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異世界転移したんけどほぼ普通の人間なので毎日がサバイバルです  作者: おるる
第4章 息抜きこそが人生の縮図である
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4 プレゼントって記念日以外にもらえるとなんか嬉しい

例の店に行きます。


 翌日、俺はまだ夜が明ける前にはエルシュさんの家を出ていた。ネシャとニョロゾがプレゼントしてくれた土地を見に行くためだ。

 現在は更地になっているから、今後は資金を貯めて家を建てるといいとアヤメさんに言われていてもたってもいられなかったのだ。


 ちなみにアヤメさんから聞いたのだが、ネシャさんが倒したロックリザード亜種の価値は普通に冒険者ギルドを建て直せるくらいの価値があったらしい。購入したのは王都のお偉いさんだとか。まるで別世界の話だ。。。


 早朝の朝もやの中、オルと駆け足で記された場所に向かう。大体の場所は見当がつくので近くまで行けば分かるとのこと。

 息を切らしながら走ることおよそ30分くらいだろうか。中央広場の少し西側の路地を入ったところに約70坪はあろうかという更地があった。どうやらここが俺の土地みたいだ。


 東隣は普通の民家のようだ。年配の婦人が家先の花に水を撒いている。西隣は酒場か?家の横に空になっているであろう酒樽が重ねてある。


 悪くないな。ギルドに行くにもここからだと10分ほどで行けそうだし市場も近い。一体どれくらいの値段だったのか気になる。


―オルよ。ここに家を建てるぞ。もちろんお前の部屋もあるからな―


―ほう。ワシは家のことはよくわからんが窓が二ヶ所ある部屋がよいぞ。角部屋というやつだな。あとはお前にいちいち扉を開けてもらわなくてもよいように部屋に小さい出入り口を作れ。ベッドは二つだ。硬めのベッドと柔らかいやつだ。あと、トイレは小さい出入り口を出たらすぐのところだな。それから……―


―ええぃ! 長い! よく知らんとか言って詳しすぎるぞ―


 どうやらオルも俺が家を持つのを歓迎しているようだ。出来る限りの要望には応えるがすべて叶えられなくても文句は言うなよ。


―これから稼がないとな。その前に猪を解体するから町の外に出るぞ。この更地でやってもいいが間違いなく目立つからな―


―うむ。しっかりと捌くのだぞ。そして朝から焼肉だ!―


 跳ねるように町の入り口に走っていくオルを追いかけて町外へ行き昼近くまで頑張って解体作業に没頭した。一度エルシュさんの家に戻り昼飯を作る。エルシュさんもニーチェも出かけているようだ。

 テーブルに書き置きがあった。


〔おじいちゃんと隣町に行ってくるから一週間くらい留守にするからね。家のものはいつも通り自由に使っていいからね!〕


 隣町か。確か馬車を預けてるってルーシキの森から帰る途中に寄ったな。小さな町だったがなかなか居心地がよさそうだったから今度行ってみようか。


―早く焼け―


 すでに涎の水たまりを床に作っているオルに急かされる。よし。朝飯も食ってないし豪勢に焼くか!



 一時間後



―もういらね~食い過ぎた……―


―ワシもこれ以上入らんぞ。次は三日後だ―


 宣言通りオルは二頭をきれいに片付けた。まったくもって恐ろしい胃袋だ……


―ちょっと休んだら例の男の店に行くぞ―


―うむ。一人で行ってこい。ワシは動けん―


 ……そりゃ食い過ぎだ。まぁいいか。オルがいないとそれだけでトラブルにあう回数が減るだろうしな。んじゃ俺も昼寝をしよう。さすがに今は動きたくない……


 一時間ほど昼寝をすると腹の具合もだいぶ落ち着いたようだ。あまり遅くなってもあれだからそろそろいくか。


―じゃちょっと行ってくるからな。晩飯は市場で何か買ってきてやるよ―


 俺に背を向け寝言のように『鳥……鳥を……』とぶつぶつ呟いている。わかった。鳥肉だな。エルシュさん達もいないしうまい鳥肉料理を食わせてやろうか。その前に約束通り行かないとな。



【魔術具の館 グラーシュ】


 う~む。来てしまったな……さてちょっとした問題なのだが、魔素がない俺は店に入れない。前回は激しく吹っ飛んで痛い目にあったから扉には触れたくないな。

 どうする? 棒きれで扉を叩くか? いや! それとも石を投げつける?

 嫌がらせにすぎないな。やはりここは無難に声をかけるのがいいか。


「すいませ……」「やぁ。よく来てくれたね。中に入りなよ。」


 まるで一部始終を見ていたかのように抜群のタイミングで扉が開いて彼が姿を表した。


「えっと。入りたいのは山々なんですが、俺は魔素がないから多分吹っ飛ばされるような気がするんですが。」


「そうなんだ。じゃあ君でも入れるようにするから……はいどうぞ。」


 恐る恐る扉に触れるが何ともない。どういうことだ?


「この店はね、僕の魔素を常に流してるからね。以前野良猫に留守中に入られて商品をぐちゃぐちゃにされてしまったんだ。その対策さ。」


 なるほどね。そりゃ防犯するのは当然だな。ではお邪魔します~。


 店内は以外とすっきりしている。てか、ほとんど物がないぞ。どうやって営業しているのやら……


「どうぞキノくん。わざわざ来てもらって悪かったね。本当なら僕から足を向けるべきなんだけど、今日は店番の日だったんだ。」


 彼はカップに紅茶を注ぎ茶菓子を準備している。何してもイケメンは様になるな。


「いえいえ。こちらこそ逆に気を遣ってもらって悪かったかなと。ところでお名前はグラーシュさんですよね?」


「うんそうだよ。敬語はなくていいからね。ここの店長のグラーシュだ。よろしくね。」


 う~む。こんな怪しげな店をやるよりホストでもすればいいんじゃないか?すべてが完璧な立ち居振る舞いだな。


「この店では魔術具って品を扱ってるんだけど、君には魔素がないからお礼にうちの品をあげても無駄っぽいね。」


 クスクス笑いながら壁に埋め込まれているコックをひねる。すると壁にかけられた絵画が裏返りそこに張り付けてある二枚の布を手にして戻ってきた。


「はい。僕から君へのお礼だよ。この二枚の地図はルーシキの森にいけば役に立つと思うから。僕は弱くてあんな危険なところには行けないけど、もし君が強くなってあの森に足を踏み入れることができたなら是非とも探してみるといいよ。いや! 探して欲しいな。」


 ……えっと。つい先日まで一ヶ月ほどいましたが……とかさすがに言いにくいな。


「あ、ありがとうございます。ちなみにこれは何の地図ですか? やけに古いですが。」


 俺の問いかけにイケメンが初めてその表情を崩した。


 とても欲深い顔に。


「これはねルーシキの伝説になってる隠し魔術具の隠し場所の地図なのさ。」




 ここから先はグラーシュから聞いた話だ。



 ルーシキには町が三つあったという。その一つはおよそ100年ほど前に戦火により壊滅し、もう一つは魔物の襲来によって半壊滅状態だそうだ。残る一つは今は小さな宿場町として細々と食いつないでいるとのこと。

 その壊滅した町が魔術具を大量に管理していて、戦火を逃れるために当時の領主によって高レベルの魔物の巣窟であるルーシキの森のとある場所に隠したらしい。

 どうして彼がこんな地図を持っているのかは聞かなかったが話を聞く限りでは嘘を言っているようではなさそうだ。


「じゃその魔術具を見つけられたら結構なお金に?」


「そういうことだね。もし見つけられたならそのうちの三つほどを僕にくれたら残りは君にあげるよ。100年前の魔術具がどんなものなのか気になるから記念に欲しいんだ。」


「分かりました。じゃいつか見つけてきますよ!」


「うんうん。期待しているよ。僕が持ってても森に行く勇気も力もないし、ギルドに依頼して見つけられても魔術具なんてなかったって誤魔化される可能性があるから、君みたいな人なら安心して託せるよ。」


 紅茶を飲み干してにっこりと微笑むグラーシュ。


「だって僕の命の恩人だからね。」



 こうして怪しげな店のグラーシュさんからお礼をもらい店を出た。

 なにかとんでもないお礼をもらったな。もとはと言えばオルが悪いのだが。もし見つけて換金できれば……家が建てれるくらいのお金になるか!?これはもうやるしかない!

 色々考えながら歩いていると家に着いてしまった。


―帰ったか。そろそろ小腹が空いてきたぞ。鳥を食わせろ―



 あっ……買うの忘れた。オルよ。今夜は鳥は我慢するんだ。次の機会に食わせてやるからな。





お宝の地図です。


日本の徳川埋蔵金はどうなったのかふと頭をよぎったので宝探しの話を作りました。

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