嘘吐き
R.D.Kのメンバー、カイルとライルに関する一つのお話
日もすっかり落ち、皆が寝静まったであろう真夜中に、カイルは1人廊下を歩き、自身の片割れの元へと向かっていた。
そして少しして片割れの部屋に着くと、カイルはひかえめにその部屋の扉をノックした。
『…ライル?』
カイルはノックをしながら声をかけてみたが、扉の向こうからは返事はなかった。
それでもカイルは諦めず、何度か同じようにしていると、扉の向こうから、人の動く音がし、しばらくすると扉が開かれた。
『…カイル?…どうした?』
『…ちょっと寝れなくて』
『…そうか…とりあえず入るか?』
『…うん、ごめん』
『……』
そのままライルはカイルを部屋に招き入れると、さっきまで寝ていたのであろう少し乱れたベッドの縁に腰掛けた。
カイルもライルと同じように、ライルとは反対側のベッドの縁にそっと腰を下ろした。
『で?どうした?』
『……』
『カイル?』
『…いよいよだね』
『……』
『これでやっと俺らは…』
『……』
『ライル…?』
カイルはライルからの反応がないことが不安になり、そっとライルの方へと振り返った。
すると何かに耐えるかのようにライルの手がシーツを握りしめているのがカイルには見えた。
カイルはそんなライルの様子に僅かに顔を歪めたが、直ぐになんでもないかのような顔をして、再びライルに背を向けた。
『…ねぇライル?』
『……』
『ライルは俺の事好き?』
『…は?』
『いいから、答えて』
『好きとか嫌いとか、そういうのはない』
『そっか』
カイルがライルの返答に悲しくなり、顔を歪めると、カイルの変化に戸惑ったのか、ライルはカイルの方へと振り返った。
カイルはそれが分かっていたかのようにライルの方へ振り返ると、ふっと悲しげに笑った。
『…カイル?』
そんなカイルの様子にライルは焦ったかのように、カイルに顔を寄せ名前を呼んだが、カイルは唯々悲しげな笑みを浮かべるだけだった。
『…カイル』
『…ごめん、分かってたのに』
『なにを?』
『当たり前だよね【ライル】が【カイル】を好きになるわけない』
『…それは……』
『もう違うって?でも彼は俺の中に確かに居る
いつも【ライル】を嫌ってる彼が…』
『……』
『ねぇラ…ロイ?俺は誰なの?
【カイル】?それとも【カミル】?俺にはもう分からないよ』
カイルは今にも泣きそうな顔で、目の前で辛そうな顔をしているライルに縋りついた。
『俺にもそんなの分かんねぇよ』
『そうだよね』
『でも一つ言えるのは…俺はカミルは好きだ』
『俺もだよ…俺もロイのこと大事に思ってる』
『分かってる』
ライルはついに泣きじゃくり始めてしまったカイルの頭を優しく撫でながら、カイルには見えないように冷めた目をしていた。
しばらくして落ち着いてきたのかカイルは泣きやみ、涙で濡れた目を乱暴に擦ると、今度は反対にカイルがライルを抱きしめた。
『やめろ!』
『ロイ…ロイは俺が泣いていいよって言っても、きっと泣いてはくれないよね』
『なにいっ…て…』
『分かってるんだ、もうずっと』
『なにが?』
ライルがそう問うと、カイルはゆっくりとライルの身体を離し、ベッドから降りて、部屋のドアへと向かっていった。
ライルが状況についていけずにいると、カイルはドアの手前でドアノブに手をかけながら、ライルの方を振り向いた。
そして儚げに笑うと口を開いた。
『だから…だから殺していいよ』
それだけを言うと、カイルはドアノブを回し、部屋から出ていってしまった。
カイルはそのまま自室に戻ると、ベッドに寝転がり、天井を見上げ、溢れそうになる涙を必死に堪えながら、そっと呟いた。
『ロイ、君はホントに嘘つきだね』
カイルはそのままため息をつくと、自分自身がライルにしてしまったことを後悔しながら、眠りについた。