あなたの一生、映画化してみませんか?
十五才の少女・小栗みとりは、生まれて初めて身近な人の死を目の当たりにしていた。
数年前から病床に臥した、たった一人の家族であるお爺ちゃんの道夫が、ついにその人生の終わりを迎えようとしていた。
「お爺ちゃん、何かしてほしいこと……ない?」
「してほしいことか……若い頃は、やりたいことは……たくさんあったんだけど……な。すまんなみとり、お前を置いていくことになって……」
申し訳なさそうに語る。こんな時ぐらい自分の気持ちを優先してもいいのに……。
必死に道夫のためにできることを探すみとり。
そんな中、とある映画製作会社のサイトを発見する。
キャッチコピーは『あなたの一生、映画化してみませんか?』とのこと。
会社の名は《レクイエム》。
お客様からの依頼を受け、その生い立ちを元にシナリオを作成し、一本の映画に仕上げます。
葬儀で上映するもよし。親族に配るもよし。自分の生きた証を世に残す手助けをさせていただきます。
「…………これだ!」
一路の希望を胸に、みとりはレクイエムを訪ねる。
「ようこそお越しくださいました。私が社長の相馬巡一郎です」
社長は思ったよりずっと若かった。二十代後半ぐらいだろうか。
相馬はみとりが記憶している限りの、道夫の交友関係をたどって、お爺ちゃんの人間像、思い出を元にシナリオに起こす。
それから撮影、編集、全て完成するまでに半月もかからなかった。
小栗道夫は学生の頃に書いた小説で新人賞を受賞し、一躍有名になる。
しかし、処女作以降なかなかヒットに恵まれず苦しむ。
そんな折、妻との間に新しい命を授かり、小説界を去ることを決意。
息子が結婚し孫が生まれるも息子夫婦が交通事故で急死。絶望する中、唯一の希望だったのが孫のみとりだった。みとりを養うため、ひたすら仕事に打ち込んできた。
どんな時も家族のために生きてきたその姿、小栗道夫の人生には大きな意味があった――。
この映画を見せた二日後、道夫は息を引き取る。
最後は満足そうに優しく微笑んでいた。
始まりました、第三回なろうラジオ大賞!
これまで書き溜めてきた短編小説の中から
厳選したものをこれから投稿していきます
できればほぼ毎日投稿したいと思っています
よろしくお付き合いください(⌒∇⌒)