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長月の巻(三)

 家内の旧姓は「田長」です。「たなが」でも「たなか」でもありません。「おさだ」と読むのです。僕、初めて会った時に驚きました。家内は、読み方に慣れなかった僕を笑ってゆるしてくれました。「田と長の間に、レ点がついていると考えたらわかる」とね、教えてもらいました。倭文野(しずの)くんはおバカなので、正しく読めたのは……お付き合いして半年くらいしてからでした。家内は僕にとても甘いです。ありがたいです。勤め先では旧姓を引き続き使っているようですが、そこで一緒に働いている人やお客様に「おさだ」じゃない呼び方をされたら……内臓が突沸するような怒りを覚えるようです。あの世と関わる仕事をして生きてきた家系だとか。病院、葬儀屋、お墓の管理など。空満市というね、まちの人のために働くケースは珍しいんだそうです。思いっきし、この世系ですものね。お悔やみの手続きもあるけれど。家内は「まちの人の幸せに尽くす」所で頑張っています。

 お悔やみといえば、2時間ドラマでそんなシリーズがあるな。ろうそくが不気味なくらいたくさん燃えている中で、白い着物を着て語るシーンで始まるあれです。社長は、いつになったら婚約者と結婚するのでしょうか。というか、事故起こりすぎやろ。会社の評判下がらないものだな。職員のおじいちゃんとおばちゃんの寸劇も楽しみにしています。


  長月十五日 秋学期開始記念、俺プレゼンツ・おたよりコーナー

 秋学期が、始まりましたね! 小中高に比べてとても長い夏休みが明けて、後期の授業に入りました。長月も夏に含まれるのですか。旧暦では秋の終わりですけれど。細かいことは、机の角っこにはけておいて、倭文野くんの特別企画、おたよりコーナーします! 日本文学国語学科、略して日文の共同研究室前に「助手へのおたより募集」ポストを置いています。ゴミと危険物、心ない言葉以外なら何でも入れてね、な箱です。今年の皐月に始めてみたら、けっこうたまっていたので、開封の儀をしました。お手紙よりも、棒付きキャンディが多かったです。オレンジ味と、いちご味、どうもありがとうございます。僕の好みをリサーチしているとはさすが日文。こいつは恩返しせねば。手編みで、冬にお役立ちのアイテム作っておきます。なんちゃって。

 おたよりの一部に、何てコメントしたかを忘れないように書いておきます。


 〔倭文野さんは、毎日、奥さんからのお弁当をおいしそうに食べていらっしゃいますね。私は、来年社会人になるので、お昼ご飯を自分で作っていきたいと思っています。簡単にできるおかずは、ありますか? 4回生・ぬかぬかさん〕


 ぬかぬかさんへ 家内が忙しい時期は僕が料理担当をしていますが、なかなか簡単にできないもので困っています。答えられるほどの腕じゃないですが、赤・黄・緑のバランスに気をつければそれだけで最高じゃないでしょうか。よく学校でする栄養の話で説明される、赤・黄・緑です。たんぱく質・炭水化物と脂質・ビタミン……だったかな。肉系焼いて、たまご巻いて、適当に野菜炒めて、ご飯つめたら完成ですよ。冷凍食品は、ネタ切れを助けてくれます。ちなみに、僕がささっと作れたおかずは、ちくわです。切って、醤油かけて焼く。ファイアー!


〔OBですが、お話きいていただけますか。空満図書館に勤めています。図書館をよくたずねている学生に、どんな本が好きなのかたずねてみました。ところが、学生はそわそわして「すみません」と言って、帰ってしまいました。僕は、妙な質問をしたのでしょうか。学生は女性です。嫌がらせをしてしまったのでしょうか。職員・5番目の誠さん〕


 5番目の誠さんへ たぶん、その子は恥ずかしくて答えられなかったのだと思います。本を読むことが好きな人のほとんどは、話をするよりも聞く方が得意そうです。本当は、その子、いろいろ言いたかったはずですよ。「私は○○○が好きです、あなたはどうですか?」「どれも好きなので迷いますね」とか心の中では何パターンかぼんぼん浮かんでいたかもしれません。好きな○○を訊かれて、嫌がる人はそんなにいないんじゃないかな。落ち込まないでくださいね。僕は、かわいい、が詰まったお話が好きです。ハッピーエンドだとほっとします。だまし合い、貶め合い、裏切り合いは、僕がいじめられているみたいで泣いてしまい、最後まで読めません。

 

あとがき(めいたもの)

問:「○○の秋」の穴埋め、倭文野さんはどうしますか。

答:「しずの秋」なんちゃって。「飽食の秋」ですよ。年中そうじゃないかなんて、気にしないわよ。ふん!


 改めまして、八十島そらです。大好きな声優さんが歌っている曲を、繰り返し聞いております。だいぶ昔の歌なので、あまり知られていません。アニメのテーマでも、挿入歌でもない、歌手として歌われているものでして、「変わることを怖れていないか?」「未来をつくろう」「答えはあなたが既に持っているよ」という意味の歌詞に、背中を押してもらっています。2番と最後の節の間に流れる弦楽器の音に、体温がぐっと上がったような感覚がするのです。変ホ長調……だと思うのですが、前進させてくれる調(八十島個人の感想)は良いですね。あれを我香芽さんがカバーしていたら、即聞きたいです。「国語表現法」の前期は、自分が感動した歌詞を発表して、どういうところが感動したのか説明する内容だったような。現在は変更されているようです。

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