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十一日は先日と打って変わって比較的なだらかな稜線歩きとなった。

 しかし、楽なのは斜面が緩やかだって事だけで、どこに亀裂や雪庇が隠れているか解らないし、気まぐれの様に突風は吹くし、おまけに雪が深くて先頭の人間がそれを踏み固め道を造らないと前進できない。おかげでで中々行程を消化できない。良いのは天気だけだ。

 朝の四時から歩き通し、結局七〇〇五 メートル峰手前で時間切れ。

 仕方なく稜線の少しでも風の当たらない場所に野営地を定めてみんなで雪を踏み固め天幕を張った。

 十二日の朝、インティキルの人々の内四人が体調不良を訴えここに残ると言い出した。

 少佐は一計を案じ、調子の悪い四人と彼らを補助するため疲労の色が見える二人に一日休憩させそのあと下山するよう命じる。

 当然ながら六人は悔しがったが高山病は降りなきゃ治らないし、調子の悪い人を誰の助けも無く残して行くわけには行かず、結局泣く泣く命令を聞き入れてくれた。

 これで残り七人。撮影機材を運ぶのが四人、その他の装備を運ぶのが三人になり、当然ながら私の割り当ても増える。

 山の民であるイェルオルコですら打ちのめすこの過酷な環境で、私なんかが三十 キロもの荷物を背負って進める物なのか?正直不安だ。

 でも、そんな事っても始まらない。ここで怖がってたら今までの努力は何なのよ!って事に成る。

 今日も少佐やシスル、ラチャコ君らインティキルの人々の人々に齧り付いてでもついて行く。

 歩き出して三時間。やっと七〇〇五 メートル峰に到達。休憩もそこそこに次の頂、スーパイプカラ峰七一八一 メートルを目指す。

 しばらく行くとチュルクバンバ大氷原が分厚い雲に蓋をされ、全く見えなくなり、その雲が徐々に山肌を駆け上る様に稜線に迫って来るのが見えた。

 ワイナ・ウリさんが足を止め大声で。


「少佐殿!チュルクバンバに雲の蓋が被さると天気が崩れる前触れだ!もうすぐしたら食料や燃料を隠してある場所ですから、そこに天幕を張りましょう!今日はこれ以上進むのを貯めた方がええです!」


 少佐も足を止め、ひたひたと這い上って来る雲を睨んで。


「ああ、確かにヤバ気だな。荒れる前に残置場所まで進もうぜ、今日そこで露営だ」


 酸素不足で頭がくらくらするし吐き気もするけど、あの『ワイラウヤ』に叩きのめされるよりはマシとばかりに全員大慌てで前進し、急角度のせいで雪をかぶっていない小さな岩峰の陰に天幕を二つ張る。

 一つは『禿鷹挺身隊』用でもう一つは『インティキル』用と言う事にしたが、ラチャコ君はなぜかこっちの天幕に潜り込んできた。

 当然、ワイナ・ウリさんたちは「色男は積極出来だねぇ」「ガキのクセに色づきやがってコノ」とはやし立てるが、彼も負けずに「アンタらのいびきがスゲェからだよ!」とやり返す。

 天幕の設営や野営の準備が整うと、インティキルの人たちが前もって運んでかくしておいてくれた物資を回収した。底をつきかけていた燃料も食料も十分に補充できけど、中に不思議な物もその中に紛れ込んでいた。

 滑雪スキーが十三組。

 帰ってゆくことになってしまった人たちの分もあり、この先何処かで使うつもりで持ってきたみたい・・・・・・。でも、雪はあるけど、どこで滑るの?

 少佐に聞いても「後のお楽しみさ」としか言ってくれない。そりゃ、郷里では冬の通学の時には無くてはならない足だったし、訓練の時も使ったけど。


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