13話:隠しクエスト
「疲れた・・・」
「何言ってるの?これからだよ!」
元気いっぱいに返事をするサクラ、その手には鍬が握られている。もちろん俺の手にも握られている鍬。俺たちが何をしているのか?そう畑を耕しているのである。
第二の町に着いて、さっそく受けたクエストがこれである。NPCからの依頼で、足を痛めたので代わりに畑を耕して欲しいというクエストである。
どうもこのクエスト、報酬はそこまで美味しくはないらしい。NEO[ネオ](New Excite Online)の攻略サイトではなぜこのクエストがあるのか?都会っ子では出来ない農業体験じゃねwwみたいな書き込みがあった。もしくは何か隠しクエストを出すための条件だとか。様々な憶測が飛び交っている。
俺たちの場合は、サクラが全てのクエストはやりたいと言っていたので全てやるつもりではあった。もしも隠しクエストがあるなら尚更である。それ以外にも畑を耕すのは初めてで新鮮味があって楽しいと言っていたので本当に農業体験である。
俺はと言うと、別にやりたくない訳ではなく、さっきのボス戦からのこれである。少し休憩させて欲しかったのが本音だ。
「少しは休憩させてくれ〜」
「もう。だらしないな〜もっと体力付けないと」
俺はあまり運動が得意ではないし、趣味もどっちかと言うとインドア寄りである。読書とか料理とか・・・
桜はと言うと、運動は得意だし、体を動かすのが好きである。その差が今出ている。
「ボス戦の後、すぐにやらなくても・・・」
「まあまあそう言わず、頑張って!」
そんな感じで重労働とも言える作業を終わらせてログアウトするのであった。
後日。
「ユウ、隠しクエストが見つかったって!」
「もしかして、あの畑仕事の?」
帰り道、NEOの攻略サイトからその情報を入手したらしい桜が俺に教えてくれる。
「そうだよ、どうもあの畑仕事のクエストを含めて、第二の町の特定のクエストをクリアすると出るみたい。これはさっそく受けないとね」
「そうだな、それでどんなクエストなんだ?」
「畑を荒らしに来るワイルドボアを倒すんだけど、どうも親玉がいるみたい」
「親玉って・・・」
なんとなく予想はつく。
「じゃあ、帰ったらさっそくGoだよ!」
「了解」
《第二の町》
「時間通りだね」
「そっちもな。それじゃ行くか」
「おー」
俺たちは前畑仕事を受けたNPCの所まで行く。
実は今分かっているクエストは全て受けたので、条件はクリアしている。
「こんにちは!」
「おー前に畑を手伝ってくれた子らじゃな。実はもう一つ頼みたいことがあってな・・・」
「もちろん!手伝いますよ」
「おーありがとう。では頼むぞ」
目の前にウインドウが表示される。
内容はワイルドボア10体討伐とビックワイルドボアの討伐とある。
(やっぱりか)
先程の親玉というのはビックワイルドボアのことであった。
「それじゃあレッツゴー!」
《第二の町付近の山》
「この山にでるわけか」
「うん、そうみたいだね」
俺たちはひたすら山道を登っていく。
その途中で出てきたワイルドボアをいつものごとく瞬殺していく。
これがまずいのかまずくないのか、俺たちの戦いが知らぬ内に他のプレイヤーに見られていた。
「おい、今の見たか?」
「ああ、あの男が使う土魔法、普通のよりでかくなかったか?」
まずいのかまずくないのかで言えば、後の俺的にはまずいのだがその時の俺は知る由もなかった。
「あれがそうか?」
「うん。みたいだね」
俺たちは木の陰に隠れながら、先の様子を伺う。
そこにはワイルドボアよりも二回りくらい大きいワイルドボアがいた。それに周りにも数体のワイルドボアがいる。
「作戦はどうする?」
「そうだね、まずは取り巻きを倒そうか。ユウはここで待っててね」
「なんでだ?」
「また前みたいに突進くらって呪文を邪魔されちゃうかもだから、取り巻きを私が倒してからね。私だったら一人で避けて取り巻きくらいは倒せるから」
「分かった。気をつけて」
「了解」
そう言うやいなや、飛び出していくサクラ。
いつもの軽やかな動きで敵の攻撃を避けては一撃を食らわせている。
瞬く間に取り巻きを倒して俺を呼ぶ。
「ユウ来て、突進されそうになったら前の戦法で!」
「あれはちょっと無茶じゃないのか!ソイルバレット!」
俺の放った魔法がビックワイルドボアに突き刺さる。
ダメージを受けて怯むビックワイルドボア、そこにサクラが追撃する。
「スラッシュ!」
攻撃を耐えたビックワイルドボアが俺をターゲットに定める。
その間にサクラが入る。
「行くよ、パワースラッシュ!」
「ソイルバレット!」
攻防の末、ビックワイルドボアを倒すことができた。
「やったーイエーイ!」
「お疲れー」
ハイタッチをする俺たち。しかしそれを先程のプレイヤーたちが見ていた。
「おいおい1パーティーでやっと倒せるビックワイルドボアを二人で倒したぞあいつら」
「あの女の子の動きやべーな。本当に人間技かよ」
「バカ、そっちもすごいけどあの男の魔法どうなってるんだよ。ボスのHPがガリガリ削れてたぞ」
喜んで気づかない俺たちは後にあんなことになるとは思わなかった。
「さあ、おじいさんに報告しに帰ろう」
「そうだな」
何も気づかない俺たちはそのまま第二の町に戻ってクエスト報告をし、報酬をもらった。




