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異世界でのはじめての朝

 起きた途端、朝の眩しい光が目に入った。

 二度寝しちゃおうかな〜と布団を被りなおすと頭の中で叱咤する声が聞こえた。


 《起きたんだったら、さっさと行動したらどうですか?》


 その声には微妙に迫力があり、私は仕方なく布団から出た。

 「ふぁ〜……それで、今日はどうすればいいの?」

 あくびをしながら聞くと、再び呆れた声が返ってきた。


 《何度も言いますが、僕は(マスター)に従属している身ですのであまり口出しは出来ないのです》


 「と、言われてもね〜……」

 しばし考えたが何も思いつかなかったため、諦めて今日は街の地形の把握ついでに観光に費やすことにした。

 着替えながらどう回ろうかな〜と考えて、はたと気づく。

 「私、そんなにお金ない…」

 再び悩んだが、お金がなければそこまで観光もできないだろうという結論に至ったため、仕方なく今日の観光は諦めて、街の外へ行くことにした。


 《でも(マスター)って戦えるんですか?》


 「うぐっ」

 痛いところを突かれたという感じで声を上げるとルカシーノがため息をついた。


 《耐性はほとんど揃っているのに戦えないのでは本末転倒なのでは……》


 「そう言われても……って、耐性って何?」


 《気づいていないんですか?》


 「うん…」

 どんどん声が小さくなっていってしまう。

 そもそも、この世界に来てまだ2日も経っていない。その短時間でこの世界の常識を学べというのは無茶だろう。

 そう、仕方なかったのだと心の中で言い訳しながらルカシーノの説明に耳を傾ける。


 《耐性とは、ダメージを受けたときにそれぞれの属性に合う耐性を持っているなら軽減できるスキルの一種です。(マスター)の場合、炎耐性、氷耐性、物理攻撃耐性、聖魔魔法耐性を持っていますね》


 「いつの間に…?」


 《(マスター)が転生した直後です》


 そんなもの知るか!と思わず叫びそうになったがぐっと堪えて、他のことも色々聞いてみた。

 「じゃあ、私って何かスキル持っているの?」


 《そうですね…戦闘向きのですと、雷霆の導き(インドラ)や精霊召喚とかですかね》


「…その効果は?」

 前者のは名前だけで何かヤバい気がしなくもなかったが、一応聞いてみる。

 というか、なんでこの精霊は私以上に私のスキルを把握してるのよ……と、思わないでもなかったが。


 《雷霆の導き(インドラ)はその名の通り雷霆、つまり雷を操る能力です。まぁ、実際に試してもらった方が早いでしょう。手を広げてみてください》


 言われた通りに手を広げると、そこに小さな雷が舞った。だけど、手のひらが熱いわけでもなく、本当にただ雷が手のひらに現れたのだ。

 「えっ、これどうなってるの⁉︎」


 《それが雷霆の導き(インドラ)の効果です。雷霆の導き(インドラ)の効果は雷を発生させたり、逆にそれを消したりするものです》


 「いや強力すぎない?……それで、これいつ獲得したの?」

 ルカシーノの説明が終わると同時に手のひらで舞っていた小さな雷が消えた。恐らく、ルカシーノがスキルを止めたんだろう。


 《恐らくですが、転生ボーナスではないでしょうか》


 「……うん、もういいや」

 そもそも転生ボーナスなんてあったのかすら怪しいけどという感想が出てきたが言わないでおいた。

諦めて宿を出て、街の外へ向かった。

 基本的に資金不足な私では武器なんかも買えないので諦めてスキル主体…というかスキル以外で戦うことはできないけど。


 《(マスター)はもう少しスキルの使い方を学んだ方がいいのでは?……おかげで僕が半分以上やっているんですけど》


 「うんごめん」

 魔物と戦いながら話すが、私は避けているだけだ。攻撃は全部ルカシーノに任せている。

 弱点である目や腹などを雷で焼きつくし或いは精霊召喚で精霊に倒してもらいながら素材を拾ってまた魔物を探す。

 それを繰り返して二桁を過ぎた頃だろうか、謎の言葉が私にスキル獲得を伝えた。


 『スキル 世界の書斎(ワールド・シェルフ)を手に入れました』


 「……え?」


 《また強力なの取りましたね……》


 はっきり言って、マジかと思った。まぁたしかに世界とか言っちゃってる時点で強いことはなんとなく予想できていたけど……


 《世界の書斎(ワールド・シェルフ)は一度見た又は知識として知っている魔法が使えるようになる他、スキルも一度見た内容なら使用可能になりますが…その場合、こちらの実力が勝っていないとできません》


 「こわ……」

 自分のスキルながらあまりに強い能力に、しばらく私はスキルの使い方を本気で学んだ方がいいかも……と本気で思った。

 「まぁ、練習するならもう少し強い魔物がいるところの方がいいかな…ここのは狩り尽くしちゃったみたいだし」

 バラバラになっている多数の魔物の残骸を見ながら、もう少し奥の方に潜ってみようかなと思う。

 だが、私はこの世界の地図を持ってるわけではないし、ましてや場所ごとの強さなど知るはずもないから、ルカシーノに先導してもらって移動する。

 そうして来たのはさっきよりも深い森の奥にある洞窟だった。


 《とりあえず奥まで行ってください》


 ルカシーノの考えが読めるほど私は賢い訳ではないので、どういう理由で奥まで行けと言われたのかはわからないが、とりあえず言われた通りに奥まで進んで行った。

 「とりあえず奥まで来たけど…これでどうするの?」


 《ここなら魔物達を誘き寄せて奥で迎え撃つだけで済みます。後ろからの奇襲の心配もなく、存分にスキルの練習ができます。地形の理を生かした作戦ですよ》


「あ、うん……ルカシーノって少し怖いよね」


 《上位精霊ともなると、このくらいの黒さがないとやっていけないんですよ》


 精霊の社会って怖い……そう思ったけどこれ以上言うと更に黒い部分が見えかねない気がするので言わないでおくことにした。


 《っと、早速魔物がやって来ましたよ。今回は僕は手助けしないので頑張って下さい》


 「ちょっ、せめて、手助けを、っ!」

 文句を言ったがそれよりも先に攻撃が来てしまい、慌てて避ける。

 「っ!雷霆の導き(インドラ)!」

 後方に回り込み、死角から雷を放つ。

 だが、魔物が先程よりも強くなっている所為か一撃では焼ききれなかった。

 すると魔物もそれに対抗して暴風の刃(ウィンド・カッター)をいくつも放ってきた。

 さすがにこれは避けきれないと、来ると思われる痛みに対して備えようとしたが、その痛みは一向にやってこなかった。少し目を開けると透明に光っている何かが暴風の刃(ウィンド・カッター)を受け止めていた。

 「結界…?」


 《さすがにここで死なれては困るので……僕が張った結界です》


 「あ、ありがとうルカシーノ!よし、さっそく……暴風の刃(ウィンド・カッター)!」

 世界の書斎(ワールド・シェルフ)によって習得した暴風の刃(ウィンド・カッター)を放つ。

 どうやら見事に直撃したらしい魔物は素材を落として粉々に消えた。

 そうして日が暮れるまでそれを繰り返して夜になった頃には、スキルの使い過ぎと慣れない動きを繰り返したせいで動けなくなっていたのだった。

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