1 とりあえず今の状況をまとめてみようじゃないか 1
本日より第一章のはじまりです
…
「あ! おじいちゃん! 気がついたみたいだよ!」
……女の子の声? 俺は……オークに潰されそうになって……はっ!
「おぉ気がついたか。いきなり白目ひんむいてぶっ倒れるからびっくりしたぞ。腹が減りすぎたのかい?」
どうやら気絶して運ばれたみたいだ。柔らかなベットに横になっている俺の側に腰かけるエルシュさんと金髪の髪を後ろで束ねた15,6歳くらいの女の子と目が合う。
首がちょんぱされて血が吹き出てるのを見るなんて初めての経験で、思わず気絶しましたなんて恥ずかしすぎて言えないから適当に誤魔化す。
「はは……そうです。こっちに来てから何も食べてないからお腹空きすぎたみたいですね。ここまで運んでくれたのですか? なんか迷惑ばかりかけてすいません。」
エルシュさんは俺の誤魔化しに気付いたのか、ふふっと笑いながらゆっくりと立ちあがる。
「いやいや。気にせんでかまわんよ。もう少ししたら晩飯ができるから一緒に食べるといい。それまで休んどればよいぞ。」
どこまで面倒見がいい人なんだ。せっかくの好意だ。ここは甘えておこうか。
「何から何までお世話になりっぱなしですいません。何か手伝えることがあったら遠慮なく言ってくれたらかまいませんから。」
エルシュさんはわかったと言わんばかりに片手をあげ、俺に背を向けて部屋から出ていった。
エルシュさんが部屋から出ていったあと、天井を睨みながらさっきの出来事を思い返していた。
う~む。異世界に来たのはいいが、なかなか命懸けの日々を送りそうだな。魔獣が当たり前のようにでてくるとは……エルシュさんいなかったら間違いなく死んでたな。てか、エルシュさん何者だ? 一瞬でオーク倒してたよな。しかも草刈りの鎌で。
こんなことなら見栄張らないで、何かの強化スキルを付与してもらっとけばよかったわ。今更変更なんか出来ないから、何とか生きていけるようにネットショッピングを駆使しないとあかんな。はぁ~俺の命綱はタブレットだけか……
―ねぇねぇ。ネットショッピングって何?―
「あ~ネットショッピングってのは、家から買い物に出るのが面倒で仕方ないってときにボタン一つで品物を選んで買い物するんだ。」
―ふぅ~ん。お店に行かないで買い物できるんだ。―
「そうそう。今の時代、ネットがないと何もできないけどネットショッピングは特に欠かせないかな。」
―そうなんだ―! ネットって言うのもよく分からないけど、お兄さんってすごいんだね!―
「そうそう。お兄さんはすごいんだよ~。って……あれ?」
ベットで横になってる俺の顔を覗きこんでる金髪の女の子。
やばい!もしかして、俺ひとり言つぶやいてたか!?
「今の忘れて?」
「ネットショッピングってやつ? なんで?」
「忘れたほうがいい。きっと君の人生を狂わせる。」
「なんですと―! そんなの言われたら尚更忘れられないじゃない!」
「いいから忘れるんだ! 頼むから忘れて! 忘れてくれないとお兄さん泣くぞ!」
「別に泣けばいいじゃん! あたし痛くも痒くもないし! 詳しくネットショッピングの事教えてもらおうかな―!」
俺の秘密を知ってしまった女の子は執拗に情報を聞き出そうとする。このスキルをばらしてもいいものなのか? この世界の人達がスキルというものを持ってるかどうかすらわからないのだから、ここは秘密にしておくのがいいかな。
ベットの上の俺に馬乗りになってまくし立てる女の子をひょいと持ち上げ床に降ろす。
「いつか気が向いたら教えてやるよ。とりあえず誰にも言うなよ。特にエルシュさんにはな。もし喋ったら……」
「けちぃ――! おっさんのけち――――!」
女の子は顔を真っ赤にして部屋を飛び出して行った。
…おっさん呼ばわりとは。まだ22歳なんだがな……とりあえずどっかに行ってくれたみたいだから、これで少し一人の時間ができそうだ。
「さて……ちょっとこの世界の事を整理しとこうか。」
少し長くなりそうなので2回に分けます