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第9コース 安定と信頼のA

牛太郎が連れてこられたのは、体育館のような場所だった。

そこには数多くの牛乙女がおり皆体操服を着ていた。

目につくのはMRIのようなベットの周りにリング状の装置が取り付けられた装置だ。

その装置のコンソールの周りに、何人か集まって騒いでいる。


「あの……いったい何があったんですか?」


牛太郎が聞くと、呼びに来た女性トレーナーが話し始める。


「今日は選手たちの適正検査だったんですけど……体のサイズから競技の適性を見る機械の調子が悪くて……」


「はあ……それでなぜ私が?」


「だからですよ。だって花輪トレーナー、特級測定技能免許持ってるんですよね? その若さで取得って有名ですから」


女性トレーナーの言葉に牛太郎は困惑する。


「(特級測定技能免許? え? 何それ??)」


まったく聞き覚えない言葉にどう反応していいかわからない。結構有名な資格のようだが知らないなど言えるわけがない。


「説明しましょう!! 特級測定技能免許というのは牛乙女の競技への適性を判断できる技能資格のことです!」


困っていた牛太郎の背後から、再びピンク色のお団子頭の牛乙女。ワールドアナウンスが現れた。

突然現れるのでびっくりするのだが、今回ばかりは助かった。


「今の時代、機械が全身を測定して身長体重3サイズなどなどから判断するのが一般的ですが……昔は人が直に触って判断していました!」


何かを揉むような手を動きをしながらワールドアナウンスは説明を続ける。


「乙女の柔肌に直接手を付けるのでそれなりの倫理と技能を求められるこの技能! 機械があるため古い技術といわれてますが、こっちのほうが正確にわかるといわれています!」


そうなんだと、うなづいていると、女性トレーナーが続けて話をする。


「まあ、そんなことで……まだ、測定する子が残っているのに機械が壊れて困っているんです。なので資格を持っている花輪トレーナーにお願いしようかと。最悪BSだけでも測定してください。……それじゃあお願いしますね! 私たちは機械を修理しますので!」


そう言って、牛太郎を椅子に座らせ、隣に記録用紙を置くと、機械のほうに行ってしまった。

記録用紙を見てみたが色々項目はあるが何のことかさっぱりわからない。


「(え……何これ? 英語? いや……なにか略語っぽいぞ……BS? やばい……やばい……)」


測定といわれたが実際何を測定すればいいのか全く分からない。やり方どころか項目すらもだ。

一途の望みを抱いてこっちの世界の牛太郎の記憶を思い出そうとするが、訳の分からない単語が頭に流れるだけだ。

本当にどうしようかと思っていると、うんちくを話して満足したワールドアナウンスが自分の記録用紙を持っていた。


「えーと。ワールドアナウンスはもう終わった……のか?」


牛太郎の言葉にワールドアナウンスはちょっとびっくりした顔をした。


「おや? トレーナー私の名前覚えてたんですね? 昔はいくら話しても無視したりしてまるで興味がないって感じだったのですが……」


こっちの世界の牛太郎らしくない行動をしたようだが、今はそれどころではない。

名前を知っており、なおかつ話しかけても敵意を持たないワールドアナウンスは、この場では頼りになる存在なのだ。

多少無理をしても情報を得なければならない。


「ええ。おわりましたよ。見てください! 『D』ですよ! D! すごくないですか?」


そう言って、ワールドプリンセスが喜びながら見せた紙の右下。一番大きい欄に大きく『D』と書かれている。

そしてそこには小さく「BS」と書かれていた。


「(D……? そしてBS……。ワールドアナウンスは『D』になって喜んでいる……)」


その時、牛太郎の頭に電撃は走る。記録用紙の欄の大きさから一番知りたいのはBSという項目だ。

そしてワールドアナウンスはBSが『D』になって喜んでいる。女の子がDになって喜ぶBS……。


「(バストサイズ……! これしかない!!)」


牛太郎はワールドアナウンスの胸を見る。牛乙女の例にもれず、ワールドアナウンスにも立派な柔らかそうな果実が付いている。

年頃の女の子なら胸のサイズで一喜一憂するのはごく当たり前だ。ましてや牛女神なんている世界だ。

胸の大きさも神聖視されているはず。


「ああ……すごいな! ありがとう。それじゃあ私は測定するから」


「はいは~い。頑張ってくださいね~」


ワールドアナウンスが立ち去るのを見て、牛太郎はやるべきことを確信する。

要するに、牛乙女の胸のサイズを測ればいいのだ。


「(やるべきことはわかった。よかった。少なくとも牛乙女の前で呆然とすることだけは……いや……ちょっと待て。胸のサイズ図るの?)」


牛太郎は周りにいる牛乙女達を見る。皆若く美少女たちといっておかしくない。

今から、若い女の子の胸のサイズを測る。そんなことを意識したら先ほど以上に牛太郎は緊張して生きた。


「(で……できるのか? いや……そもそもやってもいいのか?)」


大きなおっぱいを触ることに焦ると、周りにいる牛乙女の声が聞こえてきた。


「え? あの花輪トレーナーに測定されるの? 触られちゃうの? それはちょっと……」


男性としてはショックだが、牛太郎はその言葉に感謝した。

当然だ。年頃の女の子が異性に胸を見られたり触られたりするのなど嫌がるはずだ。

牛乙女自身が嫌がれば測定を強行することはできない。

だが、そんな希望もすぐ打ち砕かれる。


「だいじょうぶじゃない? 性格はともかく特級測定技能免許持ちよ。あれ取れる人は最低限の接触で正確にみるのはもちろん、試験時に心電測定をして少しでも興奮して乱れたら落とされる奴よ」


「あ~。私も聞いたことがある。男性で取れるのは年配かEDの人だけとか」


「免許取った後も、もし測定を間違えたり、測定のふりして変な事したら男のあそこを切り落とすっていうくらい厳しい免許らしいから……いくらあの花輪トレーナーでも変なことしないでしょ」


その言葉に、牛太郎は下半身が急っと占められる感じを覚えた。


「(え? うそ? なんか俺追い詰められてない? 別にトレーナーを続けるつもりだよ? 逃げようとしていないよ?)」


なにか牛女神の気に障ることをしたのかとおびえ天を見上げるが声は聞こえてこない。


「ようやくね。早く終わらせてトレーニングに行きたいのに…・・」


そんなことをしていると目の前の椅子に一人座る気配がした。


「(まずい! まずい! バストサイズなんて図れない!! メジャー……ない!! 目測? 手で直接揉んで?!?! そもそもバストサイズってどうやって図るの?)」


どうすればいいのかわからず顔をそむけたくなる。しかし、そんなことをしても時間稼ぎにもならない。

牛太郎は意を決し対面の牛乙女を見る。そして……牛太郎はこちらの世界に来て初めて牛女神に感謝した。


「ルリカラビッグよ。早く始めて」


そう言った牛乙女は周りから見て明らかに異質だった。金髪にちょこんと生えた牛の角がかわいらしい。身長も140㎝と小柄だ。

しかし。同じ身長の牛乙女は2~3人いる。彼女の異質差はその胸。

周りの牛乙女は差がある物の誰もが立派なものを持っている。

しかし、彼女は絶壁だった。胸というものが確認できない。


「機械以外で測ったことないけどどうすればいいの? 今年こそはB? 最低でもCになってるわよね?」


ルリカラビックはジャージを上を脱いでタンクトップ一枚になる。そこまでしても胸のふくらみは確認できない。

ビックどころかスモールでもない。名前を付けた親御さんの気持ちを考えると計り知れない。


「いやちがう」


「はあ? なによ! 測定もしないでなにいってるの!!」


牛太郎の言葉にルリカラビッグは目じりを上げて抗議の声を上げる。

牛太郎は男だが気持ちはわかる。きっとバストサイズが周りより小さいことを認めたくないのだろう。

だが、はっきりと告げなければいけない。バストサイズがBかCかは牛太郎には確かに判断できない。

そこまでの知識と経験がない。

しかし、ルリカラビッグに関しては断言できる。


「君はAだ。それ以外ありえない」


牛太郎はそういうと、ルリカラビッグの測定用紙のBSの欄にしっかりと『A』と書き込んだ。


「……へ? え……うそ……ほんと? ほんとに……?」


眼を見開き驚愕した顔でルリカラビッグは茫然としている。


「嘘を言ってどうする。まず間違いなくAだ。自分の体のことだ。見えなんて張らずしっかり向き合いなさい」


測定用紙をルリカラビッグに渡すと、まだ言われた意味が理解できないのか何度も牛太郎と測定用紙を交互に見ている。


「(まあ……ショックだろうが、さすがにあのペタンこをBカップだなんて言えないよなあ……。こっちもいろいろかかってるし……)」


早く立ち直ってくれることを願いながら次の子はどうしようと考える。

ちらりと視線を向けると後ろに並んでいる牛乙女はルリカラビッグと違い、立派なものをお持ちだ。

グラビア雑誌を見た記憶をフルに思い出しているがそもそも基準があっているか確かではない。

どうしようか悩んでいると、牛太郎に救いの声が届いた。


「お!! 直りました! いや~よかった! これで測定を続けられます!!」


振り返ると、測定装置にたむろしていたトレーナーたちが安堵の声を上げている。


「(やった! ありがとう牛女神様! 本当に神様だったんですね!!)」


牛太郎は歓喜の心が顔に出ないようなるべく平然として自分を呼び出した女性トレーナーに声をかける。


「直りましたか。それじゃあ続きは機械でできますね。もう戻ってもいいですか?」


「あっ! はい! お手数かけてすいませんでした。助かりました」


すぐに直ったのでたいして助けてもいないはずだが、牛太郎は口には出さない。

早く、ここから離れたかったからだ。何食わぬ顔で牛太郎は測定会場を抜けだし、共同トレーナー室に戻っていった。

牛太郎がいなくなった後、クリカラビッグはしばらく、茫然としていたが、やがて測定用紙を握り締めたまま腕を上げ歓喜の声を上げた。


「や……やった~~!!! A! A! 私とうとうなれたんだ~!!」


その様子を周りにいた牛乙女たちが信じられないといった顔で見ていた。


「え? うそでしょ? あの子がA?」


「どう見てもFじゃない。機械のミスでしょ?」


「機械じゃないわ。特級測定持ちの花輪トレーナーの測定よ……。機械ってたまにデータにない体質があるから、本当の資質とは違うのが出るのが極稀にあるっていうけど……」


ざわつく周りの牛乙女など無視してルリカラビッグはルンルン気分で会場を後にする。


「ねえねえ……他のトレーナーに言った方がいいんじゃない?」


「バカね。機械と特級測定免許持ちじゃあ特級測定免許のほうが優先されるのよ! 私も信じられないけど……」


「そうよね……あのペタンコ胸がBS……『Beef Soul』がAなわけないし……実際にタウロスピアに出ればわかるわよ」


こんな会話が測定会場でされていることなど、まったく気づいていない牛太郎は危機を乗り越えた達成感をかみしめご機嫌に歩いていた。

BSがバストサイズでないことに気づくのはもう少し後のことである……。

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