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6 面倒な依頼

一ヶ月ほど休ませてもらいました。


またぼちぼち書いていきます。


「キノおはよ~! 昨夜は大変だったね~」


 大きなあくびをしながらネシャとニョロゾがやってきた。


「おぅ。まったくもってな。せっかく二人に建ててもらったのに何か悪いな。あいつらにはきっちり元通りにして落し前つけてもらわないと俺の気持ちが収まらん。」


 あきれ笑いを隠そうともせずニヤニヤしながら三人の作業の様子を見守るニョロゾ。


「まったくだ。にしても、あのビビの使用人すげぇな。あんな化け物みたいな強さを持ってるやつがお手伝いさんなんぞやってるとは。」


「うむ。ビビに釘を刺しておかないと何かあったらオルーツアは崩壊してしまいかねん。下手に町中で暴れないようにしっかり手綱を握っててもらわないとな。」


 ビビからの指示通りにてきぱきと作業を進める二人を見ながら今後のことを考える。


 一応二人にはビビ達の素性を話しておくべきだろうか。


 今回のように意図的ではないにしろ、あの人外な破壊を頻繁されたらたまったもんじゃない。元とはいえ守護竜がこの町にいるとなったらネシャ達はどんな反応をするか……


「見、見つけた……」


 背後からゼェゼェと息を切らす聞き慣れた声が聞こえる。


「よう。俺を探してたのか? って、サチっていつも息切らしてるよな。」


「走るのは健康にいいんだよ! でさ、キノに頼みがあるだけど!」


 なんだろう。何か嫌なイメージしか湧かない。サチが絡むと自然とレゴブロックも絡んできそうなんだが。


「見ての通り今すぐは無理だぞ。マイホームの建築を見守っておかないと昨夜のような悲劇は二度とごめんだからな。」


「昨夜の悲劇? それはよくわからないけど、キノにとっては悪い話じゃないと思うんだ! ま、正確にはあたしからの依頼なんだけどね!」


 どや顔で距離を詰めてくるサチ。う~ん。やはり嫌なイメージが沸々と……


「内容を聞いてから決めてもいいか? ってそうだ! すっかり忘れてた!」


 ビビと家の図面をにらめっこしているニーチェを手招きしサチの前に立たせる。


「こないだの依頼の報酬をまだ受け取ってなかったな。ニーチェに見合う一着を見繕ってくれ。依頼はそれからだ。」


「え?」


 状況が飲み込めないニーチェがポカンと口を開けアワアワしている。


「おおぅ! あたしも忘れてたよ! じゃまずはこの子に一着プレゼントしようじゃないか!」


「えっ? えええ――っ!? ちょっ……ちょっとおぉぉ――――!」


 サチに腕を取られたニーチェは、彼女に引きずられるように土煙をあげながら町の入り口門に消えていった。


「よし。これで少しは静かになるな。……ところでネシャとニョロゾはこれからどうするんだ?」


 なにやら面倒そうな顔をして地図であろう羊皮紙とにらめっこをしている二人に声をかける。あまり見たことがない二人の表情が気になる。


「えっとね~ちょっと面倒な依頼を受けたんだけど、海岸ルートで行くか山越えルートで行くか悩んでるんだよ。」


 ほほぅ。Sランクともなれば引く手あまただな。


「二人が面倒って言うくらいだから相当なんだろうな。で、どんな化け物討伐に行くんだよ?」


「いやいや。討伐依頼じゃないんだ。今回は採取依頼なんだけど、あんまし受けたくなかったんだよ。」


「てかしたくない。今からでも断りたい。俺はマジで嫌だ。」


 二人とも本当に嫌そうだ。どうみても顔色が曇天のように沈んでいる。この二人がここまで渋る依頼ってどんなものなんだよ。


 「この町の最強コンビが情けないぞ。採取依頼って比較的簡単じゃないかよ。まさかドラゴンの卵を取ってこいとかってやつか?」


 ちらりとビビを見ながら呟く。そういえばビビも卵産むのかな?う~ん。想像できないな。


「まだドラゴンの卵のほうがましだよ。地に足つけて卵だけ持ち帰ればいいんだから。依頼内容はあまり公にしないほうがいいんだけどキノには教えようか。」


「依頼内容って言うのが…………」



~~・~~・~~・~~・~~・~~・~~・~~




「ふ~む。そういうことか。」


 なるほど。確かになかなか面倒な依頼だな。ってか、こんな依頼押し付けて来たのはどんなわがまま大王なんだよ。


「でもってこの依頼っていうのが、今まで色んな冒険者や貴族らが挑戦したんだけど誰もその姿すら見てないんだ。言い伝えによるとだいたいの場所近くまでは行けるんだけど、そこから……」


 半ば諦め顔のネシャとニョロゾ。てか完全に諦めモードの顔だ。今すぐ酒場に行ってしまいそうだ。

 いい加減面倒事には巻き込まれたくないが二人には色々助けられてるからな。一肌脱いでやろうか。


「多分だけどなんとかなるかも知れないぞ。手伝おうか?」


 一瞬きょとんとしたがすぐに真剣な顔になり、一気に目の前まで詰め寄ってきた。


「マジか?」


「マジだ。」


「その根拠は?」


「俺にはこいつがある。」


 そう言うとカバンからタブレットをちらりと二人にちらつかせる。

 それを見てニヤリと表情を崩す二人。


「報酬は?」


「家を買ってほぼ文無しになったから一ヶ月分くらいの食費くらいで構わないぞ。あと、必要経費は二人が出してくれよ。」


 俺の要求を耳にして更に悪い顔でニヤリと笑う二人。


「ああもちろんだ。もしかしたら俺達は伝説を目にするやもしれんな。」


 ニョロゾが一際低い声色で囁く。なんか怖いよ。


「んじゃ、出発は……」

 

「明日でいいぞ。ビビ達なら問題ないだろう。」


 振り返り我が家の状況を見るとほぼ昨日と同じペースで作業が進んでいる。うん。もう任せてても大丈夫……だよな。


「わかった! それじゃ明日の朝迎えに来るよ! 旅支度を整えないとね!」


 そう言い残すとネシャは手を振りながら行き交う町の人波を縫うように走り去ってしまった。


「悪いなキノ。お前んちがこんな事になってるのにわざわざ付き合わせちまって。」


「気にするなよ。二人にはいつも助けられてるしな。それにこの依頼は手伝うだけだから、やるのは二人でやってくれよ。」


「わ、わかった。じゃまた明日な。」


 視線をそらしながら返事をしたニョロゾはネシャと同じく人波を縫うように走り去って行った。


 さて……あの二人なら何とかできる。……はず。だと信じたい。

 俺も明日の支度をしないとな。だが、さすがに野宿はしたくないぞ。


 頑張ってビビ達に元通りにしてもらわないとな。

 

 




 

 

 

 




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