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水無月の巻(一)

 動けるけれど、飽きやすく続かないデブの僕が、ついに日記を始めて二ヶ月に入りました! ここまでこられたのは、あまり長く書こうと意地を張らなかったこと、素直に書きたいことを書いたことが良かったのですね。

 日記は、基本、読む人は自分だけじゃありませんか。僕、奥さんにちらっと見せたのですよね。ちょっとだけ、ちょっとだけなのよ! 全部見せられないこともなかったけれども、全裸をオープンに(庭球の大会みたいな言い方だ!)見せているような恥ずかしさに似た感じがあって、いくら奥さんでも、そこまで()文野(ずの)ワールドへ入れるわけにはいかなかったというのでしょうか……僕は、図体がでかい割には、メンタルは豆腐並みですから。奥さんは、土御門先生の講義の日を読んで「よくぞこれまで訴えられてこなかったな」とのみコメントしていました。仕事柄、高齢者と接することも多いらしいから、奥さん個人として、年配の方と因縁があったのかもしれません。奥さんは、敵を作ってしまう悪癖がありましてですね、今は、高齢者に加えて自助努力をしない人達にも牙をむいています。人間、100人いたら100人みんな世間でいう「いい人」だとは限らないのに。妻は、自らを修羅の道へ投じる天才なんだから。闘争の世界から抜け出させて、楽にさせてあげたいな。その前にもっと稼げよ倭文野くんってところですがね!


  水無月朔日 冴えないしヒーローの素質ないけれど、書いてくださるのですか!?

「今度、倭文野(しずの)さんで小説書いても大丈夫ですか?」

 ある男子学生から、こんなお願いをされました。いきなりすぎて、サラダ味のおせんべいクラッシュしちゃいましたよ。握力には自信あり。

 どうして、僕なんぞが? 訊ねてみましたところ、今度の講義で「身近な人について書く」という課題があったから、なのだそうです。なるほど、「国語表現」ね。

 (そら)(みつ)大学の、日本文学国語学科専攻科目に、「国語表現」がありまして、自己紹介、キャッチコピー、好きな曲の歌詞のどこが素晴らしいのか、短編小説など、学生が文章を考えて、様々な形式にて表現してゆく講義なのです。2回生から受講できます。もちろん3・4回生の履修も可能なので、書いてみたい! と思ったらぜひ。

 身近な人、と親しみを持たれてつい嬉しくなって、逆に書いてくださいと深々頭を下げました。ひとつだけ注意点、奥さんのことは悪く書かないでね。てへ。

 僕も2回の時、取っていたな。担当は今も変わらず(とき)進誠(すすみせい)先生です。何を書いただろうか。常に締め切りに追われていて、脂汗かいてキーボード打っていた記憶がありますね。よく覚えているのは、最終課題の短編小説です。先生が出される3つの題目を入れた話を書け、というものでした。いわゆる三題噺ですね、僕は落語に明るい方といえませんが、なんとなく意味はわかりますよ、おまんじゅう怖すぎですよね、僕を失禁させるくらいに脅かすにはおまんじゅうを山ほど積まないと無理ですよ。特に古都・陣堂(じんどう)にある老舗の豆大福は、効果ばつぐんですからね! 内嶺(ないれい)県空(そら)(みつ)市袖之内(そでのうち)町1080番地、空満大学研究棟2階へどうぞ。ダイイングメッセージに煮干しを握っておいてやりますから。入れ替わりトリックは、僕の体型じゃ成立しないか。残念。「でんでん太鼓」、「おきあがりこぼし」、「テディベア」だったような。ちょうど先生に三つ子のお孫さんができたそうなので。僕、徹夜独特のハイテンションで「彼氏(おれ)だってお世話されたい!」を書いて、周囲に(主に女子ね。少数の同性には、拝まれました。いいぞもっとやれ、と激励されたのです)白い目で当分見られていましたね。内容は……至って普通の恋愛小説ですよ。手汗がひどい主人公とエプロン姿がよく似合うボブカットの美少女のお家デートです。普通とは、そういうものでしょう。先生の評価は、そこそこでした。素敵なお相手に巡り逢えると良いですね、ですって。おかげさまで、神を超える伴侶に出逢えました!


あとがき(めいたもの)

事務助手から見た、日文の先生 一、時進ときすすみせい先生篇

学科主任の先生ですので、最初にご紹介しておきたいですね。

毎日、分厚い辞典(事典もありました)を片手に学内を歩き回られていらっしゃいます。還暦を越えられているのですが、髪が多く、黒々とされています。白髪、まだ生えてきていないそうです。5人のご子息と、6人のお孫さん(長男さんは三つ子、二男さんはひとり、三男さんに双子、全員男の子です)の父・祖父でもいらっしゃいます。空満そらみつ神道の信者、ご自宅は大教会だそうで、もし体調が悪くなったり、何かで足止めをくらっていたりしたら、空満駅から東へ徒歩5分の「文法ふみほう大教会」へ寄ってもらうと休憩できるとのことです。……貧血を持病とされていますので、時々様子をみていただけると嬉しいです。


 改めまして、八十島そらです。古い知人からの話ですが、6月は知人の勤め先が繁忙期に入るのだそうでして、なにやら、一部の世帯の方々があれやこれやと更新するための書類を提出に来られるのだとか。現在はほとんど郵送でやりとりしているらしいですが、1日で捌ける量ではないそうです。1日分を処理するのに約2~3週間かかると聞きました。私からは、お身体を大切に、としか言えなくて。差し入れ、送りましょうかね。

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