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「どうしたんだい?突然」
中から出て来たのは、黒い牧師風の衣装を着た男性だった。
「連れが、いきなり体調を崩しまして」
ニボユボがそう言うと、男は2人を中に招き入れた。
「とりあえず医務室に運ぼう。おい、しっかりしろ」
ビリヅは目を閉じたままで反応はない。
「私はここの入門者教育主任のズジだが、君たちは誰だい?」
「私はニボユボ、連れはビリヅ。2人共、入門希望者です。チロゾトブ教区ヌュズノから来ました。彼は転生者です」
ズジとニボユボはビリヅを両側から支え、1つの部屋に入ると、その部屋のベッドにビリヅを寝かせた。
「ビリヅ君には何か持病があるのかね?日頃服用してる薬とか?」
「持病も薬もありません。ホント、突然だったんです」
ズジはニボユボの答えを聞くと、
「ならばシスター・ツニの出番か。彼女は癒し魔法の権威なんだ」
ズジはそう言うと、部屋を出て行った。
ベッドに横になったビリヅは、何とか意識は保っていたが、頭の中がクルクルとして、朦朧状態だ。ニボユボが耳元に語りかけた。
「どうだ。これで一発で、癒し魔法のシスターのお出ましだ」
ビリヅがやっとの思いで目を開けると、やがて黒と白のシスターの衣装をした、若い女性が部屋を訪れた。
「私はツニと言います。こちらですね、体調を崩された方は。それでは、ここで癒し魔法を施します。お連れの方は、少し後ろに下がって、静かに見ていてください」
ニボユボはツニに言われると、部屋の隅にある椅子に腰かけた。ツニは立ったまま、お祈りをして、何やら呪文を唱え始めた。
しばらくすると、ツニの眉間の辺りから、青白い光が出て来て、その光がビリヅを囲んだ。すると、ビリヅの体の奥底からパワーが湧き上がり、朦朧としていた症状を吹き飛ばしていく。
ビリヅがそのパワーに驚いて目を開けると、何故かニボユボがツニの手を握り、ボロボロ涙を流していた。
「ど、どうされました」
いきなり手を握られ、ツニが怪訝な声を上げる。
「ツニさん、それは神でも、宗教でもない。あなたは生命エネルギーを、こんな奴のために浪費しているだけだ。早死にしますよ」
「こんな奴」・・・。ビリヅは、ますます、ニボユボが分からなくなった。
「何故、そんなことをおっしゃるの。これは神の御業と聞いてます」
戸惑った様子でツニが言うと、ニボユボは答えた。
「神の御業が人の命を奪いますか?こんな行為を繰り返していたら、シスターは皆、長生きなどできませんよ。違いますか?」
ビリヅが薄目を開けて見ると、ツニは明らかに動揺していた。
「あなた方は自分の命をすり減らし、教団に利用されているだけですよ。ならば、どこか人に見つからない部屋はありませんか?私が、そこで、本当の神をお見せしましょう」
「本当の神・・・?ならば、私について来てください」
2人はビリヅを残し、部屋を出て行ってしまった。
その後、ビリヅはベッドに座り、どうすべきか考えていたが、ドアが開いたので、慌てて横になった。
「あれれ?シスター・ツニはどこだ?ニボユボ君もいない」
入って来たのはズジだった。スジはビリヅに話し掛けた。
「顔色は大分良くなったようだな。おい君、大丈夫か?」