閑話 ニーチェ
今回は閑話です。
その娘はいつもと変わらない朝を迎えていた。
両親はいない。ゆえに窓から入る朝日が目覚ましの合図だ。
眠い目をこすりながら布団から出て祖父に挨拶をする。
「おはよ―おじいちゃん。」
「おはようニーチェよ。たいぶ冷え込んできたから今夜から毛布を出そうかのぅ?」
朝食のパンとスープを食べ終えた祖父が出かける支度をしながら話しかける。
「そだね~。風邪ひいちゃったら町の収穫祭が楽しめないしね!」
ニーチェは冷めかけたスープを温め直し自分の朝食を準備する。
「そうじゃな。では夕方には準備しておこうかの。今日は東の野で癒し草を集めてくるから、昼過ぎには戻るからの。」
「わかった! じゃ部屋の掃除と買い物しとくね!」
祖父の背中を見送りいつもの朝食を食べる。いつもと同じ一人の朝食。いつもと同じ味がしない朝食。
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今日もいつもと同じ1日だったはす。だけど突然にその〔いつも〕は終わった。
「ニーチェよ! すまぬがすぐに布団を用意してくれぬか?」
おじいちゃんだ。まだお昼前なのに帰ってきたの?ってすごい慌ててる。あれ? この男の人は? 見たことない服着てる。貴族じゃない……よね?
「どうしたの? それにその人は?」
「東の野で知り合った旅の人らしいのだが町の入り口で急に気を失ってな。倒れた時に頭を打ってなければよいのだが。」
見たところ血はでてないし、たんこぶもなさそう。怪我がないならしばらくしたら起きるかな。
「黒い髪の人って見たことないよ。遠い地からきたのかな?」
少しくせっ毛がある真っ黒な髪。そんなに掘りが深くない顔。私よりは年上だろうな。あっ! 男なのにピアスしてるよ。
「おそらくそうじゃろうな。もしくは老枢聖どもに召喚された者か…」
えっ! この人って召喚者なの? ううん! まだそうと決まったわけじゃないわ。とにかく今は意識が回復するのを待たないと。
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目を覚ました彼と色々話したわ。どうやらごく普通の旅人で、なにやら彼はネットショッピングってスキル持ちみたい。どうしても見たいってしつこく迫ったら渋々みたいだけど見せてくれるって。
やっぱり男って女のおねだりに弱いのね。ふふん♪
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キノからネットショッピングを見せてもらったわ。銀貨一枚と銅貨八枚を引き換えにね。でも、すごいの! 空中から箱が出てきて中には見たこともない髪留めが入っていたのよ!
市場じゃもちろん、王都でもここまで綺麗なものはないはず。お小遣いはなくなっちゃったけどこんな素敵な贈り物は生まれて初めて。
またいつかお小遣い渡してネットショッピングしてもらおうかな!
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今日はキノをギルド登録しに行ってきたんだ! ギルドに行ってわかったんだけど、キノってテイマーなんだよ! それで、その途中でかわいい猫ちゃんに会ったんだけどその正体を知ってさらにびっくり!
この猫ちゃんがキノの従魔なんだって。あんなかわいい猫ちゃんを従えてるなんてなかなかのやり手よ! でも、キノはものすっごい勢いで主従関係を否定していたわね。どうしてなのかしら?
それよりも居候がもう一匹増えるけど大丈夫よね? おじいちゃんもなんだか嬉しそうだし。
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朝日が射し込む。いつもの目覚まし代わりだ。そして祖父に朝の挨拶をするために居間に足を運ぶ。
そしていつもと同じ味がしない食事を食べる。変わらない食事の時間。でも今日からはもう一人と一匹が加わった。
これから始まるであろう慌ただしく騒々しい日々への期待と喜び。
どんな毎日になるのだろうか。
少しだけ前を向いて生きていけそうだ。
閑話はさっくりしたものにします。
本日の更新がもの足りなければ物語の続きを掲載します。
 




