閑話 レイカ
閑話です。
私はオルーツアの冒険者ギルドに勤務しています。
少し前までは冒険者として様々なクエストをこなしながらこのオルーツアでのんびり暮らしていたのですが、当時のギルド職員の寿退社のため急募されていたのをきっかけにこちらに就職した次第です。
ギルドの仕事は多岐に渡り、暇そうに見えてもなかなかの忙しさです。(暇なときはとことん暇です)
私の主な仕事は冒険者の新規登録の受付ですが、手が空いているときは様々な雑用もこなします。毎日のように届けられる町の方からの依頼の管理、クエストの納品の管理、むさっくるしい冒険者の話し相手、そしてギルド長のアヤメさんの相手など休む暇がないほどです。
毎日平凡で同じ日々の繰り返しすが、そこそこいいお給金と汗だくで魔物を追いかけなくてもよい快適な空間での仕事なので、今更冒険者に戻ろうとはこれっぽっちも思っていません。
そんなある日、ニーチェさんが一人の男性を連れてきました。黒髪の少しくせっ毛が気になる若者です。ごく普通の男性……ではありません! 横に魔物がいますね。どうやら彼はテイマーのようです。
ふむ。若くして特異な能力を持っているようですね。仕方ありませんから私のお気に入りリストにいれましょうか。
しかし気になるのが横にいる猫ちゃんのような魔物。あれって……
魔物? 魔素ではないですよね? あのちっこいのを取り巻くオーラは。
それになんですかあの不自然な強さは。どうあがいてもあの魔物に勝てる気がしません。
敵意を向けられないようにしなければこのギルドなんて瞬時に瓦礫の山になるでしょう。
キノさんがクエストを受けに来ました。登録してすぐにやってくるなんて! しかもタートルドラゴンですか! 私も散々戦いましたよ。どうぞいってらっしゃい!
えっ? タートルドラゴン倒してきたって? しかもソロで!?……
なかなかやりますね。ちょっとどのような戦いをしたのか気になりますよ。(私でもソロ討伐できるまでに二年近くかかったのに…)
大変です。緊急クエストです。
レイザーサーモンの納品です。
まず無理でしょう。この町には漁師はいません。
間違いなくクエスト失敗により赤っ恥をかくでしょう。
レイザーサーモン捕ってきたですって? 誰が?
またもや彼の力ですか……しかもこのような上物は見たことありません!
ふむ……どうやら【お気に入りリスト】から【かなり気になるあの人リスト】にランクアップしなければならないようですね。
エルシュさんがやってきました。
どうやら依頼のようです。
! ……特訓中のキノさんに差し入れを持っていくクエストですか……横にいる年増がなにやら狙っているようですが、ここは譲れません。暇潰し……ではなく、彼の真の力を見定めるため私が―!
なんとか依頼書を手にすることができました。この年増に負けられぬため私のスキル【補助】を使って自分を強化したのは内緒です。結構な引っ掻き傷を負いましたが、スキルで強化しておかなければ骨の二、三本は折れていたでしょう。
有休を使い彼の特訓場に向かいます。
ですがルーシキの森を選ぶとは。ネシャさんやニョロゾさんは何を考えているのでしょうか? 並の冒険者ならば一晩もたずに骨になるような所ですよ? あまりにもスパルタすぎて引いてしまいます。下手したらニーチェさんと同じように体を……あっ。これは余計なことですね。
特訓場に着くと彼は一生懸命戦っていました。魔素がまったくない彼がなんとか魔物と戦っている姿を見て何度も彼に【補助】を使おうとしましたが、みなさんからの制止によりただ傍観するだけになってしまいました。
うん。どう贔屓目に見てもタートルドラゴンを倒せるような強さでないですね。町のちびっこと変わりありません。
有休まで使って来たのにおもしろくない時間が流れています。
連日のように彼のチャンバラ的な戦いを見ていると、とんでもない魔物がやってきました。
ロックリザードの亜種です。クエストとして依頼はされていませんが非常に価値のある魔物です。一匹で家が建ちます。しかしながら大変強く、Aランクの冒険者が数人いても倒せないほどです。
キノさんがピンチです! 足の震えが止まりませんが彼を助けなければ!
……ロックリザードにやられたのでしょう。気がついたら左腕が動きません。左足も動きません。あっ……変な方向に曲がってますね……痛み止めをすぐに飲みますが、治癒魔法を知りません。ポーションでは骨折は治らないので逃げようがありません。死ぬのは嫌ですが、独身で死ぬのがたまらなく辛い……
キノさんが戦っているのが見えます。これは幻でしょうか? 傷だらけになりながらもあのロックリザードの攻撃をかわしてます! あんな動きをする人間はみたことありません。何かが憑依しているのでしょうか?
どうやらロックリザードにも疲れが見え始めたようですね。キノさんが討伐してしまうのでしょうか?あ……ネシャさん……おいしいとこは持っていくのですね……
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私はオルーツアの冒険者ギルドに勤務しています。
仕事はそこそこ慣れてきました。このギルド、そしてオルーツアを盛り上げてくださる冒険者の方々は大歓迎ですので、どうぞいつでもお越しください。
ですが、私狙いでお越しになるのはご遠慮ください。独身ですが一応気になる人はいます。
好きとかそういうのではなくて、将来的にセレブになる近道を選ぶならば……という意味ですよ。
そのようなわけで、その人の名が世間に広まると相当数の女性から声がかかりそうなので、あまり彼のことは公に語らぬようにしようと思います。
とりあえず横にいるギルド長には負けられません。
絶対に。
続いて新しい登場人物の紹介です。




