14話:有名人?
後日。
隠しクエストをクリアした俺たちに、少しだけ変化があった。
「何か見られてるような・・・」
「うん?そお?何も変わらないと思うけど」
サクラとそんな会話をしながら始まりの街を歩いている。今日はテルさんのお店に行って、回復アイテムを補充しレベル上げに向かう途中だった。
俺が周囲を見ると、皆一様に目を逸らす。
最初はサクラの容姿に惹かれてこちらを見ているのかとも思った。今までもそういうことはあったし、今回もそうだろうと思っていた。しかし、今までのものとは何かが違う、そんな感じがした。
そんなことを考えていると、いつの間のにか-テルのお店-に着いた。
ここは、ポーションなどの回復アイテムの販売、プレイヤーの持ち込みでアイテムを作ってくれる店である。店主は体が大きく初めての相手を委縮させてしまうが、いつも絶えない柔和な笑みですぐに打ち解けることができる。
「こんにちは!テルさん。来ました~」
「こんにちは!」
俺たちは挨拶をし中に入る。
「ああ。二人とも、こんにちは」
棚で作業をしていたテルさんが返事をしてくれる。
「ポーションを買いに来ました」
「そうですか、ありがとうございます」
いつもの柔和な笑みで迎えてくれる。
買い物をし代金を払うと・・・
「あっ、そう言えば。随分話題になっていますね」
「えっ、何がですか?」
気になった俺が聞き返す。
「あれ?見てませんか?これです」
ウインドウを出してこちら向けてくれる。
そこにはNEO(New Excite Online)の提示版が表示してあった。
そこには・・・
桜色の剣士や黒の魔法使いなど、俺たちを指し示しているであろう単語が並べられていた。そして先日のビックワイルドボア戦のことが書かれてあった。
「どれどれ?私にも見せて」
サクラもウインドウを覗き込む。
「桜色の剣士の軽やかな身のこなし、黒の魔法使いの強力すぎる魔法だって。もしかしなくても私たち有名人?」
「あの時の戦いが見られてたのか・・・」
これを見て憂鬱な気分になる。
「何でそんなにテンション下がってるの。いいじゃん有名人」
嬉しそうにそう言ってくる。
「ははは、いいじゃないですか」
テルさんもそう言ってくれたが俺としては本当に憂鬱だ。絶対面倒に巻き込まれる・・・
「まあまあ、元気出してよユウ」
サクラにそう慰められ少しは元気が出た。まあ何とかなるか。
そして俺たちはテルさんに近況を報告して店を後にした。
「おい、あんたたち少しいいか?」
店を出ると直ぐに数人のプレイヤーに声をかけられた。
「はい、何でしょうか?」
俺がそう応対するや否や・・・
「俺たちとパーティーを組め」
いきなりそんなことを言われた。
「ちょっと、いきなりなんですか?」
サクラが食って掛かる。
「お前たちが提示版で話題の奴らだろ?お前たちといると攻略も楽そうだ。仲間になれ」
「なっ!そんなこ・・・」
「すみませんが、初対面でそんなことを言う輩の仲間になる気はありません」
俺はサクラとそいつらの間に入って毅然という。
「何だとてめえー大人しく仲間になってろ!」
そいつが俺に殴りかかろうとしたその時・・・
”ドーーン”
俺とそいつの間にでかいハンマーが落ちてきた。
「なっ何だこれ!」
「お前ら、内の常連になにしてんだ?」
そこに現れたのは明らかに怒りを露わにしているリンカさんであった。
「どうしたんですか?」
騒ぎが聞こえていたテルさんも出てくる。
「おうテル、こいつらが内の常連に迷惑かけてたみたいでな。今からしめるところだ」
「えっ!しめっ・・・」
足をガクガク言わせながらビビっている相手に対して追い打ちともいえるようにテルさんが前に出る。
「私のお客様に何か御用でしょうか?」
テルさんに凄んでそう言われれば・・・
「なっ何もありません!失礼しました~~~」
そう言って逃げていくプレイヤーたち。
「はっ!一昨日来やがれ!テル、塩撒いとけ!」
「リンカさん、そこまでしなくてもいいですよ」
やっと騒ぎが収まって、二人に事情を話した。
「そんなことになっていたんですね。もっと早く出てくればよかった」
「いえ、そんなことないですよ。助けて頂いてありがとうございます。テルさん、リンカさんさんも」
俺はお礼を言った。
「私からもありがとうございました」
「いいってことよ!それよりもユウ!」
リンカさんが肩を組んできて、初めて名前を呼ばれた。
「あの、リンカさん?」
「お前やればできるじゃねーか、見直したぜ」
さっきのサクラとあいつらの間に入っていったことを言っているらしい。
「ほんとだよ、ユウかっこよかったよ」
サクラにそう言われ照れる。
「おいおい、見せつけてくれるねー。まあ騒ぎは済んだことだし、そろそろ店に戻るわ。また何かあったら私のところに来い」
「はい、本当にありがとうございました」
「では、私も戻りますね。何か困ったことがあればいつでも」
「はい、テルさんもありがとうございました」
そう言い残し二人は店に戻っていった。
後には二人だけが残され、俺としては気まずい、恥ずかしい。
「ユウ、本当にかっこよかったよ」
「まあ、それならよかった」
「ユウ照れてる~」
「うるさい。いいからもう行こうぜ」
「うん。そうだね」
それから俺たちは予定していたレベル上げに行くのであった。




