6 決意も新たに町をふらつく
町長の家に戻ります。
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冒険者ギルドからの帰り道、冒険者としてのシステムをニーチェから聞く。まず、冒険者のランクについでだが
S、A、B、C、D、E、Fの順にランク分けされている。
初めはFランクからのスタートで、経験や実績に応じてランクがあがる。
ランクをあげるためには町や地域、国に対して貢献しなければ承認されない。(過去に小さなクエストばかりしてランクアップを試み地位を得ようとした不届き者がいたらしい。)
ランクば下がることはないが、ギルドの規律に触れるようなことがあればその資格自体が取り消されてしまうとのこと。
つまりは、地道に働いて地域に貢献しろというわけだ。
自分にこれから何ができるのか手探り状態だがとにかく自立できるよう働かないとならない。
欲がないと言えば嘘になるが、よもやAランクやSランクになってしまうと間違いなく『町を守ってください! 勇者様!』とか『魔王の城はもう目の前だ! 今こそ力を振り絞り剣を掲げるのだ!』とか訳のわからない喧騒に巻き込まれかねないのでそこんとこは自重しておかねば。
前途多難ではあるがとりあえず帰ってエルシュさんに報告しよう。
「ただいま―! おなか空いた―!」
元気よくドアを開けて家に飛び込むニーチェ。そのあとに続く俺。そしてオル。さて、オルの事をどう説明しようか?
「おお早かったのぅ。腹が減ったとは飯は食ってないのか?無事に登録はできたかいの?」
「はい。ちょっと色々あって朝ごはんはとらずにギルドだけ行ってきました。なんとか冒険者として登録できたので明日から頑張って働きます!」
「そうかそうか! 初めはこの町に慣れるよう簡単なクエストをこなすのがよいだろう。で、その猫は…」
うっ……いきなりきたか。正直に言うべきか……言わざるべきか……ええいっ!
「実はですね、この魔獣と主従関係にありテイマーとしてギルド登録してきたんです。なので……言いにくいのですがこいつの寝床を提供してもらえないかなって……」
断られたらどうしよう。こいつだけ野宿させるか? それはさすがにかわいそうか。ペットじゃないが一応飼い主? として責任ある行動は取らないと……
「ふむ。テイマーか。ならば寝食を共にせねばのぅ。よきテイマーはパートナーとなる魔獣と常に行動することにより、意思を通わせてより強固な絆を生み出すのじゃ。自分では到底できぬ事も、人外な能力を持つパートナーを用いて困難なクエストもやり遂げやすくなるのだぞ。」
なるほど! テイマーってそんな職業なんだ! ふ~む! そうなれば、ネットショッピングとテイマーの二刀流でこの世界に立ち向かえるかも!
「ありがとうございます! 俺、早く1人前のテイマーになるよう頑張ります! (ネットショッピングも活用しながら)」
「うむうむ! よい心構えじゃ! 己を鍛え上げるのに近道はないが必ず結果はついてくるからのぅ。ほれ!おまえら朝飯を食ってないなら何か食うか? もう昼を過ぎてるがすぐに準備するぞ?」
―ワシは肉を所望するのだぁぁぁぁ!!!―
「「えっ?」」
部屋に響くオルの声。そして俺に目を向けるエルシュさんとニーチェ。
オルは……よだれが枯れ果てた口を開けたまま目を血走らせている。
「すいません。肉が食べたいです。」
二人から視線を逸らしながら小声でつぶやく俺。
オルは食後に説教だな。
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エルシュさんが準備してくれた食事を頂き一息つく。オルの食いっぷりはすごかった。一体どこに吸収されたのか分からないが、軽く体の三倍は食べていたな。
食べ過ぎでひっくり返っているオルにしこたま説教。正体がばれないようにしろと念入りに釘を指し、守れなければ一週間肉抜きのペナルティを課すことを告げる。そして満腹の腹をさすりながらこのあとの予定を考える。
朝からバタバタしており明日から働こうと気持ちを切り替えたので、今更ギルドに行こうとは思わない。なので、午後からは町を散策しようと考える。ニーチェの手を煩わすのはあれだからここは一人で出歩いてみよう。もし迷子になっても町長さんの家と言えば誰か案内してくれるだろう。
カバンを肩にかけエルシュさんとニーチェに一言伝えて家を出る。ニーチェはついてきたそうにしていたが一人で町を見てみたいのだ。
とりあえず広場まで行き、方々に延びる通りを見ながら行き先を考える。ギルドには頻繁に足を運ぶだろうから朝歩いてない方面に行ってみようかな。
―ワシはもう少し足が長いと思うのだがどう思う? それに尾はもう二割ほど増した太さのはずなのだがな。しかし、あの娘にもらったこの腕輪はなかなかよい。この像にもぜひつけてほしいぞ―
自分の彫像を見ながらオルが尻尾を優雅に振っている。
「知るかっ!」
あ! やべっ。思わず口に出してしまった。周りの人の視線が痛い。レイカさんからテイマーの魔獣の証である腕輪を右足につけてもらい嬉しいのだろうか。腕輪のある右手を入念に毛繕いしている。そんなオルに聞いてみたいことがあった。
―ところで、オルはこの世界に詳しいのか? 詳しいならこの国の情勢とか教えて欲しいんだが―
―ふむ。この世界にはこれで三度目だが、いずれも散歩した時代が違うから正確なことは分からぬ。ひとつ言えるのはこの国には大きな動乱はないのは確かだろう。この町には物が豊かに溢れているからな―
なるほど。ただの猫かと思っていたがなかなか鋭い洞察力だな。荷車が行き交う道を歩きながら耳を傾ける。オルは俺の隣で話を続ける。
―おまえは地球の日本という平和すぎる国で生きてきたからそんな単純に思い、感じるのだろう。元来、知識を備えた生き物は己の欲のままに生きているゆえに、日々生きることへの執着と力の行使に重きを置き、それに心を奪われているものだ。それは人も魔族も亜人も同じだ―
今、魔族とか亜人とか言ったよね? 亜人はともかく、魔族には会いたくないぞ。それにしてもずいぶんまともな考えを持ってるな。さすが神獣と呼ばれるだけのことはある。その考えには俺も賛成だ。おれは相槌を打ちながら返事をする。
―確かにそうかも知れないな。俺なんか争いって言っても何度か喧嘩したくらいだからな。実際、地球の至るところで紛争とか争いがあっても日本とは別世界の出来事のように見てしまうし、当事者は結局のところ相手を支配する目的で力を振るってるんだろうからな―
―そういうことだ。口では自由や解放と叫んでも、根底にあるのは自分を満たそうとする人の欲なのだ。しかしながらおまえはその欲が薄いせいなのか、えらくお二人に気に入られておるな。そうでなければワシが共にいることなどありえないのだぞ―
何いきなりとんでもないことを言い出すんだ? 思わずずっこけそうになったぞ。
―…そうなのか? 少なくともあのレゴブロックにはどう思われているか見当もつかないな。そして人をイラつかせる才能に秀でてるのは認めよう。あれはどう見ても周りに敵を作りやすいタイプにしか見えないしな。ちなみにあの二人は一体何の神なんだ? ただ〔神〕という存在なのか?―
―リーヌ様をそう悪く言うな。主がそんなに言われたらワシの肩身が狭いわ。ちなみにシューラ様は〔時の神〕だ。おまえ自身もその力を受けているから理解できるであろう? そして我が主のリーヌ様は……―
誇らしげにレゴブロックについて語ろうとしたその時である。
「誰かぁ! 荷馬車を止めてくれぇ!」
なんだかんだ言いながら、キノとオルは意思を通わせ始めました。




