どうやら、先頭の男がこの部隊を率いているようだ。

「いや、狭いところでは勝ち目がない。それよりこいつをどうするか。」

隊長と呼ばれた男はこちらを見ながら言う。


「アンタたちは一体何者なんだ?それにさっきの少女は………?」

俺は少なくとも警察か自衛隊だろうと思い、感謝しようとするが、隊長に制止される。


「知らなくていい。悪いがここから帰すわけにはいかない。」

男たちが銃口をこちらに向ける。


「おいおい、待てよ。あー………いや、殺すつもりなのはわかったし、アレが普通の人間じゃないこともわかった。せめて冥土の土産になんで俺が殺されるかくらい教えてくれよ。」


隊長は無言で俺の頭に照準を合わせる。

「お前も見ただろう。あの少女は兵器だ。秘密裏に開発された。本来管理下にあるべきものだが、とある事情で脱走されてしまった。言えるのはここまでだ。」


「いや、それで十分だ。どちらにつくべきかハッキリしたぜ。俺は人間をモノのように言い放つ人間が嫌いなんだ。」

言うと同時に隊長との距離を詰め、銃口を蹴り上げる。

そのまま腹部に打撃を加え、男たちの中心に入り込む。

男たちが近距離戦に切り替えるためにナイフを抜こうとした手を取り、ナイフを奪い取って首を切る。そのまま三人目に蹴りを叩き込み、四人目の方を向くが、既に俺に照準が合わせられていた。



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