12 ペットの不手際は飼い主の責任ですよ
明日で正月休みが終わります。
今日は小学の同窓会に行ってきます。
「おっ。二人とも帰ってきたか。」
宿のロビーでお茶をすするエーシャがようやく帰ってきたかという感じで二人を出迎える。
「帰ったぞ。無事に解放されたみたいでよかったよ。ほれお土産だ。エルシュさんは?」
露店で買った兎肉の焼いたものと小樽に入った蒸留酒をテーブルに置く。ここの宿は持ち込みはいいのだが、部屋には食べ物だけは持って上がれない。なのでロビーで軽く宴会タイムに突入なのだ。
「エルシュさんは俺と同じくリーヌ様に呼ばれてまだ城から戻ってないぞ。ところで……」
神妙な顔つきのエーシャが話を続ける。
「城でのお前の評判だがな、リーヌ様と国王のおかげで有名人だぞ。勇気あるヘタレだとな。」
「……エーシャ。少しは反論してくれたんだよな?」
「できるわけないじゃないか! リーヌ様と国王がヘタレを連呼してんだぞ。まぁ兵士達の間ではリーヌ様と同等の力を持つヘタレだと感心されてたがな。」
……あいつは少し痛い目にあわないといかんな。だがこの王都じゃ抜群の人気を誇っているだろうから周辺の町からレゴブロックを広めるしかないか。
いっそのことレゴブロック教とか新興宗教を王都を拠点に広めるか。
「わかった。俺はしかるべき措置を取るしかないな。その時は協力してくれよ。」
ジョッキに蒸留酒をついで飲みながら焼き肉をつまむ。
「え~嫌だよ。リーヌ様は団長から退いてもすげ~人気者だぞ。一般人になったせいか交際を希望する兵士に取り囲まれてたからな。あんなムキムキの騎士団のやつらを敵にはまわしたくないぞ~。」
エーシャもお茶から酒に代え焼き肉を皿に入れてオルの前に差し出す。ついさっき一羽分の兎を食ったのにまだ食ってるよ。
「大丈夫だ。まずは信徒集めから始めよう。で、やつの呼び出しは何だったんだ?」
「ああっとな。その事なんだがオルーツアに戻ったら話すよ。まぁ痛くはなかった。気持ちよくもなかったがな。」
「そりゃそ~だ! エーシャも見ただろう? やつの無慈悲なアイアンクローを。あれはネシャの大斧に匹敵する武器だぞ!」
「それは言い過ぎよキノ。でもあんな細い体で男顔負けの力があるなんてね。でも、これからリーヌ様はどうするのかな?」
お酒を飲まないニーチェはオルを膝にかかえ焼き肉を食べさせている。ちょっと行儀が悪いんじゃないかい?
「さてな。やつには聞かなきゃならんことがありすぎるから一応生活の拠点だけでも知っておかないと後々面倒だ。」
「……キノはリーヌ様と昔からの知り合いだったのか? 話している様子だとかなり親しげに見えるのだが。」
「そうだよ。ギルドで会った時は他人行儀だったのにあんなに仲良く話してるの見たら……」
そうだった。レゴブロックとオルの事はやつによって記憶を改ざんしたんだったな。
「知り合いって言えば知り合いだな。ギルドで会う前に一度だけ会ったんだ。それでな、実はオルの本当の飼い主はやつなんだよ。」
「「ええっ! そうなんだ!?」」
「うん。これはマジだから。色々あって俺がテイマーとしての主だけどな。そのくらいの関係だぞ。あんな箱みたいな体型したのは目の保養にもならんわ。」
「そっか~。よかった……」
深いため息をつき安堵の表情を浮かべるニーチェ。が、すぐに目を伏せる。
―オル。これくらいの誤魔化しなら大丈夫だよな? 一応嘘はついてないぞ―
―ああ。問題はないだろう。それからリーヌ様だがお前が来るのを待っておられたぞ。あのエルフと話がついた後に会うのではなかったか?―
―あ。忘れてたわ。ってどうしてやつの考えが分かるんだ?―
―……いや、さっきからお前の後ろに……―
「むが――――!!!」
「私が言った事を半日も覚えていられないのですか?まったくこれだから。なぜ姉上はここまでこんな男に肩入れするのでしょう……」
サチの言葉にならない唸り声がなぜ出るのか……わかったぞ……
あ~びっくりした。まさかこの俺がアイアンクローされて持ち上げられるとはな。
「エーシャ。俺の頭蓋骨ずれてないか? 間違いなく数ヶ所ひびが入っているはずなんだが。」
「いや……たぶん大丈夫だと思う。喋れるなら死にはしないだろう。」
「エーシャ。それにニーチェ。少し席を外してもらってもよろしいですか? このヘタレに話すことがありますから。」
テーブルを挟んでリーヌと対する。
「さて、なぜこの世界に私がいるのかということですが……」
リーヌはかれこれ400年より昔にはこの世界にいたという。オルをブレスレットに封じ、俺がこの世界に飛ばされた後にシューラさんによって飛ばされたと。
ちなみにエルフの体を借りたのは人型の生物で一番の長寿なのが理由らしい。シューラさんの力で飛ばされても、同じ年代にはほぼ100%行けないので、どうにか俺と関われることを考慮してだとか。
そしてなぜこいつまで飛ばされたのかと聞くと『ペットの不手際は飼い主の責任』ってことで、俺の様子を見てくるように言われたようだ。なかなかシューラさんも弾けてるな。
「ちなみにお前のその馬鹿力は生まれつきなのか? 女神というより破壊神の間違いじゃないのか?」
「エルフとして生を受け、当初は可憐な乙女として育つはずでしたが、育った家柄がなかなかの家系で日々戦いを仕込まれました。それが延々400年近くもですよ? 強くならないわけがありません。」
「なるほどな。お前はお前で大変だったんだな。そうか! そのせいで女神の時と同様にないんだな! 体を鍛えすぎたら余分な脂肪はなくなるからな! それとも……生まれつ……あぶなっ!」
懐から飛び出したナイフが頬をかすめて壁に突き刺さる。うん。今のは殺気にまみれていたぞ。
「ともかく、こうしてあなたがこの世界に馴染んでいるのを確認でき安心しました。私はしばらくはこの世界に留まります。これからもオルの世話をお願いしますよ。このヘタレ王子。ぷぷぷっ♪」
席を立ち皆に軽く挨拶をしてオルに何か言った後、リーヌは宿から出ていった。なんだか嵐が通りすぎたようだな。
―オルよかったな。やつがしばらくいるそうだぞ―
―うむ! たまにはリーヌ様のところに行ってもよいか?―
―ああ。もちろんだ。やつも寂しかっただろうしな―
「おや。皆帰っておったか。先程リーヌ様とすれ違ったがここに来ておられたのか?」
少し赤ら顔でエルシュさんが戻ってきた。どこかで一杯ひっかけてきたようだ。
「あっ! おじいちゃんおかえりなさい! さっきまでキノと色々話してたよ!」
「そうかそうか。キノくんはしばらくここに滞在するんじゃったよな? ワシらは明日の朝にはオルーツアに戻るからの。」
「二、三日は観光して戻ろうと思いますよ。今日ニーチェに案内してもらいましたが、あまりに広すぎてまだまだ見れてない場所がたくさんありますしね!」
「うむ。キノくんは王都やオルーツアだけにとどまらず、もっと足を伸ばして世間を知る必要があるからのう。とりあえずは一人でじっくり王都を見ておくとよかろう。」
う~む。酒が入ってるせいかテンション高いな。ま、普段は領主として忙しくしているからたまには羽を伸ばしたいだろう。責任が伴う立場だと楽しみたくても楽しむ時間がないからな。
よし! 明日からは王都観光だ! みんな戻ったし今日は早く寝るぞ!
あと一話か二話更新して、閑話と登場人物紹介でこの章は終わります。




