4話:レアスキルのおかげで
4話:レアスキルのおかげで
リアルに戻り、さっそく桜と連絡をとる。
メールにしようかと思ったが、言葉で伝えようと思い電話をすることにする。
プルルルッ
(・・・・・・)
呼び出し音が鳴り続ける。
(頼む。出てくれ・・・)
そのまま待っていると、呼び出し音が鳴り止み幼馴染の声が聞こえる。
「もしもし」
「もしもし桜。話したいことがあって」
「何?」
「実は・・・」
ここ数日の出来事を桜に伝える。
採取のこと、生産職の人との出会い、隠し通路を見つけたこと。
「桜と一緒に探索したいから、待ってるな。森のセーブポイントにいるから」
そう言って電話を切る。
後は、来てくれるのを待つだけだ。
《森の中》
安全地帯かつセーブポイントでサクラを待つ。
待つこと数十分。
微かに足音が聞こえ、そちらを見る。
「サクラ」
「ごめんね、待たせた」
「いいよ、今来たところ」
笑顔で定番のセリフを言う。
「もう。ずっと待ってたでしょ」
サクラも笑顔になり、雰囲気が和んだ気がする。
「俺待ってるからな」
「えっ?」
「サクラが何を悩んでいるか分からないけど、話してくれるまで待つ」
「ユウ・・・」
「取り敢えず今はさ、ゲームを楽しもう!サクラと冒険したい」
「ありがとう、ユウ」
サクラが涙目になって答える。
「あっ、また俺何かまずいこと・・・」
「ううん、大丈夫!早く行こう、隠し通路」
「おう」
お互いに笑い合い、隠し通路に向かって歩き出した。
「ここがそう?」
「ああ、下に続いてるみたいだ」
奥の方を覗いてみるが、暗くて何も見えない。
「方角的にあのダンジョンに向かってるぽいから、あのダンジョンの隠しエリアに繋がってるのかも」
サクラはゲーマーの感でそう呟く。
「これって、すべり台みたく滑っていくんだよな?多分」
「うん、そうだと思う」
「取り敢えず、ポーションを半分渡すな。あーなんか暗くて怖いけど、覚悟を決めていこう。他のプレイヤーたちに先起こされるかもしれない」
「うん、そうだね。じゃあ私が先陣切るけど、十分注意して」
「分かった」
初期装備なのが不安として残るが・・・
サクラが先に進み、その後を俺が続く。
鬼が出るか蛇が出るか。ゲーム的にもどっちもいやだけど、サクラと一緒なら大丈夫だ!
《森のダンジョン隠しエリア》
「わーーーー、ちょっと急すぎないか」
叫びながら下っていき、ゴールへとたどり着く。
すでについたサクラが辺りを見渡し・・・いや警戒している。
「もしかしなくても、まずい感じ?」
「うん、多分ここ・・・」
そう言い終わる前に地響きがなる。
地面が揺れ、下から何かがはい出てくる。
「ボス部屋だ!!」
突然始まった初めてのボス戦。
出てきたのは、モグラを思わせる巨大なモンスターだった。
全長10メートルはあるだろうか、巨大なモグラが俺たちに向かって襲い掛かってくる。
俺は、いきなりのことで足が動かなかった。
「ユウ!!」
サクラの声ではっとなり、すんでのところ躱す。
「取り敢えず、今は走り回って、ボスの攻撃を回避して!」
「ああっ、分かった」
サクラとは別方向に逃げる。
俺に襲い掛かったモンスターは次にサクラを狙った。
「サクラッ!」
「大丈夫!私がこいつの行動パターンを見るから、合図で攻撃して!」
「分かった!」
俺は慌てたが、サクラは冷静にモンスターの行動パターン見抜こうとしている。
(さすがサクラ。落ち着いてる)
ゲーマーとして様々なゲームをしてきたサクラは俺に合図を出せるほどに強いことが分かる。
「今!」
「ファイアボール!」
火の玉をモンスターの背中に当てる。
だが、ミリ単位でしかダメージが通らず、絶望する。
これを後何回繰り返せばいいのか?果たして俺たちが倒れるまでに倒せるのか?不安が押し寄せてくる。
「大丈夫!」
俺の心を見透かしたように、サクラが叫ぶ。
「二人なら大丈夫!」
そう言われて元気が自信が俺の心を満たす。
「そうだな。指示を頼む。話した通りポーションはいくらでもある」
「さすがユウ!」
そこからは長い長い闘いが続いた。
三時間以上掛けただろうか?時間すらも分らないまま攻撃し、モンスターの攻撃を回避し続けた。
基本的にはどちらかに攻撃してくるモンスターの攻撃を回避し、もう片方が攻撃を加える。
もっと人数の多いパーティーならこの間に複数の魔法攻撃や回復を行えるだろう。
事前にポーションを半分渡しておいて良かった。初期装備なので当たるとほぼ瀕死の攻撃をそれぞれ自分で回復した。
「はあっ、スラッシュ!」
スキルポイントを消費し、技を放つ。
これがとどめとなり、モンスターを光の粒子へと変えた。
「疲れたーーー」
俺は力尽きてその場に倒れこむ。
「私もっ、こんなに疲れたのは久しぶり・・・」
サクラもその場に倒れこむ。
ドロップアイテムなどを確認している余裕がないくらい疲れ果てた。
しばらくして起き上がり。
「まさか倒せるとは。ミリ単位でしかHPが減らないと分かった時は絶望した」
「言ったでしょ。二人なら大丈夫だって」
俺のそばにやって来て、手を上げる。
そのままハイタッチをし、お互いの健闘を称え合う。
「さあ、ドロップアイテムを確認しよう」
「そうだな」
ウインドウを開き確認する。
「おー!」
サクラが大きな声を上げる。
「どうした?」
「土竜の剣だって」
「なんかそのままだけど・・・」
「でもすごいよ」
こちらにウインドウを見せてくれる。
≪土竜の剣≫
STR+20、VIT+20、DEX+10、追加効果:地属性攻撃+15
「おおっ、ここら辺ってまだ最初の方だろ?こんな強い武器があっていいのか?」
「もう少しLevelを上げて来るところなんだろうね。モンスターも強かったし」
性能に驚きつつ、よく倒せたなと思う。
サクラはその他にも土竜の素材をいくつか落としていた。
「ユウはどんな感じ?」
「俺は・・・素材と・・・何だこれ?」
そこには地属性の宝珠とあった。
説明にはスキル【土魔法】に使用すると効果を上げるとあった。
「やったね!これで土魔法が強化される」
サクラは自分のことのように嬉しさを表す。
それを見て俺もうれしくなる。
「何なら全魔法網羅するか?」
「それいいねー、大魔法使いユウ誕生!」
なんか凄い名前がついた。
大変な闘いだったけど、それに見合う成果や喜びを感じることができた。
だが、それよりも本当に良かったと思えることがあった。
出口を探して奥まで進むと、台の上にスキルオーブがあるのを発見できた。
「もしかしてこれも戦利品?」
「まあ、そうだろうな」
しかも二人だからなのかは分からないが、二つ置いてある。
「どっちがいい?」
「それはもちろんレディーファーストで」
「ハハハ、さすがユウ。ではお言葉に甘えて」
サクラは右のスキルオーブを取ったので、俺は左のを取る。
「せーので開けてみる?」
「そうだな、じゃあ」
「「せーの」」
互いが見えるようにウインドウを開き、中身を確認する。
「「えっ」」
そこには同名のスキル【パートナー】とあった。
「同じスキル?レディーファーストの意味なかったね」
「少しかっこつけたから恥ずかしい」
二人して苦笑する。
スキル【パートナー】その効果は・・・
スキル【パートナー】:このスキルをセットしている二人がパーティーを組んでいる時、お互いのステータスが大幅に上昇する。
*1パーティーに一組
*一人が死に戻りする時、もう片方も死に戻りする
「これって、なんか俺たちにあってる気がする。一心同体というかこれで二人でこれからもプレイできるというか」
嬉しさがこみ上げてくる。
「良かった、このゲーム初めて良かった~~」
サクラがわーんというふうに泣き出す。
「どうしたサクラ」
「あのねユウ」
サクラは泣きつつも少しずつ話をしてくれた。
小さい頃から二人で遊び、ゲームもしていた。
しかし、桜のゲームの腕がすごく上達し、いつも俺が負かされていた。その時から思っていたらしい。俺が桜と一緒に遊ぶのはつまらない、楽しくないのではないかと。実際俺はそんなことはなかった。桜と一緒に遊べていつも楽しかった。でも桜は嫌われるのではないかと思い、一緒にゲームはしなくなった。いつも一緒に登校し、学校でも話すが、確かにゲームの話題はあまり出なかったように感じる。桜はその時から胸にモヤモヤを抱えて過ごしてきたという。だがある時、このゲームの存在を知った。このゲームなら何か変えてくれる気がすると。しかし森で自分だけ突っ走り俺がつまらない思いをしたのではないか、またやってしまったと思ったらしい。
「だからこのスキルを見た時、ユウがこれからも一緒にプレイしたいって言ってくれた時、すごく嬉しくて・・・」
「そうか、そうだったんだ」
サクラの想いは分かった。
「サクラ、俺はサクラとゲームしてていつも楽しかった。嫌だなんて思ったこともない。森のことだってそう、周りが見たら、サクラが暴走気味で俺が連れまわされてみえるかもだけど、俺はそうは思ってない」
「ユウ・・・」
「俺はこれからもサクラと一緒にゲームがしたい、このゲームがしたい。このスキルはそれにピッタリだ」
「ありがとう、ユウ」
サクラはまた泣き出してしまう。
「辛い思いさせてごめんな・・・」
サクラが泣き終わるまで待って、さらに奥で見つけた転移の魔法陣に乗ってダンジョンを後にした。