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プロローグ

 「あ……やばい……」

 「怜那(れいな)!」

 何の変哲もない日々に、唐突に終わりが来た。

 まさか高校生で死ぬことになるとは……

 私は、友達と2人で横断歩道を歩いている時に信号無視で突っ込んできた車に跳ねられた。これでも私は反射神経は良い方だから、真っ先に気づいて友達は逃したがそれまでだった。

 車に跳ねられ、塀にぶつかり、アスファルトに打ちつけられ。痛すぎるし……熱いし、苦しいし、全身痛いし……絶対骨折れるどころじゃないよね、これ……

 「だ、誰か!救急車を!」

 そんな友達の悲痛な叫び声が聞こえてくるが、それどころではない。

 あーあ、どうせ死ぬならここじゃないどこかにでも行きたいものだけど……

 そんな的外れな考えが頭に浮かぶと同時に力が抜けていき、意識が薄れていった。

 これが、私の最期の言葉だった。



 え〜っと…どういうこと?

 うん、まず状況確認だ。

 私は今どんな姿をしている?

 うん、なんか薄着のエルフっぽい。

 私は今どこにいる?

 まぁ、見る限り森だね。

 私は今なにをしていた?

 車に跳ねられて死んでるはずだね。

 ………

 まぁね、ここじゃないどこかに行きたいとは思ったよ。だけどね、誰も異世界に転生させろとは言ってないわけだよ。

 結論。

 「どうしてこうなった!」


 それから何時間かは経った……と思う。

 その何時間の間で何をしたって聞かれると答えられないんだけどさ。

 だからといって何かしようという気にもならないけどね。幸い今まで魔物には会ってないからどうにかなるとは思うんだけど……

 「ガルルルル……」

 うん、フラグだったかもしれない。

 魔物が来てしまった。

 私のアニメとかの記憶だとエルフって戦闘力あんま無いはずなんだよね。

 要するに……

 「逃げるが勝ち!」

 そう叫びだすやいなや、一目散に逃げ出した。というか、逃げるというか飛んでた。

 「何で追いかけてくるの〜!」

 今考えてみればそりゃそうだ。魔物はこうやって冒険者とかを襲うんだから。

 そうして息を切らしながらどうにかして魔物のやってこない高い木の上に着地した。

 魔物の襲撃をどうにかやり過ごして一息ついていると、ふと疑問に思った。

「エルフって…飛べたっけ?」

 そう、なんかあっさり飛べちゃったがそもそもエルフって、飛べなかった…と思う。


 《それは僕の能力ですよ》


 「へぇ〜そうなんだ〜……って誰⁉︎」

 怜那の疑問に答えるように脳内に言葉が響いた。


 《すみません突然。僕はルシカーノ。簡単に言えば、あなたの中に宿った知性を司る上位精霊です》


 「待て待て、まずその上位精霊って?」

 もちろん、これ以外にも聞きたいことは沢山あるがまず優先すべきなのはこの世界の知識である。


 《精霊には大雑把ですが、階級があります。まだ光の玉程度で、自我が弱い下位の精霊。それから長い時を経て、ようやく人の姿を模すことができるようになります。これが一般的な精霊ですね。そして、僕のようにさらにそこから長い時をかけて知識、魔力などが一定値以上になると上位精霊という区分です。僕はその中でも上位に位置する精霊でして、精霊女王より知性に関するスキルを賜っています》


 「うん、なんか細かくて分かんなかったけど要するにルカシーノは相当上位の精霊ってわけね」


 《まあ、大雑把に言えばそうなります。……ところで、今まで気になっていたのですが……(マスター)の名前は?》


 「……あ」

 言われてようやく気がついた。

 ここは完全ファンタジーの世界。恐らく、怜那と名乗っても疑問に思われるだけだろう。

 うーん……うーん……


 《なら、サンスティーヌ。なんてどうですか?》


 「サンスティーヌ……サンスティーヌか。いいね、気に入った!よし、そうしよう!」

 何回か呟いたあと、うんうんと頷いた。

 「それで、これからどうすればいいの?」

 すると、戸惑ったような声が返ってきた。


 《どうすれば、と言われましてもあくまで僕は形式上は(マスター)の従者、という形なのであまり口を出すことは出来ないのですが……》


 さっき散々口を出していたような…と思ったが、それは言わないでおくことにした。

 「…ん?(マスター)って誰のこと?」


 《サンスティーヌのことですが》


 「私いつの間にあなたの主になったのよ…」

 思わずつっこみを入れるが、もう今更のようだと悟ると諦めてこれからのことを考える始めた。

 「とりあえず…衣服の調達だよね…」

 そういうと、ぐるりと自分の姿を見る。が、またもや叫ぶことになった。

 「……なんでさっきと姿が違うのよ」

 そう、一番最初に見たエルフの姿と違ったのだ。


 《僕が完全に定着したからですよ》


 「えっ…」

 具体的に言えば、さっきと違って中性的な容姿になっていた。

 髪は銀髪のミディアムショート、瞳は深い青。全体的にすらっとしていて、遠目で見れば男子に見えるような、そんな姿になっていた。


 《これで僕も能力を完全に行使することができるようになりますし、いいじゃないですか》


 「……とにかく!まずは人の居るところに行くべき!」

 強制的に話を終わらせて、サンスティーヌは街へ向かうことにした。

 ただし、この時のサンスティーヌには行く当てが無かった。というか、どっちに向かえばいいのか分からなかった。お陰で、かれこれ1週間ほど森を彷徨うことになってしまったが、どうにか街…というか村は見つけることができた。

 「……あ、そういえば私、お金持ってない」

 ルカシーノが呆れているような気がしたが、スルーして解決策を考え出す。

 「そうだ、これ売ればお金になるのでは?」

 途中で散々襲われた魔物から取れた素材を出して、ルカシーノに聞く。実際戦ったのは私ではなくルカシーノだったが……


 《まぁ、宿代ぐらいにはなるんじゃないですか》


 「じゃあ早速換金してこよう!」


 街の中をぐるぐる回ってようやく見つけたギルド支部に入っていく。ラッキーなことに換金は冒険者登録していなくてもできるらしい。

 お陰ですぐにお金が手に入った。それなりの数だったと思うが、銀貨3枚にしかならなかった。その後はそのお金を使ってとりあえず目に入った宿屋に入っていった。

 「すみません。これで何泊できます?」

 カウンターの人に声をかけて銀貨を一枚出す。

 「2泊です。ここに名前を」

 質問に答えながらカウンターの人は紙を出してきた。

 「はい」

 そこに名前を書くと、部屋の鍵を渡された。

 そこについていた部屋の場所が書いているプレートを頼りに部屋にたどり着いた。

 部屋に入っていきなりベットにダイブすると、私はそのまま眠りに落ちてしまった。

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