6話:嫉妬
六話です。
ぜひ見ていってください。
[sideサクラ]
(むーーーユウのバカ!)
ユウを置いて歩く、後ろからユウの声が聞こえるが知らない。
(私がいない間に仲良くなったって・・・バカッ)
ユウへの苛立ちを隠しもせず目的もなく歩いていく。
我ながら独占欲が強いという自覚はあるがそれでも・・・
電話の時はモヤモヤが解決したから意識してなかったけど、その人のことを話している悠は楽しそうだった気がする。
(むーーーバカッ!)
[sideサクラ close]
「待てってサクラ」
サクラに追いついて手をつかむ。
「何でそんなに怒ってるんだよ」
「別に怒ってない・・・」
小さく呟く。
(さっきよりは落ち着いたかな?)
「また何かまずいこと言ったか?」
「ううん、私もちょっと冷静じゃなかったかも・・・」
「そっか、取り敢えずさその生産職の人を紹介したいんだけどいいかな?とてもいい人なんだ」
「うん、分かった・・・」
せっかく解決したのにまたモヤモヤするが・・・
(今はそっとしておくのがいい気がする)
「じゃあ行こう」
「うん」
二人でテルさんを探して歩いていく。
「ここら辺に居たはずだけど・・・」
いつも座っている所にテルさんがいない。
「サクラ、ちょっと待って。近くの人に聞いてみる」
そう言い、近くで露天を開いている人に話を聞く。
「あのーすみません。この辺りでテルさ・・・身長が高くて・・・」
「あーテルさんなら店を持つことになってここには居ないよ」
良かったテルさんのことを知ってるみたいだ。
「宜しければ店の場所を教えてもらえませんか?」
「もちろん。店の場所は・・・」
「サクラお待たせ。どうも店を持つことになってそこに移ったみたい」
「そうなんだ」
「そこまで行こう」
テルさんの店の場所は街の西側にあるとのこと。
二人で歩いてそこまで行き、店の名前を確認する。
「テルのお店・・・テルさんそのままなんだ・・・」
おもわず苦笑漏らしてしまう。
「さあ入ろうサクラ」
「えっ、テルさんって・・・」
店のドアを開け、中に入る。サクラもその後を追って中に入る。
「テルさん、こんにちは」
「おや、ユウ君じゃないですか、いらっしゃい」
いつもの柔和な笑顔で迎えてくれる。
「お店を持つことになったんですね。おめでとう?ですかね」
「ははは、そうですね。念願のお店ですから」
世間話をしていると突然・・・
「生産職の人って男の人!!」
大きな声で叫ぶサクラにびっくりする。
「そう・・・だけど。言ってなかったっけ?」
「言ってないよ!」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうにする。
「ユウさっきはごめんなさい!」
勢いよく頭を下げる。
「おっ、おう。よく分からないけどいいよ」
どうもさっきの怒り、モヤモヤは解決したらしい。よく分からないけど・・・
「ははは、青春ですね」
「どういうことですか?」
「おやおや、それが分からないなんてユウ君はかなりの朴念仁ですね」
「朴念仁?えっえっ?」
本気で分からない。何でその単語が出たのか。
顔を真っ赤にしているサクラ。
柔和な笑みを浮かべているテルさん。
困惑している俺。
何?このカオス・・・
「落ち着きましたか?」
「はい・・・取り乱してすみません」
「かまいませんよ。では改めてポーションなどの販売、プレイヤーの持ち込みでアイテムを作るお店―テルのお店―へようこそ。店主のテルです」
「初めましてサクラです」
大柄なテルさんに俺の時のように少し恐縮している。
「大丈夫。すごく優しい人だよ」
サクラの耳元で囁く。
「それで今日はどうしました?素材の持ち込みですか?」
「いえ、素材の持ち込みではなくテルさんことを紹介しようと思いまして」
「そうですか。それよりも解決したみたいですね」
「えっ、あーそうですね」
前に困り顔になっていた時のことを言っているのだろう。
「解決って?」
サクラが不思議そうに尋ねる。
「いや、大したことじゃないよ」
「そう」
それ以上は追及してこなかった。
「あっ、そうだ。ポーションも扱っているんですよね」
「ええ、そうです」
さっき思いついたことを言う。
「素材もないのでポーションを買いたいんですが」
「ええ、いいですよ」
そこでいくつかのポーションを買う。そして・・・
「あっ!もう一つお願いが」
「なんでしょう?」
「俺たちボスを倒して素材を手に入れたんですが、それを使って防具を作ってくれる店を知りませんか?」
「ならちょうどいいお店がありますよ。ほら聞こえませんか」
隣を指さすテルさん。
カーンカンというリズミカルな音が聞こえてくるのが分かる。
「隣のお店は知り合いの生産職のお店で素材から武器や防具を作ってくれます。私からの紹介と言ったらいいでしょう」
「そうですか。ありがとうございます」
サクラと顔を合わせてワクワク顔になる。
これで武器や防具を揃えられる。
「ただ・・・」
「ただ?何です?」
「いえ、これは合った方が早いでしょう。気を付けて」
「なんか怖いんですけど・・・」
「大丈夫ですよ」
ニコニコと笑顔を見せる。
深く考えないでおこう。
「では失礼します。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
サクラと一緒にお礼を言って店を後にする。
「これからもご贔屓に」
いつもの柔和な笑顔で送り出してくれた。