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ズジに呼び掛けられ、ビリヅは仕方なく目を開けた。すると、ズジは、笑顔で手に持っていたビンを差し出した。
「さあ、君、これを飲み給え。これはチユシカの聖水といって、癒し魔法が施された水だ。これを飲めば、もう大丈夫」
ビリヅが飲むと、確かに体の奥からパワーがみなぎって来た。
「ところで、シスター・ツニがどこに行ったのか知らないかい?」
ズジに尋ねられも、ビリヅは、何と答えるべきか分からない。そこで黙って首を傾げていると、
「そうか。まあ、君はここでゆっくりしてるといい」
と言って、ズジは出て行った。ビリヅは、何もすることもできず、体は回復していたが、仕方なく、ベッドに横になることにした。
少し寝たのだろうか、誰かが入って来る音がして、ビリヅが目を開けると、そこにいたのは、ニボユボだった。
「ビリヅ君、君は今すぐ、ここを出て、外にいるトプという男と合流するんだ。詳細はトプから聞いてくれ」
ニボユボは、そう言うと、まるでビリヅを部屋から追い出すように、行動を急がせた。2人が、こそこそと逃げるような感じで、チユシカ教団の入口まで来ると、
「俺は、後で向かうから、ここでトプと合流してくれ」
と言って、ニボユボは再び教団の中に入って行った。
一体、どうなってるの?とビリヅが思った途端、
「ビリヅさんですね。私はトプと言います。ニボユボの旦那から、あなたと合流するように言われまして」
と声をかけられた。見れば、ニボユボよりは若い、10代後半くらいの痩せた男が、そこに立っていた。
「しかし、いきなりテゴタワとは、ビックリです。ホント、旦那は人使いが荒い。でも、拠点は見つけましたから、行きましょう」
トプが歩き出したので、ビリヅも一緒に歩く。ビリヅは思い切って尋ねてみた。
「僕には何が何だか、さっぱり分からないんだけど、君は何者?」
するとトプは少し微笑みながら、
「私は旦那の、昔からの商売仲間と言いますか、子分みたいなものです。どうやら旦那、ここでの儲け話を見つけたみだいですね」
「儲け話?」
ビリヅは、ますます分からなくなった。
トプに連れられビリヅが入ったのは、潰れたコンビニのような、がらんとしたフロアの空き店舗で、そこには今届けられたばかりのようなダンボール箱が並べられていた。
「お、来てるな。じゃビリヅさん、お手伝いをお願いします」
トプがダンボールの1つを開けると、その中には透明な液体の入ったボトルが何本も入っていた。
「このボトルに、そこにあるシールを貼るだけ。簡単な作業です」
トプがお店の奥にある机から持って来たシールには、
「チユシカの聖水」
と書かれていた。
よく分からないまま、そこでトプとシール貼りの作業をしていると、しばらくしてトプが、シールを貼り終えたボトルの入ったダンボールを10箱ほどカートに乗せて、出かけて行った。
その時、ビリヅは、不意に逃げ出すことを決意した。どこか別の場所に行こうと扉を開けると、目の前に若いシスターが立っていた。