8 人は誤解を受けるために生きる
色々と話が進展します。
「とりあえずここから出よう。腹減ったしな。」
皆を促し出口に向かう。もうバトルはたくさんだ。強くなんなくていいから、これからはのんびり生きてくぞ。
王都に行ったらあれを食うとかこれを食うとか話ながら階段をあがっていくと闘技場から出る間際にルベン国王とセティ国王に呼び止められる。
「見事な戦いであったぞ! お互い譲らずあのように潔い勝負を見せつけられるとはな!」
「うむ! そなたとテルヨの引き分けもそうであったが、特に最後のビビの従魔とそなたの従魔との戦いは痛み分けで終わったが、久しく忘れていた戦いの本質を思い起こさせるものであったわ!」
え……?何か話が変わってるぞ?
「は、はぁ……楽しんでもらえたなら何よりです……」
「存分に楽しませてもらったぞ! キノと言ったな。お前とテルヨの同時に叫んだ降参にも驚かされたが、まさか賢者による一つの勝利により雌雄を決するとはな。テルヨはこれを期に団長を退き寂しくはなるが、新たに芽生えるこのような若者を目にすることができたわ!」
「まったくもって羨ましいぞルベン国王よ! ビビもあの従魔を今後の守護者とし、己は後進の指導に当たるとか言い出したがあの従魔ならば問題なかろう。そなたらがこれほどまで清々しく我らの目を楽しませるとはな!」
……どうなってんだ?
「……先程話したはずです。記憶を少し変えたと。もう忘れたのですか? おつむが弱すぎますよ……」
哀れみに富む眼差しで俺に小声で囁くレゴブロック。
「変えすぎだろうが!」
いいのか? こいつが神さんだとしてもだ。ここまでやってもいいのか?
「はっはっはっ! 二人は仲がいいな! もしやテルヨのいい人か? そうかそうか! 浮いた話が一切なかったのはこの若者がいたからなのだな!」
「「違います!!」」
思わずレゴブロックとハモって否定をしてしまう。冗談じゃないぞ!
「恋仲とは知らず戦わせてしまうとはな……すまなかったな。しかし仲よきことはよいことであるぞ。命あるかぎりテルヨを頼むぞ!」
「違うって! 待て待て! おいぃぃ! おっさんども人の話を聞けやぁ!!」
ダメだ……あの国王二人共頭が麻痺してお花畑になってるぞ。あんなのが一国の頭とはな……
国王達は高笑いをあげならが地上で待機していた馬車に乗り込み、各々の地へ戻っていった。
「……とっとと帰るぞ。やってらんねえわ。」
やれやれ。とんだ誤解を招いてしまった。あんなの王都で広められでもしたらそれこそ大変だ。あのレゴブロックは性格はあれだが、顔は文句なしだからファンクラブなんかあってもおかしくはないだろう。そんなやつらに勘違いされて命を狙われる可能性は……ありすぎるな。
「キノって……テルヨ様と……恋人なの? ギルドでテルヨ様が来たときからずっと隠してたの?」
真っ青な顔でビクビクしながらニーチェが聞いてくる。
……すでにここに勘違いなやつがいたか。
「ニーチェよ。みんなの前で断言しよう。美乳や微乳はともかく、あんなぺらっぺらなやつは論外だ。女子たるもの慎ましくとも出るとこは出……へぶらっ!」
どこからともなく飛んできた拳が俺の左頬に炸裂し豪快に吹っ飛ばされた。歯が折れたんじゃねぇか?……
「そっか……恋人じゃないんだ! それに私のほうが……」
ニーチェは自分の胸とレゴブロックの胸を見比べ『よしっ!』とガッツポーズを取る。
「……キノ。この娘も殴っていいですか? 一応女性なのでパーで。」
「い、いや……そいつんちに一応居候させてもらってるから手荒な真似はやめろ。俺が追い出されてしまう。」
「仕方ありませんね。では王都に戻りましょうか。」
ニーチェの胸を見るレゴブロックの視線が怖すぎる……。
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王都に戻るとレゴブロックは城に向かった。なにやらいろいろと片付ける用事があるようだ。役職ある立場は大変だな。
俺はせっかくの機会だからと三日ほど滞在することにした。初めて来たんだしゆっくり観光しないとな。オルもどんな食べ物があるか興味津々だ。
エルシュさん達三人は一泊して先にオルーツアに戻る。
くれぐれもと念を押されたのは城には入るなということだ。国王に騎士団に入るよう圧力をかけられても知らんぞとエーシャも口を酸っぱくしている。
俺よりもお前のほうが騎士団勧誘の圧力をかけられるんじゃないか?
程なくして王都キリサバルに着く。オルーツアとは比べものにならない規模の町だ。ぐるりと高さ15メートルはあろうかと思われる壁に囲まれ、等間隔に装備を整えた兵士が警備に就いている。
キリサバルに入るには身分証として町や村の住民証が必要だが、冒険者はギルド証でいいらしい。簡単な手続きを済ませ門をくぐるとそこに広がるのはまさに都市だ。
「すっげ~な! さすが王都って呼ばれるだけはあるな!」
「でしょ? オルーツアと比べちゃダメだよ! 軽く三つくらいオルーツアが入るくらいの町なんだよ~!」
得意気にニーチェがはしゃぐ。どうやらレゴブロックとの恋仲疑惑は晴れたようだ。
空腹を満たすために目についた店に入り、各々注文してまったりとした時間を過ごす。こういう観光じみたことがしたかったんだ!
日が暮れる前に宿を確保し、王都観光に出掛けようとすると真剣な顔のエルシュさんに呼び止められる。
「キノくん。少し時間いいかな?二人で話したいことがあるのだが。」
予想はついていたので軽く頷き宿の奥のテーブルにつく。ニーチェは王都案内をしたいみたいなのだが、エルシュさんの表情を察してか少し離れたテーブルで話が終わるまでエーシャと待ってくれるようだ。
「キノくん。単刀直入に聞きたい。君は一体何者なのだ?オルツ……いやオルとはどんな関係なのか?」
今さらごまかすのはあれだから、この人には素直に言うしかないな。
「エルシュさん。俺は少しあなたを騙してしました。」
エルシュさんに話したのは以下の事柄である。
俺が地球という星から来た人間で、この世界に来た原因を作ったのがオルである点
神さん(あえて名前は伏せた)の保護により自分の死際を見極められるようになったために強くなったように見える点
地球にいたときのままの容姿、能力であるひ弱な男である点
オルは一応俺との主従関係にあるが、以前町を救ったような力は制限をかけられている点
そしてテルヨとは恋仲でも何でもない点と地球では結婚していない点
エルシュさんよ……なぜ最後の内容を涙目で聞いてるんだ?
もうひとつの大事な点であるネットショッピングのことは、今は話す必要はないだろうとオルに横槍を入れられたから話すのは控えた。エルシュさんはしばらくの沈黙の後にやっと口を開いた。
「まったくもって嘘のような話だが、こうしてオルにまた会えるているのだから信じるしかあるまい。それにこれまでのクエストの達成を考えると地球という星の技術はワシらの世界となかけ離れたものだな。」
「ま、まぁ便利な世界であるには違いないですがね。すみません。大事なことなのに黙ってて……」
「いやいや。気にするでない。語るべき時があれば沈黙を保つべき時もある。とにかく君が召喚者でないのが分かったからそれだけでも安心だ。」
召喚者? う~む。厳密に言うと確かに召喚されたって意味でこの世界に来たわけではないよな?
「エルシュさん。召喚者って?」
「召喚者とはな、この世界のとあるやつらによって強制的に異世界より連れて来られた者の総称じゃ。あのテルヨ殿のような強さを誇り文武に長けておる。そしてキノくんが腰に提げている短剣とブレスレット……」
「!」
「召喚者は各々神の啓示を受けた神具を身につけるのだが、そのブレスレットの放つ神気を感じた時に、失礼ながら召喚者かと疑念を抱いてしまったのじゃ。」
なるほど……確かにレゴブロックからのもらい物だからそう思われても仕方ないな。だがこの短剣はどういう意味なんだ?
「そしてその短剣なんじゃが……」
「こんちは~~!ここに降参上手のヘタレがいるって聞いたんだけど!」
……おいおい。もしかしてそれは俺のことかな? さてはレゴブロックのやつ城であることないこと言いふらしてやがるのか!?
声の主に顔を向けるとそこに一人のエルフがニヤニヤしながらこっちを見ていた。
新しくキャラが最後に出ました。




