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6 趣味とネットショッピングで町の役に立とうじゃないか

緊急クエストの報酬額はすごいですね。


「というわけなのよ。」


 レイカさんもアヤメさんもめちゃくちゃ沈んでる。

 クエスト内容を知りニーチェの顔色も優れない。どうやら彼女もこのレイザーサーモンって魚の入手が大変なのを知っているようだ。


「収穫祭は明日からだけど、依頼書を読むかぎり国王が来るのは三日目だから、あと丸々三日の期限があるのよ。この残された期間中になんとか捕れるようにと町長さん達は昨夜から出掛けたのだけど、一匹でも捕まえれたらそれでも奇跡に近いよ。」


「そうなんですね。なんとか捕れてみんなが無事に帰ってくればいいのですが……しかしこのとんでもない報酬額は何なんです? そんなにそのレイザーサーモンってやつは捕れないのですか?」


 掲示板に張られた依頼書を見ながらその報酬額に呆気に取られる。緊急クエストに興味がある奴等も次々に覗きに来るが、Bランク以上の限定者と途方もない報酬額に目を白黒させながら諦め顔で立ち去る。


「この魚は川で捕れる魚のなかでは一番の高級魚だから報酬額も高くて当然なんだけど、今回は捕獲後の状態が限定されてるから高額報酬だと思うのよ。」


 鱗がどうとか傷をつけるなとか書いてあるあれのことかな? 確かに国王の前で用いられるならよいもののほうがいいとは思うけど……


「普通刺し網漁で魚は捕るんだけど、このレイザーサーモンって鱗がカミソリの刃のように鋭いの。だから網で捕まえることは無理。そして銛で突いて捕るのが一般的なんだけど、今回の依頼は傷を付けると無効ってことでこれも無理。こうなるとレイザーサーモンを見つけたら傷をつけずに浅瀬に追い込んで捕るしかないのよね。」


 カウンターでうつ伏せになって諦めモードのアヤメさん。その気持ちはわからんでもないがまだ諦めるのは早い。何か手はあるはずだ。その何かを探さないと。


「なるほど。じゃ町の人達をたくさん連れて行って囲いこむように追い込んだらいいんじゃないでしょうか?」


「う~ん。そうできればいいんだけど、問題は捕る場所なの。キノくんはタートルドラゴンの討伐のためにサガラ川にクエスト受けに行ったよね? 今の時期あの川にはたくさんいるんだよ。サガラ川の上流に産卵場所があるからね。」


 あの川か。確かに魚影は濃い感じの川だったな。しかし産卵のために川を上るなんて鮭そのままだな。


「ああ! タートルドラゴンさえいなかったらピクニックでもできそうなくらいいい所でしたね。でも、あそこなら注意を払えば問題なさそうですが……」


「ううん。問題ありありなのよ。レイザーサーモンは早朝と夕方にしか餌を追わないの。普段は深場に潜ってて岩陰に隠れてるのよ。それで深場にいるのを捕ろうとしても邪魔な存在があるのよ。シーサペントっていうね。」


 なんと! 名前は聞いたことあるぞ。確か大きな海蛇みたいなやつだよな? あの川にそんな怪物みたいなのがいるのか…うん。いるだろうな。日が暮れかけたあの川と木々の暗がりはほんとに魔物の棲み家ってくらい恐ろしかったからな。


「シーサペントは海からサガラ川を上ってくるんだけど、浅瀬にはいないんだよ。だからシーサペントに襲われることはまずないの。」


「ただ、川舟を出して深場にいるレイザーサーモンを狙うとシーサペントに狙われてしまう。早朝と夕方に浅瀬に寄ってきたレイザーサーモンを町人達で追い込んで捕まえようとすると、ちょうどその時間が夜行性の高レベルの魔物が活発に動き出す時間だから戦い慣れていないたくさんの命が失われてしまう可能性が高いよ。いずれにしても魚一匹捕るだけでも命懸けなの。」


 両手を組んでため息をつくレイカさん。そういえばタートルドラゴンを討伐しに行ったとき、日が暮れだしたらあのニーチェが早くあの場から立ち去りたいとやけに焦っていたな。

 う~む。八方塞がりな感じだが、実はいけるんじゃないかという少しの自信もあるのだ。ちょっと確認してみておくか。


「アヤメさんレイカさん。緊急クエストはBクラス以上の冒険者だけが参加できるのですよね? 例えばサガラ川付近に他のクエストに行くのは問題ないですよね?」


「それは特に問題ないですよ。クエストが受けれないだけですからね。」


 よし!


「じゃあ、普通のクエストみたいに高レベルの冒険者とパーティーを組んだら参戦はできるのですか?」


「それも問題ないですよ。ただしリスクが大きすぎますからパーティーには入れてもらえないでしょう。」


 よしよし!あとは……


「そのレイザーサーモンってどのくらいの大きさですか?」


「そうですね。平均的な大きさはニーチェちゃんくらいかな。あまり大きくない魚だよ。」


 いやいや! アヤメさん! それは大きい部類に入りますぞ。およそ150センチ弱くらいか? だが、そのくらいの大きさなら…


 うむ! なんとかなるかも知れない! ただみんなの助けがいるかな……


「とりあえずサガラ川に行ってみますよ。クエストは受けずにね!」


 俺はニヤリと微笑んでギルドから飛び出る。こうしちゃいられないぞ! やることは山ほどあるぞ! 後ろをついてくるニーチェに叫ぶ。


「おいニーチェ! ちょいとアウトドアしようじゃないか!」


 パタパタと走りながら眉を八の字にしてニーチェが俺に聞く。


「へっ? なにそれ?」


「……何でもない。」


 ……ノリが悪い娘だ。だが、これからキリキリ動いてもらうぞ。


―オルよ。腹一杯魚を食いたいか? なあ?……あれ?……


 一緒に走っていたはずのオルが立ち止まって微動だにしない。近づくと小刻みに震え涙目になってるよこの子。


―腹一杯食えるのか? 嘘ではないだろうな!―


―あ、ああ。ただちょいと協力してもらうがな。お前一人でもどうにかなるだろうが、目立ちすぎたらこの町で生活しにくくなるからほんの少しばかりの協力でいいんだ―


―わかったぞ。だが約束を破るでないぞ。もし破ればお前の毎回の食物の肉を一年間ワシがもらうからの!―


―いやしさもここまで来たら気持ちいいもんだな。よしよし! 期待するんだ。俺の真の力を見せてやろう―


―ふふふ。やはりお前はまだ力を隠していたか。ワシほどの神獣と主従の関係である以上そうでなくてはな!―


 よし。オルは俄然乗り気になってくれたな。あとは…


「ニーチェ! すぐに買い出しを頼む!……と……と……を急ぎでな! 金は立て替えててくれ! 俺はエルシュさんの家に一度戻るから!」


「むぅ~。わかったわ! あとでちゃんと返してよね!」


 すまんな。自腹で買うとネットショッピングができなくなるんでな。マジでギリ足りるかどうかなんだよ。やっぱ昨日のランチが響いてるな。贅沢は控えなければ。


 そして俺は……


 エルシュさんの家に転がりこむように帰り、すぐさまタブレットを取り出した。









活路を見いだしたキノは何を企んでいるのでしょうか?


この緊急クエスト編が終わったら少しのんびりした話をいくつかしようと思います。


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