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閑話 エルシュ

今回の閑話と明日の第二章の登場人物の紹介をして第三章に入ります。

 出会ったのは少し冷たい風が草花を揺らしていた野原じゃったな。


 なにやら一人で騒いでいる若者がいるなと。そんなに騒ぐと魔物が集まってくるぞ。

 どうやら彼は喉が乾いているらしい。共同の井戸で水を飲ます。あどけない若者じゃがニーチェよりは年上みたいじゃ。

 しかしながらなんと貧相な体じゃ。もしや病を抱えているのか? おっ! 危ないぞ。どんくさい魔物の一撃とはいえ油断しすぎじゃないのか? そんなことでは命がいくつあっても足りな……ありゃ……気絶しとる……


 旅の者らしく持ちあわせもないようじゃ。かわいそうじゃから落ち着くまで我が家で過ごせばよい。このくらいせねば町長ではない。孫娘のニーチェとも馬が合いそうじゃ。まるで実の兄のようじゃな。


 何もせずにゴロゴロするのは忍びないとギルドに登録して金を稼ぐと言い出した。まぁ働かなければ生きてはゆけぬしな。このキノという男はテイマーだという。かなり特異なスキルを持っとるもんじゃ。しかし気になるのはあやつの身に付けているブレスレット。あの紋様は……いや。いらぬ詮索はやめよう。かの者が現れるわけはない。もう遠い過去のことじゃ。



 なんと初のクエストでタートルドラゴンを単独で倒しただと!? ニーチェは嘘をつくような娘ではないが嘘にしか聞こえん。しかも従魔を用いずに倒しただと……まったくもって信じられん。動きの遅い魔物だが、単独で倒すにはやつの習性を知り尽くすか力でねじ伏せるしかないのじゃが……



 収穫祭が間近に迫っているというのになんという困難なクエストを王都は依頼してくるのだ!? レイザーサーモンなんぞこの町で捕れた記録なんぞあるわけない。だがこの町の威信に関わるならばやり遂げねば! すぐに冒険者を集め捕獲開始じゃ!


 キノくんのおかげで納品分を確保できた! ワシも一匹釣り上げたぞ! 正直このような方法で魚が捕獲できるとは思わなかったわ。

 キノくん曰く、どうやって捕獲したのか聞かれる可能性があるからこの『釣り』という業を話せばいいと。確かにこの方法で三匹は捕れたのは事実じゃが話していいものだろうか?この業が広まれば魚の価値も流通もずいぶんと変わる気がするのだが…

 それにしてもキノくんが使っていたあの竿とリールとかいうものは非常に興味深い。一式欲しいのじゃが無理かのぅ。



 国王に謁見する機会が設けられた。クエスト依頼主も魔術のお偉いさんもレイザーサーモンに腰を抜かしとるわ。そりゃそうじゃ。王都でも見ることはできぬであろう立派なものじゃからな。余った分は今夜この場にいるクエスト参加者と食うぞ!


 うん? ワシら以外に誰がいただと?


 な、何をおっしゃられてるのやら……って、こ、この声と……この重苦しい威圧感は……まさか……まさかまさかまさかっ!





 はぁはぁ早くキノくんに知らせないと! あやつが……飛竜が……


 なんと! まだ戻ってないのか! ネシャにニョロゾか! 久しいな。急な願いですまぬがお主ら協力してもらえぬか? このままではキノくんが……この町が……




~~・~~・~~・~~・~~・~~・~~・~~



 ワシはオルーツアの統治管理者であるエルシュ。町を守護しふさわしい形で運営すべき責務を担っているがすべてを完全にはできぬ。神とは違い人はみな不完全だからだ。

 じゃがこのワシの決定や権威の行使により幾分かでもこの町に益がもたらされるのを願うばかりだ。


 そのためには心を痛める所業も少なからず行わなければならぬのじゃ。許してくれキノくんよ。











話は第三章に続きます。

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