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3 ローマは一日にしてならずと言うが、家は建てれるもんだ

あっと言う間に建たせます。


「リーヌ様からこの地に居を構える事を許されたのですよ。」


 澄ました薄い笑みを浮かべながら近寄るビビ。


「えっ? この子ってキノの知り合いなの?」


 ポカンと口を開けたネシャが歩み寄る。


「ああ。ビビって言うんだ。ネシャ達は会うのは初めて……だな?」


「うむ。キノの知り合いならしょうがないな。争う必要はないか。」


「だねだね。でもビビってどっかで聞いたような名前のような……」


 ネシャ達のイライラも収まってきたようだな。だけど、今ビビの正体はばらさないほうがいいような気がするな。


「ま、まぁ気にするな。ビビなんて名前はいくらでも転がってるだろうよ。で、ビビはどうして手伝ってくれるんだよ?」


 俺の問いかけに目をキラキラさせながらビビは嬉しそうに答えた。


「あなたの家造りを手伝えばキノの作る料理が食べれるのでしょう? 私が望んでいた夢が今まさにこの手に掴めるのですよ!」


 あっ……そうだった……こいつは俺の料理のためだけにあんな戦いの場を設定するようなやつだったんだ……


「分かった分かった! 人手はあればあるほど助かるからな。ちゃんと手伝えば作ってやるよ。ただし! 材料はお前が準備しろよ。」


 俺の料理が食えるのが余程嬉しいのか、うきゃーうきゃー言いながら跳ね回っている。こうして見てみると普通の女の子なんだがな。


「よし。じゃ、家造りを再開するか。ビビ。お前は頭がいいか?」


 少しむっとした表情のビビが早口で答える。


「聞き捨てなりませんね。仮にも守護竜たる……」


 おいぃぃ! いきなり爆弾投下するんじゃねえ!

 ビビの口を塞ぎ話を遮る。

 

「よしよし! じゃお前は現場監督として頑張ってもらうぞ! ネシャ、ニョロゾ! こいつ知力は飛び抜けてるから、こいつの指示通りに資材を組んでもらっていいか?」


「こ、こら! いきなり何をするのです!? それに私は知力だけでなくこの地を守護し……」


―おい! お前の素性は隠してろ! この町で揉め事はごめんなんだよ。もしこれ以上喋るなら……― 


―喋るなら……?―


―お前の料理だけ野菜のみだ―


「私は少し他人より頭の回転が早いただの町娘です。」


「よし。それでいいんだ。」


やれやれ。もしもビビが元守護竜だと知ったらネシャ達どころか、この町自体がパニックになるのは目に見えてるな。こりゃエーシャとエルシュさんにも話しておかないとな。それと……


「おいニーチェ! 何いきなりぶっ倒れてるんだよ。ほら起きろ!」


 ニーチェにも話しておかないとな。



 こうして俺の家はニョロゾ、ネシャ、ビビに助けられて建った。

 ほぼ一日で。

 もちろんすぐに住めるわけではない。形として出来上がっただけだからな。

 ちなみに家の造りはログハウス。だから資材を組み上げ金物で固定するだけでできるので大工の腕がなくてもなんとかなる。

 しかし、ネットショッピングで家まで売ってるとはどこまで便利になってるんだよ。買えないものなんてないんじゃないか?



「みんなありがとうな! 一日でここまでできるとは思わなかったよ!」


 できたばかりのテラスで休んでいる三人に感謝を伝える。


「いやいや! 家を建てるなんて機会はないからね。楽しかったよ!」


「だねだね! 何事も経験って言うけどすっごい楽しかった! ビビが的確に指示してくれたおかげだよ!」


「ま、まぁ記号と番号通りに組んでいけば容易いものでしたよ。」


 どうやらだいぶ打ち解けて仲良くなったみたいだ。

 一時はどうなるかと思ったが今後も問題なく付き合ってくれそうだな。

 さすがに皆にばから動いてもらって何もしないのは気が引ける。さてどうするか……


「なぁグラーシュさんとこで買った魔術具ってすぐに使えるのかな?」


 せっせと掃除をしてくれているニーチェに聞いてみると問題ないだろうとのことだ。


 んじゃ頑張って建ててくれた皆にまかないくらいは作ってやろうか。


「みんなお腹減っただろ? 晩飯作るから自分の飲み物だけでも準備しろよ。どうせ酒飲むんだろ? 今夜の食材は俺が持つよ。」


「「「やった―――!」」」


「じゃ俺とネシャで飲み物買ってくるからな!」


 まるで狩りにでも行くかのように、ネシャとニョロゾは疾風のごとく二人は消え去った。


「では私は食器を準備しますね。」


 いつものようにおしとやかにゆっくりと立ちあがり街道に足を運ぶビビ。

 だが俺は見てしまった。プルプルと小刻みに震える彼女の手足と今にも口から溢れそうなよだれを啜る横顔。

 うん。あの表情は怖いな。もし夜道で会ったら全速力で逃げ出すだろう。


―おいっ! 肉だぞ! 肉を食わせるのだぞ!―


 ぬあーぬあーと足元で吠えるオル。


―おう。任せろ! 肉料理だけじゃなく魚料理も作るからな―


―! なんという贅沢を……―


 う~む。食い物のことになるとどいつもこいつも正直な反応するな。


 

「ニーチェ。お願いがあるんだが、パンと肉と鶏の卵と……葉っぱものの野菜……あと適当にいろんな野菜を買ってきてくれないか? 30人前くらい!」


 ニーチェに金を渡し買い出しを頼む。


「うえぇぇっ! って多分食べ切っちゃうよね……」


「間違いない。ビビはオルと変わらんくらい食うからな。」


「さすが守護竜だね……じゃ急いで買って来るね!」


「おう! 頼んだぞ!」


 んじゃ、皆が戻るまで調理の準備を始めるとしよう。


 まずは急いで火を起こす魔術具と水を汲み上げる魔術具を設置する。

 この火を起こす魔術具はキッチン台として使えるから非常に助かるな。

 トイレと風呂は……後回しだ。とにかく料理が作れればいい。


 ビビが食器を持ってくるって言ってたから調理器具を一式買い揃える。長く使うものだから少しはこだわらないとな。

 いつものように段ボールが宙に沸いて出てくる。


 さて……いよいよ金がなくなってきたぞ。

 残金は……7万……


 あとは……あっ! 調味料! とりあえず手持ちにないものを揃えてと。


「戻ったぞ! 今夜は飲み明かすぜ!」


 自分ほどもありそうな酒樽を抱えたネシャとニョロゾが笑顔で帰ってきた。


「あまりよい器ですと皆さん気が引けるでしょうから木製のもので揃えましたわ。」


 久しぶりの俺の料理に期待を膨らませているのだろう。満面の笑みでビビが戻ってきた。


「ふ~! お待たせ! 頼まれたもの買ってきたよ!」


 少し息を乱しながらニーチェが扉を開ける。


―肉を……ワシに肉を……―


 オルよ……今のお前は威厳もへったくれもねぇな。


「うし! じゃ調理始めるか!」


 




さっくり建てました。

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