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3 仕事の後の昼飯はたまらない

棚卸は早々に終わったようです。

 早速仕事に取りかかり、ものの2時間ほどで棚卸は終わった。ピッピさんからは無茶苦茶不審がられたが、数々の品の中から抜き打ちでいくつかをチェックをしてもらい間違いがないのを確認してもらった。


「あれ? 休憩中なの?」


 カウンターのピッピさんと素材の話をしていると、背中に大きなリュックを背負ったニーチェとレイカさんがピッピさんの道具屋にやってきた。オルもその後についてきているが…まだ拗ねてるな。


「いいや。もう終わったよ。」


「は? 終わった? 店内の並んでるのだけでしょ? 棚卸っていうのはそのお店の全部の品をチェックするんだよ。」


「全部終わったぞ。今日の仕事はもう終わりだな。」


 二人とも目が点になっている。うんうん分かるぞ。そんな反応になるよな。普通にやったらよくて1日、慣れてなければ二日はかかるだろう。だが始めて二時間ほどで終わらせたのも事実だ。


「うっそ……ピッピさん! ほんとに終わったの? この人ずるしてない?」


 噛みつくようにピッピさんに問い詰めるレイカさん。普段見せてくれる笑顔はどこへ行ったのやら余程信じられないのか凄まじい疑いぶりだ。


「それがな、本当に終わったんだよ。私もいくつか抜き打ちで確認したんだが間違いなく数字があってるんだよ。」


「キノ……もしかして何か買ったの? 例のあれで。」


「まあな。俺が知ってる道具にはこんなときに役立つ便利なものがあるからな。それよりその背中のリュックはなんだ?」


「これはね、ソリッドスパイダーの糸だよ。ギルド長からピッピさんとこに持って行ってって頼まれたのよ。一応依頼品の納品だからレイカさんにも同行してもらってね。それより後で教えなさいよその道具。」


 へいへい。教えてもニーチェはすぐには使えないだろうな。どさっとカウンターに置かれたソリッドスパイダーの糸を見せてもらう。太さといい質といいアコースティックギターのナイロンの弦のようだ。


「ピッピさん。これって何に使うんですか? 用途は幅広そうですが…」


「これは相当丈夫な糸だから、普通に薪や物を縛ったりするんだ。あとは弓の弦にしたり建物の接合部の補強等にも使うな。幼体のソリッドスパイダーの糸は髪の毛のように細いから縫い物にも使うぞ。この透明な糸は衣服の補修やドレス生地を縫うときにもってこいだからね。」


「なるほど。生活全般に用いてるなら需要は途切れるとこはありませんね。」


「そうだね。そんなに狂暴な魔物でもないから誰でも倒せるしね。むしろ、倒すより糸の回収のほうが大変かな。スパイダーの糸自体は粘着性はないのだが、やつの体液が粘着性だから下手に解体すると糸に粘液がついて使い物にならなくなるんだよ。」


 ふむふむ。倒した後処理が大変そうだな。もし糸集めのクエストがあっても絶対に受けないぞ。クモを解体するとか想像もしたくない。


「それにしてもこんなに早く終わらせてくれるとは大助かりだよ。また次の機会もよかったら来てくれんかな?」


「はい!いつでも呼んでください。他の冒険者の方々とは違って体力はないですがね!」


こうして無事に棚卸を終わらせギルドに報告のために戻った。


その戻り道、レイカさんがこそっと耳元で話しかけてくる。


「あのっ! どうやってあの短時間で棚卸終わらせたんですか? ニーチェさんが言ってた道具って何でしょう??」


 うっ……さっきの会話聞かれてる……今はまだ教えるわけにはいかないよな。


「あ、ああ。ちょっと計算に役立つ道具を持ってるのでそれを使ったのですよ。」


「そんなものがあるんですか! ぜひ見せてください! あれだったら私買い取りますから。ギルド証の登録名簿管理するのに使えるならばいくらでも出しますから!」


 レイカさん近い近い! 近すぎていい匂いがします!


 そしてニーチェ。なぜ般若顔をしている? 何使ったか教えないから拗ねてるのか?


「俺の特有スキルが関係してるので、一応秘密なんですよ。もしもレイカさんがピンチになったら教えますよ。」


 適当に煙に巻いてごまかす。少し残念そうにしてるが仕方ないのだ。ネットショッピングに関してはできればずっと秘密にしておきたい。

 それでもしつこく聞き出そうとするレイカさんを適当にあしらいながら戻っていると、どこからともなくいい匂いがしてきた。そういえばまだ昼飯食べてなかったな。


「ギルドに戻る前に何か食べて帰ろうか? みんなおなか空いてない?」


「じゃ、あそこで食べようよ。結構評判いいんだよ!」

「あ! いいですね。私は久しぶりにトマト煮が食べたいです!」


 女子二人のお薦めとならば味は問題ないだろう。ニーチェが指差したお店に足を向ける。


〔海のレストラン フーラ〕


 むぅ。海産物のレストランっぽいな。こっちに来て肉しか食べてないからかなり嬉しい。オルは大丈夫なのかな?


―いつも肉しか食ってないが魚はいけるか?―


―もちろんだ。ただこの世界の魚は肉と比べて少し値が張るぞ。肉のように腹一杯は食えぬだろうな―


―そうなのか? じゃダイエット中のお前にはちょうどいいな―


 オルは『ふざけるな!』とぬぁーぬぁー鳴いているがガン無視だ。とにかく痩せてもらわないとあまりにも今のおまえはだらしないぞ。


「オルちゃんもお魚食べれるから嬉しいんだね!たくさん食べようね!足りなかったら私が追加したげるから!」


「いいやニーチェ。こいつは甘やかすなよ。このままじゃただのごくつぶし猫になりかねんから、俺らが食った後の骨だけでもいいくらいだ。」


 オルの鳴き声がぬぁ―ぬぁ―からぬが―ぬが―になり更に大きくなる。マジでうるせぇ……さっさと店に入ろう。


 入り口の扉を開けるが昼を過ぎてるのに店内は満席だ。店の中に充満している魚介のいい匂いが鼻をくすぐる。途端に腹の虫が騒ぎ出す。俺らはテラスに席を準備してもらいメニューを開きどれを食べようかと目を走らせる。日本でもお馴染みの塩焼きや煮付け(クリーム煮やトマト煮)、干物などなかなか種類が豊富だ。おっ! イカや海老もあるな。


「俺はこのサーモンのクリーム煮と海老の塩焼き、それとチーズパンにしよう。オルはどれがいい?」


 メニューをオルの目の前に出すと小さな肉球でペチペチと触って食べたい品をアピールする。白身魚の塩焼きだな。ペチペチペチペチ。ん? ペチが4回?


―四匹だ。最低でも四匹食わせろ。―


 食いしん坊なやつだ。四匹っていうと8000G? なんだこの値段は! もしや相当な高級魚なのか? 俺か選んだサーモンのクリーム煮と海老の塩焼きもあわせたら3500Gもするじゃないか!


「ニーチェさんや。魚料理はこんなに高いのか?」


「そうよ。新鮮な魚ってなかなか手に入らないからどうしても高いのよ。干物なら若干安いんだけどね。」


「そうなんですよ。海の魚にしろ川の魚にしろ、網で捕るから手間もかかるし捕れないときは全然捕れないそうですからね。クエストでもよく魚関係のものはありますよ!」


 なんと! こっちの世界ではそんな台所事情があったのか。ということは……刺身なんてないだろうな。まぁ、醤油らしい調味料もないから諦めるしかないか。


 しばらくして注文したメニューが揃ったので頂くとしよう。ニーチェはイカと貝のサラダとチーズパンを食べている。こいつは相変わらずウサギのようにもぐもぐと食べる姿が非常におとなしい。もしかして前世は草食動物なんじゃないか?

 レイカさんは白身魚のトマト煮と海藻のサラダっぽいものを食べている。食べてる時も笑顔が弾けている。

 オルもむしゃむしゃと魚にかぶりついている。どうやら骨も気にせずに完食するつもりのようだ。骨が喉にひっかからないか心配だ。

 それにしても久しぶりに食べる魚はうまいな。味噌や醤油があればいいのだが贅沢は言わない。肉ばかりだと飽きてしまうから、この店は贔屓にしよう。値段が高いから頻繁には来れないのが辛い。


 少し遅めの昼飯を食べてほどよく満足したから、さっさとアヤメさんが一人留守番している冒険者ギルドに帰ろう。うまい魚料理を食べたって話したら、きっとマシンガンのように嫉妬の嵐だろうな。

 今日の稼ぎの半分以上は昼飯でなくなったけどたまにはいいだろう!

 










海産物の取り扱いは今後のクエストで多少なりにとある変化があります。



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