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2 普通に日常のクエストってこんなもんだろう

強そうな人物の登場です。

「ギルド長ですね? お騒がせして申し訳ございません。あの男達がこのギルドに相応しくない振る舞いをしておりましたから出ていってもらいました。」


 出て行ってもらったって言ってるけど、実際は見事なくらい吹き飛んでいったのだが……ニーチェと同じくらいの体格なのにあんな筋肉の塊を片手で投げるとは。敵に回してはならないタイプだな。


「すぐに扉の修繕を手配致しますので、直るまでご迷惑をおかけします。」


 ぺこりと頭を下げて謝罪している。フードを被ったままなので表情がわからないが女性なのは確かだ。この振る舞いからするとただの冒険者ではなさそうだ。


「壊した物を直すなら別に文句は言わないけど、あんた何者なんだい? この町の冒険者じゃないだろう?」


 アヤメさんが腰に手を当て呆れ顔をしている。呆れてるのは彼女の馬鹿力だろうな。

 レイカさんはカウンターに身を隠して覗き見るようにこちらを見ている。どうやらレイカさんも彼女を知らないようだ。


「申し遅れました。私はキリサバル王国の王国騎士団団長のテルヨと申します。以後お見知りおきを。」


 そう言ってフードを取る。透き通るような白い肌。白とも銀とも言える絹のような美しい髪。整えられた顔と長い耳。ただしレゴブロックに勝るとも劣らない長方形な体。彼女は……エルフか?


「なんと! 王国騎士団団長とは! ならば先程の強さは納得できます。しかしながらテルヨ様。なぜこのような田舎町に足を運ばれたのですか?」


 アヤメさんがびっくりして目をまん丸にしている。そんなにすごいのか? ニーチェは羨望の眼差しで見ている。オルは……肉が食えなくて拗ねてるな。だが拗ねても肉はやらんぞ。


「隠しても無駄ですからお話しますが、近づく収穫祭に国王も自ら足を運びたいと呟いておられるのを側近から聞きまして。町の安全面、警備のしやすさ、衛生管理の充実さをリサーチしに来たのです。そして最後にこちらのギルドを視察に訪れた次第です。」


 その言葉を聞き、アヤメさんとレイカさんは渋い顔をしている。最後の最後に自分達のギルドがトラブルを起こしたと感じたのだろう。


「まあ、あのような者はどこの町にでもいるものです。町の雰囲気は非常によいものですからきっと国王も収穫祭を楽しまれることでしょう。収穫祭まで残り少ないですがしっかりと準備をなさってください。」


 最後に軽く微笑みながら会釈をし、ギルドから立ち去ろうとする。その様子を見てギルドの二人も安堵したようだ。そして去り際に俺とすれ違うとき、ふと互いに目が合う。


 体の中まで見透かされそうな深い眼差しだ。


「君は……ふふっ。また近いうちに会いましょう。」


 俺の背中が身震いしている。何とも言い難い怖さを感じた。

 そうだ。怖さだ。

 単純に怖いと感じたのだ。


-オル。あのねぇちゃんはエルフか?なんかすっごい怖かったんだが……危うく魂持って行かれそうになったんだが-


―うむ。幼く見えるがエルフだな。そしてお前に危害を加える雰囲気は全くなかったが相当強いぞ―


―そうか。騎士団の団長とか言ってたからすごいんだろうな。だがあんな怪力エルフとはは関わりたくない。あいつ喋りは丁寧だが、雰囲気的に俺をトラブルに巻き込もうとする気配満々だったぞ―


「そう言わないで次の会う機会を楽しみにしましょうよ。」


 ばっ! と俺とオルが同時に外を振り返る。


 誰もいない。あのテルヨってエルフもいない。だが確かに彼女の声だった。

 他の人達には聞こえていないようだ。こいつにも聞こえたのかオルはじっと外を見ている。ただ人々が行き交う雑踏しか聞こえない街路を瞬きもせずに。


「いや~王都の騎士団長様がこんなところに来るとはね。しかもあんなかわいらしいエルフだなんてね。」


「ほんとですよ! サインもらえばよかったですよ!」


「おじいちゃんも王都の騎士団長様はすごいって言ってましたが確かにレベルが違う強さの魔素に覆われてました!」


 額に汗を滲ませた俺は三人のたわいもない会話で現実に戻される。


「そんなことよりクエストクエスト! よさそうなのはあるかな…」


 俺はわざと話題をすり替え掲示板に目を向ける。そうでもしないとあのテルヨってやつの言葉が耳から離れないのだ。


「おっ! これやるぞ! これなら一人でできるはずだ。」


そう叫んで依頼書をアヤメさんに手渡す



〔依頼内容〕


ピッピの道具屋の棚卸


※計算ができる方のみ※


〔報酬〕


金貨二枚



「ねぇキノくん…こないだからいきなりスケールダウンしたね。そんなんじゃお姉さんは素直に喜べないぞ。早く君の無双してる姿を見たいんだけどね~」


 冷めた視線を向けながらギルド証に依頼書を読み取らせるアヤメさん。


「アヤメさん。さらっと何訳のわからないことを言ってるんですか? 俺は最強の冒険者になるためじゃなく、生活のために冒険者になったんですからね。こないだのはかなり無理があったのであんな命のやり取りはもうやりませんよ。」


 アヤメさんだけじゃなくレイカさんも不満げな膨れっ面だ。一体俺にどんな期待しているのか。ともかく働くなら地道にこつこつと。そしてチャンスがあればビッグマネーに飛びかかろうぞ! それが俺のモットーだ。


「それじゃちゃちゃっと終わらせてきますね! あ! ニーチェは来なくていいぞ。これはひとりで終わらせれるからな。」


「わかった~。でも暇だからあとでキノの働きっぷりを覗きに行くよ!」


 むぅ……やはりついてくるのか。こんなクエストなんぞさっさと終わらせてしまいたいので彼女は放置したかったのだが。


「わかった。邪魔だけはするんじゃないぞ。それじゃ行ってきます!」


 特に準備するものはないと思ったのでギルドからそのまま道具屋に向かう。依頼書に書かれているピッピの道具屋は冒険者ギルドの3つ先のブロックだからすぐに着いた。店構えはなかなかの大きさだ。


「こんにちは! 依頼されていました棚卸を受けたものです。」


 声をかけると奥からアヤメさんと同じくらいの女性が出てきた。この人が依頼者のピッピさんだろう。


「よく来てくれたね。じゃ、早速だけどこの帳簿に記入していってもらえるかな? 店の在庫と奥の倉庫の数量が今回の依頼範囲だよ。」

「わかりました! すぐに終わらせますからね!」


「はははっ。すぐには無理だよ。1日で終われば早いほうだと思うぞ。品には名前の札を付けてるからわからないものはないと思うからよろしく頼むよ。」


 そう言うとピッピさんは長年使っているであろう革表紙の台帳を俺に手渡し、カウンターに腰掛け分厚い本を読み出した。よし。さっさと終わらせようじゃないか。こいつを使って。



 







棚卸って大変です。


月末に残業になるのは当たり前になりますよね。

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