2話:初戦闘
2話:初戦闘
《平原》
俺たちは街を東に歩き、門を出て平原にたどり着く。
その間にフレンド申請をし合い、そしてパーティーを組む。
「確か、βテスターは落ちたんだっけ?」
「そうなんだよ、だからどんな感じなのかなって」
βテストで落ちたことを話し、着いた平原を改めて見る。
ここは、初心者が狩場にするには一番適している場所らしい。
俺もどんなモンスターが出てくるのか、戦闘はどんな感じなのか楽しみである・・・あるのだが・・・
「スライムだよね」
「スライムだな」
俺たちの前に現れたのは青色でプルプルしているゲームではどこにでもいるスライムだ。
「なんか一番最初のエリアで出てくるって某クエ・・・」
「それ以上はダメな気がする!」
突っ込みをいれて、サクラの言葉を止める。
「だってすごくベタな気がする」
そうしている内にスライムが近寄ってくる
「まあいっか。じゃあ、行くよ。セイッ!」
掛け声とともに剣を抜き放ち、触り降ろす。
そのまま二回斬ると光の粒子となって消える。
「次はユウもやってみなよ」
「そうだな」
歩いていると二匹のスライムが現れる。
「じゃあ、いくぞ。ファイヤボール」
呪文を唱え、火の玉が一直線にスライムに向かってほとばしる。
火によってスライムが焼かれる
そして、もう一度呪文を唱え、スライムを倒す。
そうしている内にサクラももう一体のスライムを倒す。
「おー、呪文を唱えて魔法を使うってこんな感じなんだ」
嬉しさと楽しさが押し寄せてきて、感動すら感じる。
「ナイス、ユウ!」
「サクラも」
ハイタッチで嬉しさを表す。
「さあ、どんどんレベルを上げよう!」
笑顔でとても楽しんでいる様子が伝わってくる。
(さっきは様子がおかしかったけど、楽しめてるみたいだな)
安心して気分を変える。
「取り敢えず森に入ってみようよ!ここより強い敵がいると思うし」
「ちょっと待って!森の敵は少し俺たちには強くないか?ここでもう少しレベルを上げて・・・」
「さあ、どんどん進もう!」
ずんずんと森の方に歩いていく。
「ちょっと待てって!」
《森の中》
森に入って奥に向かう途中、スライムやら鳥型のモンスターが出てくるが、サクラが一刀両断して光の粒子に変えていく。
俺は攻撃する隙がないのでサクラのレベルが上がるが、俺は上がらない。
一定回数攻撃すれば経験値が手に入るが、その余裕がないのでレベルは上がらないままだ。
どんどんと先に進み、敵をある程度倒した頃。
俺たちの目の前に大きな熊型のモンスターが現れた。
ボスではないが、このあたりでは強い部類のモンスターだろうか俺たちの前に立ちはだかる。
「おい、こいつはまずいって!俺が魔法を打つからその隙に逃げよう!」
「大丈夫!」
(あっ、だめだ。目が本気だ)
サクラは生粋のゲーマーでチートかと思われるほどその腕はある。
昔、一緒にゲームをしている時もさんざん負かされたものだ。
こうなったら、誰にも止められない。
しかしゲームをすごく楽しんでいるのが伝わってくる。
「行くよ!」
サクラは熊めがけて走り出す。
そこからは、一方的だった。
突撃するサクラに合わせて腕を振るうモンスター。それを紙一重で躱し、その腕を斬りつける。次々と迫ってくる攻撃を一度も当たらず回避し、こちらも次々と攻撃を加える。
サクラはVRなれしているとはいえ、一度も当たらないというのは並大抵のことではない。俺は魔法で援護しようとするも、邪魔するだけだと思い止める。
初期武器なので時間は掛かったが、熊型のモンスターを一人で倒し、光の粒子に変えた。
(どんな縛りプレイだよ)
驚きはしたもののモンスターを倒したサクラを褒める。
「すごいなサクラ、一人で倒しちゃうなんて。さすがだ」
そう言うと目が覚めたのか、しまったっという顔でこちらを見る。
俺が見ていることしかできなかったから、自分だけ楽しんだからか、そういう顔をしたんだろうなと思ったが・・・
「ごめん、ごめんね」
ぼろぼろと涙を流し、突然泣き出してしまう。
「どうしたサクラ!別に俺は気にしてないよ」
突然のことに驚いていると・・・
「ごめん、今日はもうログアウトするね」
「あっ、ああ。分かった」
光に包まれて消えるサクラ。
俺はその場に立っていることしかできなかった。