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13 大事なことほど忘れたらなかなか思い出せない



「でかい……ドラゴン?」


―そいつはロックリザードの亜種だ。今のお前では到底敵わんぞ。逃げれるか?―


 どこからともなくオルの声が届く。


 体長10メートル近くあるだろうか。爬虫類独特の無機質な眼差しで俺を見下ろしている。だが怖くない。ただの大きなトカゲにしか見えない。


―逃げたほうがいいなら逃げるけど、なんだか倒せそうな気がするぞ―


―いや! 無理だ! 今のお前は恐怖に対して麻痺しておる。戦いに恐怖を感じられなくなれば生き残れんぞ!―


 またまた~。そんなこといって強そうじゃないじゃないか。これならタートルドラゴンのが強いんじゃないかい?


「キノさん逃げてぇ!」


 細身の剣を掲げたレイカが俺とロックリザードの間に割って入る。しかし……レイカの顔は青ざめ、体は小刻みに震えている。


「ダメダメ! 戦っちゃ! 早く逃げて! まさかロックリザードの亜種が生息してるなんて……こいつは今までの魔物とは全然違うわよ! 戦い慣れた冒険者じゃな…」


 話終える前にレイカの体はキノの後ろに吹き飛ばされ岩肌に叩きつけられる。『ボキッ』という音とともに彼女の左腕と左足があらぬ方向に曲がっている。


「レイカさん!」


 キノは彼女の元に駆け寄ろうとするが、背を向けた背後からの冷たい視線に体が固まる。


 やばい。


 振り向く間もなくいつもの嫌な映像が脳裏に浮かぶ。


 やつの振り下ろしてくる前足が……俺の体に……ああ……あの鋭い爪が俺の首筋に食い込んで……血が……俺の首がぁ―!


―しゃがめぇ!!―


 オルの念話が脳に響く。その瞬間地面に這いつくばる。空気を切り裂く凄まじい音と地面に叩きつけられるやつの前足。どうやら死なずに済んだみたいだ。


 瞬時に汗が吹き出る。嫌だ。これ以上ここにいたくない。逃げなきゃ……逃げなきゃ!


―ぼ~っとするな! 顔をあげろ!―


ハッと我に帰り顔をあげるとすでにロックリザードは再びその爪を振り下ろそうと前足を高々と掲げ……


 うわ……逃げられん! やつの爪が俺の右肩に食い込んで……あああ……俺の右腕がぁ! あぁ……ちぎれて……


 よくみるとどうやらオルが俺を突き飛ばしてくれたみたいだ。俺がいた場所にはロックリザードの爪が深々と地面をえぐっている。そしてロックリザードは突然目の前に現れたオルを見て怯んでいる。どうやらやつよりオルのほうが格上みたいだ。


―しっかりしろ! もうこいつからは逃げれぬぞ! ここで倒すしかない! その腰にぶら下げておる短剣を抜け!―


 ある……俺の右腕がまだある……どういうことだ? 俺の右腕はやつにちぎられて転がっているんじゃ…


―どうした? 何を固まっておるのじゃ!?―


―いや……いつものことなんだが……俺が死を覚悟したら死ぬ瞬間が頭に浮かぶんだ。細かいとこまで…だけど……死んでないんだ! 生きてるんだ! 今、二回も死ぬ瞬間が見えたのに生きてるんだ!―


―…そうか。お前が生きてるのはワシや周りの誰かがお前を助けるから生きておるのだぞ。助けられたという結果論だ。思い出せ。シューラ様の言葉を。それがすべてだ。保護と祝福をお前のものとするのだ!―


―なんだ! またそれかよ! なんでシューラさんの言葉が必要なんだよ!―


―いいから一語一句思い出せ! お前に与えられたものは命あるすべての創造物が喉から手が出るほどのものなのだぞ!―


―んなことよりオルが倒してくれ! 俺は怖くて……腰が抜けて立てねぇよ―


―ふっふっ……そうか。怖いか。麻痺していた感覚が戻ったか。ならばついでにシューラ様の言葉も思い出すがよい。ワシはお前の保護を申し付けられてはいるが、魔物を倒せとは言われておらぬ。ゆえにこいつはお前が倒せ―


―何言ってんだ! タートルドラゴンだってお前も倒したじゃないか!―


―あれは倒すように割り当てられたからだ。いいか。従魔としてお前には従うが今回ばかりは話が違う。この機会を逃すと延々保護と祝福を受けれぬとワシは思うのでな。それと……―


―死ぬ間際までお前を助けぬ。瀕死になるまであの冒険者らと同じ目線でお前を見守ろうではないか―


 オルはそう言うと俺の顔を睨みにやりと笑う。猫なのに笑っている。なんかむかつく。


―上等だ! 思い出してやろうじゃねぇか! それまで俺を守りやがれよ!―


 何だったか? シューラさんの言葉は……あれだあれ……


君の……にあたしからの保護を! そしていかなる……ぬ強き心を! ……溺れぬ魂に祝福を


 確かこんな感じだったはず! あの場所での別れ際を思い出せ!


《身体的な強さよりおつむをなんとかした方がよろしいのでは?……ぷぷぷっ》


 ……違う。これはレゴブロックの言葉だ。なんでこんな時にやつのどうでもいい言葉が思い出せるんだ? いかんいかん! 意識を集中するんだ!



《あらら。他の方と接するのが苦手なのでしょうか? これはいけませんね。引きこもりの予備軍ですね。……ぷぷぷっ》


 ……これも違う。レゴブロックめ……邪魔ばかりしやがる……何なんだ最後のあの『ぷぷぷっ』ってやつは……集中だ集中!


君の行く末にあたしからの保護を! そしていかなるときも屈せぬ強き心を! ……溺れぬ魂に祝福を


 そうそうこんな感じだ! 最後の言葉は……何だったか?


 記憶の底からシューラさんの言葉を掘り起こしてるとどこからともなく声が聞こえた。


《やほ―!》







話の都合上短めです。

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