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異世界転移したんけどほぼ普通の人間なので毎日がサバイバルです  作者: おるる
第5章 異世界って戦いばかりで結構疲れるのです
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1 メンバー発表

早々に始まります。

 


 ビビは三人の兵士を連れてきている。一人は甲冑に包まれた屈強な戦士だ。もう一人はまさしく魔術士って感じの容姿だな。そしてもう一人は……


「また会いましたね。しかもこんなに早く。どうぞお手柔らかに……ふふっ。」


 どういうことだ? あの顔立ち。そしてあのオーラ。


 そしてなぜお手柔らかにと?


 王国騎士団団長のテルヨがビビ達といるんだ!?


「なっ……どうして王都の騎士団長がそっちにいるのよ?」


 ニーチェが声を荒らげる。エルシュさんもエーシャも困惑している。


「彼女は王都でも敵なしの強さで毎日暇をもて余していたようですからルベン国王に口添えしてお借りしたのですよ。『暇潰しに遊びに行きませんか?』とね。ですかられっきとしたこちらのメンバーですわ。それに……」


「あなた方に失礼のないようにふさわしい者を選んだつもりですわよ。この私が欲するほどの人間のためにあなた方が倒さねばならないのは自国の最も強き剣士、そして我が国の最も強き剣士ですわ。どうですか? 仲間を守るためにはこの国とミラーハで最強でなければならない……こんなに血湧き肉躍る戦いはないでしょう! では……参りましょうか。」


 次の瞬間、空気に歪みができたと思ったら石とレンガで造られた建物の中にいた。大きさは半径50メートルくらいの円形の建物だ。少し目をあげると周囲は観覧できるよう段差になっている。ローマのコロッセオのような造りだ。


「転移魔法をいともたやすく扱うとはな。さすがは守護竜か。それにしても騎士団長のテルヨ殿が向こうにつくとは。今更ながらだが、エーシャとオルでよいのか?」


 エルシュさんの額に冷や汗が流れている。町から離れたというならば派手な戦いもやりたい放題、逃げも隠れもできないってことだ。


「はい。あなたやニーチェにこれ以上迷惑をかけられませんからね。なんとか……してみせます!」


「なぁキノ。俺はめっちゃ迷惑かかってるんだが……」


「それは気のせいだ。なので覚悟を決めてくれ。それから……あの女ドラゴンとは戦わないようにするからそこまで気にするな。」


「そうか!ならば俄然やる気になったぞ! 相手があのドラゴンでなければ問題ではないぞ!」


 エーシャの不安が取り払われたのか、先程とうって変わってやる気に満ちている。実のところエーシャがどれだけの実力があるのかまったく知らない。

 レイザーサーモンのクエストの時も俺の特訓の時も、はっきり言って全然目立つような戦いは見ていないのだ。『彼の印象は?』って聞かれたら『回復?』ってくらいしかない。


 だが、あの化け物コンビのネシャやニョロゾが一目置きパーティーに呼ぶくらいの人材だ。やってくれると信じている。


「それではそちらは誰が出るのでしょうか?キノは当人ですから出てもらいますよ。」


 エルシュさんちに来てレイザーサーモンを食ったビビとは違う。なんと言うか目が違うのだ。爬虫類のような感情が出ていない無機質な作り物のような目。これが本来のビビなのか。


「誰が出るかはもう決めているぞ。俺とこいつとこいつだ。」


 エーシャとオルを指差し前に出る。うむ。オルもいい顔をしている。これなら俺が負けてもこの二人が勝てば何も問題なく……


「あらあら。従魔を用いるのですか?まぁよいでしょう。ですが従魔相手に戦うような者はこちらにはいませんから……私がお相手しましょうか。」


「ちょっと待てビビ! お前は参加しないはずだろ?」


 これは想定外だ。ビビが来るとは考えてもいなかった。やつに勝てる駒はこっちにはないぞ。


「そちらの従魔はこの場にいる中でも私の次に強いのは明らかですわ。サガラ川ではその従魔の魔素を拝見しましたが、とても並の魔獣のものとは思えないものでしたから。魔獣と言うよりむしろ……」


「ビビ様。あなたの手を汚すほどのことではありません。あの従魔の相手は私がしましょう。」


 ビビの話を遮りテルヨが進み出る。ギルドの時と同じだ。怖いと感じる視線、口調、そしてその存在。ある意味ビビよりも戦いたくない相手だ。


「それじゃあ俺の相手はそっちにいる二人のどちらかだな。」


 エーシャくん。君に負けは許されないぞ。決して油断しないように。


「守護竜ビビよ! そろそろ始めようではないか! 我はいい加減待ちくたびれたぞ!」


 上方にある観覧席のような場所からいかにも武人と呼べる姿の白髪の老人が声を荒げている。その横にはベルン国王の姿もある。


「ミラーハの国王か……ルベン国王もおられるな。」


 ふん。自国のトップも連れてきたのか。俺の素性がばれるのは嫌だがこの際仕方ない。全力でやってやるよ!


「では……ここからは私が仕切らせてもらいましょうか。」


 いつの間にか俺達の間に執事のような男が。40を過ぎたくらいの見た目だろう。気配を消してこの場にくるなんてニョロゾみたいなやつだ。


「審判を務めさせていただきますアイオロスと申します。これよりすべての権限は私にある点をご重々にご承知くださいませ。あなたとて例外ではございませんぞビビ様。」


「分かっておるわ。すべてはお主の決定に沿うぞ。」


 ミラーハの人間か?にしてもビビの反応からするにあいつ強いな。この場を仕切れるほどの男か。


「ではルールを説明致します。こちらをご覧ください。」


 彼が取り出したのは一枚の羊皮紙だ。そこにはこのように綴られている。




         【試合形式】



 三戦し先に二勝した側の勝利とする


 用いる武器、魔術具などにおいて制限はない


 戦闘不能、自身の申告、審判の判断により勝敗を決める


 相手を死に至らしめた場合はその者の敗北と見なす


 この場において目にするいかなる事柄も外部、他人には漏らさない


 なお勝敗に関しての発言はその限りではない


 上記の点に同意する者は自身の魔素をこれに注ぐことにより契約の締結と見なす



  マクーノ国 枢機卿 アイオロス



 ふ~む。一応きちんとしてるんだな。しかしながら俺は魔素がないのだが。


「すんません。すごく言いにくいのですが、俺は魔素がないんで……どうしましょうか?」


「ふむ。どれ……ほう。髪の毛一本に至るまで魔素がないな。これはこれで珍しい。では。」


 そう言うとアイオロスはおれの首筋に触れる。首から離れた彼の指先には一滴の血がついていた。


「お前の血を魔素の代わりにしよう。」


 血のついた指か羊皮紙に触れるとほのかに光を帯びる。そして残りの五人が魔素を注ぐ度に同じ光を放つ。


「ではこの契約の紙面と各々の国王が証人として互いに合意したことを認める。始めに立ち合う者よ中央に来るがよい。」


「じゃあまずは俺から行かせてもらうからな。よく見ておくんだぞ賢者の力ってやつを。」


 少しばかり緊張した面持ちで舞台の中央に進むエーシャ。


「ああ。任せたぞ。お前にすべてがかかっているんだからな……」


 歩みを進める足を止めてゆっくりと彼が振り返る。


「いらんプレッシャーかけんなよ……」


 その顔は処刑台にあがる罪人のように生気がなかった。







第一戦はエーシャです。

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