文月の巻(四)
冷房フルパワーで動かしているのに、一糸すらまとっていないのに、まだ暑いのはなんでやねん。ワイ、年中脂ギトギトやがな。ハニーには「汚物をしまえ」と非難されるこの頃です。汚くなんかないもん! 適度に乾かしておかないといけないんだもん! デブの全裸はイヤですか? イケメンさんは何したって捕まらないのですか? ハニー、恋しているのはダーリンの僕と二次元の嫁達だったのではないのですか? いっそ、小さくなって冷凍庫に胎児のように丸まって眠っていたいです。来月の倭文野くんは、固体じゃなくなっているかもしれません。スライムぐらいになれたら、頼れる兄貴として町内で慕われるようになれるかな。
来月から、ハニーの仕事が大忙しになるそうです。ハニーによると、たとえるなら「ゾンビ映画」「ウイルスまいちゃったからゾンビ倒そうぜゲーム」ですって。なんとかの亡者なんて言い方もありますが、生活のためですもの、更新だって何だってしますよ。ハニーね、極端に正義感が強いものですから、勤務1年目の葉月に、実家の窓ガラスと家族に手を出してしまったのです。一部、不正をしつつ給付を受けている人がいて、権限上取り締まれなくて、怒りが頂点に達したのだとか。現在でも「1万人の幸福のために私は犠牲になっている」とか「福祉がなんなんだこのやろー」とかね、パウダービーズクッションをサンドバッグにして64発殴っております。
文月二十八日 夢のウルトラEXステージ・D号棟
テスト期間後の講義のことを、僕は「ボーナスステージ」と名付けています。これが前期最後の講義週間となるのですが、教室がいつもの場所とは違うのです。ちょうどこの時期にですね、空満神道の子ども向け行事があるからなのですよ。万人のふるさと・空満市に帰ってきて(いわゆるお泊まりです)、お掃除などのお勤めや、プール遊び、ちょっとしたゲームをして充実した日々にしてもらうそうで、宿舎として国原キャンパス・海原キャンパスの一部を使ってもらっているのです。なので、講義場所が限られてくるのですが、そこでボーナスステージ! 旧校舎のD号棟です!
昔は講義によく利用され、文化部の部室にもなっていたD号棟は、改装後の研究棟や、理学部ができた時に作られたC号棟に活躍の場を取られてしまい、あまり人が来なくなったのです。附属図書館を過ぎたあたりに、針葉樹の並木道が見えます。そこにこっそり建っているのが、例のステージでございます。洋風の肝試しに使えそうです。本当、洋館みたいなのですよ。開校時のままだそうで、古びたところが、わびさびですねー(茶道に詳しい人、土下座させてください)。
D号棟には怪談話がありまして、階段の怪談(きゃー、倭文野くんたらおやじギャグなんか披露しちゃって。もーう、やだやだー)で有名です。入ってすぐ、階段が真ん中にあるのですが、足を運ぶたびに段の数が変わっているらしいのです。僕は階段を憎むサイドですから、エレベーターの無いD号棟に「けしからん!」とひと言やるだけで頭がいっぱいなので、何段あるか気にしたことはありません。絶対に数えてはいけませんよ。上りと下りで段数が合っていなかったら…………4次元に一生留まることになります。ほんまかいな。ところで、次元とジゲン、どう違うのですかね? カタカナの方は、造語かしら。
15回目の講義は、だいたいテストの答え解説か、自習(形はね。中身はフリートークですよ。某先生の必修英語は、菓子パーティですよ。僕もまぜてー!)です。早めに終わるし、だらーんとできるため、僕の好きなゲームに重ねて「ボーナスステージ」と言ったのです。広めようとはしませんでしたよ。倭文野くんは、あくまでモブキャラ。動けても、モブのデブ。あんまりはっちゃけると、自分の歴史に闇をかぶせることになりますし……。集合写真で堂々と最前列でクラスの旗持ってごろ寝するような勇気の無いチキン……いえいえポークなのです。
現役の時、ボーナスステージの基礎英語で、蜂を踏みつけて滅した人がいたんですよォ~。ぬあぁにぃ!? しでかしちまったなぁ!!
男は無言で、はい、僕です。
強さを見せつけようと思ってしたわけではありませんよ。僕が駆逐しないと日文の同胞が苦しむ! だとか、俺がやったるで! とかも全然考えていませんでした。ただ、ぶらぶらさせていた足を、そろそろ地に着けるかーと下ろしたらそこにたまたま蜂が止まっていただけなのです。笑われました。
「アゲマキちゃん(僕の日文でのあだ名です。日記のはじめに書いたかも)、大胆やわ」
「その巨体じゃ、蜂もプレスされるっしょ」
「おいアゲマキー、蜂は食えないからって踏み潰しはないわあ」
担当のジョニー先生まで
「オオーウ、ミスターシズノ、セショウ(殺生、と言いたいが発音が難しいみたい)ハイケマセンヨ。ニホンノマナーデース。シズノハオニデスネー、ジゴクイキデスネー、ソーバッドネー」
ひどくないですか? 僕、駆除したくてしたんじゃないもん! 真に受けてはいないけれども、肉ダルマ扱いですよ。鬼扱いですよ。ふくよかな人間に、優しい社会をください。そして今日も、助手席で「お昼のお紅茶」ミルクティー2リットルをぐい飲み!
問:日本文学国語学科共同研究室の「かき氷の会」はいつ行われていますか。
答:葉月の登校日です。かき氷機は倭文野さんが自宅から持ち出して、氷は大学時代の同級生が作っています。
改めまして、八十島そらです。アーチェリーのヨウイチさん、お強くてかないません。これでは世界の均衡がもにょもにょ。外は高温のため、籠もって時間を過ごしております。今日でしたよね、夏痩せに効くというあのぬるぬるさんをいただくのは。厚焼き玉子乗せるとよりおいしいですよね。最初、ただの玉子丼じゃないか! とおこがましいことを言っていましたね……ああ、幼いこと。




