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遺言  作者: 椎名 千尋
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第十五章

 ハニーズに入る。

 ウエイターがオヤっとした顔で。


「今夜は記念日ですね」

「よくわかったね」

「お顔に書いてあります、ではこちらへ」

「記念日用のあの肉は置いてるかい」

「ええ、ございます」

「じゃあそれとガーリックライスを、特製ダレも頼む、食後にパフェも頼むよ」

「私も同じものを」

「かしこまりました」


 由香里が小声で。


「いつものレストランでよかったの? 高級フランス料理店も近くにあるわよ」

「いいんだ、金があるからと言って背伸びすると破滅する、散々見てきたからな。それにここも十分高級レストランだ」

「あなたのそう言うところ好きよ」

「だが、車は高級車に乗り換える」

「いいと思うわ、自分へのプレゼントね」

「明日は一日付き合って貰ってもいいか?」

「ええ、構わないわ。どこへ行くのかは楽しみに聞かないでおくわ」

「大した事じゃない」


 料理が運ばれて来る

 二人で美味しく味わいながら食べた。


 食後のパフェとワインも運ばれて来る。乾杯して一口飲むとパフェを食べた。


「あなた、パフェも好きなのね」

「ああ、特にこの上に乗ってる生クリームが好物なんだ」

「じゃあ今度生クリームたっぷりの特別ケーキを家で作るわ」

「それは楽しみだ」


 食べ終わると会計をし、ゆっくりと家路についた。


 いつもの様にコーヒータイムを済ませ、風呂も一緒に入り同時にベッドへ入る。今後どうするか話してる間に眠りに付いていた。


 アラームで目が覚めるともう一度口座残高を確認する。


「あなた、何度も見て飽きないの?」

「いや、夢じゃないか確認してるだけさ、で結局お前の駅前の土地が売れて合計いくらになったんだ?」

「銀行口座が沢山あるから大まかに計算しても、あなたより三十億円くらい少ないわ」

「ほぼ互角だな、前にお前から預かったクレジットカード返しておくよ。俺もクレジットカードを二枚程作ることにする」


 早速ネットでブラックカードを作る手続きをした。


 銀行口座は幾つかに分けた方がいいと判断して、三大都市銀行に口座を開く事にした。


 時間は十時、出掛ける準備をしていると俺の携帯が鳴り出す、電話を受けると銀行からだった、いくらか定期預金にしないかとか株に興味はないかを聞いてくる、とりあえず考えさせてくれと答えておいた。


 由香里と一緒に車に乗り込み銀行巡りをする、三つの都市銀行に百億円ずつ均等に入れ記帳する。由香里も俺と同じ様に同じ銀行に分けていた。銀行の用事が終わると車を見て回る好きな車の一つのマセラッティーも見るが、この国では馬力を持て余してしまうので止めておいた、結局由香里と同じポルシェを現金一括払いで購入し、新しい車で近くのレストランに入り簡単な食事をした。


十四時には用事が終わってしまったので、ドライブがてら遠回りして家に戻った。


家に帰ると由香里は整理した銀行の手帳をまとめて捨ててクレジットカードも八枚から四枚にまとめた。


 由香里は疲れたらしく。


「一旦休憩しましょ」


と言い飲み物を運んでくる


「あなたも結構行動力と決断力があるわね、疲れたわ」

「じゃあ今日はこれくらいにしておくか」

「でも私も助かったわ、幾つもの銀行に分けてたのをあなたと同じ三つまで絞れたもの、わかりやすくなったわ、クレジットカードも枚数を減らせたし、管理がしやすいわ」

「ここのセキュリティーなら大丈夫そうだが通帳はまとめて隠すなよ、バラバラに仕舞って置いたほうがいい」

「わかったわ、でもポルシェが二台になるとは想定外だったわ」

「いいじゃないか、俺の夢が一つ叶った」

「今まで持ってた五億円でも十分買えたじゃないの?」

「まあ、そうだがな」

「それにしてもさっきのファミレスは美味しくなかったわ、口直しに別のものが食べたいわ」

「いつもハニーズだから舌が肥えてるんだ」

「そうかもね」

「今夜はどうする?」

「食材が腐ると勿体無いから何か作るわ」


 由香里は冷蔵庫を漁り始めた。


 メールが届いた音がしたのでパソンをチェックする。ブラックカード三枚とも審査が通ったと言う内容だった、早すぎるので不審に思い電話を掛けた、三社とも口座残高が確認出来たのでオッケーと言う返事だった。速達で送るので内容を確認して欲しいとだけ言われた。


 由香里にその事を確認すると。


「ブラックカードは審査は凄く厳しいけど、通ると早いわよ。もう審査通ったの?どこの会社なの」


 ここだと言ってパソコンを見せた。


「ここなら大丈夫よ私と同じとこだわ、もう送ってくるの?」

「ああ、速達で送ってくるそうだ」

「良かったじゃない、心配しなくても大丈夫よ、もし不審に思ったらうちの顧問弁護士に頼めばいいわ」


 と言われたので安心することにした。


「ご飯出来たけど作りすぎたわ」

 テーブルに付くとステーキにグラタンに焼き魚と、とどめにスタミナ丼だった。

「無茶苦茶な料理だな」


 と笑った。


「痛みそうなのを全部寄せ集めた結果よ」

「まあいいが量が多すぎるな」

「先日あなたがレストランで食べた量よりはマシよ」

「じゃあ完食目指して頑張って食べるよ」


 と言いステーキから手を付けた。結局小一時間ほど掛けて完食した。


「食べれたわね」

「美味かったから食えたようなものだ」

「ありがとう」

「しかし腹が膨れて動けない」

「ソファーで少し休んだらどう?」

「そうさせてもらうよ」

「明日は大安から仏滅のどれだ?」

「明日は大安よ」

「じゃあ明日も出掛けるぞ」

「わかったわ、何か飲む?」

「豆乳を一杯だけ入れてくれ」


 豆乳を飲み干すとソファーで横になった。

 満腹で眠い、あらがったが結局寝てしまった。起きると夜中の一時、初めてここに泊まった時のように由香里は俺の手に腕を絡ませ寄り添って寝ていた。空調も効いているし風邪を引く季節でもない。無理に起こさずそっとしておいた。一時間ほど由香里の寝顔を見ていたがトイレに行きたくなり、そっと腕を振りほどき静かに起き上がった、用を済ませると冷蔵庫から豆乳を取り出しコップに一杯だけ飲んだソファーのところに戻ると由香里は寝ながら泣いている寝言も言っていてた。


「あなた、行かないで私を捨てないで」


 と繰り返している。そっと背後から抱き締め明日からはそんな夢を見させないようにしてやるからと呟いた。俺が眠りに落ちかけた時に由香里は目を覚ました。


「あれ? どうしてあなたが後ろにいるの? 私泣いてたみたい」


 俺は状況を説明してやった。


「そう、私そんな寝言を言ってたの? 覚えてないわ」


 俺はもう一度言ってやった、明日からはそんな夢を見させないようにしてやると。


いろいろ話してる間に朝になった。軽く食事をし、ネットでカードの配達状況を調べた夕方になりそうだ。早く出掛けた方がいいだろう。


「由香里出掛けるぞ」

「もう終わるわ、ちょっとだけ待って」


 五分程で出てきた。俺の新車に乗り大型のショッピングモールへ向かった一階から五階まであり様々な店が並んでいる五階は映画館だ。滅多に来ない事もあり由香里は楽しそうだった。


「何を買いに来たの」

「指輪だ」


 由香里が立ち止まり泣きそうな声で。


「何指輪?


 と聞いてきたので。


「婚約指輪だ」


 と答えた。もっとロマンチックに決めたかったが、どうも俺は不器用なようだ。だが由香里は泣きながらありがとうと言って抱き付いてきた。


「店は多い好きなのを選ぶといい」

「私が決めてもいいの?」

「ああ、構わない」


 ジュエリーショップは多い一軒ずつ見て回った。

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