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異世界転移したんけどほぼ普通の人間なので毎日がサバイバルです  作者: おるる
第5章 異世界って戦いばかりで結構疲れるのです
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9 短剣

賑やかそうなキャラです。


「……誰に聞いたんだ?」


「ぷぷぷっ♪ どうやらアンタが降参上手のヘタレなんだ! 誰からか聞いたかって? それは教えられないなぁ♪」


 ……俺の冴え渡る勘によると、99,999%の確率でやつの知り合いだな。というか身内か? 


 肩より少し長めの髪の毛の色は少しくすんだようなピンク色だがエルフということもあり顔つきもよく似ている。

 だが決定的に違うのはやはり体型だ。レゴブロックとは違いごく普通の体型だ。ごく普通の女性特有の……どうして同じエルフなのにこうも違うのか。ある意味やつに同情してしまうぞ。


 「残念ながらヘタレ王子はさっき出て行ったぞ。レゴブロックに制裁を! とか叫びながらな。向こうの大通りに向かってたから早く追いかけろ。今ならまだ間に合うはずだ!」


「ありゃ! アンタじゃなかったんだね―。でも教えてくれてありがとう♪」


 鼻歌まじりにスキップをしながら宿から飛び出ていった。う~む。エルフってのはみんなあんな感じなのか?


「キノくん……あのエルフは用事があるとか言ってたがいいのか?」


「ああいいですよ。どうせテルヨの関係者だと思いますからほっときましょう。それよりこの短剣がどうかしたんですか?」


 少し心配そうにしていたエルシュだが椅子に座り直し話を続ける。


「うむ……その短剣はザネックスさんのところで手に入れたものなのだろう? 知る人は知ってるのだが、その短剣は過去400年間所有者がいなかった物なのだ。」


「うええっ!? そんなに高価な物なんですか!?」


「高価といえば高価なのだが、それよりもその短剣を手にすると魔素が急激に吸い取られ立ってもいられなくなる呪われた短剣として忌み嫌われておったのじゃ。」


 マジか。呪いの装備品を俺は知らずにぶらさげてたのか……


「……ええっと。俺って魔素が全然ないから何の影響もでないんじゃないですかね?」


「いいや。世の中にはキノくんのように魔素をまったく有していない人間もおる。過去にそのような人間にその短剣を握らせた結果……」


「……結果は?」


「半日も経たずに生気を吸われてミイラになった。」


「ぴゃあああああ!」


 思わず短剣を放り捨てる。過去にオルに言われた言葉を思い出した。


『絶対にワシに向けるな』


「だがな、君が手にしてから何の異状もないだろう? 過去にミイラになったのは当人と彼を近くで観察していた術士だったのだが、今のワシらですら何の影響も出ておらん。」


 そういやそうだな。そんないわく付きなものなら、エルシュさんもニーチェも今頃干物になってるはずだ。


「エルシュさんはなんでそんなにこの短剣について詳しいんですか?」


 うつむくエルシュさんが静かに語りだした。


「その実験を任されていたのがワシだったんじゃ。」



 エルシュさんによると召喚者が手にしていた武器はいずれも同様の力を持っていて、人が扱えるものではなかったらしい。だが、その破壊的な力を国のために使えないかと先代国王から依頼を受けたとのことだ。

結局、研究すらできない状況で扱いに困った国王はザネックスさんの父親に管理を願いあの店に保管していたらしい。


「でも、なぜザネックスさんやそのお父さんは何の影響も受けなかったんです?ミイラになってもおかしくないんじゃないですか?」


「ザネックスさんの父親は召喚者の血筋だったから影響がでないのであろう。それにザネックスさんの店にいた女性も召喚者を親に持つ娘さんだ。」


 なるほどな……なんとなく話が理解できる。


「君がその短剣を持ち帰った姿を見て、失礼ながら君を召喚者と勘違いして危うく心臓が止まるかと思ったが、ワシらから魔素が吸われる気配がないので黙っていたのじゃ。」


「そうですか……これからどうしたらいいですかね?ザネックスさんに返したほうが?」


「いいや。むしろこのまま君が持っているほうがよかろう。下手に世に出回るよりも、普通に手にしておれば素性を知らぬ者からすれば上等な業物にしか見えぬだろうからな。」


 濃い……濃すぎる話だ……俺個人が管理していくのか……


「わかりました。じゃ、今まで通り俺が持っておきますね。切れ味がなかなかいいから解体するときに結構役に立ってたんですよ。」


「解体?」


「ええ。魔物や魚なんかの解体はこれでやってたんですよ。この短剣で捌くと肉に血が混じらないで鮮度がいい状態になるんですよ。」


「…………まぁ君がそのようにつかうのには何も言わないが……」


 苦笑いを浮かべるエルシュさん。心につっかえてたものが取れたようで穏やかな表情を見せる。


「でも、もしも俺の体調がおかしくなったりしたらすぐに投げ捨てますからね! ミイラにはなりたくありませんから!」


「うむ。さすがにそれは止めはせんぞ!」


 ゲラゲラと笑う二人。遠目でその様子を見るニーチェとエーシャ。


「エルシュさんキノくんが相当お気に入りみたいだね。あんな砕けた表情見たことないぞ。」


「うんうん。キノってお父さんにどことなく雰囲気が似てるから話しやすいのかも! 体格は正反対だけどね!」


「ははは! そうだな! 俺もキノくんと話してたらハクさんを思い出すよ。…………なぁハクさんとカナヤさんは?」


「ん~ん。半年前に手紙が来てたけどまだ見つからないって。書いた日付が9か月前だったから相当遠くまで探しに行ってるみたい。」


「そうか……無事に帰ってくればいいんだがな。是非ハクさんとキノくんを会わせてみたいな。」


「ホントだよ! たぶんね、朝まで飲み明かして二人してひっくり返って寝てるとこにお母さんが来て雷魔法を落とすよ!」


「だな! その時はネシャ達も呼んで宴会だな!」


「うんうん! 何かキノがオルーツアに来ていろんなことして、こんな先の話してたら生きてるのがすごい楽しいって思えるんだ! 変なおっさんだけどいい人だねキノって!」


「そうだな。あいつはいいやつだ。」


 何気ない友と語らう空間。ゆっくりと流れる楽しい一時。こんな時間を過ごすために俺達は冒険者やってるんだろうな。そう思えばここ最近のバタバタも許せるだろうか。


《ドタドタ…………ぜぇ…ぜぇ……バタン!!》


 宿の扉の蝶番が外れるくらいの勢いで開かれた扉の向こうにはどれだけ全力疾走してきたんだ? と言わんばかりのピンクの頭のエルフが膝を震わせ立っている。


「ぜぇ……ぜぇ……ちょっと! あっちにはヘタレ王子いなかったわよ!」


 ……うっわぁ~~さっきのエルフか……



ようやく短剣に触れる話になりました。



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