14 戦いの末に得られたもの
オルーツアに戻ります。
王都に滞在する最後の朝を迎えた。
結局昨日は観光らしい観光はできずにレゴブロックを探し回っただけだったな。
今日は昼過ぎまで滞在して王都を離れようと考えているので、朝飯ついでに市場に向かう。オルーツアにない食材があるなら大量購入しとかないと。
オルとしばらく歩いていくと徐々に賑やかになってきた。買い物客で道はごった返し、さすがに踏まれる危険があるのでオルは俺の肩に飛び乗ってきた。
―なんとまぁ賑やかなところだな。それに腹の虫が騒ぐ匂いで満ちているな!―
―今日こそはたらふく食え。オルーツア行きの馬車が出るまではお前の自由だ。―
―! では遠慮なくいくぞ!―
それからのオルは凄まじかった。目につく露店では必ず足を止め食い物を漁る。特に気に入っていたのは鳥肉をクリームソースで煮たものだ。
―これは非常にうまいぞ。すまぬが多めに持って帰れぬか?―
―この程度の味なら俺でも作れるぞ。材料は…うん。普通に売ってるものだな。帰ったら作ってやるから持ち帰りは我慢しろ―
肩にぶら下がるオルは鼻息を荒くし、帰ったらすぐに作れとうるさい。そんなに難しい料理じゃないからあっという間に作れるんだがな。
一通り市場を食べ歩きし、気になる食材を買い漁っているとあっという間に馬車が出る時間が近づいたので乗り場に向かう。今度来るときにはヘタレ疑惑が町の人々の記憶から消えていればよいのだがな……
こうして王都での慌ただしい滞在が終わりオルーツアに戻ることとなった。
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「いらっしゃいませ~あっ! エルシュさんおかえりなさい!」
いつもと変わらない笑顔でレイカが王都から戻った三人を出迎える。
「色々と大変だったみたいですね。王都のギルドマスターから封書が届いたのである程度は知っていますが。」
レイカがお茶を準備しながら労いの言葉をかける。
「そうじゃな。久しぶりに寿命が縮む思いがしたわい。だがそれに見合う成果を挙げたのも事実じゃ。」
「ほぅ。エルシュさんからそんな言葉が出るとはねぇ。で、どんな成果なんですか?」
完了クエストの書類を片付けたギルド長のアヤメがエルシュのいるテーブルに着き話の輪に入る。
「うむ。今すぐにでも言いたいが、キノくんが戻ってからのほうがよかろう。三日後には彼も戻るだろうから三日後の夕方にこの町常駐の登録しているすべてのCランク以上の者を召集するよう伝達を頼むぞ。」
「それって……まさか!」
レイカとアヤメは知っている。すべてのCランク以上の冒険者を召集する意味を。そしてそれはかれこれ20年も前にオルーツアで一度限り行われたことでもある。
「まぁ、そういうことじゃ。」
にやりと笑みを浮かべるエルシュ。さて……三日後はお祭り騒ぎになるかのぅ。
「あとネシャとニョロゾも呼んでくれ。あやつらなら一日もあれば戻ってこれるじゃろう。」
「それは大丈夫ですよ。あの二人なら昨日戻ってきて今ザネックスさんのところに行ってますから。しばらくしたらギルドに来ると思いますよ。」
「ほっほっ。では話が早いな。ではあやつらが戻るまで待たせてもらおうかの。ほっといたらまたもやどこかに行ってしまうからのぅ。」
―20年振りか……それもこれもすべてはキノくんがきっかけじゃな―
カウンターの上に掲げられた木彫りの冒険者の心得を見つめながら、エルシュはしばしの間感慨に身を預けた。
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「ただいま~! ってあれ? 誰もいないのか?」
王都からエルシュ宅に戻ってきたキノとオルだが、どうやら二人は家にはいないようだ。
「二人ともどこに行ったんだ? まあいいや。久しぶりにギルドに行ってみるか。」
戻るなりすぐにギルドに足を運ぶ。ずっと馬車に揺られていたので体を動かしたくてしようがない。
―戻ってきて早々に出かけるのか? エルシュらが戻るまでゆっくりすればよいものを―
―いいじゃねえか。サチのクエストのこともあるからギルドで少しでも情報を仕入れておかないとな―
町を歩きながらオルの悪態に答える。ようやく戦いから離れた日々が戻ってきたと思ったら、いてもたってもいられないのだ。
「こんにちは~! うおっ!?」
冒険者ギルドの扉を開くと見知った顔がずらりと並んでいる。すべてCランク以上の顔だ。
「おっ! 戻ってきたか!」
「タイミングばっちりだな! これで関係するやつは揃ったみたいだ!」
「「キノくんおひさ!」」
なんだなんだ? ニョロゾ達も来てるのか? もしや……また緊急クエストとか?
「キノくん戻ったか。では始めるとするか。」
エルシュが手に持つ親書を広げ声をあげる。
「これより名を呼ばれる者はベルン国王より任命された冒険者として新たな立場にてその輝きを更に増し加える者となる。」
「賢者エーシャ、Aランクの冒険者とする。」
「ハクとカナヤが娘ニーチェ、Aランクの冒険者とする。」
「若きテイマーキノ、Cランクの冒険者とする。」
「そしてこの三人を導き冒険者として開花するよう尽力したネシャならびにニョロゾの二人、Sランクの冒険者とする。」
「なお、これらの者は我が国において大いなる働きをし、オルーツアのみならず国自体を代表する者である。すべての言動において民をつまずかせることなく、更なる精進に励むよう切に願う。」
「以上だ。」
その瞬間ギルドが揺れた。数十人もの冒険者の雄叫びのせいで。誰一人として、嫉妬する者、ひがむ者、文句を言う者はいない。皆が五人を祝福し喜んでいる。
「え? え? 何だ?」
訳もわからず戸惑う。エーシャとニーチェは顔を真っ赤にして照れている。ネシャとニョロゾははじめはキョトンとしていたが事の重大さに悲鳴をあげている。
「ちょっとお前ら凄すぎだぞ!」
「マジか! こんな片田舎の町にSランクが二人もだと! しかもAランクも二人って!」
「やべぇよ! もしかしたら王都に匹敵するくらいのメンバーじゃね?」
皆口々に称賛の言葉を浴びせる。
「キノくんやっぱりすごい! 私が唾をつけただけあるわ!」
レイカさんが手を取り喜んでる。
「あ、ありがとうございます。でも何が何やら……」
「国王からの任命だよ! 一体どんな事をやってのけたんだい?」
レイカさんに割って入るアヤメさん。
「いや……何したのやら俺にもよく分からないんですが……」
「よっしゃあ! こんな喜ばしい日はそうそうないぜ! 祝宴だぁ!」
「「「おおぉぅ!」」」
男達の野太い雄叫びが響く。ギルドの様子を伺っていた町の人々もこれは一大事だと町中にふれ告げに奔走し始めた。
「すべてはキノくんのおかげじゃよ。」
隣で目に涙を浮かべるエルシュさんが穏やかに俺の肩を抱いてこの光景を目に焼き付けていた。
ランクがあがりました。
明日からは閑話と登場人物の紹介です。




