神無月の巻(四)
僕は、一日のなかに、小さくても必ず一つは「幸せなこと」を見つけようと生きているけれど、見つけた幸せを書き留めているけれど、今日は……見つけられなかった。できない日だって、ありますよね。明日二つ探せば、帳消しになるよな! 昨日よりも今日、今日よりも明日、明日よりもずっと先。前向け、倭文野!
神無月二十九日 戦えない、癒やせない、奇跡を起こせない僕は、ただ祈るだけ
今朝、安達太良まゆみ先生が「空満やほよろづの休み場」に運ばれました。意識がさめていないということでした。今月は特にはりきって働いていらっしゃったので、お身体にダメージが溜まっていたのでしょう……。日文公認サークル「日本文学課外研究部隊」を始めて、顧問に就かれて、「文学PR活動」なる課外活動をされていました。エネルギーに満ち満ちている安達太良先生が、倒れられるだなんて。世の中は、何が起こるか誰にも予測できないんだなと思いました。
昼に、活動場所の二〇三教室(共同研究室の向かい側にある空き教室です)から、女の子が怒鳴っているのが聞こえてきたのです。仲良さそうな五人組なのに……。静かになったかと思えば、乱暴に扉を開けた音がして、ひとり、またひとり、おそらく四人出ていったんじゃないかな。僕の勘は当たったらしく、最後に鍵を返しにきた大和ふみかさんが、魂あくがれいづる感じだったのです。奥さんにだけは祟らないでよーって、元気づけるつもりで六条御息所ジョークをかけたのですが、すごいにらまれました。ぐすぽこぴーなの。
退勤時に、時進先生が仰っていたことが、少し謎でした。
「明日は、日本文学課外研究部隊が何をしようと、許してあげてください。たとえ、二〇三教室の鍵を持ち出したとしても、です」
そりゃ、社会をまっとうに渡っている僕ですから、犯罪じゃなければ彼女達のおいたぐらい、見逃してあげますよ。時進先生、まるで、大和さん達のこれからの行動を知っているような口ぶりでしたけれど。さっぱり・クール・無邪気・エレガント・萌えな女子五人は、事務助手生活の清涼飲料水でありますので、許す!
あとがき(めいたもの)
問:安達太良先生に本名がある、というのは本当ですか。
答:本当です。あれは、もう安達太良先生は「非常に愛されている」としかいいようがありませんね。安達太良先生は、とても幸せな人生を歩まれていると倭文野は思いますよ。
改めまして、八十島そらです。お気づきの方がいらっしゃるかもしれませんが、前回の日記「二十一日」を「二十八日」に訂正しました。二十一日はコンサート練習の日なのです。ものすごい間違いをしてしまったこと、申し訳ございません。未来の日記になってしまいました……。
学校について、ひと言を。八十島の身近にいる「先生」は、なかなか忘れづらい人物ばかりでした。小柄な女子生徒をなめまわす先生、私的に児童の尊厳を傷つける先生、違法の薬品に手を染めた先生……もっときつかったのは「お前はしゃべるな、いるだけで迷惑だ」と明るいところで言ってきた先生です。反面教師だと斜に構えて、勉強させてもらいました。「良き先生」もいましたけれどもね。
いつの間に学校は「世の中を暗くする人間を輩出するための教育機関」になったのですかね。全部が全部そうとは、八十島、断言できませんが、「先生だって先生同士でいじめやってるじゃないの」「先生だって人のこと平気で傷つけているじゃないの」等々、教える側は「当たり前に守らなければいけないこと」を軽々と破っているのを、見せつけられると……胸が痛みます。ひどい場合は、親も「やってはいけないこと」を正当化(?)みたいなものしていて……。自分はそんな大人にならぬよう、日々、学びを重ねております。




