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7 主人公ようやく目覚める

そろそろ主人公を起こしますよ。


「ん~そろそろ起きるかな~?」


 早起きしてやることがないネシャはキノの額を木の枝でつんつんつついて遊んでる。少しつつきすぎたせいか、額が赤みがかっている。


 ニョロゾは軽いいびきをかきながら夢の中だったがネシャの声で目が覚めたようだ。もそもそと起き出して焚き火で暖を取っている。


「まぁ自然に起きるのを待ちましょう。それまで依頼書をこなしてればよいのでは?」


 浅い眠りから寝覚めつつも二度寝をしようと寝返りをうつエーシャ。

 三者三様に夜を過ごしている。東の空が徐々に色づいているのでしばらくすれば朝になるだろうか。


「だねだね! んじゃ私はこれとこれ……あっ! ついでにこの三枚も朝の準備運動ついでにやってくるよ!」


 ネシャはニョロゾが持っている依頼書からこの近辺に生息する魔物の討伐依頼書を抜き取り、まだ漆黒の森の中に消えて行った。


「まったくネシャは元気いいな~。俺ら三人いなくても彼女一人でなんとかなるんじゃないか?」


「かもしれませんね。ですが油断は禁物ですよ。まだこの森には確認されていない魔物も数多くいるはずですからね。」


「だね~。ふあぁ~~~。だめだ。まだ眠い。もう少し寝るわ。」


 夜更けまで見張りをしていたせいかニョロゾはまだまだ眠そうだ。二度寝をしかけたエーシャが起きあがり焚き火のそばに寄る。


「では、私が周囲を見張りましょうか。よく寝させてもらいましたしね。戦いも二人に任せっきりでしたし、これくらいはやりますよ。」


「おおぅ任せたぞ~。じゃ適当に起きるからそれまでお願い~。」


 茶色の毛玉はもそもそとまた布団に入り再びいびきをかきはじめる。


「キノくんの訓練は最低一ヶ月てニーチェは言ってたな。なかなか過酷な一ヶ月になりそうだわ。」


 木々の隙間から射し込む陽の光を見ながらエーシャは大きなあくびを一つついた。




 陽もすっかりと頭上にのぼりきってもう昼時だ。


 ニョロゾもさすがに起きて武器の手入れをしている。時折森の中から出てくる魔物はニョロゾが倒しているが、昨日狩りすぎたせいかまだ数匹程度しかでてこない。暇をもて余してる二人が『腹減ったな~』と話してるとネシャが戻ってきた。


「依頼書五枚分終わらせてきたよ! いい汗かいた!」


「……午前中にそんだけやるって……もしかしたら一人でギルドのクエストこなせるんじゃないか?」


 顔を引きつらせながらニョロゾが皮肉を言う。


「無理無理! だって選んだのは夜明けからお昼の間に出没する魔物討伐だからね。たまたま終わったけど普段だとこんなにうまくいかないよ! その様子だとまだご飯食べてないよね? 昨日の肉焼くよ!」


 依頼書をニョロゾに渡しマジックバッグから昨日手に入れたロックリザードの肉の塊を取り出し焚き火であぶり始める。


「はははっ! それでもすごいわ! 俺にはそんな荒業無理だな。おっ! あっちにゴブリンの群れがいるぞ。こっちを気にしてるが……襲ってはこない雰囲気だな。」


 森と原っぱの境辺りの切り株の陰にこちらを伺う10体ほどのゴブリンが見える。ネシャについてきたのかロックリザードの焼ける臭いにつられたのか定かではない。


「そうだ! あいつらからキノくんの特訓始めようよ! 数が多いけど間引いてしまえばいい相手になると思うよ!」


「だな。じゃそろそろ起きてもらうか。このままじゃいつになったら起きるのかわからんからな。」


 ニョロゾがキノを起こそうと近寄りかけると背後で聞き慣れた鳴き声に動きを止まる。


「にゃ~」


その鳴き声に振り返る三人。


「「あっ! オルちゃん!」」


「あれ? ニーチェはどうしたんだろ? 一緒じゃないのか?」


「待って。首輪のとこに……ニーチェの手紙よ。えっと……『レイカさんの馬車に乗せてもらってそっちに向かうから先にオルちゃんだけ戻らせるね。追伸:オルちゃんに何か食べさせてね!』って。……レイカさんギルドの仕事どうしたんだろ? クビ?」


「どうだろ? レイカさんがクビになるなら誰もギルドの仕事は務まらないさ。キノくんが気になるからわざわざ来るんじゃない? もしやこれは……恋の嵐の予感が!」


ニョロゾとネシャがニヤニヤケタケタ笑っているとオルがふがーふがー鳴き出した。その視線はこんがりと焼き上がったロックリザードから離れることはない。


「おおっとオルちゃん! ニーチェの警護ありがとね! 焼きたてだから気をつけて食べるんだよ!」


「じゃみんなが食い終わったらキノくん起こそうか。まずは腹ごしらえだな。」


 ネシャは三人分のロックリザードの肉をオルに譲り、新しく自分達の食べ分を焼き直し少し早めの昼飯を済ませた。


「さてと、じゃキノくんの特訓を始めますのでみなさんに最終確認です!」


「「おぉ!」」「にゃ~ん!」


「特訓方法は、とにかくキノくんか死なないように最低限の警護だけです!」


「「おぉ!」」「にゃ~ん!」


「下位の魔物から、慣れていくにつれ順にランクをあげていきます。魔物の数は原則一頭づつですがこれいけるんじゃないって判断したら複数も可です!」


「「おぉ!」」「にゃ~ん!」


「最終目標はBランクソロで……そうだね……ロックリザード討伐をこの特訓の目標にしましょう!」


「ええぇ……」「マジでか……」「にゃ~……」


「大丈夫大丈夫! それじゃキノくん起こしますよ~!」


 まるで何かのゲームのように特訓の概要を叫ぶネシャ。そしてつられて掛け声をあげる二人と一匹。誰しもが心の中で感じていた。


「「「こんなおもろいことはなかなかないぞ!」」」



~~・~~・~~・~~・~~・~~・~~・~~



「おーい! 起きろ~! おっ! キノくん目が覚めたかい? さぁてそんじゃいっちょ鍛えたげましょうかね!」


「だねだね! とりあえず死にそうになるまでは放置しとこうか?」


「うむ。やはり生と死の狭間を行き来しないと実質的な強さは手に入りませんからね。」


―まぁ頑張れ。今回ばかりはワシもお前の保護は控えておくぞ―


 なんだなんだ? 何事だ?


「えっと……死にそうになるまで放置ってあの魔物達を? そんなこと言ってないで早く倒さないと俺らが危険なんじゃ……」


「「いやぁ死にそうになるまで放置されるのは君のことだからね!」





「ん~ちょっとかわいそうだからとりあえずゴブリンは一匹だけからにしよっかね。」




 こうしてキノの特訓は始まったのである。




~~・~~・~~・~~・~~・~~・~~・~~


「エルシュさんったらなんて素敵なクエストを用意してくれたのかしら♪」


 猛スピードで馬車を走らせるレイカ。そのスピードは引いている荷台がないかのようだ。

 それもそのはずである。レイカのスキルである【補助】により、馬は身体的に強化されまるでなにも荷を負ってないかのように走ることができているのである。無論、魔素は削られるがレイカにとってはお構いなしだ。


 一刻も早く噂のルーキーの立ち居振る舞いが見たいが為に、呑気にパカパカと馬車を走らせるわけにはいかない。貯まってる有休は16日。町に帰るギリギリまで滞在しようと企んでいる。


「もうすぐホンデの町だけど……寄ってる暇がもったいない!」


 レイカは町に続く街道を横切りルーシキ地方に向かう街道をひた走る。やがて見慣れた姿の女の子と子猫が見えてきた。


「あれは……ニーチェさん? おーい! やっぱりニーチェさんだ!」


 レイカは自分がルーシキに向かってる経緯を話すと、オルだけ先に行かせる。ニーチェはレイカの馬車に乗り込みルーシキの森に向かうのだった。




いよいよ特訓が始まります。

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