表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/52

睦月の……(三)

 だーちゃん、さあ、いこう。田園に、住もう。



 いやよ。僕は、生きて願いを叶えるわ。

 多くの人を道連れにするぐらいに、君は追い詰められていたのね。

どうして、僕に話してくれなかったの? というのは、無責任だわ。僕が、もっと早くに君の憤りに気づいてあげられれば、こんな年明けにはならなかった。ごめん。

 僕の今、思っていることを聞いて。君は、本当に自分が心から望んで、田園の扉を開けてはいないわ。ひいおじいさんの約束を、責任として、やったんじゃないの? あごにしわが寄った、図星ね。神は嫌いだけれど、勝とうなんて、端から君は願っていないわね。僕は、神様を嫌ってはいない、でも、好きとはいえない。ときどき、ミスするのが、腹立つの。救えるはずの命を、まるでティッシュを丸めてごみ箱に放り投げるように、ぽいとする。明らかに悪いやつを助けて、明らかに良い人を絶望させる。君の周りの一部が、どれだけ迷惑なやつか、しっかり伝わっているわ。

 理不尽なのよ、現実は。理不尽だけれど、僕達は抵抗できる権利がある。幸せになってもいい権利がある。ねえ、君の正義から外れているやつのことなんか、構うなよ。そんなやつらのすみずみを知るより、僕にちょっかいかけてよ。君の実家にも、僕の家族にも。そんなやつらは、どこかでバチが当たるよ。まあ、やってきた悪いことに等しいペナルティが必ずしも与えられるわけじゃないけれど、例えば、何も無いところでけつまずいたり、鳥のフンが落ちてきたり、ちっこいバチの場合があるかもしれない。君や、()(おさ)がわざわざ裁くような件じゃないのよ。もったいないじゃん。

 この世に、まったく悪いことをしない人はいない。多かれ少なかれ、やらかしているわ。僕、坊やの頃に、いっぱい青虫つぶしてきたよ。指でぶにゅっと。信じらんない、という顔しているわね。僕だって、虫愛づる時期があったのよ! そう、そうなのよ。悪いことしても、生きてはいけない、幸せになってはいけない、なんて決まりはないんだわ。罪を抱いて、前へ向いて生きていける。人殺しとかね、あまりにも凶悪な罪は、また別よ? たいていは専門の機関が罰してくれるわよ。私的に復讐されることもあるわ。僕、わけわからないこと言ってる? 君みたいに頭の回転早くないから、辛抱してー。

 さてと、夫として重くてたっぷたぷの腰を上げるとしますか。君を、人間側の道に連れ戻す。君は境を越えようとしている。人間を外れたものの側に、行きかけているわ。僕が、抱きしめて人間のままでいさせてあげる。まだ、やり直せる。私は罪を犯した、ですって? 本当に正義感が強いわね。僕は、厳しすぎる君の正義に、助けられているよ。仕事の闇を見てしまったのは、君がそれほど輝く理想を持って懸命に働いているからだよ。前を向こう、まだ誰も死んでいないんだよね? 帰ろう、皆で現実へ。言ってやるよ、きちゃないおっさんの声で言ってやる。



 行くな、シデノ!



あとがき(めいたもの)

答:()文野(ずの)(旧姓:(おさ)())シデノ、曾祖父は、田長幣埜と書きます。


 改めまして、八十島そらです。本日、とみの事がありまして更新がやや遅れました。赤い電線と青い電線のどちらかを切れと迫られましてね、失敗できない作業だったのですよ(冗談です)。何かを適切な方法で処理をしていたことは、間違ってはおりません。爆弾処理の方が、心理的な負担は軽かったのかもしれない……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ