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1 酒は呑んでも呑まれるな

第二章の始まりです。


早速新しいキャラが出ます。

 オルーツアを眼下に望む岩山の頂にある二つの影。岩肌から吹き上がってくる冷たい風が二人のローブをはためかせる。


「おいおい。こんなちんけな町に例のやつがいるのか?」


「ああ間違いない。国王のスキルに引っかかったらしいから。」


「なら確定だな。俺らは時が来るまで…」


「そうだな。時が来るまで…」


 風にかき消されるような会話が終わると同時に二つの影も言葉と共に消え去った。





~~・~~・~~・~~・~~・~~・~~・~~









 朝の町に響く雑踏をバックグラウンドに町を駆け抜ける。少しひんやりとした空気が頬を引き締めて心地よい。今日も爽やかな日になりそうだ。目的の建物に着き、少し錆び付いた扉を押し開く。


「おはようございます!」


「おは~! 5日ぶりだね。元気してたかい?」「おはようございます! キノさん。報酬が底を尽きましたか?」


 ギルド長のアヤメさんとレイカさんだ。


「報酬は手付かずなんで一文無しってわけじゃないですよ! 働きもしないでゴロゴロしてたらエルシュさんに追い出されるからクエストを受けに来ました。それより見てくださいよ! こいつなんて食っちゃ寝を五日繰り返しただけでこれですよ。」


 掲示板を見ながら二人に答える。足元には1.5倍くらいに膨張したオルがいる。まさか数日でこんなになるとは……


「ははは! 居候は大変だね。オルちゃんは……ダイエットしなきゃいけないわ! できるなら自分の家でも買えればいいけど、そのためにはまず高報酬のクエストをやるしかないよ!」


 アヤメさんはオルを撫でながらケラケラしている。レイカさんもオルを触りにカウンターから出てきている。


「そうですね。一人暮らしの小さな家でも最低2000万Gは必要ですからね! あっ!でも……奴隷や恋人と一緒に暮らすなら3500万Gは要りますかね! 頑張って稼がないとですね♪」


 奴隷? 恋人? 今の俺には手を出したくても出せれない。てか、奴隷制度があるのか? ふむむ。興味はあるな。


「いえいえ! 俺にはまだ早いですよ。とにかく稼いで早いとこエルシュさんの家から卒業しないといけませんからね。いつまでも迷惑かけれませんよ。」


「若いのに真面目だね! 冒険者のみんながそうだったら、おかしなならず者なんかいなくなるんだけどね。あいつらみたいな。」


 そう言ってアヤメさんが目配せした先には酒瓶を片手に大声で話す男二人とローブを頭から被ってその表情すら見せない小柄な人物がいる。


「おっレイカちゃ~ん! 親しげに話してる様子からして、そいつが噂の新人だな~ちょいこっちに来いよ!」


 むぅ。むちゃくちゃめんどくさい。酒に呑まれてるやつは基本的には知り合いにもになりたくない人種だ。無視しとくべきか?


「キノさんほっとけばいいですよ! 朝から飲んだくれてるような冒険者もどきなんて。」


 レイカさんが汚物を見るような視線を彼らに浴びせながら吐き捨てる。レイカさんの言う通りだな。相手にするだけ無駄だ。


「へっ! なかなか気持ちいいこと言ってくれるじゃね~かレイカちゃんよぉ。おい! 新人くんよぉザネックス商会の暴れ馬を沈めたって力を見せてくれやぁ~ひゃっひゃっひゃっ!」


 うっわ~たち悪すぎだろ……俺がチート満載なら赤子の手をひねるかの如くこてんぱんにしてみんなからヒューヒューと喝采を浴び、女性達から羨望の眼差しでとろけるところだが……


 うむ。俺がひねられるな。ぼろ雑巾になるのは目に見えている。なぜ冒険者はマッチョ揃いなんだ? どんだけ筋トレしてるんだろう……

 どうしたもんかと思案してると足元のオルが話しかけてきた。


―おい。やたらとうるさいのがいるな。お前の拡声器とやらで黙らせればよいではないか? ワシは外に出ておくからな。そしてすぐに市場に足を向けるのだ。今日は20本はいけるぞ―


―ダメだ。ここで使ったらレイカさんとアヤメさん、んでもって向こうの冒険者の耳が潰れる。それに拡声器はあまり見られたくないしな。そして市場に行ってどうする気だ? 20本って肉か? 肉が食いたいのか?―


―そうだ。朝食ったパンと野菜の汁だけでは物足りぬのだ。早々に解決したいのであれば争いを生まぬようここから立ち去るのも一つの手だぞ。おまえは冒険者として問題を起こすとよくないのであろう? 足を向けるべきは市場、いや露店なのだ!―


―だな。レイカさん達に迷惑かけたくないしな。ここは黙って出ようか。そして市場には行かないし肉も買わん。贅沢は終わりだ。野菜が今日からのお前の主食だ―


―何寝ぼけた事を言ってるのだ? ここ数日の肉にまみれた日々が終わると言うのか? 解せぬぞ!―


 ……寝ぼけてるのはお前の頭だろう? ちょっと贅沢にしたらもうこの調子だ。せめて元の体型に戻るまでは当分買い食いはなしだな。


 なんて不毛な言い合いをしているとぱたぱたと走ってきた金髪娘。


「キノったら置いていくなんてひどい! まだまだ半人前なんだから私が教育しないといけないのに!」


 おいおい。いつからお前は俺の保護者になったんだ?しかも年下のくせに。

 ぶすっとした顔でキノを睨み付けるニーチェだが、場の雰囲気を感じ取り皆の顔色を伺っている。


「ようよう! エルシュのとこのお嬢ちゃんじゃねぇか。こりゃこのチキン野郎を相手にするより、こっちのお嬢ちゃんを選ばないといかんなぁ!」


「なにあいつ?」


「ああ。あいつはただの酔っぱらいだ。」

「浮浪者。」

「そこら辺によくいる雑魚キャラA」


 ……レイカさんもアヤメさんも言いたい放題だな。酔っぱらいマッチョがプルプルしてるぞ…


「てめぇら! おとなしくしてりゃいい気になりやがって! 表にでろやぁ!」


 うっわ! これからやられるキャラのお決まりのセリフを生で聞いてしまったぞ。これは貴重な体験だ! 録音機器があればよかったのに……っと、あれ?


 マッチョが宙に浮いている? いや後ろから首根っこを掴まれ持ち上げられている。

 マッチョは息ができないのか脳まで血が回らないのか、口をぱくぱくさせて掴んでるその手を振りほどこうと手足をばたつかせる。だが、まるでピンセットでつままれた昆虫のようにその華奢な腕を振り払えない。


「君、うるさいですよ。」


 その手の主はさっきまでマッチョと一緒にいたフードを被った人物、いや女性だ。と次の瞬間、マッチョは扉を吹き飛ばしギルドから外に放り投げられたのだ。


「うわ……あれって生きてんのかな? 体が変な方向に曲がってるけど……」


 扉がなくなったギルドの入り口から外を見てみるが、マッチョはピクリともしない。死んでないのを祈ろう。そしてこいつは仲間じゃないのか? さっき一緒にいたはずだが……


 ブンッ!


 あれれ? 目の前を何が飛んでったぞ?


 飛んだ先を見るとマッチョの横に一緒にいたもう一人のマッチョが転がっていた。


「ギルドでこのような者が朝からたむろしているとは。余程クエストが容易なものばかりなのでしょうか。それとも難儀なものしか残っていないのでしょうか。」


 フードの奥からは緑色に光る眼差しがマッチョ達を哀れんだ眼で見ていた。







さてさて彼女は敵か味方か。


そしてマッチョ達の運命は!?(雑魚キャラA,Bなのでもう出番はありません)

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